世界異世界転移

多門@21

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バステリア編

バステリアの終焉③

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『This is Red 1 sir. I’ll bombing run and I need specify coordination』

「To bomb point temporary code 367195 over」

『 roger that 』

二機のF-35Bは島の上を大きく一周すると静かに高度を下げ投下コースにアプローチする。

デニスの中隊がいるビーチに並行するコースだ。

地上からは凄まじい勢いで森をを舐めるように飛んでいるように見える。

ステルス性を最大限意識した曲線で設計された機体の下部に設けられたウエポンベイのドアが開きMk77が数発ずつばら撒かれる。

着弾すると地上に灯油を練りこんだ筒がばら撒かれ紅色の炎が森を舐める様に走り回る。

ビーチから見るとジャングルが一瞬で火の海になったのが分かる。

森の中では、火達磨になった傭兵達が断末魔をあげ助けを呼びながら倒れていく。

火達磨にならなかったものもMk77の燃焼に大量の酸素を持っていかれ、酸欠状態で喉を抑えながら悶え数秒後には一酸化炭素中毒と酸欠で倒れる。

朝の浜辺を灯油が焼ける匂いが支配する。

暫くし、燃え盛っていた炎が燻った程度まで落ち着き時折聞こえていた断末魔も聞こえなくなった事を確認したデニスは次なる行動に移ることを決める。

「よーし!頃合いだっ!全隊前進、蹂躙制圧せよ!」

ジャングルが焼け上がったのを確認したデニスは兵士に前進、制圧、遺体の回収を命じる。

指示を受けた兵士達が横一列に並びゆっくりと前進していくのが上空のヘリからよく見える。

時折発砲音が聞こえるが、全てNATO共通 5.56mm弾の音だ。

『A小隊、右翼の脅威を全て排除。エリアクリアッ!』

『C小隊、同じく左翼制圧完了、クリア!』

最終的に左翼右翼共に敵兵で立っているものは1人もいなかった。

『B中隊中央に脅威なし!現在目標の遺体を発見』

それぞれの小隊が集結している地点からスモークマーカーが焚かれている。

上空で支援していたUH-1Yは次々と降り立ち兵士を乗せていく。

B小隊も手早く“ジェロニモ”の遺体を袋に詰めその場を立ち去る。

戦場の跡には何も残っていない。森は焼け野原に、洋館は瓦礫に。

****************

ホワイトハウスはその頃夕方であった。

その日の執務を終え晩餐会へ行く準備をしていたところに報せは届いた。

「プレジデント!我が海兵隊の部隊がバステリア皇帝を射殺しました。 前線からの報告です」

大統領は手を止めそれを報告しているものの方を向く。

「それは本当か?」

「はい!間違いありません」

大統領の口角が上がる。

「今日の晩餐会は中止だ!2時間後に記者会見を行う。早急に準備を行うよう各部署に連絡しろ。それと今回は占領したバルカザロスでも衛星回線で会見の様子を流せ!」



世界新聞バルカザロス支社にも記者会見が中継される報せは入っている。

世界新聞はすでに地球圏から報道機関として認定されている。

東洋世界の雄の一つであったバステリアにはムー共和国ほどでは無いが当然東洋世界の情報が集約される。
その支社の規模も自然と大きくなり、現地採用から本社からの出向 全てを含めると職員の総数は1000人に登る。

その中でも本社から送られた記者は100人ほどである。

そんな100人の中の2人ミアとエグモットが今回の記者会見に送られる。

ミアは種族はエルフ、エグモットがドワーフだ。

異世界モノではよくこの2種族は犬猿の中とされるがそんな事は無い。至って普通だ。

ミアがカメラマンを務め、エグモットが記事を書く。

ミアの持っているカメラはフィルムを必要とする地球圏のものとは仕組みが異なり魔力によって専用の用紙に画を写し取る。 レントゲンの様に魔力を照射し、その反射を記録する。
科学文明圏のフィルムが安定して入手出来ない地域に優先してミアの様なカメラマンが送られる。

ミア(28)とエグモット(32)はスローペースコンビなのでしばしばラルゴズと呼ばれる。(ラルゴとは音楽のテンポの一つ)

2人とも全身からぼーっとした感じが溢れている。
ミアの目はいつでも半開きで眠そうだし、ロングの手入れがされていない金髪がNEET感を強調している。
エグモットは目は開いているのだが、伸びきった手入れのされていない髭とドアーフの特徴である老け顔が中年NEET感を醸し出している。

尚:バステリア帝国では人族以外は迫害の対象となっていたが、世界新聞の社員である彼らの身分は保障されていて何人たりとも手を出す事は出来ない。

「おい、ミア。今日アメリカ合衆国の国主が旧皇城の白の間で記者会見を行う。俺たちはそれに行く。いいな」

エグモットが簡潔に伝える。

「まじっすかー.......、仕事....増えましたね」

ミアは喋らないキャラなのでは無い。
ただ本当に寝起きなだけだ。

「ほい、起きろ。もう太陽は昇ってるぞ」

そう言って、グイッと顔を近づける。

「あぁもう!目ぇ覚めてますって!わぁりました。行きますよ」

「オメェよぉ、しゃんとしろよなぁ」

ミアがため息をつきながら準備をして出発となった。

支社の前で馬車を拾い皇城まで向かう。

石畳の路面で馬車はガタガタと揺れる。

「エグモットさーん、アメリカの元首ってバステリアには来てなかったんじゃないんすかー?」

「確かにそのはずだ。もし来てたなら俺たちが知らない筈がない。元首が記者会見ってのは間違いじゃねぇのか?」

「そうっすねー、しっかし急になんの記者会見なんでしょうねー」

「そればっかりは始まってからじゃねぇとな」

そうこうしているうちに馬車が門の前に着いたのでここからは徒歩で歩く。

門の前の検問所で送られてきたIDカードを提示し中に入る。

門は常に全開で、車輪がついた重い鉄製のバーが設置されているだけだ。

ミアはこれを無防備だと思った。

白の間は既に地球圏外の東洋世界の新聞社や政府の関係者でごった返していた。

部屋の雰囲気も依然の様な荘厳さを意識した内装から質素かつ必要なもののみに抑えられた内装になりかなり変わった。

部屋には鉄のパイプと動物の革に似た材質で作られた椅子(テーブル付きのパイプいす)が並べられていた。

2人は空いている席を見つけて座る。

部屋の前には黒く薄く大きな板が2枚設置されていた。

ミアとエグモットには用途が全く理解できない。

「そろそろ時間っすねー」

「そうだな、オメェのカメラも準備しとけよ」

黒いスーツを着たアメリカ合衆国職員らしき人間が出てきた。

「おっ、あいつが報道官か?」

エグモットは思ったことを口に出した。

そのスーツに身を包んだ職員は徐ろに板の横面をいじりだした。すると、板の奥に別の部屋が出てきた。

正確には画面にホワイトハウスの一室の中継映像が映し出されたのだ。

白の間の中はどよめきに包まれた。

「なんとこれは受像機だったのかーーーー」

「こんな大きさのものムーでもメルト皇国でも見たことないぞ」

大型液晶モニタに相当するものはまだこの世界では開発されていない。

映写機の様なものはあるが、やはり彩度精度共に桁違いだ。

画面の中に金髪の60代の男性が出てきた。一見すると映画のギャングの親玉役で出てきそうだ。

実際にある映画では彼を悪役のモデルとしている。

彼が話し始めた。

『皆さんに、今日は非常に良い報せがある。

我が国は他の国々とともに未知の世界に飛ばされて、この世界でも前世界と同様に平和的で友好的にあろうと努力してきたが、我々の願いと努力は叶わなかった。

独裁者はあろう事か我々に民族浄化宣言し戦争状態に突入し、我が合衆国軍と同盟国軍はこれを返り討ちにしてきた。

ただ、愚かにも我々を根絶やしにすると宣告した独裁者は我が軍に猛攻の前に逃亡し行方をくらましていた。

しかし優秀なCIAエージェントと勇敢な海兵隊によって元バステリア帝国皇帝 ロワール・ネロ 容疑者を捕捉し殺害した。

これは実に良い報せだ。

世界の同盟国もCIAと海兵隊の働きに感謝と敬意を表するだろう。

これは実に良い報せだ。

ーーーーーーーーーー』

その後演説は20分に渡って続いた。


翌日の世界新聞の一面

「【アメリカ合衆国軍、バ帝国皇帝殺害】
     昨日の明朝にバルカザロスで行われた映像受像機の中継記者会見においてアメリカ合衆国大統領が明らかにした。
カッシーム王国にて逃亡生活を送っていたロワール・ネロ元皇帝を発見したアメリカ合衆国はこれに海兵隊の一部隊を投入し僅か30分程で戦闘を終結させた。
アメリカ合衆国発表によると海兵隊員の死傷者は皆無、一方皇帝を護衛していた傭兵団は全滅。
カッシーム王国政府高官筋に取材したところ、皇帝の潜伏先への攻撃は事前にアメリカから通告を受けていた。
戦闘開始通告時間より5時間後に現場確認の為に軍の偵察部隊を送ったところ、戦闘域には何も残っていなかった、さらに生存者無し。同様に現場付近の森も消滅していたと話す。俄には信じ難い状況である。(バルカザロス支社 エグモント記者)詳細は34面」

翌日のムー共和国外交部 本部

「事務次官、今日の世界新聞は読んだかね?」

「もちろんです大臣。これで東洋世界からバステリアが消滅する事は間違いなくなりましたね」

「これで東洋世界、いや世界の勢力図が書き換わるな。我々ムーが彼らと友好的で同盟関係になれば東洋世界は一つの勢力となるだろう。だが彼らと対立すれば東洋世界全てが敵対勢力と言うことになる」

「バルカザロスからの情報では彼らは旧バステリア領の大部分を民主主義に転向させる様ですし問題無いでしょう」

「そうだな、どの道彼らと同盟関係を築かなければ我々は滅亡する。来たる科学対魔術の戦争をするにしても、あの強大な魔術国家メルト皇国に技術で対抗できるのは我々だけだ。だが我々は数が少なすぎる。彼らがこちらにつけば可能性は大いにある」


時を同じくしてメルト皇国の皇城

「報告します!本日の世界新聞朝刊にてバステリア皇帝が逃亡中にUNと名乗っていた同盟の一国アメリカの手によって殺されました。これで、バステリアが東洋世界から消滅することは明白です!」

「ほう、バステリアが消滅とな。これで東洋世界への扉は開いたな!奴らの数が目障りで堪らなかったが、バステリアが消えて無くなってしまえば世界1の質を誇る我らが軍団を止める存在などいわしない」


バステリアの終焉が世界に与える影響は大きい、中央世界から東洋世界の入り口に位置していたバステリアはその暴力的数によって魔術国家の進行に蓋をしていた。しかしそれが解体された事でムー共和国の支配圏の手前までは簡単に入れると言う認識が強くなった。






















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