上 下
12 / 41

異世界生活1日目の話をしよう。5

しおりを挟む



見事に痛いところを突かれてしまった。


どうにか有耶無耶に出来るかもしれないと思っていたのだけれど、子供一人で国を渡って来たというには、やはり少しばかり無理があるようだ。


普通はそうだよね。


逆の立場だったら僕だって、え!大丈夫なの?って思うもんな。


でもさっき、護衛はどうした?って聞かれたよね。この世界、護衛とかいるんだな…。申し訳ないけれど、この際、それを利用させて貰おう。


僕は嘘を付くのは得意ではないのだけれど…致し方なく"護衛の人はもともといたが、少し前に別れた"という話にすることにした。


「あの…僕、両親はいないんです。それに従者って御付きの人とかそういう方のことですよね?一般人ですので、そういう人はいません。護衛の方は…もともとはいたんですけど、この国に着いた時に別れまして、今は僕一人です」


これはあくまでも僕の勘なのだけれど、おそらくこの二人は良い人な気がするんだ。然り気無く気を遣ってくれるところにも優しさが伺えるし、純粋に僕のことを心配して聞いてくれている気がしたのだ。


だからそんな二人に嘘を付くのは、内心とても心苦しかったのだけれど…とりあえず今はそう誤魔化す他ない。


「嘘だろ、信じらんねぇ…お前、それでよく今まで無事だったな」


??


確かに森の中は広そうなので、うっかり脇道にでも迷い込めば危険かもしれないが、今いる平坦な道を真っ直ぐ歩いている分には特に危険なんてないのでは?


「無事って…?僕、さすがによく知らない森で脇道に入る様な無謀なことはしませんけど…?」


僕は今まで歩いて来た道を振り返りつつ、首を傾げる。


二人はそんな僕を見て、呆れた様な顔をして、揃ってハァ…と息を吐いた。


……なんか、思いっきりため息つかれたんですけど?


二人の顔を交互に見つめる僕に、青髪のお兄さんがとんでもないことを言い出した。


「君は知らないようだが…脇道に入らずとも、この森には魔物も盗賊も出る。君の様な子が一人でのこのこ歩いていたら、それこそ格好の餌食だぞ」


「えぇ!?嘘!?なにそれ、恐い…」


そんな情報、神様から聞いてないよ!?


「……んなことで嘘なんかついたって、意味ねぇだろが。今まではたまたま運が良かったんだな。お前、この先の街を目指して来たんだろ?とりあえず、俺達と一緒に来るか…?」


さっきまで探検家気分でご機嫌だった筈の僕は、すっかりこの森が恐くなってしまって、赤毛のお兄さんのその素晴らしい提案に一も二もなく飛び付いたのであった。









そして、数分後。


僕達は三人で街の方へと向かいながら、交流を深め合っていた。


僕の右隣には赤毛のお兄さん。その隣に青髪のお兄さんという位置取りだ。


「改めまして…さっきもお伝えしましたが、僕はイク・カザトと申します。僕のことは"イク"でも、"カザト"でも、お好きに呼んで下さい」


僕はそう言って、二人にへらりと笑って見せた。


どんな時でも愛想笑い。これ大事。


「「!」」


ん?


なんで二人ともびっくりしてるの?


「~…あぁ、わかった。俺はエル。こっちはレニーだ」


なんとなく僕に何か言いたげな視線を向けていたが、エルさんは特に何も言わず、そのまま隣のレニーさんをまるでヒッチハイクする時みたいに、右手の親指で指し示して紹介した。


「宜しくな、イク」


エルさんの紹介に、レニーさんはにこりと微笑む。


「はい、宜しくお願いします!」


レニーさんって落ち着いてて、なんだか安心するなぁ…


「ところで…イク。お前、歳はいくつだ?」


エルさんが興味津々といった表情を隠しもせずに問い掛けてくる。


「僕は十二です。エルさんとレニーさんはおいくつなんですか?」


「そうか。俺が十八で、こいつが十きゅ……って、はぁ!?ちょっ…待て待て!お前、今、十二っつったか!?マジかよ…マージんとこの弟と一緒じゃねぇか。八歳くらいかと思ってたぞ…あと三年で成人…見えねぇ~…」


僕の歳を聞いたエルさんは今日一番なんじゃないかと思えるくらい大袈裟に驚き、そう宣った。


む!八歳っていったら小学二年生くらいじゃないか。


僕はそんなに子供じゃないぞ!


エルさんの失礼な発言に僕はすっかりむくれてしまったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕のこと好きすぎません?

おむらいす
BL
いつも通りに帰って寝たのにいつの間にか死んでました…え? 神様からは「ごめんねー間違えて寝てる君を殺しちゃった!」だって…嘘でしょ なんでもありの物語 初めてだから変かもしれないけど読んでくれるとありがたいです

異世界人は愛が重い!?

ハンダココア
BL
なぜか人から嫌われる体質で、家族からも見放され、現世に嫌気がさしたので自殺したら異世界転生できました。 心機一転異世界生活開始したけど異世界人(♂)がなぜか僕に愛の言葉を囁いてきます!!!!! 無自覚天然主人公は異世界でどう生きるのか。 主人公は異世界転生してチート能力持っていますが、TUEEEE系ではありません。 総愛され主人公ですが、固定の人(複数)としか付き合いません。

僕の家族の執着がすごい件について【休みの日更新⠀】

矢崎 恵美
BL
第六皇子としてエストレーヤ帝国に生まれたセーラスは皇族としての証を受け継がれずに生まれてきた。 彼はいらない子として散々な虐待を受けてきた 彼がある日突如前世を思い出した そんな彼は10歳の誕生日にお披露目パーティーの際復讐すると心に決めていた だがしかし人生そんな上手くは行かず何故か彼の家族がある日を境に彼に執着し始めてしまい?!

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 説明は初めの方に詰め込んでます。 えろは作者の気分…多分おいおい入ってきます。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫だと……思います(?) ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます! 5/25 お久しぶりです。 書ける環境になりそうなので少しずつ更新していきます。

兄たちが溺愛するのは当たり前だと思ってました

不知火
BL
温かい家族に包まれた1人の男の子のお話 爵位などを使った設定がありますが、わたしの知識不足で実際とは異なった表現を使用している場合がございます。ご了承ください。追々、しっかり事実に沿った設定に変更していきたいと思います。

BLゲームの世界に転生!~って、あれ。もしかして僕は嫌われ者の闇属性!?~

七海咲良
BL
「おぎゃー!」と泣きながら生まれてきた僕。手足はうまく動かせないのに妙に頭がさえているなと思っていたが、今世の兄の名前を聞いてようやく気付いた。  あ、ここBLゲームの世界だ……!! しかも僕は5歳でお役御免の弟!? 僕、がんばって死なないように動きます!

悪の皇帝候補に転生したぼくは、ワルワルおにいちゃまとスイーツに囲まれたい!

野良猫のらん
BL
極道の跡継ぎだった男は、金髪碧眼の第二王子リュカに転生した。御年四歳の幼児だ。幼児に転生したならばすることなんて一つしかない、それは好きなだけスイーツを食べること! しかし、転生先はスイーツのない世界だった。そこでリュカは兄のシルヴェストルやイケオジなオベロン先生、商人のカミーユやクーデレ騎士のアランをたぶらかして……もとい可愛くお願いして、あの手この手でスイーツを作ってもらうことにした! スイーツ大好きショタの甘々な総愛されライフ!

処理中です...