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第五章
催眠学校①
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夢を見た。
見知らぬ男が全裸で私の前に立っている。
そこは、私の部屋だった。
ベッドに仰向けになる形で私が寝転んでいる。
その男は、控えめに言っても不潔だった。
体から溢れ出す異臭。
顎までつくであろう伸び切った髪の毛は顔を隠している。その隙間からはギョロッとした目が覗き込む。
飢えた肉食動物を連想させた。
私は、生理的にこの男を受け付けなかった。
ベッドに近づいてくる男を必死に遠ざける。
でも力が入らない。
男は私に何かを言った。
『○○○』
その言葉を聞いた途端、わたしは、幸福に包まれる。
さっきまであった嫌悪感が一切無くなり、目の前の男が好きで好きでたまらなくなる。
こんな幸せな感情が自分の中にあったことに驚くも、好きな気持ちは止まらない。
『ご主人、さまぁ』
夢の中のわたしは、まるで誘惑するように甘い声を発して自分の股を広げる。
むき出しになっている大きな男性器が近づいてきた。
---
--
-
「き、きゃぁぁああ!!!」
「お嬢様っ!」
ベッドから起き上がると同時に誰かが掴みかかって来る。その両腕を反射的に掴み返し、私はベットの外へ勢いよく投げた。
ドンっという音がして、今自分が投げた相手が木崎だと分かる。
「ご、ごめんなさい‥」
木崎は腰を押さえ、あいたた、と老人のような声を出して笑った。
「全く、詩お嬢様には敬服致します。私も護身術には自信があるのですが」
立ち上がった木崎は、私を優しく抱き寄せる。
「一人で抱え込まないでください。私は、お嬢様の味方です」
あまりにも安心するその声に、思わず涙腺が緩む。口元も緩んだ私は、小さな声で本心を漏らす。
「今日、学校、行きたくないわ」
その言葉を聞いた木崎は私から離れると驚いた顔をした。
こんな顔を見たのは初めてだ。
「では、そうしましょうか」
今度は、木崎のその発言に私が驚かされる。
「え、あの」
ふふっと慎ましく笑った木崎は、「お嬢様のそんなお顔、初めて見ました」と嬉しそうに言った。
「駄目じゃない。教育係がそんな事を言っては」
「確かに、お嬢様がお休みになられるなんて、全人類が驚く事でしょう」
何とも大袈裟な表現だ。
「しかし、たまには休息は必要です」
「理由はないとしても?」
「あら、ズル休みというもので御座いましょうか?でも、はい。少しばかりのやんちゃも大切ですよ」
その言葉にハッとした気持ちになる。
『少しのやんちゃもいいと思います』
全校生徒の前で大門入人が言った言葉。
なんと無責任な大人なのか、とあの時は憤りすら感じたが、もしかすると、あの言葉で救われた生徒もいるのかもしれない。
今の私のように。
「実はお嬢様。私行きたい所があります」
「木崎が行きたい所?え、私じゃなくて?」
「駄目ですか?」
木崎が上目遣いで見てくる。
本当、年齢不詳だ。
今の木崎は私より年下に見える。
一度年齢を聞いた時に「女性に年齢を聞く程野暮な事は御座いません」と一蹴された。
「しょうがないわね。いいわよ‥。ただ、また今度ね」
木崎が首を傾げる。
「混乱させてごめんなさい。今日はどうしても行かないといけないの」
「‥左様でございますか。あまり無理はなさらないで下さいね」
私は精一杯の笑顔を作り頷いた。
今日は、学期末の全校集会がある。
生徒会長である私が休むわけにはいかない。
見知らぬ男が全裸で私の前に立っている。
そこは、私の部屋だった。
ベッドに仰向けになる形で私が寝転んでいる。
その男は、控えめに言っても不潔だった。
体から溢れ出す異臭。
顎までつくであろう伸び切った髪の毛は顔を隠している。その隙間からはギョロッとした目が覗き込む。
飢えた肉食動物を連想させた。
私は、生理的にこの男を受け付けなかった。
ベッドに近づいてくる男を必死に遠ざける。
でも力が入らない。
男は私に何かを言った。
『○○○』
その言葉を聞いた途端、わたしは、幸福に包まれる。
さっきまであった嫌悪感が一切無くなり、目の前の男が好きで好きでたまらなくなる。
こんな幸せな感情が自分の中にあったことに驚くも、好きな気持ちは止まらない。
『ご主人、さまぁ』
夢の中のわたしは、まるで誘惑するように甘い声を発して自分の股を広げる。
むき出しになっている大きな男性器が近づいてきた。
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「き、きゃぁぁああ!!!」
「お嬢様っ!」
ベッドから起き上がると同時に誰かが掴みかかって来る。その両腕を反射的に掴み返し、私はベットの外へ勢いよく投げた。
ドンっという音がして、今自分が投げた相手が木崎だと分かる。
「ご、ごめんなさい‥」
木崎は腰を押さえ、あいたた、と老人のような声を出して笑った。
「全く、詩お嬢様には敬服致します。私も護身術には自信があるのですが」
立ち上がった木崎は、私を優しく抱き寄せる。
「一人で抱え込まないでください。私は、お嬢様の味方です」
あまりにも安心するその声に、思わず涙腺が緩む。口元も緩んだ私は、小さな声で本心を漏らす。
「今日、学校、行きたくないわ」
その言葉を聞いた木崎は私から離れると驚いた顔をした。
こんな顔を見たのは初めてだ。
「では、そうしましょうか」
今度は、木崎のその発言に私が驚かされる。
「え、あの」
ふふっと慎ましく笑った木崎は、「お嬢様のそんなお顔、初めて見ました」と嬉しそうに言った。
「駄目じゃない。教育係がそんな事を言っては」
「確かに、お嬢様がお休みになられるなんて、全人類が驚く事でしょう」
何とも大袈裟な表現だ。
「しかし、たまには休息は必要です」
「理由はないとしても?」
「あら、ズル休みというもので御座いましょうか?でも、はい。少しばかりのやんちゃも大切ですよ」
その言葉にハッとした気持ちになる。
『少しのやんちゃもいいと思います』
全校生徒の前で大門入人が言った言葉。
なんと無責任な大人なのか、とあの時は憤りすら感じたが、もしかすると、あの言葉で救われた生徒もいるのかもしれない。
今の私のように。
「実はお嬢様。私行きたい所があります」
「木崎が行きたい所?え、私じゃなくて?」
「駄目ですか?」
木崎が上目遣いで見てくる。
本当、年齢不詳だ。
今の木崎は私より年下に見える。
一度年齢を聞いた時に「女性に年齢を聞く程野暮な事は御座いません」と一蹴された。
「しょうがないわね。いいわよ‥。ただ、また今度ね」
木崎が首を傾げる。
「混乱させてごめんなさい。今日はどうしても行かないといけないの」
「‥左様でございますか。あまり無理はなさらないで下さいね」
私は精一杯の笑顔を作り頷いた。
今日は、学期末の全校集会がある。
生徒会長である私が休むわけにはいかない。
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