好きになってもいいですか?

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自然の祝福

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桜は好き好きに咲き乱れているだけなのに、人は桜に祝われているような錯覚に陥る。


買ってもらってばかりの自転車に乗り、初めてちゃんと着たブレザーの可動域の狭さにいらだちを覚える。
高校1年
その始まりの日。

地面に好きに寝転ぶピンクのそれを、タイヤに巻き込みながら、慣れない手つきで自転車を止め、人生二回目の大きな校門をくぐる。
入ってすぐの壁にあるデカデカとした時計を見ると予定時刻の1時間前を指していた。
遅刻が恐ろしくて、早く出てきたはいいものの、見渡す限り新入生の姿は見当たらない。
これから親や友人と連れ立って、新入生が続々入ってくるだろう。その度に自分はビクビク怯え無くてはならない。
だが、遅れて着いて自分の行動を多くの人に見られるのはもっと耐えられない……




ああ、春を異常に美化している人間が恨めしい。
新しい人間と多く接するという事は、それだけ多くの人間に見限られるという事。
小中と植え付けられたトラウマは、出会う人間全てが自分に失望する一個体だと認識せざる負えないほど恐ろしくこびりついていた。



「それじゃぁ、一人一人自己紹介しようか」
1年間担任となる男は、自分の挨拶もそこそこに初日の行事を丁寧に進行し始めた。
俺は自分の爆発しそうになる心臓を落ち着けるのでいっぱいいっぱいだが、自分の番がいつやって来るのかの注意も怠るわけにはいかない。

一江 冬至いちえ とうじ。趣味はーーカラオケとか?」
ヤンキー風クラスメイトの自己紹介は気だるげで、なんの特徴も無かったが、そのスラとした高い身長と綺麗な顔立ちは男の俺でさえ見とれてしまう程だった。
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