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第一章「獣たちのロカビリー」

分割版・第九話「蕩けた産毛」

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 シャトレ・アラランガ
 郊外に位置する巨大な闘技場には、ナイター用のサーチライトが煌々と夜空を照らし、獣耳人類の群衆が溢れかえっていた。入り口近くのネオンサインの合間、デジタルサイネージにはどこで撮ったのかバロンの立ち姿がでかでかと表示され、既に集まった女性たちが口々に感想を述べている。
「……まだ着かないか」
 バロンはアリシアとシマエナガを伴いつつ進む。
「視界から妾たちを消すのが楽でよかったな、全く。それにしても、中々人気のようだな主」
「……都合よくボーマンに使われている気がしてならないが」
「まあ気持ちはある程度察するが……息抜きくらいに思ったらどうだ。眉目秀麗な女を好き勝手にしていいんだぞ。ある程度、胸がすくのではないのか」
「……どうだかな。面倒が増えるだけに思えるが……」
 バロンたちは闘技場の内部へ入っていく。ずらりと並んだ受付を潜り抜け、刺股のように開いたスタッフオンリーの通路を進み、用意された待機室へ入る。そこで気配を戻し、三人それぞれが近場の椅子に座る。
「……準備か」
 そう呟いて、話を続けようとすると……扉が開かれ、ニルが現れる。
「着いたか。もうすぐ試合だが、対戦相手は秘匿されている。準備が出来たら私に告げてくれ。部屋の外で待っている」
 それだけ告げて、ニルは部屋から出る。
「……シマエナガ、頼む」
「はい、マスター」
 二人が立ち上がり、シマエナガはバロンの前で跪く。そして優しい手つきでズボンを下ろし、露出した陰茎へしゃぶりつく。
「……妙な感覚だな」
「……」
 シマエナガのフェラチオを眺めつつ、頭を撫でる。彼女は口をすぼめ、快感はあれど射精感の高まるものではない、絶妙な加減で、ただ勃起させるためだけの動きを見せる。
「……よし、十分だ」
 バロンの言葉に従い、彼女は名残惜しそうに離れ、ズボンを戻す。屹立しきった逸物を縦にして穿くが、入りきらぬ先端がひょっこり頭を出している。
「……みっともないが、仕方ない」
「勝利を信じておりま――いえ、その、ちゃんと盛り上げられるように信じております」
「……ああ、応援する側もよくわからん気分になるだろうな」
 バロンは扉のノブに手をかける。廊下へ出ると、すぐ傍の壁にニルが寄りかかっていた。至近で目が合い、ニルは即座に視線を下へ向ける。
「ほう、神子がいなくても神殿で見たのと同じくらい勃起できたか」
「……あまり面と向かって言うな。僕にだって羞恥心くらいはある」
 ニルは咳払いし、翻る。
「では、私についてきてもらいましょうか。こちらです」
 若干の薄暗さを感じる廊下を歩いていく。バロンは今までの騎士鎧と違ってラフな格好のニルを見て、ふと違和感を感じる。
「……ニル、君には尻尾があるんだな」
 そう、ニルはオレンジ色の狐の耳に加え、太く大きな狐の尻尾を備えているのだ。
「私の母が、ゼフィルス・ナーデルであるということはもうお伝えしましたが、彼女の人為的に作成された生体情報が、私の代になっても持続しているということ、らしいですね」
「……作り物の、単なる装飾品として作られたパーツが継承されてしまったということか」
「ええ。獣耳人類は、アリア・クロダと杉原明人の肉片に、ゼフィルス・ナーデルの遺伝子が濃く含まれている。優性遺伝子……いえ、顕性遺伝子と言うべきでしょうか。獣耳人類のその名の象徴たる獣耳は現れやすい遺伝形質でしたが、尾の方は発露しづらい、潜性遺伝子ということです」
「……つまり、尻尾が生えている獣耳人類もいないことはないが、数は少ないと」
「ええ。お陰で、尻尾用の衣服というものが少なくてね。これも行きつけの店で特注してもらっているんですよ」
「……そうか。どうも僕たちは一張羅しか持たないという感覚が強いせいか、その手のことはよくわからんが……」
「ま、お気になさることではありませんよ。些細なことなのでね。特に鎧を着るときなどは背中に押し込んでいますし」
「……それにしてはシャープな鎧姿だったが……」
 ニルが立ち止まる。
「さあ、この先へ進めばフィールドです。もう入っていっても大丈夫ですよ」
 通路の先からは凄まじい光と、観客の声が聞こえてくる。ニルが立ち退き、バロンは深呼吸する。そして意を決し、進む。
 薄暗い通路を抜け、光の下に出ると、サッカー場か野球場、もしかするとそれ以上の広大なフィールドに出る。空中には無数のカメラ搭載型のドローンが飛んでおり、バロンの姿を捉えた観客から怒号のような黄色い声援が上がる。
「……」
 バロンが進み、中央近くで立ち止まる。左を見ると、遠巻きに見えるステージに、ボーマンがマイクを握って立っていた。こちらの姿を見ると、ボーマンはマイクを口の前に持ってくる。
『皆様お待たせいたしました』
 彼女の優し気な声が拡散されると、観客は今までの狂騒が嘘のように黙って耳を傾ける。
『本日は、このトライバル・サバト始まって以来、最も価値のある特別ゲストにお越しいただいております』
 ボーマンの背後の電子パネルが点灯し、ドローンが撮影するバロンの姿を映す。
『我々の世界に来たりし、価値ある男、雄。バロン・エウレカです!』
 観客は声援を上げながら拍手する。
『そう、我らが大父と同じく、陰茎しか持つことのできぬ、我々より劣った旧人類ですが……それだけに、彼はそのむくつけき野望を持ってここに来たということです』
「……勝手なことを」
 ボーマンの語りに、バロンはうんざりする。
『それではご覧ください!我らの好奇心を、性欲を満たす、彼の者の戦いを!』
 バロンの視線の先、対になるように設置された入り口から、一人の少女が歩み寄ってくる。彼女はバロンの眼前まで来て、立ち止まる。
「……君が最初の相手か」
 少女は頷く。この世界に来てから最初に出会った、諜報部隊の忍者にそっくりな格好をしていた。が、胸のサラシはスポブラのようなものに換装され、下にはスパッツを穿いていた。
「私はスズメ。獣耳人類諜報部隊、〝ネスト〟のリーダーです」
 スズメはとてもはっきりとした口調でそう言う。いかにも自分を律し、真面目そうな……単純そうな外見をしている。
「……これに参加しているということは、君はそういう手合いなのか」
「何を言っているか知りませんが……私はあなたに勝利し、あなたの意志を折り取る。我々に永遠に奉仕するように」
「……そうか。期待はしていない。共にやることだけをやろう」
 バロンが拳を構える。
「まさか、素手で戦う気ですか?」
「……武器はあまり好きじゃない。否定するわけじゃないが、僕はこっちの方が扱い慣れている」
「まあ、倒しやすいのはいいですけど……」
 スズメは胸元から苦無を左手で抜き、右手で刀を抜く。そしてこれと言った開戦の合図もないままスズメが苦無を投げつけて戦いが始まる。苦無が投げられた瞬間、彼女の掌底の辺りから金属の棘が何本か放たれる。バロンは全身から闘気を発するだけでそれら全てを打ち落とし、真横の右斜め上から斬りかかってきた来たスズメへ平然と向き直り、右前腕で刀を受け止める。
「なっ!?」
「……いい鋭さだ。体を自分の使いやすいように鍛えているのはもちろん、刀の手入れもよく行き届いている。だが……」
 刀を弾いて体勢を崩させると、素早く首を掴み、スズメは地面に叩きつけられる。
「がっ……はぁっ……!?」
 悶えて吐息が強制的にひねり出され、間髪入れずにバロンは左人差し指を彼女の右肩に突き入れる。
「ぐっ……!力が……ッ!?」
 右腕は神経が絶たれたように脱力し、刀を取り落とす。人差し指を引き抜くと、二人の視線が絡み合う。
「……素直な瞳だな。やはりこのサバトに、そういう・・・・ことを期待してきていたんだな」
「ち、違う!私はあくまでも……」
「……どちらにせよもう君に選択肢はない、諦めろ」
「バカが……ッ!」
 首を掴まれたままで下半身を丸め込み、両足を揃えてそのままバロンの腹に蹴り込む。だが彼は微動だにしない。
「ハッ!?」
「……ならば仕方ない」
 バロンは左手で彼女の頭を掴み、力を流し込む。
「あぎ……ぃっ!?」
 瞬間、スズメはビクンと跳ね、スパッツにシミが出来る。
「し、子宮が焼けるっ……!?な、なにこれ……」
 バロンが右手を離すと、スズメは抜けた腰の代わりに左肘で懸命に後退する。
「……さあ、足も右腕も使えない、君はどうやってこれから戦うんだ?」
「ひ、ひぇ……あ、あの……ごめんなさっ……」
 後退するのを諦め、怯えた表情で左手を突き出して制止してくる。
「……観客もまともな戦いは望んでいないさ」
 バロンはスズメへ肉薄する。勝敗がついたのを理解したか、周囲のドローンが集まってくる。バロンは彼女の剥き出しの腹を撫でる。
「あふっ、それっなんでぇっ……」
 それだけで彼女は甘く喘ぐ。
「……ふんっ」
 そして子宮の辺りを押し潰す。
「んっぷぅぅぅっ!?」
 スズメは大きく仰け反り、だが根性で声を堪える。
「……全く、衆目に晒されているのに、腹を押されるだけで絶頂するとはな。変態が」
「ちがう……ちがうもん……」
「……ならばひとつ、ゲームをしよう。僕が射精するまでに君がイかなければ、少なくとも僕は君を変態扱いはしない、どうだ?」
「ふぇ……も、もうわかんない、わかんないよぉ……!」
 スズメは号泣しだし、左腕で懸命に涙を拭う。バロンは容赦なく彼女のスパッツを破き、腰を持ち上げる。
「……非処女か」
「うぇっ……そぉです……わたしドジばっかりでぇ……賊とかっ、動物とかにぃ……ひっ……よく……襲われてぇ……っ」
「……ほう」
 バロンは頷きつつ己の逸物を露にし、スズメの股間に乗せる。
「ひぃ……なんですかその大きさ……」
「……どこまで素直に受け入れてくれるか、楽しみだな」
 逸物が秘裂を貫いて、一瞬である程度まで分け入る。
「んにゃあああああっ!」
 姦通と同時に悲鳴のような声援が上がり、スズメの渾身の嬌声が掻き消される。
「……なるほど意外と浅いな」
 バロンは少し腰を引き、左手で彼女の子宮を押しながら一気に突き入れる。
「あっふっ……んおおぁっ……!」
 あっという間に亀頭が子宮口に辿り着き、余りにも連続で快感の波が来たか、彼女の息がつまる。
「……イったか」
 バロンはスズメの上体を起こし、抱き寄せる。逸物がスズメの自重で更に深く突き入れられる。
「お、お許しを……どうか無体はこれ以上……」
「……そうだな、なら僕のことを、君が思う最大限の敬称で呼んでごらん。そして一生の忠誠を誓うんだ」
「い……っしょう……?」
 間近で視線を交わす。スズメの目には、それぞまさに待っていた答えだというばかりに期待の炎が燻っていた。
「あぅ……」
「……さあ。ずっとお前の欲望の、面倒を見てやるぞ……?」
「と、殿との……わた、私のこと……優しく愛して、ください……いっ……一生……あなたの、殿の肉便器になりますからぁ……!」
「……よく言えたな」
 バロンはスズメの頭を撫で、彼女は泣き腫らした顔を彼の胸元に埋める。そこに不意打ちのように強烈に腰を打ち付ける。
「ふあああっ……」
 だが先ほどまでの悲鳴のような声ではなく、腹の底から安心を吐き出すような、甘い吐息が漏れていく。バロンの抽挿の激しさとは裏腹に、スズメはこれ以上なく幸せそうな表情で成すがままにされる。
「との、とのぉ……すき、しゅきですとのぉぉぉぉ……!」
「……いい子だ。よしよし」
 バロンは彼女の右肩に触れてその力を戻させ、その瞬間、もどかしいとばかりにスズメは両腕をバロンの首に回して密着する。
「との、との、きす、きす」
 もう単語しか発せないほど思考が混濁してきた彼女の唇を、バロンは奪う。そしてバロンもまたスズメを抱き寄せ、征服するように速度を強め、そのまま射精する。
「んぐううううっ♡」
 声を封じられたまま、彼女は多幸感を感じながらひたすらに絶頂し続ける。やがて射精が終わり、唇を離す。スズメは完全にだらけた表情でバロンを見る。
「とのぉ……わたし……しあわせでしゅ……」
 遺言のように呟いて、気絶する。満足したのか、観客もそれに呼応するように喜びの声を上げ、闘技場全体に反響して、まるで施設そのものが咆哮しているようだ。
 スズメから逸物を引き抜き、地面に横たえる。すると、通路の向こうから救護服に身を包んだ職員たちが急行してきて彼女を担架に乗せて去る。
「……」
 バロンは自分の精液と、スズメの愛液に塗れた逸物を見てため息をつく。
「……これをそのままズボンに入れるのは汚いな……」
 仕方なく、彼は逸物を剥き出しにしたままフィールドを去った。完全にいなくなるその瞬間までドローンが逸物を映さんと横づけしてきて、はっきりと確認できるたびに歓声が上がる。
 来た時と同じように薄暗い通路を進み、待機室へ入ると二人が出迎えてくれる。
「ご苦労だったな、主。貴様の勇姿……いや、雄姿と言うべきか。ちゃんと見ておったぞ」
 アリシアは逸物へ視線を向ける。
「次は妾が相手をしてやろう」
 彼女は扉を閉め、すぐにバロンの逸物を頬張る。
「……楽しみにしていたわけではないよな?」
「ふぉんなふぁけなあろう。ふぁくまれも、あるじのひからになるため……」
 彼女の小さな口には明らかに入りきっていないが、それでも懸命に、入念に残った結合液を舐め取っていく。
「……予想以上の恥辱だ、全く。それに、流れとは言えあの……スズメとかいう子に忠誠を誓わせてしまった」
 アリシアが掃除しきって、最後にこれ見よがしに下品な吸引音を立てつつ口を離す。
「あちらも本気にはしておらんだろ。もし本気にしていたのなら、それはそれで、妾たちの仲間に引き入れればよいではないか。能力自体は問題なさそうだっただろう」
「……まあそうだが……今は考えるだけ無駄か。次の試合に行くとしよう」
 ――……――……――
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