催眠学校〜今日から君はAV監督〜

本田 壱好

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第五章

氷姫は機嫌良く歌わない④

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会長、会長

何度も呼ばれる声がする。
その声は段々と近づいてきて、私は強い衝撃と共に目を覚ました。

「会長!」

視界がぼやける。
私は目を擦り、目の前にいる人物の顔をよく見た。

「良かった、目を覚まして」

ホッとした顔をする男。

確か、新入生の真中信雄。
小太りな体型に、フレームが太い丸眼鏡を掛けている。安堵な表情も、ズレた眼鏡と合わさって頼りない印象を抱く。

地味で根暗な目立たない生徒だと記憶しているけど‥って、あれ、ちょっと、こいつ‥

「き、キャーっ!!!!」

真中信雄の格好を見て私は叫び声を上げた。

彼は上半身裸、下は制服のズボンを履いておらず下着姿だった。

「お、おちついてっ」

狼狽えながら真中が私に近づいてくる。

「落ち着けるわけないでしょ!あなた、何考えてるのよっ!」

神聖なる生徒会室で、いや、そもそも学校でそんな変態じみた格好を目の当たりにして落ち着いていられるはずがない。

「僕も気づいたらこの格好だったんですよ!それに、格好の事を言うなら会長だって」

真中信雄を顔を真っ赤にしながら目を背ける。

私の、格好?

そう言えば、さっきから妙に風が通る。
上も、下も。

私は、目を落とした。

「な、なにこれ‥」

今の状況に理解が追いついてこない。

私が着ている服は、先帝高校の制服ではない。

上は、薄いピンク色の襟と短袖。真ん中には主張が激しめな大きな白のリボン。

しかし何よりも目立つのは、襟と袖以外がまるっきり透けている。

なので、自分が着ている黒のブラジャーが丸見えだ。

私はそれを隠すように自身の体を抱きしめる。

直後、更に違和感。

上だけではない、下もだ。

いつも履いている紺色のスカートではなく、極端に短いピンク色のスカートだった。短すぎて、少し屈むと下着が見えそうだ。
透けてはいないが、問題なのはストッキングに止めてあるベルトのような物。
それは、今自分が履いてある下着から伸びていた。

「~~~っ!」

私は、生まれて初めて体感する恥ずかしさに、顔が真っ赤になるのが分かった。

「か、会長、僕たち、きっと何かされたんですよ」

そんな事は言われなくても分かっている。

「壁まで離れて」

「え?」

「早く!」

真中信雄は慌てて壁側まで走る。

「顔を壁側に向けなさい!」

言われるがまま、彼はそう行動した。

これで、私のこの格好を見られる心配はない。

大きく深呼吸をする。
段々と落ち着きを取り戻していく。

落ち着いて。
まず、状況を整理しよう。

自分が最後に覚えている記憶を辿る。
確か、そう。
私は今日、学校に登校した。

そして、誰も居ない校舎を回って‥。

「保健室‥」

そうだ。
唯一電気が付いていた保健室に行ったんだ。
そこで、真野先生がいて、何か話した気がするんだけど、駄目だ、そこから思い出せない。

「真中信雄」

私は壁側に立っている彼に声をかける。

「え、何で僕の名前」

「生徒会長なのだから、全校生徒の事を知るのは当たり前です。そんなことよりあなた、最後に覚えている記憶は?」

「え、えっと、ぼ、僕は‥。今日はいつもより早く学校に着いたんだけど、誰もいなくて」

真中信雄は記憶を思い出すように唸っている。やがて、「あ、職員室!」と振り返りながら大きな声で言った。

「こっちを見ないで!」

私は横にあったものを投げる。

見事、真中信雄の顔面に当たった。

「す、すみません‥あれ、これ」

彼は投げられた物を手に取る。

その棒状の物を見て、彼は顔を真っ赤にさせていた。


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