催眠学校〜今日から君はAV監督〜

Another Story

高良 美兎①

「高良美兎さん、俺と、付き合って下さい！」

「え、え、え～！？！？」

放課後の誰もいない教室。

私は、隣のクラスの松浦君に告白された。

「駄目、かな？」

あまり話したことはないけれど、松浦君の事は実は前から知っていた。

先帝高校では珍しくスポーツ推薦で入学した彼は、競争率が激しい部内でいきなりレギュラーに抜擢された。
三年生が引退をした今、ニ年生を差し置いてキャプテンになったらしい。

その運動能力に加えて成績は学年トップクラスらしいし、あとは‥。

松浦君の顔が、夕日に照らされる。
そう、この整った顔立ち。
校内にファンクラブは数多くあるけれど、松浦君のファンクラブはその人数の多さで中々有名だ。

文武両道、容姿端麗、そしてファンクラブ。一ノ瀬会長みたい。

「えっと‥ごめんなさい」

私はやんわりと断った。

「え、どうして？」

驚いた顔をする松浦君。
私の返事が予想外だったのだろう。うーん、やっぱりちょっと嫌だ。

自分に自信がある人は少し苦手。

「‥分かった。とりあえず、考えておいて」

「え？いや、あの」

「じゃあ、また」

ぎこちない笑顔を浮かべながら教室を出て行った。


「困ったなぁ」

誰もいなくなった教室で、私はため息をついた。

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「え！何で断ったのよ」

帰り道、百合智永ちゃんが大声を出した。
部活終わりだと言うのに、智永ちゃんは相変わらず元気。

「だって、苦手なんだもん」

「違うわよ。断るのは賛成。でも、何も今日断らなくても良かったんじゃないの？」

「その気が無いのに期待させちゃったら、悪いし」

「お馬鹿。自分の心配をしなさい。断るにしても上手くやらないと。ファンクラブがある松浦を敵に回したら、面倒臭いわよ」

「敵って、大袈裟な」

智永ちゃんは立ち止まり、真剣な眼差しで私の目を見つめてきた。

「知らないの？ファンクラブじゃない女子が松浦と一緒に歩いていたらだけで、その女子生徒は次の日酷い目にあったのよ？」

「え、そ、そんな‥」

どうしよう。知らなかった。

「ま、何があっても私が守るし、生徒会に入っているあんたなら大丈夫か」

肩をポンポンと叩きながら、眩しい笑顔を私に向ける。

私は控えめに後ろを振り向いた。
誰もいなくてホッとする。

「ん？どした？」

智永ちゃんは、自分にもファンクラブがあることを知っているのかな。

男子生徒だけじゃなく、女子生徒も入っているそのファンクラブの子達に目を向けられたら‥。

それでも、離れるなんて事はしたくないけど。

「何でも無い」

私が明るく振る舞うと、智永ちゃんは心配そうな顔を向けてきた。

大丈夫、と言い聞かせる。
でも、今日の感じでいくとまた松浦くんは来るだろうなぁ。

上手く断るなんて、難しい事できないよ。