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三千世界・時諦(6)
第一話 「渾然一体」
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月詠の亡都アタラクシア
半分水没した超巨大空中要塞・アタラクシアの頂上に一行は着地し、ストラトスは竜化を解く。
「とりあえずヤスヒトは撒いたな」
「ええ、そのようね。あのコウとかいう子、あいつに食われたけど……」
千早がシエルの言葉に続く。
「生きてはいないでしょう。明らかにあの方は人間ではなく、アイスヴァルバロイドでしたし」
「だがもしアタラクシアの下層に行くようなことがあれば、間違いなくヤスヒトに襲われるだろうね」
ストラトスは辺りを見回す。
「しっかしデカい建物っすね。こんなの本当に空を飛ぶんすか?」
「もちろんさ。ウル・レコン・バスクとの戦いで気づかなかったかい?余りにも強力なシフルの波は、物理法則を自分の好きにねじ曲げられる。シフルの嵐で身を包めば、重力を無理矢理自分に従わせられる。そういうシステムで浮くのさ」
「なるほど……それで、肝心のヒカリはどこにいるんだ?」
シエルが頭を捻る。
「アタラクシアは確か、動力が最下層にあるんじゃなかったっけ。起動に必要な鍵は……空の器と、氷水」
グラナディアが頷く。
「杉原と零さんか。確かにシフルエネルギーの効率的励起にはぴったりだね。尤も、余りにも貴重品すぎるけど」
「だから、最下層にいるんじゃないかな。わざわざここに誘い込む必要が感じられないもの。今さら時間稼ぎなんて……」
ストラトスがシエルの言葉を遮る。
「いや。時間を稼ぐ理由ならあるだろ。アルバだ。アルバの力の解析が進んでいないのなら、俺たちをこの日本の目と鼻の先で止めたいだろ」
「でも、それだとどうしてアフリカにわざわざ誘い込んだの?」
「わかんねえ。まあいい、とりあえず下に……」
動き始めようとした一行の前に、レイジが立っていた。
「やあ、また会ったね」
「てめえは……アメリカん時の!」
「覚えていてくれて光栄だね。僕の名前はレイジ・フランメル。ヒカリの副官をしているよ。さてと、ヒカリが君をお待ちかねだ。こっちに来てくれ」
レイジは踵を返し、身近にあった階段を降りていく。
「仕方ねえか」
一行もそれについていく。アタラクシアの内部は暗く、傾いて浸水していた。
「白金蜂美は知ってるかな、少年」
レイジが前を歩きながら呼ぶ。
「一応な。新人類の血の大本になってる、白金零の母親だろ?」
「その通りさ。白金蜂美は非道な人でね、実の娘の持つ特異性に惑わされて、愚かにもその力で世界を従わせようとしたのさ」
「なあ、白金零って本当に何者なんだ?」
「これ以上無いほどのスーパーウーマンさ。それこそ単独で世界を塗り替えるほどの力を持っている。一説には、外宇宙から現れた神の一柱だの、宇宙の意思を体現した存在だの言われているが……まあ、一つ言えるのは、彼女の前に立っても、対等に渡り合えるものなんて、それこそ万物の霊長くらいだろうよ」
「それも気になる。どうして万物の霊長と言われるほどに強力だった黒崎奈野花は死んだんだ?」
「我がお……あの方は気まぐれでな。ある時から音信が一切無くなった。公式には死んだとなっているが、まあ実際には行方不明だな」
「じゃあどこかにはいるってことか」
「まあ、どこかにはいるだろう。例えば、中国の山奥、桃源郷の奥深くとかに、ね」
ストラトスはレイジの言っている言葉の意味がわからず、千早はその発言に多少イラッとしていた。
「よし、ここだよ」
レイジは大扉を押し開けると、崩壊した巨大な広間にヒカリが立っていた。
「ヒカリ、連れてきたよ」
レイジの声に、ヒカリは黙って頷き、右手を上げる。
アタラクシア・最下層
壁を食い破り、ヤスヒトが激流と共に内部へ入る。そして中央の制御装置に突進し、自らシフルエネルギーとなって消滅する。
月詠の亡都アタラクシア
ヒカリが腕を上げると、突然地鳴りが起こる。
「何が起こってんだ!?」
ストラトスが叫び、それにシエルが続く。
「上がってるわ!」
アタラクシアは展開しつつ上昇を続け、やがて広間には太陽の光が差し込んでくる。
「星は天高く、黒は更に高く。宇宙を満たす漆黒の闇こそが世界の真理だというのなら、私はその闇を暴く光となる」
大量の水が上昇するアタラクシアから流れ落ちていく。
「なあ」
ストラトスがヒカリと視線を交える。
「思うんだけどさ、あんたが思ってる未来と、シフルが思ってる未来って、違うんじゃないのか」
「何?」
「四皇聖って新人類の未来を考えてるんだろ。でも、シフルはそれよりももっと大きな野望のために動いてるんじゃ」
「だから何だと言うのだ。それで新人類が救われるなら、何も間違いではない」
ストラトスはふっと笑う。
「ああ、そうだな。自分が思う正しいことが、自分にとっての、最も正しいこと。あんたはそういう意味では、俺たち旧人類と似たようなものなのかもな」
「勝手にほざいていろ。貴様はここで死ぬ」
崩壊した広間の後ろから、赤い飛行物体が現れ、空中で分解され、ヒカリに次々と装備されていく。
「完全なる未来のためならば、あらゆる犠牲が許される。そう、旧人類が繰り広げてきた、何千万という時間の中で無意味に死んだものたちよりも、余程有益な犠牲であるからな」
「そうだとしても、俺はそれに抗う。誰かの利益なんて興味ない。俺は、俺の選んだ道を進む」
「ほざけ、蜥蜴風情が」
ヒカリの生身は追加ユニットで見えなくなり、代わりに装甲から閃光が漏れ出ている。
「行くぜ、決着だ」
ストラトスは竜化する。牽制に背中の棘から軽く気弾を放ち、ヒカリは異様に巨大な右腕でそれを防ぎ、広間を破壊せんばかりに振り回す。ストラトスは闘気を棘から噴出させて回避し、頭上から気弾を放つ。ヒカリは常軌を逸した反応速度で右腕を構え直し、気弾を防いでタックルでストラトスを広間から突き出す。
「おや、ここでは見えなくなったな。では我々は屋上へ行きましょうか」
レイジが大広間から出ていき、残った三人もそれに従う。
洋上
ヒカリが右腕から凄絶な閃光を放ち、極大の熱線が大気を引き裂き雲を突き抜け、宇宙へ消えていく。ストラトスはそれを躱し、複数の棘から闘気の光線を放つと、ヒカリは右腕でそれを防ぐ。
「餓鬼が!」
ヒカリは文字通りの光速で接近し、強烈な右腕の一撃を叩き込む。ストラトスはタイムエンジンの緑の輝きを放ち、背後の力場を緩めて衝撃を和らげ、その時間の壁を踏み台にして体勢を立て直す。
「餓鬼じゃないと見えない世界もあるだろ?」
棘を前腕に装着し、右の拳を放つ。ヒカリは右腕を盾にし、左腕で軽く反撃をする。ストラトスはそれを宙返りで避け、そこにヒカリが右腕の渾身の一撃を叩き込む。ストラトスはその衝撃を時間の壁で受け止め、反撃しようとするも、ヒカリの右腕に握りしめられ、そして投げ飛ばされる。ヒカリは光速で追撃し、ストラトスは闘気のブースターを使って急降下し、そのまま海面スレスレを加速して位置を戻す。
「一つ問おう、旧人類。なぜ我々のすべきことを邪魔する?Chaos社の行うことは、全てが正義だ。人間にとっての正解だ」
「そう思ってる限り、永遠に気付けないんじゃないか?俺は、正義は一つじゃないって思うぜ」
「自分からはなにもしないくせに、与えられたものには文句を言う。そんな人間のゴミクズ共が跋扈していたからこそ、今のこの世界の形は存在してしまった。正解はこれ以外に存在しない。旧人類は人類の繁栄のために滅び、新人類は人類のために粉骨砕身で貢献し続ける」
「あんたに何があってそういう考え方なのかはわからない。でも、俺個人としちゃ、あんたのその考えを認めるわけにはいかない!」
ストラトスが棘に渾身の力を込め、全力の砲撃を放つ。ヒカリは右腕から閃光の盾を作り出し、それを受ける。凄まじい大爆発が起こり、海面が激しく波打つ。煙が消えると、そこには傷一つ無いヒカリがいた。
「一朝一夕の努力で覆せると思ったか、餓鬼め」
「まだ全然、これからだぜ?」
ヒカリの光速の攻撃をストラトスは食らってから時間操作で衝撃を緩和し、反撃に至近距離で砲撃する。が、右腕に防がれ、続く右腕の刺突へ、ストラトスは無謀とは思いつつも右腕で迎え撃つ。今まで感じたことがないほどの重い一撃を受けて、反射的な痛みを感じる。だがその程度ではストラトスは止まらず、棘を全て収納し、分散していた力の全てを右腕に込める。
「舐めるなァ!」
ヒカリの咆哮に、ストラトスも雄叫びを上げる。
「ウォォォォォォォッ!!!」
ヒカリの右腕を押し退け、ストラトスは最初の竜化体に戻り、時間の壁を蹴って加速し、ヒカリの腹へ強烈な拳を叩き込んですれ違う。ヒカリの腹部装甲が砕け、アタラクシアの頂上に落下する。
月詠の亡都アタラクシア
ストラトスが着地すると、ヒカリが膝を折っていた。
「あーらら、負けたようだな」
レイジがヒカリへ駆け寄る。だが、ヒカリは左腕でレイジを突き飛ばす。
「まだだ!私がこんなところで負けてたまるか!」
レイジはすぐに駆け寄り、耳許で告げる。
「待て。シフル様から装置が起動したとの報告が入った。君もあれを動かす動力にならねばならんだろ?」
それを聞いて、ヒカリは深呼吸する。
「っと、少年。ここは君の勝ちさ。お見事だ」
レイジは懐から簡易テレポーターを起動させ、その場から去る。ストラトスは竜化を解き、三人へ駆け寄る。
「よく勝ったわね、ストラトス」
シエルがそう言うと、千早も続く。
「四皇聖を単独で討ち取るとは、素晴らしい戦果です」
ストラトスは照れ臭そうに後頭部を掻く。それもほどほどにし、ストラトスは話題を切り出す。
「ここからどうやって福岡まで行けば?」
グラナディアが答える。
「簡単なことさ。ここのエネルギーを使って虚空の森林までワープする。こっちに来るんだ」
三人はグラナディアに従い、アタラクシアの中を進んでいく。
半分水没した超巨大空中要塞・アタラクシアの頂上に一行は着地し、ストラトスは竜化を解く。
「とりあえずヤスヒトは撒いたな」
「ええ、そのようね。あのコウとかいう子、あいつに食われたけど……」
千早がシエルの言葉に続く。
「生きてはいないでしょう。明らかにあの方は人間ではなく、アイスヴァルバロイドでしたし」
「だがもしアタラクシアの下層に行くようなことがあれば、間違いなくヤスヒトに襲われるだろうね」
ストラトスは辺りを見回す。
「しっかしデカい建物っすね。こんなの本当に空を飛ぶんすか?」
「もちろんさ。ウル・レコン・バスクとの戦いで気づかなかったかい?余りにも強力なシフルの波は、物理法則を自分の好きにねじ曲げられる。シフルの嵐で身を包めば、重力を無理矢理自分に従わせられる。そういうシステムで浮くのさ」
「なるほど……それで、肝心のヒカリはどこにいるんだ?」
シエルが頭を捻る。
「アタラクシアは確か、動力が最下層にあるんじゃなかったっけ。起動に必要な鍵は……空の器と、氷水」
グラナディアが頷く。
「杉原と零さんか。確かにシフルエネルギーの効率的励起にはぴったりだね。尤も、余りにも貴重品すぎるけど」
「だから、最下層にいるんじゃないかな。わざわざここに誘い込む必要が感じられないもの。今さら時間稼ぎなんて……」
ストラトスがシエルの言葉を遮る。
「いや。時間を稼ぐ理由ならあるだろ。アルバだ。アルバの力の解析が進んでいないのなら、俺たちをこの日本の目と鼻の先で止めたいだろ」
「でも、それだとどうしてアフリカにわざわざ誘い込んだの?」
「わかんねえ。まあいい、とりあえず下に……」
動き始めようとした一行の前に、レイジが立っていた。
「やあ、また会ったね」
「てめえは……アメリカん時の!」
「覚えていてくれて光栄だね。僕の名前はレイジ・フランメル。ヒカリの副官をしているよ。さてと、ヒカリが君をお待ちかねだ。こっちに来てくれ」
レイジは踵を返し、身近にあった階段を降りていく。
「仕方ねえか」
一行もそれについていく。アタラクシアの内部は暗く、傾いて浸水していた。
「白金蜂美は知ってるかな、少年」
レイジが前を歩きながら呼ぶ。
「一応な。新人類の血の大本になってる、白金零の母親だろ?」
「その通りさ。白金蜂美は非道な人でね、実の娘の持つ特異性に惑わされて、愚かにもその力で世界を従わせようとしたのさ」
「なあ、白金零って本当に何者なんだ?」
「これ以上無いほどのスーパーウーマンさ。それこそ単独で世界を塗り替えるほどの力を持っている。一説には、外宇宙から現れた神の一柱だの、宇宙の意思を体現した存在だの言われているが……まあ、一つ言えるのは、彼女の前に立っても、対等に渡り合えるものなんて、それこそ万物の霊長くらいだろうよ」
「それも気になる。どうして万物の霊長と言われるほどに強力だった黒崎奈野花は死んだんだ?」
「我がお……あの方は気まぐれでな。ある時から音信が一切無くなった。公式には死んだとなっているが、まあ実際には行方不明だな」
「じゃあどこかにはいるってことか」
「まあ、どこかにはいるだろう。例えば、中国の山奥、桃源郷の奥深くとかに、ね」
ストラトスはレイジの言っている言葉の意味がわからず、千早はその発言に多少イラッとしていた。
「よし、ここだよ」
レイジは大扉を押し開けると、崩壊した巨大な広間にヒカリが立っていた。
「ヒカリ、連れてきたよ」
レイジの声に、ヒカリは黙って頷き、右手を上げる。
アタラクシア・最下層
壁を食い破り、ヤスヒトが激流と共に内部へ入る。そして中央の制御装置に突進し、自らシフルエネルギーとなって消滅する。
月詠の亡都アタラクシア
ヒカリが腕を上げると、突然地鳴りが起こる。
「何が起こってんだ!?」
ストラトスが叫び、それにシエルが続く。
「上がってるわ!」
アタラクシアは展開しつつ上昇を続け、やがて広間には太陽の光が差し込んでくる。
「星は天高く、黒は更に高く。宇宙を満たす漆黒の闇こそが世界の真理だというのなら、私はその闇を暴く光となる」
大量の水が上昇するアタラクシアから流れ落ちていく。
「なあ」
ストラトスがヒカリと視線を交える。
「思うんだけどさ、あんたが思ってる未来と、シフルが思ってる未来って、違うんじゃないのか」
「何?」
「四皇聖って新人類の未来を考えてるんだろ。でも、シフルはそれよりももっと大きな野望のために動いてるんじゃ」
「だから何だと言うのだ。それで新人類が救われるなら、何も間違いではない」
ストラトスはふっと笑う。
「ああ、そうだな。自分が思う正しいことが、自分にとっての、最も正しいこと。あんたはそういう意味では、俺たち旧人類と似たようなものなのかもな」
「勝手にほざいていろ。貴様はここで死ぬ」
崩壊した広間の後ろから、赤い飛行物体が現れ、空中で分解され、ヒカリに次々と装備されていく。
「完全なる未来のためならば、あらゆる犠牲が許される。そう、旧人類が繰り広げてきた、何千万という時間の中で無意味に死んだものたちよりも、余程有益な犠牲であるからな」
「そうだとしても、俺はそれに抗う。誰かの利益なんて興味ない。俺は、俺の選んだ道を進む」
「ほざけ、蜥蜴風情が」
ヒカリの生身は追加ユニットで見えなくなり、代わりに装甲から閃光が漏れ出ている。
「行くぜ、決着だ」
ストラトスは竜化する。牽制に背中の棘から軽く気弾を放ち、ヒカリは異様に巨大な右腕でそれを防ぎ、広間を破壊せんばかりに振り回す。ストラトスは闘気を棘から噴出させて回避し、頭上から気弾を放つ。ヒカリは常軌を逸した反応速度で右腕を構え直し、気弾を防いでタックルでストラトスを広間から突き出す。
「おや、ここでは見えなくなったな。では我々は屋上へ行きましょうか」
レイジが大広間から出ていき、残った三人もそれに従う。
洋上
ヒカリが右腕から凄絶な閃光を放ち、極大の熱線が大気を引き裂き雲を突き抜け、宇宙へ消えていく。ストラトスはそれを躱し、複数の棘から闘気の光線を放つと、ヒカリは右腕でそれを防ぐ。
「餓鬼が!」
ヒカリは文字通りの光速で接近し、強烈な右腕の一撃を叩き込む。ストラトスはタイムエンジンの緑の輝きを放ち、背後の力場を緩めて衝撃を和らげ、その時間の壁を踏み台にして体勢を立て直す。
「餓鬼じゃないと見えない世界もあるだろ?」
棘を前腕に装着し、右の拳を放つ。ヒカリは右腕を盾にし、左腕で軽く反撃をする。ストラトスはそれを宙返りで避け、そこにヒカリが右腕の渾身の一撃を叩き込む。ストラトスはその衝撃を時間の壁で受け止め、反撃しようとするも、ヒカリの右腕に握りしめられ、そして投げ飛ばされる。ヒカリは光速で追撃し、ストラトスは闘気のブースターを使って急降下し、そのまま海面スレスレを加速して位置を戻す。
「一つ問おう、旧人類。なぜ我々のすべきことを邪魔する?Chaos社の行うことは、全てが正義だ。人間にとっての正解だ」
「そう思ってる限り、永遠に気付けないんじゃないか?俺は、正義は一つじゃないって思うぜ」
「自分からはなにもしないくせに、与えられたものには文句を言う。そんな人間のゴミクズ共が跋扈していたからこそ、今のこの世界の形は存在してしまった。正解はこれ以外に存在しない。旧人類は人類の繁栄のために滅び、新人類は人類のために粉骨砕身で貢献し続ける」
「あんたに何があってそういう考え方なのかはわからない。でも、俺個人としちゃ、あんたのその考えを認めるわけにはいかない!」
ストラトスが棘に渾身の力を込め、全力の砲撃を放つ。ヒカリは右腕から閃光の盾を作り出し、それを受ける。凄まじい大爆発が起こり、海面が激しく波打つ。煙が消えると、そこには傷一つ無いヒカリがいた。
「一朝一夕の努力で覆せると思ったか、餓鬼め」
「まだ全然、これからだぜ?」
ヒカリの光速の攻撃をストラトスは食らってから時間操作で衝撃を緩和し、反撃に至近距離で砲撃する。が、右腕に防がれ、続く右腕の刺突へ、ストラトスは無謀とは思いつつも右腕で迎え撃つ。今まで感じたことがないほどの重い一撃を受けて、反射的な痛みを感じる。だがその程度ではストラトスは止まらず、棘を全て収納し、分散していた力の全てを右腕に込める。
「舐めるなァ!」
ヒカリの咆哮に、ストラトスも雄叫びを上げる。
「ウォォォォォォォッ!!!」
ヒカリの右腕を押し退け、ストラトスは最初の竜化体に戻り、時間の壁を蹴って加速し、ヒカリの腹へ強烈な拳を叩き込んですれ違う。ヒカリの腹部装甲が砕け、アタラクシアの頂上に落下する。
月詠の亡都アタラクシア
ストラトスが着地すると、ヒカリが膝を折っていた。
「あーらら、負けたようだな」
レイジがヒカリへ駆け寄る。だが、ヒカリは左腕でレイジを突き飛ばす。
「まだだ!私がこんなところで負けてたまるか!」
レイジはすぐに駆け寄り、耳許で告げる。
「待て。シフル様から装置が起動したとの報告が入った。君もあれを動かす動力にならねばならんだろ?」
それを聞いて、ヒカリは深呼吸する。
「っと、少年。ここは君の勝ちさ。お見事だ」
レイジは懐から簡易テレポーターを起動させ、その場から去る。ストラトスは竜化を解き、三人へ駆け寄る。
「よく勝ったわね、ストラトス」
シエルがそう言うと、千早も続く。
「四皇聖を単独で討ち取るとは、素晴らしい戦果です」
ストラトスは照れ臭そうに後頭部を掻く。それもほどほどにし、ストラトスは話題を切り出す。
「ここからどうやって福岡まで行けば?」
グラナディアが答える。
「簡単なことさ。ここのエネルギーを使って虚空の森林までワープする。こっちに来るんだ」
三人はグラナディアに従い、アタラクシアの中を進んでいく。
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