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三千世界・再誕(8)
結章 木漏れ日の午後
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イタリア区・Chaos社ヨーロッパ支部
執務室でコーヒーを飲みながら、バロンはエリアルと談笑していた。
「……彼女のその後は?」
「杉原のところで楽しくやってるみたいよ。あの子は杉原より素直だし、とってもいい子ね」
「……そうか。だが、仕事が増えたことに変わりはない。明人たちには、これからもよく働いてもらわないとな」
バロンがふと視線をエリアルから外すと、アウルが入ってきていた。
「……調子はどうだ、アウル」
バロンが問うと、アウルは私服らしき可愛らしいフリルとレースで装飾された可愛らしいミニドレスを揺らし、お辞儀をする。
「調子は絶好調です。何せ、愛しの伴侶と再び暮らすことが出来るのですから」
アウルはエリアルの方をちらりと見る。エリアルは余裕の表情を見せ、アウルはそれに応えるように敵意混じりの笑みを返す。
「……はぁ。勝手にしてくれ」
バロンはため息をついて、コーヒーを啜った。
セレスティアル・アーク
屋上で、明人と燐花は並んで長椅子に座っていた。
「空が綺麗ですね」
空の青と黒の境界線を見つめて、燐花が呟く。
「おう、そうだな。……」
二人はしばしの間沈黙する。
「え、えっと……あんまり面と向かって話したことがないから、詰まっちゃいますね……」
「よし!燐花、みんなでゲームしようぜ!そしたら話題も起きる起きる!」
明人は燐花の手を取って駆ける。燐花は少し強引な手引きに戸惑いながらも、その手の温もりに微笑むのだった。
――……――……――
「随分、平和ボケした戦いだったわね」
奈野花が闇に腰掛け、頬杖をつく。
「致し方あるまい。空の器には、注がれる魂が必要だ。多くの世界は輪転してきたが、空の器が己の意志で先へ進もうとするなど前代未聞だ。ならば、その力を存分に発揮できるように膳立てする。当然のことだ」
狂竜王は奈野花と向かい合うように立つ。
「ふふ、でもいいわ。可愛い女の子が全身全霊を懸けて恋に愛に生きる様はいつ見ても素晴らしいもの」
「ふん、君はいつでも変わらないようだな。だからこそ、私は君を依代に選んだわけだが」
二人は笑い合い、そして狂竜王は奈野花の鎧となって纏わりつく。そこにアルメールが現れて、深く礼をする。
「うむ、ご苦労だった、アルメール」
「全くです。燐花は哀れで滑稽で、俺好みだったとは言え、明人に希望を見出だしたようじゃ詰まらない。俺はしばらく暇潰しに行くとします」
アルメールは踵を返し、去っていった。
「いよいよ世界は真に進み出す。我らを葬り去る牙よ、黄金を得て、我が寝首を喰い千切れ」
奈野花は暗黒を見上げ、そう呟いた。
執務室でコーヒーを飲みながら、バロンはエリアルと談笑していた。
「……彼女のその後は?」
「杉原のところで楽しくやってるみたいよ。あの子は杉原より素直だし、とってもいい子ね」
「……そうか。だが、仕事が増えたことに変わりはない。明人たちには、これからもよく働いてもらわないとな」
バロンがふと視線をエリアルから外すと、アウルが入ってきていた。
「……調子はどうだ、アウル」
バロンが問うと、アウルは私服らしき可愛らしいフリルとレースで装飾された可愛らしいミニドレスを揺らし、お辞儀をする。
「調子は絶好調です。何せ、愛しの伴侶と再び暮らすことが出来るのですから」
アウルはエリアルの方をちらりと見る。エリアルは余裕の表情を見せ、アウルはそれに応えるように敵意混じりの笑みを返す。
「……はぁ。勝手にしてくれ」
バロンはため息をついて、コーヒーを啜った。
セレスティアル・アーク
屋上で、明人と燐花は並んで長椅子に座っていた。
「空が綺麗ですね」
空の青と黒の境界線を見つめて、燐花が呟く。
「おう、そうだな。……」
二人はしばしの間沈黙する。
「え、えっと……あんまり面と向かって話したことがないから、詰まっちゃいますね……」
「よし!燐花、みんなでゲームしようぜ!そしたら話題も起きる起きる!」
明人は燐花の手を取って駆ける。燐花は少し強引な手引きに戸惑いながらも、その手の温もりに微笑むのだった。
――……――……――
「随分、平和ボケした戦いだったわね」
奈野花が闇に腰掛け、頬杖をつく。
「致し方あるまい。空の器には、注がれる魂が必要だ。多くの世界は輪転してきたが、空の器が己の意志で先へ進もうとするなど前代未聞だ。ならば、その力を存分に発揮できるように膳立てする。当然のことだ」
狂竜王は奈野花と向かい合うように立つ。
「ふふ、でもいいわ。可愛い女の子が全身全霊を懸けて恋に愛に生きる様はいつ見ても素晴らしいもの」
「ふん、君はいつでも変わらないようだな。だからこそ、私は君を依代に選んだわけだが」
二人は笑い合い、そして狂竜王は奈野花の鎧となって纏わりつく。そこにアルメールが現れて、深く礼をする。
「うむ、ご苦労だった、アルメール」
「全くです。燐花は哀れで滑稽で、俺好みだったとは言え、明人に希望を見出だしたようじゃ詰まらない。俺はしばらく暇潰しに行くとします」
アルメールは踵を返し、去っていった。
「いよいよ世界は真に進み出す。我らを葬り去る牙よ、黄金を得て、我が寝首を喰い千切れ」
奈野花は暗黒を見上げ、そう呟いた。
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