催眠学校〜今日から君はAV監督〜

本田 壱好

文字の大きさ
上 下
92 / 133
第五章

氷姫は機嫌良く歌わない②

しおりを挟む
食事を終えたお父様がナプキンで口を拭う。

席を立つと、後ろにいた使用人がコートを羽織らせた。

「木崎さん」

私の後ろにいる木崎に話しかける。

「今週は会食続きなので、ご飯の用意は結構だ」

「承知いたしました」

私は、料理に目を落とす。

直接顔を見なくても、お父様がどんな顔をしているのかくらい想像がつく。

今年五十路を迎えるとは思えないほどの若々しい顔。その仏頂面が無ければもっと多くの人に愛されていたはずだ。

ふと、家族とは何かと考える。

親子の会話がない。
会話があるのは使用人とのみ。

そんな家族の形が一般的なら、こんな苦しい思いをしなくてもいいのだろうか。

お父様、お忙しいのでしょうね。

私、この前の全国共通模試で一位を取りました。この成績だと、大学は選びたい放題だと言われました。

生徒会も新たな形となり、生徒会長としてより良い学園づくりのために奮闘しております。
あ、生徒会に男子教諭が顧問として来たんです。あまり好きではないタイプです。なにか、嘘っぽいから。

そういえば、来週は‥。

「ですが旦那様。どうか来週の水曜日はお早めにお帰りになってくださいませ」

私はゆっくりと顔を上げた。

木崎の顔を見る。

木崎は真っ直ぐにお父様の顔を見つめていた。

私の思いを言葉にしてくれた。

恐る恐る、お父様の方を見る。

「・・・」

無言で食堂を出て行った。

一つ、息を吐く音が後ろからした。
私の視線を感じた彼女は、安心させるように微笑んだ。

「さぁお嬢様。早く召し上がらないと遅刻してしまいます」

年齢不詳のこの使用人は、笑うとずっと幼く見える。

「いただきます」

自分を理解してくれる人が近くにいるだけ、幸せなのかもしれない。

料理を口に運ぶ。ちゃんとソーセージと卵の味がした。

---
--
-

何かがおかしい。

学校の正門に着くなりそう感じた。

時刻は8.00。
いつもはこの時間は既に多くの生徒と教師が歩いている。

いつも開き切っている門は人一人通れるくらいには開いている。

私はポケットにあるスマホを取り出してカレンダーのアプリを起動させる。

今日は間違いなく登校日だ。
放課後のスケジュールもびっしりと書かれており、昨日は副会長の河合さんから今日の予定を確認された。

なのに、人の気配がまるでしなかった。

今にも雨が降りそうな曇天。
何匹ものカラスが不気味な鳴き声と共に宙を飛び交っている。

先帝高校のホームページを開く。

特に臨時休校になった案内もない。

「何か、嫌な予感がするわね」

私の予感は不思議と当たる。

引き返すべきかどうか迷ったが、この門の開き具合を考えると、誰かが鍵を開けて中に入ったのは間違いない。

門の鍵を持っているのは教員だけ。

何か問題があるなら生徒会長として放っておくわけにもいかない。

私は正門をくぐり、中に入ることにした。

---
--
-

「どうなってるの」

校内の電気はすべて消えており、あらゆる部屋の鍵は閉まっていた。

「一体、何が起こっているの」

流石にこのおかしな状況に不安を感じる。

私はスマホを開いて、生徒会のグループチャットを開いた。

しかし、手が止まる。

グループではなく、直接誰かとやりとりするべきか。

あり得ないことだが、もし私が知り得ない事で今日休校になっていたとしたら‥。

ガタン、と下の階から何かが落ちる音がした。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...