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異世界生活1日目の話をしよう。6

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くくくっ


僕がショックでむくれていると、右隣から含んだ様な笑い声が聞こえてきた。


「もぅ!笑い事じゃありませんからね!」


「わりぃ…拗ねるなよ。お前がそんな顔したって可愛いだけだぞ」


む~…この期に及んで、可愛いとかバカにするし…


エルさん、ひどい!


「そんなに年下に見られてたなんて、心外です…僕、そんなに子供っぽく見えましたか?」


「ん~?ちっさい割には、大人びた態度のやつだと思ったが…獣人じゃ十二でイクみたいにちっこいのは見掛けねぇからなぁ…俺らが知ってる何人かの人族も、どいつもお前よか大きいやつばっかだしな」


もう!小さいって言わないでよ!


エルさんは僕の膨れっ面を横からつんつんと指先で突付きながら、それはそれは楽しそうに教えてくれた。


「……僕が前いたところでは、僕くらいの歳でこのくらいの背の高さはわりと普通だったんですよ」


…まぁ、確かに男子の中じゃ小さい方だった気がしなくもないけれど。 


すると、ふいに僕の頭に大きくて温かい手の平が触れて、優しく頭を撫でられた。


「…そうだな。イクは小さくなんてない。まだ、これから大きくなるんだよな?」


レニーさんだった。


僕がいつまでもむくれていたからだろう。


いつの間にか僕の左隣に移動してきていたレニーさんは、よしよしと宥めるみたいに僕の頭を撫でてくれる。


あ。


この感じ。


お父さんに撫でられた時みたい…


懐かしさに心地好くなった僕は、その優しい手の平に身を任せ、目を閉じてそれを堪能していた。


ぐいっ


「わっ」


急に、横から肩を抱かれて反対側に引き寄せられた。


エルさんだ。


驚いた僕の耳に、エルさんが物騒なことを囁く。


「……おい、イク。レニーには気を付けろ。あんまり油断してると、すぐ喰われちまうぞ」


「え!?獣人って…人食べるんですか!?」


僕は驚いて、勢いよくエルさんの方を見る。


「そういう意味じゃねぇよ……チッ…まぁ、いい。俺が護ってやる。そう簡単に喰わせねぇから、お前は心配すんな」


ねぇ…今、舌打ちした?


「エル…急に変なこと言い出すなよ。お前は冗談のつもりでも、イクが驚くだろう?」


「うるせぇよ、この腹黒が」


え?急に、どうしたの?


ケンカ??


「いつも可愛がってやってる兄貴分に対して酷い言いようだなぁ」


レニーさんがやれやれといった雰囲気で大袈裟に肩を竦めた。


「……俺だって、少なからず気に入ってんだ。とにかく、狙うってんならフェアにやれ」


???


二人は僕のことを置いてけぼりにして会話している。


二人して、一体なんの話してるの?


「えっと……あの?」


僕が二人の顔を見上げてオロオロしていると、唐突に二人が立ち止まった。


「着いたぞ」


エルさんがそう言いながら前を顎で指すので僕も前を向く。


見ると、少し離れたところに"カタパの街"と書かれた大きな通用門があり、その脇を固めるようにして門兵さんが数名立っていた。


「うわぁ!…街だ!」


「こら、待て待て」


街に辿り着いたのが嬉しくて、思わず門の近くまで駆け出そうとした僕を、エルさんが引っ張って止める。


「どうされたんですか?」


「イク。お前、金は持ってるのか?」


…え?お金?


どうして?


「イク…この街に入るには、こういった通行許可証が必要だ。この許可証は街の中央役場で発行して貰えるんだ。君は初めてこの街に入るから、まだこの許可証を所持していないだろう?初めて街に入る人間は皆、通行料を払わなくてはならないんだが…金は持っているのか?持っていないのなら貸すが…」


きっと僕の疑問が表情に出ていたのだろう。


レニーさんが自分の胸ポケットから通行証を取り出し、通行証のシステムを説明しながら見せてくれた。


「ええと…たぶん、ある…と思います?通行料っていくらなんですか?」


「銀貨三枚だな。けど、"たぶん"って…なんだよ、それ。自分のことなのに曖昧過ぎんだろ」


エルさんが僕の返答に面白そうに笑った。
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