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終章「The last battle in shangri-la eden」
「憂鬱なニヒリズム」
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世界には 決して相容れぬ者がいる
凡ゆる全てを 否定し消し去る者
凡ゆる全てを 睥睨し愚弄する者
凡ゆる全てを 扇動し惑わせる者
秩序と 中庸と 混沌と
世界はそれらの 奪い合い 滅ぼし合い
そうあろうとして あるのではなく
そうあるからこそ 争い合う
終わることなき儀式の輪舞
逃れ得ぬ宿怨を終わらせる 無慈悲の極致
上空の戦いが落ち着き、竜たちがそれぞれ飛び交う。だが、ある一地点のみを避けているのがわかる。
シャングリラ・エデンの入り口からそう遠くない、一つの足場。
凍り付いた、虚空に浮かぶ空間。
壮絶に過ぎる究極の力がぶつかり合い、不用心にも近寄った竜を瞬時に消滅させる。
極悪な勢力の吹雪の最中、巨竜が向かい合っていた。
両者ともにまだ小競り合いと言った風で、いつも通りの紫紺の竜と、暗緑の竜の姿だ。
「腕が鈍ったか、ニヒロ」
ボーラスは慣らすように首を捻る。
「貴様も随分と生温くなったものだな、ボーラス。俺と違って物臭の貴様は、座り続けて筋肉が落ちたようだ」
「我より低能な竜の檻に閉じ込められてやっていたのでな。だがお陰で、貴様に我が不滅の太陽を再現されることもなかった」
「だがサタンに搭載できている。それだけで十分だ。貴様は俺を斃せると思っているのだろうが――」
ニヒロは斜め後方に飛び上がり、妙にばらつく氷塊を口から乱射する。ボーラスは回避せず、右翼を正面に持ってきて防御する。アルファリアが回避を断念するほどの破壊力だったはずのそれを真正面から防御してなお、ボーラスは傷一つどころか反応すらない。防御しきり、ゆったりとした動作から光線を吐き出す。ニヒロは即座に着地し、尋常ならざる速度、そして鬼気迫る足音と共に突進してくる。ボーラスは真正面から受け止め、その力が激突し合った狭間から暴力的なまでの破壊力が天空へ飛び散る。ボーラスはニヒロを投げ飛ばし、瞬時に重ねて光線を放つ。氷を身代わりにして瞬間移動し、移動したニヒロは大きく翻りつつボーラスに尻尾を叩きつける。並みの存在であれば――いや、いかほどの強者であれ真正面から耐えることは不可能であろう一撃を、ボーラスは平然と右前脚で受け止め、ニヒロの尻尾を掴んで投げ飛ばす。ニヒロもそれで大きく体勢を崩したりすることもなく、未だ様子見の域を脱してはいないようだ。
「忘れもしない、天地創造の時の屈辱……貴様だけは俺が自らの手で葬り去ってくれるわ」
「無駄だ。我を消し去ることは出来ぬ。我は万物の絶頂、全てを睥睨する、王なのだからな」
ボーラスは緩慢な動作で右前脚を掲げ、眩い純シフルエネルギーを蓄えて地面を殴りつける。瞬く間に直線に衝撃が走り、大爆発を起こす。ニヒロは横回転で躱し、しっかりと四肢で踏ん張って口から冷気の光線を放つ。ボーラスは姿勢を戻しつつ、左前脚で光線を受け止める。足裏から徐々に凍り付き、ニヒロは撃ち切ってからすぐさま右から左へ薙ぎ払い、今度は逆に薙ぎ払う。ボーラスは凍り付いた左前脚を即座に治癒させ、短く光線を合わせて放って相殺し、右前脚を薙ぎ払う。純粋なエネルギーの塊が凄まじい速度の飛翔体となって突撃する。更に扇形に地面からエネルギーが噴出し、ニヒロは左翼を薙ぎ払ってから地面に叩きつけ、連続で起こした冰気によってそれらを打ち消す。更に再び、ニヒロは正面に向き直ってから強烈な突進を繰り出す。ボーラスは光線で迎え撃つも真正面から突破され、ニヒロは翼や甲殻の隙間から冰気を解放して急加速し、激突する。ボーラスを僅かに怯ませ、鼻先でしゃくり上げて大きく仰け反らせる。ニヒロは上半身を全力で叩きつけ、冰気を凝縮して解放し、猛烈な爆発と氷柱で押し込む。更に続けて冰気光線を撃ち込んで、ボーラスの巨体を吹き飛ばす。そしてもう一度翻って尻尾を叩きつけ、薙ぎ払い、左翼を畳んだタックルから左翼を開いて冰気を解放する。だがボーラスは吹き飛んでから一度も怯まずに攻撃を構えており、両前脚を揃え、その足裏から膨大なエネルギーを解放し、連続で大爆発させて今度はニヒロが大きく押し込まれて吹き飛ぶ。
「生温いな。世に生きる矮小な生命ならばいざ知らず、最高の生命たる我を凍てつかせるには温すぎる」
ボーラスは軽く身震いするだけで全身の氷を融けさせ、構え直す。
「その手は食わん……と言いたいところだが、貴様を滅ぼすのに加減など必要ない」
ニヒロが静かに力むと、周囲の雰囲気が明確に変化し、暗黒の果ての更に先まで凍り付くような冷気が迸る。彼の体から毒々しい紫の液体が噴出し始め、巨大な紫の塊となって上空へ飛び立つ。一瞬の内に更に巨大な球体となって急降下し、着弾と共に紫の波と冰気が解放され、ニヒロは天を仰いで吠える。ボーラスは僅かに身を退いて翼で防御し、両者は向かい合う。
「ふん、まだ出し惜しむか」
ボーラスが唾棄する。眼前のニヒロは、体表が所々氷結し、目元が大きく裂けたような禍々しいものとなり、紫色のオーラを立ち上らせている。到底出し惜しんでいるとは思えないほどの圧倒的な覇気が放たれているが、それでもボーラスには足りないようだ。
ニヒロは浅く飛び込み、左前脚を捻じ込みつつ高速で回転して尻尾で薙ぎ払う。紫の混じった氷塊が大量に作り出され、ボーラスの体に当たって砕け散り、冰気と紫の液体を解放する。更にその攻撃に伴って空中に漂っていた冰気が一気に凝縮して氷柱となり、地面からそそり立つ。同じようにボーラスの体を傷つけ、弾ける。だがボーラスはようやく自分から動き、小さく飛び込んでから鼻先で薙ぎ払い、その軽い挙動からは想像も出来ない猛烈な破壊力でニヒロを大きく怯ませ、首筋に噛み付いて思い切り噛み締め、飛び上がる。ニヒロが全身から冰気を解放しつつ蹴りを加えて抵抗するがボーラスは動じず、咥えたまま光線を解き放ち、そのままニヒロを離して光線で押して吹き飛ばす。ニヒロは地面に叩きつけられてなお光線を受け続けて押し込まれ、ボーラスは空中で右前脚に力を蓄え、直下に急降下しつつそれを地面に突き刺す。即座に立て直したニヒロに対して純シフルの波動が直線に向かい、彼は回避しつつ力強く着地し、絶大に過ぎる光線を吐き出す。猛烈な吹雪とまばらな氷塊、そして紫の液体を伴ったそれを、同じようにボーラスは右前脚で平然と受け止める。だが純粋な破壊力だけでなく、紫の液体による極悪な速度と威力の侵食によって足首から先が吹き飛び、仕方なくボーラスは自身の光線で迎え撃って打ち消す。ニヒロはそれを逃さず、先ほどから繰り出している渾身の突進を再び繰り出す。ボーラスは何かしらわかりやすい動作をするでもなく即座に右前脚を修復し、突進を真正面から受け止める。ニヒロは翼から冰気を放って加速し、そして両者見詰め合い、至近距離で光線を撃ち合う。堪らず両者吹き飛び、受け身を取って立て直す。
「我の体を破壊するとは……流石に天地創造の時より時代は進んでいるということか」
今まで気だるげだったボーラスの声が、少しだけ声量が増す。
「ふん、もう本気を出すのか?貴様には失望したぞ、ボーラス」
ニヒロが煽ると、ボーラスは不敵な笑みで返す。
凡ゆる全てを 否定し消し去る者
凡ゆる全てを 睥睨し愚弄する者
凡ゆる全てを 扇動し惑わせる者
秩序と 中庸と 混沌と
世界はそれらの 奪い合い 滅ぼし合い
そうあろうとして あるのではなく
そうあるからこそ 争い合う
終わることなき儀式の輪舞
逃れ得ぬ宿怨を終わらせる 無慈悲の極致
上空の戦いが落ち着き、竜たちがそれぞれ飛び交う。だが、ある一地点のみを避けているのがわかる。
シャングリラ・エデンの入り口からそう遠くない、一つの足場。
凍り付いた、虚空に浮かぶ空間。
壮絶に過ぎる究極の力がぶつかり合い、不用心にも近寄った竜を瞬時に消滅させる。
極悪な勢力の吹雪の最中、巨竜が向かい合っていた。
両者ともにまだ小競り合いと言った風で、いつも通りの紫紺の竜と、暗緑の竜の姿だ。
「腕が鈍ったか、ニヒロ」
ボーラスは慣らすように首を捻る。
「貴様も随分と生温くなったものだな、ボーラス。俺と違って物臭の貴様は、座り続けて筋肉が落ちたようだ」
「我より低能な竜の檻に閉じ込められてやっていたのでな。だがお陰で、貴様に我が不滅の太陽を再現されることもなかった」
「だがサタンに搭載できている。それだけで十分だ。貴様は俺を斃せると思っているのだろうが――」
ニヒロは斜め後方に飛び上がり、妙にばらつく氷塊を口から乱射する。ボーラスは回避せず、右翼を正面に持ってきて防御する。アルファリアが回避を断念するほどの破壊力だったはずのそれを真正面から防御してなお、ボーラスは傷一つどころか反応すらない。防御しきり、ゆったりとした動作から光線を吐き出す。ニヒロは即座に着地し、尋常ならざる速度、そして鬼気迫る足音と共に突進してくる。ボーラスは真正面から受け止め、その力が激突し合った狭間から暴力的なまでの破壊力が天空へ飛び散る。ボーラスはニヒロを投げ飛ばし、瞬時に重ねて光線を放つ。氷を身代わりにして瞬間移動し、移動したニヒロは大きく翻りつつボーラスに尻尾を叩きつける。並みの存在であれば――いや、いかほどの強者であれ真正面から耐えることは不可能であろう一撃を、ボーラスは平然と右前脚で受け止め、ニヒロの尻尾を掴んで投げ飛ばす。ニヒロもそれで大きく体勢を崩したりすることもなく、未だ様子見の域を脱してはいないようだ。
「忘れもしない、天地創造の時の屈辱……貴様だけは俺が自らの手で葬り去ってくれるわ」
「無駄だ。我を消し去ることは出来ぬ。我は万物の絶頂、全てを睥睨する、王なのだからな」
ボーラスは緩慢な動作で右前脚を掲げ、眩い純シフルエネルギーを蓄えて地面を殴りつける。瞬く間に直線に衝撃が走り、大爆発を起こす。ニヒロは横回転で躱し、しっかりと四肢で踏ん張って口から冷気の光線を放つ。ボーラスは姿勢を戻しつつ、左前脚で光線を受け止める。足裏から徐々に凍り付き、ニヒロは撃ち切ってからすぐさま右から左へ薙ぎ払い、今度は逆に薙ぎ払う。ボーラスは凍り付いた左前脚を即座に治癒させ、短く光線を合わせて放って相殺し、右前脚を薙ぎ払う。純粋なエネルギーの塊が凄まじい速度の飛翔体となって突撃する。更に扇形に地面からエネルギーが噴出し、ニヒロは左翼を薙ぎ払ってから地面に叩きつけ、連続で起こした冰気によってそれらを打ち消す。更に再び、ニヒロは正面に向き直ってから強烈な突進を繰り出す。ボーラスは光線で迎え撃つも真正面から突破され、ニヒロは翼や甲殻の隙間から冰気を解放して急加速し、激突する。ボーラスを僅かに怯ませ、鼻先でしゃくり上げて大きく仰け反らせる。ニヒロは上半身を全力で叩きつけ、冰気を凝縮して解放し、猛烈な爆発と氷柱で押し込む。更に続けて冰気光線を撃ち込んで、ボーラスの巨体を吹き飛ばす。そしてもう一度翻って尻尾を叩きつけ、薙ぎ払い、左翼を畳んだタックルから左翼を開いて冰気を解放する。だがボーラスは吹き飛んでから一度も怯まずに攻撃を構えており、両前脚を揃え、その足裏から膨大なエネルギーを解放し、連続で大爆発させて今度はニヒロが大きく押し込まれて吹き飛ぶ。
「生温いな。世に生きる矮小な生命ならばいざ知らず、最高の生命たる我を凍てつかせるには温すぎる」
ボーラスは軽く身震いするだけで全身の氷を融けさせ、構え直す。
「その手は食わん……と言いたいところだが、貴様を滅ぼすのに加減など必要ない」
ニヒロが静かに力むと、周囲の雰囲気が明確に変化し、暗黒の果ての更に先まで凍り付くような冷気が迸る。彼の体から毒々しい紫の液体が噴出し始め、巨大な紫の塊となって上空へ飛び立つ。一瞬の内に更に巨大な球体となって急降下し、着弾と共に紫の波と冰気が解放され、ニヒロは天を仰いで吠える。ボーラスは僅かに身を退いて翼で防御し、両者は向かい合う。
「ふん、まだ出し惜しむか」
ボーラスが唾棄する。眼前のニヒロは、体表が所々氷結し、目元が大きく裂けたような禍々しいものとなり、紫色のオーラを立ち上らせている。到底出し惜しんでいるとは思えないほどの圧倒的な覇気が放たれているが、それでもボーラスには足りないようだ。
ニヒロは浅く飛び込み、左前脚を捻じ込みつつ高速で回転して尻尾で薙ぎ払う。紫の混じった氷塊が大量に作り出され、ボーラスの体に当たって砕け散り、冰気と紫の液体を解放する。更にその攻撃に伴って空中に漂っていた冰気が一気に凝縮して氷柱となり、地面からそそり立つ。同じようにボーラスの体を傷つけ、弾ける。だがボーラスはようやく自分から動き、小さく飛び込んでから鼻先で薙ぎ払い、その軽い挙動からは想像も出来ない猛烈な破壊力でニヒロを大きく怯ませ、首筋に噛み付いて思い切り噛み締め、飛び上がる。ニヒロが全身から冰気を解放しつつ蹴りを加えて抵抗するがボーラスは動じず、咥えたまま光線を解き放ち、そのままニヒロを離して光線で押して吹き飛ばす。ニヒロは地面に叩きつけられてなお光線を受け続けて押し込まれ、ボーラスは空中で右前脚に力を蓄え、直下に急降下しつつそれを地面に突き刺す。即座に立て直したニヒロに対して純シフルの波動が直線に向かい、彼は回避しつつ力強く着地し、絶大に過ぎる光線を吐き出す。猛烈な吹雪とまばらな氷塊、そして紫の液体を伴ったそれを、同じようにボーラスは右前脚で平然と受け止める。だが純粋な破壊力だけでなく、紫の液体による極悪な速度と威力の侵食によって足首から先が吹き飛び、仕方なくボーラスは自身の光線で迎え撃って打ち消す。ニヒロはそれを逃さず、先ほどから繰り出している渾身の突進を再び繰り出す。ボーラスは何かしらわかりやすい動作をするでもなく即座に右前脚を修復し、突進を真正面から受け止める。ニヒロは翼から冰気を放って加速し、そして両者見詰め合い、至近距離で光線を撃ち合う。堪らず両者吹き飛び、受け身を取って立て直す。
「我の体を破壊するとは……流石に天地創造の時より時代は進んでいるということか」
今まで気だるげだったボーラスの声が、少しだけ声量が増す。
「ふん、もう本気を出すのか?貴様には失望したぞ、ボーラス」
ニヒロが煽ると、ボーラスは不敵な笑みで返す。
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