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真夏は過ぎても、まだ金木犀も咲かないほどには暑い。だが、僅かばかり和らいだ日光のためか、平日すらも鎌倉は観光客で賑やかだ。それに昨日から、鶴岡八幡宮の例大祭が開かれている。紬と綾人には、昨日二人で祭りを見に行かせた。至は留守番だ。
(少しでも、ここでの生活を楽しんでくれたら)
綾人の過去を、紬の真意を聞いてからというもの、至は二人に対して気楽に接することが難しくなった。
綾人にしあわせになってほしい。
紬に少しでも償い、気の休まる場所を与えたい。
それをするには、至はあまりに力ない。
現に。
綾人が今朝から体調を崩しているのに、至は、世話をしてやることもできない。至の代わりに、紬が部屋で付きっきりで綾人の面倒を見ている。邪魔だろうからと言い訳をして、至は工房に籠もっているのに。
(綾人。……紬さん)
紬の真意を聞いてから、彼とは少し気まずくなっている。彼のことが気に掛かり、仕事にすら熱が入らないほど。
(紬さん)
じくじくと膿んだ傷跡のように、紬のことが常に意識の何処かにある。憎まれてさえいるのに、至はそれを否定する材料を必死に探しているのだ。
(馬鹿だな、俺は)
溜息を吐いたところで──尋常ではない寒気。
いや寒気と間違うほどの歓喜と興奮が、全身を占めた。
(まずい)
紬に気を取られていて、綾人の体調不良がヒートの前兆だと気付かなかった。以前、綾人は抑制剤を飲んでいたのに、いつから彼はやめたのだろう。きっと綾人と紬に組まれて、至は謀られたのだろうが、気付いたところでもう遅い。
(綾人。綾人)
彼へ向かう、強烈な性欲、征服欲に至は逆らえない。
足が勝手に綾人の部屋へと走る。途中ですれ違ったのは紬だろうが、もう気に留める余裕がない。
「綾人!」
彼の部屋の襖を開けると、布団の上で苦しげに藻掻き、着物を乱した綾人が、淫らな顔で荒い息をしていた。
(俺の、番)
彼こそが、至の運命。
欲しい。
この男が欲しい。
唇を奪い、着物を力任せに剥ぐ。綾人が苦しそうに、だが嬉しそうに笑う。
「いいよ、至なら」
その笑みが眩しくて可愛くて、夢中で口づけて、甘い唾液に酔う。どんな美酒だって、この味には敵わない。
そうして腕に抱き込んだ体躯が小さくて、至ははっとする。自分の愛した身体は、これだっただろうかと。
(違う)
頭の何処かでかすかな声が生まれた。至が本当に欲しいのは、この存在かと問う声が。
(じゃあ誰だと)
綾人がここに来たときの、尋常ではない引力を。今ここで艶麗な姿に惹かれるのを。感じなかった訳ではないのに。
胸から背筋を伝って腹に落ちたのは、白銀の髪の後ろ姿だった。
(紬さん)
手は滑らかな綾人の肌を追っているのに、胸に点った何かは、紬、紬とその振り返らない背中に呼びかけている。
(ああ、俺は)
憎まれても見向きもされなくても、あのひとが欲しい。
「ごめん」
「え?」
「ごめん、綾人。俺は君を抱けない」
眼球が落ちるのではないかというほど、目を見開いた綾人から、絶望が伝わってくる。
今すぐ取り消して嘘だよと言って綾人を安心させてやりたい。
それなのに。
綾人にしあわせになってほしいのに──これ以上悲しんで欲しくないのに、心が手を伸ばせと叫んでいるのは、別のひと。
「ごめん。俺は、綾人の番にはなれない」
綾人は、似合いもしないのに目を伏せた。彼は明るく笑っているのがいい。だのに至は、綾人にそんな表情をさせてしまった。ごめん。ごめんなさい。
でも。
「そっか。おれほどの良い相手を手放したの、後悔しないでよね」
唇を睫を震わせながらも笑った綾人に約束する。
「必ず」
そうして至は、綾人の部屋を飛び出した。
駆ける。紬の部屋へと。
許可を得ることすらせず襖を開けると、譲が目の前に立っていて、面食らう。
「譲!? 何でここに」
感じたことのない黒い炎が、至の腹の底でくすぶる。譲は紬と二人で、いったい何をしていたのかと。
(馬鹿だな俺は、弟にすら嫉妬するのに)
今まで何故、紬に愛を乞わなかったのだろう。
「紬さんに薬を持って来て……じゃないよ、ヒートの綾人さん放って何してるんだ!」
譲は紬に、全て聞いているようだ。ベータの譲はこの屋敷に充満するフェロモンを、ほとんど感じないはずだから。
「綾人には、番になれないと言ってきた」
言葉にするだけで、火傷の痕のようにひりひりする。運命の番である綾人を選ばなかったというのは、そういうことだ。だけれど、至は別の運命を選ぶ。
「何で! しあわせにしてやってくれよ! 綾人さんは兄さんが好きなんだよ! 僕じゃなくて、兄さんが……!」
あの温和で優しい譲が激昂している。そんなの、見るのは初めてだった。そうしてやっと気が付いた。
(ああ、俺は本当に馬鹿だ)
譲は、綾人のことが好きなのだろう。そうじゃなければこれほど激怒したり、そもそも綾人を気にして「素敵なひと」なんて言い残したりしない。至はお世辞が言えないが、譲も心にもないことは、口にしないのだ。
だから。
弟に、香坂譲という男に、賭けてみたくなった。
「譲……綾人を慰めてやってくれないか」
「……言われなくても!」
遠ざかっていく鋭い足音。スーツでは走りにくいだろうに、譲は、そんなこときっと気にしていない。
──呆けきった表情の紬と二人、残された。紬の気配が充満した部屋、そこに立っているだけで、至は胸が満ちる。
「紬さん」
かすれた声で至が呼ぶと、紬は険しい顔付きになった。これまで見たことのないような顔で、睨み付けられる。紬もまた、優しいのだ。綾人を思って怒れるくらいに。
「何をしているのです。今からでも綾人さんに謝って」
「嫌です。俺は、あなたと番になりたい」
真っ直ぐ。紬の薄い色の瞳を見つめて、告げる。紬が息を呑む。
「憎まれているのも、俺のことなんかどうでもいいのも、知っています。でも俺は、あなたが好きです」
至は紬へ腕を伸ばす。逃げもせず、そのまま抱き締められてくれた、紬の身体が震える。
「俺の番になってください。今じゃなくていい。でもいつか俺を、好きになって欲しい」
抱き締めた身体が至の腕にひどくしっくりきて、綾人を傷つける前にこの消せない愛情に気づけなかったことを、悔やむ。
だが、今度こそ、選択を間違えない。
「紬さん」
紬の肩が震える。押し殺したような嗚咽が聞こえてくる。涙を拭ってやりたくて、身体を離そうとすると。
「見ないで。聞かなかったことに、してください」
そう嘆くから、愛おしくて可哀想で、抱き込むのをやめられない。
「どうしてです。私はあなたを憎んでいると言ったでしょう。もう私なんか気に掛けないで」
「それが紬さんの本心ですか? あなたは嘘を吐くとき、いつも俺を見ない。本当のことを言ってください」
紬の『本当』が至への憎悪だったとしても、 至は受け止めてみせる。
そして、どれだけ年月を掛けたって、紬を振り向かせたい。
「……そんなの、言えません」
「何故です」
「私が我慢すれば、全部上手くいくから」
紬の涙が至の肩に落ちる。次へ次へと作務衣に染みこんできて、この哀れな存在がどれだけ心を隠して生きてきたのか、思いを馳せる。
もう、こんな涙を流してほしくない。
「そうだとしても。紬さんが耐えることを選んでも。でも俺は、あなたの本音が聞きたい」
いつか紬を抱いたとき、この心をいつまでも見ていたいと思った。きれいで、憎悪すらもきっと、美しいから。
「俺を、好きになってくれませんか」
「……私は、あなたが、憎い」
「……はい」
ぎゅ、と紬を、骨の軋みそうなほどに、引き寄せる。どんな言葉だって、紬の本当の心ならば、至には大切なものなのだ。
「でも、憎いのに、好きで」
「……ええ」
「綾人さんとしあわせになって欲しいのに」
「はい」
嗚咽が止まらない紬の頭を掻き抱く。至の脳裏を、色んな顔が過っていく。綾人の無理矢理笑ってみせた表情。譲の怒気。そして、紬が振り返ってくれるような、幻想。
「……私を離さないで欲しい」
「離しません、もう二度と」
(少しでも、ここでの生活を楽しんでくれたら)
綾人の過去を、紬の真意を聞いてからというもの、至は二人に対して気楽に接することが難しくなった。
綾人にしあわせになってほしい。
紬に少しでも償い、気の休まる場所を与えたい。
それをするには、至はあまりに力ない。
現に。
綾人が今朝から体調を崩しているのに、至は、世話をしてやることもできない。至の代わりに、紬が部屋で付きっきりで綾人の面倒を見ている。邪魔だろうからと言い訳をして、至は工房に籠もっているのに。
(綾人。……紬さん)
紬の真意を聞いてから、彼とは少し気まずくなっている。彼のことが気に掛かり、仕事にすら熱が入らないほど。
(紬さん)
じくじくと膿んだ傷跡のように、紬のことが常に意識の何処かにある。憎まれてさえいるのに、至はそれを否定する材料を必死に探しているのだ。
(馬鹿だな、俺は)
溜息を吐いたところで──尋常ではない寒気。
いや寒気と間違うほどの歓喜と興奮が、全身を占めた。
(まずい)
紬に気を取られていて、綾人の体調不良がヒートの前兆だと気付かなかった。以前、綾人は抑制剤を飲んでいたのに、いつから彼はやめたのだろう。きっと綾人と紬に組まれて、至は謀られたのだろうが、気付いたところでもう遅い。
(綾人。綾人)
彼へ向かう、強烈な性欲、征服欲に至は逆らえない。
足が勝手に綾人の部屋へと走る。途中ですれ違ったのは紬だろうが、もう気に留める余裕がない。
「綾人!」
彼の部屋の襖を開けると、布団の上で苦しげに藻掻き、着物を乱した綾人が、淫らな顔で荒い息をしていた。
(俺の、番)
彼こそが、至の運命。
欲しい。
この男が欲しい。
唇を奪い、着物を力任せに剥ぐ。綾人が苦しそうに、だが嬉しそうに笑う。
「いいよ、至なら」
その笑みが眩しくて可愛くて、夢中で口づけて、甘い唾液に酔う。どんな美酒だって、この味には敵わない。
そうして腕に抱き込んだ体躯が小さくて、至ははっとする。自分の愛した身体は、これだっただろうかと。
(違う)
頭の何処かでかすかな声が生まれた。至が本当に欲しいのは、この存在かと問う声が。
(じゃあ誰だと)
綾人がここに来たときの、尋常ではない引力を。今ここで艶麗な姿に惹かれるのを。感じなかった訳ではないのに。
胸から背筋を伝って腹に落ちたのは、白銀の髪の後ろ姿だった。
(紬さん)
手は滑らかな綾人の肌を追っているのに、胸に点った何かは、紬、紬とその振り返らない背中に呼びかけている。
(ああ、俺は)
憎まれても見向きもされなくても、あのひとが欲しい。
「ごめん」
「え?」
「ごめん、綾人。俺は君を抱けない」
眼球が落ちるのではないかというほど、目を見開いた綾人から、絶望が伝わってくる。
今すぐ取り消して嘘だよと言って綾人を安心させてやりたい。
それなのに。
綾人にしあわせになってほしいのに──これ以上悲しんで欲しくないのに、心が手を伸ばせと叫んでいるのは、別のひと。
「ごめん。俺は、綾人の番にはなれない」
綾人は、似合いもしないのに目を伏せた。彼は明るく笑っているのがいい。だのに至は、綾人にそんな表情をさせてしまった。ごめん。ごめんなさい。
でも。
「そっか。おれほどの良い相手を手放したの、後悔しないでよね」
唇を睫を震わせながらも笑った綾人に約束する。
「必ず」
そうして至は、綾人の部屋を飛び出した。
駆ける。紬の部屋へと。
許可を得ることすらせず襖を開けると、譲が目の前に立っていて、面食らう。
「譲!? 何でここに」
感じたことのない黒い炎が、至の腹の底でくすぶる。譲は紬と二人で、いったい何をしていたのかと。
(馬鹿だな俺は、弟にすら嫉妬するのに)
今まで何故、紬に愛を乞わなかったのだろう。
「紬さんに薬を持って来て……じゃないよ、ヒートの綾人さん放って何してるんだ!」
譲は紬に、全て聞いているようだ。ベータの譲はこの屋敷に充満するフェロモンを、ほとんど感じないはずだから。
「綾人には、番になれないと言ってきた」
言葉にするだけで、火傷の痕のようにひりひりする。運命の番である綾人を選ばなかったというのは、そういうことだ。だけれど、至は別の運命を選ぶ。
「何で! しあわせにしてやってくれよ! 綾人さんは兄さんが好きなんだよ! 僕じゃなくて、兄さんが……!」
あの温和で優しい譲が激昂している。そんなの、見るのは初めてだった。そうしてやっと気が付いた。
(ああ、俺は本当に馬鹿だ)
譲は、綾人のことが好きなのだろう。そうじゃなければこれほど激怒したり、そもそも綾人を気にして「素敵なひと」なんて言い残したりしない。至はお世辞が言えないが、譲も心にもないことは、口にしないのだ。
だから。
弟に、香坂譲という男に、賭けてみたくなった。
「譲……綾人を慰めてやってくれないか」
「……言われなくても!」
遠ざかっていく鋭い足音。スーツでは走りにくいだろうに、譲は、そんなこときっと気にしていない。
──呆けきった表情の紬と二人、残された。紬の気配が充満した部屋、そこに立っているだけで、至は胸が満ちる。
「紬さん」
かすれた声で至が呼ぶと、紬は険しい顔付きになった。これまで見たことのないような顔で、睨み付けられる。紬もまた、優しいのだ。綾人を思って怒れるくらいに。
「何をしているのです。今からでも綾人さんに謝って」
「嫌です。俺は、あなたと番になりたい」
真っ直ぐ。紬の薄い色の瞳を見つめて、告げる。紬が息を呑む。
「憎まれているのも、俺のことなんかどうでもいいのも、知っています。でも俺は、あなたが好きです」
至は紬へ腕を伸ばす。逃げもせず、そのまま抱き締められてくれた、紬の身体が震える。
「俺の番になってください。今じゃなくていい。でもいつか俺を、好きになって欲しい」
抱き締めた身体が至の腕にひどくしっくりきて、綾人を傷つける前にこの消せない愛情に気づけなかったことを、悔やむ。
だが、今度こそ、選択を間違えない。
「紬さん」
紬の肩が震える。押し殺したような嗚咽が聞こえてくる。涙を拭ってやりたくて、身体を離そうとすると。
「見ないで。聞かなかったことに、してください」
そう嘆くから、愛おしくて可哀想で、抱き込むのをやめられない。
「どうしてです。私はあなたを憎んでいると言ったでしょう。もう私なんか気に掛けないで」
「それが紬さんの本心ですか? あなたは嘘を吐くとき、いつも俺を見ない。本当のことを言ってください」
紬の『本当』が至への憎悪だったとしても、 至は受け止めてみせる。
そして、どれだけ年月を掛けたって、紬を振り向かせたい。
「……そんなの、言えません」
「何故です」
「私が我慢すれば、全部上手くいくから」
紬の涙が至の肩に落ちる。次へ次へと作務衣に染みこんできて、この哀れな存在がどれだけ心を隠して生きてきたのか、思いを馳せる。
もう、こんな涙を流してほしくない。
「そうだとしても。紬さんが耐えることを選んでも。でも俺は、あなたの本音が聞きたい」
いつか紬を抱いたとき、この心をいつまでも見ていたいと思った。きれいで、憎悪すらもきっと、美しいから。
「俺を、好きになってくれませんか」
「……私は、あなたが、憎い」
「……はい」
ぎゅ、と紬を、骨の軋みそうなほどに、引き寄せる。どんな言葉だって、紬の本当の心ならば、至には大切なものなのだ。
「でも、憎いのに、好きで」
「……ええ」
「綾人さんとしあわせになって欲しいのに」
「はい」
嗚咽が止まらない紬の頭を掻き抱く。至の脳裏を、色んな顔が過っていく。綾人の無理矢理笑ってみせた表情。譲の怒気。そして、紬が振り返ってくれるような、幻想。
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「離しません、もう二度と」
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