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~ドグマ大陸の争乱篇~

~皇国レミアム争乱編~ 読心

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 神聖ザカルデウィス帝国、インペリウス大陸全土を領地にしている、コル・カロリにおいて最古・最大・最強の超大国。他の国を技術で遠く突き放し、それは数万年先の未来を現実のものとしていた。戦艦、車、魔導巨神という戦力はもちろんだが、特筆すべきは五人の将軍と五体の竜王が指揮している五大竜騎士団である。その騎士団のひとつでも動けば、その絶望的な力で国という国を滅ぼせるのだ。そのうちの一つの青竜騎士団が、ドグマ大陸に攻め込む準備を着実に進めていた。ドグマ大陸を永久焦土にするべく、旗艦型の戦艦を運用する事も視野に入れていた。その旗艦型の戦艦は約二千メートルの超大型の戦艦である。直接的な攻撃力は他の戦艦と比べて絶大で、それだけでも脅威であったが、それと同時に青竜騎士団を動かすのだ。地上には魔導巨神を配置して破壊の限りを尽くすつもりであった。その役目を果たすのは、青竜騎士団の団長にして、神聖ザカルデウィス帝国将軍、ザーバッハ・ミシェル・アイゼン。アイゼンは、神聖ザカルデウィス帝国の元帥ギルバートの勅諚によって動いていた。エギュレイェル公国よりも皇国レミアムに目標としたのは、復活してからまだ間もないからであった。時代遅れなドグマ大陸は潰すのは簡単だと思っていたのである。覇界に住まう竜王の勢力が、ドグマ大陸に襲い掛かる。それも神聖ザカルデウィス帝国の最新技術をふんだんに盛り込んだ兵器を繰り出して、天と地から挟撃するのだ。アイゼンは、皇国レミアムと戦えるのを楽しみにしていた。それよりも先に、ドグマ大陸を火の海にして、血の沼を完成させる事についても楽しみであった。アイゼンは戦闘狂であった。神聖ザカルデウィス帝国の将軍になったのも同じ理由である。闘争を楽しみにしているからであった。忠誠心とは程遠い心の持ち主で、神聖ザカルデウィス帝国に誓いを立てたのではなく、神聖ザカルデウィス帝国の力に屈服したから、将軍になったのであった。しかし、このアイゼンは国民からの人気が高かった。凄まじい威厳に隠されているのは、戦闘に狂っている異常な本性であった。しかし、神聖ザカルデウィス帝国は鎖国していたので、国外からは認知されていなかった。なのでドグマ大陸に来ても、それが神聖ザカルデウィス帝国の将軍である事を知っている者は皆無であった。それは好都合で、油断している者から皆殺しにする事も可能であった。何もかもが、ドグマ大陸にとって不利であった。一方、皇国レミアムでは予見の日をあと一日という事で、これまで以上に大陸の端々を警戒していた。上級魔神はドグマ大陸を覆うように結界を張り、幾重にも防御壁を作った。

 有り得ない事が起ころうとしていた。ドグマ大陸はこれまで以上の力を手にしていたが、それと同時にこれまで以上の危機に瀕していた。結界を張ったのはいい、しかし、これも付け焼刃だろう。鍵となるのは、敵本陣を叩けるだけの戦力を、制空権が握られる前に構築する事である。それができなくても、本陣には強襲をかけないと、負けるのはドグマ大陸の陣営である。いかにして叩くか、その鍵を握っているのはゼイフォゾンたちが強奪してきた旗艦型の戦艦であった。技術の解析は進んでいなかったが、明らかに時代を超越した技術が使われているのは明白であった。軍師メルアーラは皇国レミアムの錬金術を創始した張本人であり、全ての錬金術師の頂点に君臨する男であった。錬金術の奥義、ラーメメントに覚醒している唯一無二の男であり、錬金学において神と言われている。その男にゼイフォゾンは自身が集めた情報と技術の詳細を提供していた。流石は軍師メルアーラである、彼はそれを瞬時に理解した。だが、仕組みを理解するのは無理であった。だが、錬金術とは魔力を用いて物質と物質を掛け合わせ、更に優秀な物質を創造する事が可能な技術である。動いている物質が魔力に由来するものであれば、それに反応して勝手に魔力同士が解析を始めて、結合し、全く新しい物質が誕生するので、問題はないように思えた。しかし問題は実際にはあった。錬金術の成功確率は素人で五分、玄人で七分、軍師メルアーラで十分という事で、軍師メルアーラ自身は問題はなかったが、これほど大型の物質を錬金術に当てはめようとすれば、他の錬金術師たちを総動員しなければいけない。成功確率は低かった。それも、旗艦型の戦艦と掛け合わせる物質は、世界最高の硬度を誇る金属のガドラムとゼイフォゾンの神剣エデンズフューリーの極小の欠片である。神剣エデンズフューリーの刀身は、原理の力という物質で構成されている事が分かった。原理の力とは、星の終末である超新星爆発の際に生じるエネルギーから抽出した反粒子を空間内に発生している物質と対消滅させる事で生成されたエネルギーである。この幻のエネルギーは、古代の錬金学で初めて提唱されたが、ゼイフォゾンが神剣エデンズフューリーを顕現させるまで確認される事はなかった。この原理の力は、星ひとつのエネルギーをマイクロメートル四方の粒だけで、約一万年まかなえる。神剣エデンズフューリーの極小の欠片は一センチ四方の欠片なので、そのエネルギーの総量は果てしないものとなった。ガドラムと原理の力、戦艦を組み合わせて、新たな箱舟を作るのだ。

 軍師メルアーラは早速、錬金学の権威たちと巨大な錬成陣を描き、錬金術の奥義であるラーメメントの境地を最大限に使い、錬金術を開始した。原理の力がどこまでの効果を及ぼすのかは未知数であったが、この錬金術の規模から察するに、半日はかかると予想された。そして、その箱舟が出来上がった時に搭乗する人員を選定するべく、軍議が行われた。ゼイフォゾンを筆頭として、候補には、総帥ゼウレアーとエミリエル、そしてラーディアウスが出てきた。ゼイフォゾンは自身のソード・オブ・オーダーとしての権限を使い、ラーディアウスとゼハート、アルティス、サリエッタには国の防衛に当たらせ、箱舟には総帥ゼウレアーとエミリエルを乗せる事を望んだ。それを了承した帝王ゴーデリウス一世は、ゲイオス王国とシュテーム連邦王国に通達を出し、国の防衛に務め、叩ける時は全力で叩けるようにと伝えた。時間があまりない中、皇国レミアムをはじめとするドグマ大陸の国々は、やれる事を精一杯やっていた。ハーティー共和国とティア王国は戦争には参加しないと意地を張っていたが、それらは無視して構わないと、帝王ゴーデリウス一世は決めていた。自分たちだけが楽をして助かろうとしている国の事など、その将来の事など、どうでもいい。緊張感と圧迫感が充満する中、ゲイオス王国の将軍ガトランは、皇国レミアムに出向き、戦争に用いる軍略などを聞くべく、軍議にも参加していた。ゼイフォゾンとも会い、互いの戦力の均等な割り振りなどを協議していた。ゲイオス王国の将軍ゼイオンは、盟友であり戦友であるゼハートをゲイオス王国の防衛に呼び、シュテーム連邦王国の将軍レグレスは皇国レミアムに最上級魔神を数人欲しいと要請した。準備は着々と進むが、向こうは侵攻してきて、ドグマ大陸が後手後手に回ってしまうのは、仕方のないものだった。予見の日は正確で、準備は整えた。しかし、防衛戦になるのは明らかに神聖ザカルデウィス帝国の戦力を甘く見積もっていたからである。軍団の総数も圧倒的だろう、もしゼイフォゾンたちの遠征がなかったら、どうなっていたか。考えるだけでも恐ろしい、いや、ゼイフォゾンがそものも存在していなかったらどうなっていただろう。戦端を開かれた瞬間から敗北していた可能性が高い。

 神聖ザカルデウィス帝国の将軍アイゼンは、自ら白き竜王ズフタフに跨り、飛翔し、自らの艦隊を指揮してドグマ大陸に向っていた。神聖ザカルデウィス帝国では将軍はドラゴンロードと呼ばれ、それに追従するのはドラゴンナイトと呼ばれ、竜を自在に操るのだ。竜の力は、他のどのような魔族であっても手を焼き、人類であっても生半可な戦い方をすれば命を落とす。それだけでない、最上級魔神であっても、邪神であっても竜を相手にするのは避けたいと思うのが自然なくらいには、竜とは強力な種族なのだ。それを支配する竜王は、まさに敵にしてみれば絶望的な強さを誇っている。竜とは、もしかしたら最強の種族なのかも知れないと言う学者までいる。それに加えて、あの圧倒的な技術で構成された軍団である。ドグマ大陸が何もしなければ、瞬く間に地獄絵図となるのは明白であった。竜王ズフタフの神々しさは他を圧倒しており、それだけでなく、それに乗る将軍アイゼンからは独特な闘気を放つ強大な男であった。今まさに青竜騎士団そのものが、ドグマ大陸を目指す。神聖ザカルデウィス帝国の世界統一に向けて。元帥ギルバートの勅諚に従って動いている。ドグマ大陸の空から、その影が見えるようになってきた。純白と黄金に彩られた青竜騎士団の影が。その先頭を飛ぶのが将軍アイゼンである。完全な制空権を握るべく、深い場所まで行って上陸してくる事は、ドグマ大陸の将軍たちは軍議によって把握していた。


「いよいよ来たな……出鱈目な戦力を引っさげて。このままだとアリアドネの広陵にまで陣営を敷かれるかも知れんぞ。そうなったら、皇国レミアムの領土だけではない、他国の領土にも陣営を広げられる可能性がある。早くあの戦艦は生まれ変わらないのか?」

「ガトラン、焦るな。あの軍はドグマ大陸を領土にしたいのであって、地図から消したいわけではない。連中はそこまで馬鹿な真似はしないだろう。まずは結界の強度を信じよう。数多の上級魔神が幾重にも張った結界だ。こちらも生半可な戦力ではないという事を知るであろう。しかし、あの先頭にいるひときわ巨大な竜は、恐らくは竜王と呼ばれる類いの存在だ。油断していると、この結界も信用できなくなる。そうなった時は決戦だ。私とゼウレアー、エミリーがあの戦艦に乗るまで耐える必要がある」

「まさかハーティー共和国でお前と出会って、こんな戦争に一緒になって戦うとは思わなかった。だが、これだけは約束しよう。共に戦い、生きて帰ろう。生きていれば、神聖ザカルデウィス帝国に復讐する事もできるだろう。俺はそう思っている」

「無論だ。お互いの生還を勝ち取るべく戦うのだ。この侵攻、この戦争のつけは支払わせるつもりだ。私も復讐を誓うとしよう」

「なんじゃ……妾も話には入れてくれんのかえ?」

「姫様、何故外に出られたのです?」

「将軍だからじゃ。それに妾を姫と呼ぶでない、ガトラン。妾とゼイフォゾンは友であろう?ならばそのように接してくれると助かる。それとも……まだ妾との夜が忘れられないのかえ?」

「ほう、やはりあの晩……」

「言うな、ゼイフォゾン。今の俺にはレイがいる。ここでそんな話をするのはやめよう」

「そうだな。すまない」

「男というものは、そういう友情で結ばれるのじゃな。妾は傍から見ていて面白いぞ」

「私たちに足りないものとすれば、緊張感と言ったところか……」

「さて、俺たちは時間稼ぎしかできないと思うが、配置につくか。ゼイフォゾン、エミリー!また会おう!」

「また会おう!ガトラン!」

「我々の軍略が、あの不可思議な軍団にどれだけ通じるか。試してみる価値はありそうじゃな」


 空は奇妙なほど晴れていた。青竜騎士団の神々しさがますます強調されるかのように、影の背後から太陽が鎮座しているように思えた。灼熱の彼方、影は大きく、そしてゆっくりと近付いてきた。凄まじい力を、とんでもない力を保有している軍団が容赦なく迫る。そして、影がピタリと止まった場所から、魔力の奔流が結界を叩いた。いや、これは魔力の奔流ではなく、魔力を使った純粋な破壊エネルギーの砲撃である事が、ゼイフォゾンには分かった。これは二千メートルの旗艦型の戦艦から放たれているのであった。その威力は結界を軽々と砕いていき、幾重にも重ねられた結界の最後の一枚にも威力は及び、ヒビが入っていった。この砲撃は止む事なく、放たれ続けていた。その影響か、結界を張っていた上級魔神が魔力を込めて更に分厚くしていった。魔術による防御と魔力による破壊エネルギーの砲撃のぶつかり合いはまさに、家に大雨が叩きつけるかのような様相を呈していた。いや、それ以上かも知れない。円の盾があったらそれに向って大量の矢が突き刺さっていくような様相を呈している…と表現した方が正しい。殺戮の魔力と守護する魔力がぶつかり合う。その景色は前哨戦にしては激しいものであった。しかし、その前哨戦には限界があった。やはり破壊エネルギーの砲撃が勝った。出力を手動で変えられるらしく、威力が不自然なまでに上がっていくのが、上級魔神たちには理解ができた。結界が完全に破壊され、それを確認した青竜騎士団の軍勢が更にドグマ大陸に向って迫ってくるのが分かった。各地に警戒態勢を取っていた上級魔神たちが、次元転移魔術で部隊ごと転移して皇国レミアムに集まってきた。一陣は破られた、そういう報告をした。それを聞いた総帥ゼウレアーは、ガーランドの峡谷に集まっているサリエッタの軍に伝令を出した。サリエッタが率いるのは魔術師団で、敵の戦艦を真下から狙い撃ちできる場所に陣取っていた。狙い通り、このガーランドの峡谷の上空を突き抜けていく針路を取った。サリエッタは、自身の得物の魔導書ヨグ・ソト・ホートを開いた。そしてある禁断の術を展開した。それは、ヨグ・ソト・ホートのみが行使できる召喚魔術であった。外の神々、外の支配者と呼ばれるおぞましい者たちがこの世に現れるという恐怖の召喚魔術である。他の神々とは違い、異形だが、神々・支配者と呼ばれるに相応しい強大な力を保有している。

 神聖ザカルデウィス帝国の艦隊がドグマ大陸に侵入してきた。そしてすぐにガーランドの峡谷に侵入してきた。サリエッタと外の神々、支配者、魔術師団が一斉に攻撃魔術を放つ。真下からの魔力による攻撃を予期していなかったようで、まともに食らっていた。それを見過ごさなかったのがドラゴンナイトの軍勢であった。その軍勢は真下にいるサリエッタと魔術師団に攻撃を仕掛けてきた。それに対抗したのが、サリエッタが召喚した外の神々と支配者である。それの筆頭であるナイアルラトホテップが竜を相手に優勢な状況に持ち込み、ここに竜騎士と正真正銘の化け物同士がぶつかった。戦力が分散していく状況は好ましくないと踏んだ将軍アイゼンは、降ろした部隊に相手させるように命じた後、強引に戦艦を前へと進ませた。食い込んでいく艦隊はアリアドネの広陵の先端に上陸した。その中から、車に乗った神聖ザカルデウィス帝国の正規軍と多数の魔導巨神であった。その空にはドラゴンナイトが飛翔しており、その先頭にドラゴンロードの将軍アイゼンが滞空していた。遂に陣取ったのだ。地上と空から同時に攻める準備が完了していた。アリアドネの広陵に陣取っていたガトランとアルティス、ゼハートとゼイオンが直接指揮する軍が待ち構えてもいた。両者が陣形を整えた。そして睨み合いが始まった。そして、ガトランが雄叫びを上げると、戦端が切り開かれた。正面衝突であった。しかし、魔導巨神の戦闘能力は凄まじく、小さな兵士たちは踏み潰されたり、薙ぎ倒されたりした。そして、魔導巨神から熱線が放たれた。その熱線は皇国レミアムとゲイオス王国の同盟軍の陣形を瞬く間に崩し、空からドラゴンナイトの攻撃が止まる事はなく、言葉の通り、天と地からの挟撃によって状況は悪くなる一方であった。戦艦からはとめどなく兵たちが出てきて、数の面でも負けていた。しかし、ここで諦めるガトランではなかった。食い込まれた分、神聖ザカルデウィス帝国の軍勢の陣形が細く長くなっている事を確認した後、本陣に近い場所に陣取っていた伏兵に合図を出した。ラーディアウスとオーバーナイツの部隊である。剣神ラーディアウスと百三十二名の剣聖による鮮やかなヒット&アウェイは魔導巨神の小回りのなさを正確に突っつき、見事に神聖ザカルデウィス帝国の軍勢をバラバラにする事ができた。

 神聖ザカルデウィス帝国軍の本陣まではまだまだ遠かった。それだけでなく、将軍アイゼンは簡単に本陣から離れるわけにはいかなかった。だが、そこから指示を出している以上、神聖ザカルデウィス帝国軍がいかようにされようが、巻き返す順番さえ間違えなければいつだって皇国レミアムに直接攻撃できる準備が整っていた。切り札をまだ出してこない神聖ザカルデウィス帝国の軍勢に不安を覚えたアルティスは、ガトランの軍略に乗るというよりも、単独で暴れまわり、確実な陽動をして神聖ザカルデウィス帝国の軍勢そのものをかき回そうとしていた。所々で統率の取れていない兵たちがアルティスによって蹴散らされていくのが、見ていれば分かった。ガトランはいつ、どんな事が起こっても、この一見統率の取れていない同盟軍でも必ず歯車が噛み合う時が来ると確信していた。味方にいるのは皇国レミアム最強の将軍たちである。その力をよく信頼してこそである。後は、軍師メルアーラの錬成が完了し、箱舟が完成し、ゼイフォゾンと総帥ゼウレアー、エミリエル将軍が本陣に強襲していくのを待っていればいい。

 軍略の読み合いはまだ続くように思えた。だが、魔導巨神は戦艦の中にまだまだ残っていた。上陸させた場所から戦艦の砲撃を浴びせてもいい。それをやらないのは、将軍アイゼンはドグマ大陸の戦力を甘く見積もっていた。余裕綽々、傲慢であった。その慢心の隙をどう突けるかが、ドグマ大陸の戦力にかかっていた。それがどこまで続き、ゼイフォゾンたちの強襲部隊が出ていくまで持つかどうか。この戦況は、どうひっくり返ってもおかしくなかった。戦術的な勝利はドグマ大陸が掴んだと言ってもいいが、戦略は戦艦が双方にある以上、どうなってもおかしくない。神聖ザカルデウィス帝国はいつでもドグマ大陸の軍勢を焼けると信じ込んでいるようだが、それは間違えであると確信させるには、ゼイフォゾンたちが本陣に強襲を仕掛けることでしか果たせない。戦力的にも、技術的にも劣っている皇国レミアムをはじめとする国々は、どこまで相手を油断させるかを考えていた。もちろん、戦力として投入されている者は全力で戦っている。それは否定できない、それでも神聖ザカルデウィス帝国は諦めない。この戦いの雌雄を決するのは、そう遠くない未来であろう。

 だが、この戦いは誰かが死ななければ終われないものであった。誰かが、大きな犠牲を払わなければ終われないものであった。
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