催眠学校〜今日から君はAV監督〜

本田 壱好

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第四章

可憐な少女は扉を開ける⑧

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ハッとしたように身体が反応し、真野先生が私の顔を見る。

「河合さん?」

「今のうちです」

真野先生は戸惑いながらも頷いた。
その場を離れようとしたその時、「未来!」と後ろから大きな声がした。
その声で真野先生の足がまた止まる。

「ちょっと待ってろ。まだ、撮影してないだろ」

木本のその物言いに、真野先生は何かを言いかけ、その場に留まった。

「せ、先生!」

先生の体はまるで金縛りにあったかのようにびくともしない。

「身体が、動かないの」

「早く、逃げないと!」

「う、ん。分かっているの、でも」

「無駄だよ、副会長。そいつ、もう俺の奴隷だから」

先ほどから偉そうにしている男は、本当にあの木本なのだろうか。
いつもビクビク授業をしている木本と、まるで違う。

「監督、大丈夫ですか?」

頭を抱えうずくまる大門入人に心配そうに声をかけている。

「また、発作ですね。任せてください」

木本は何かを探すように辺りを見渡し、地面に転がっている一台のスマホを見つけて不気味に笑った。

「そんな所にあったのか。未来、持ってこい」

「あ、あ」

ふらふらと、羽織っていた白衣が落ちたのも気に留めず真野先生は歩き出した。

「せ、先生!」

私の言葉はまるで届いておらず、落ちているスマホを拾いあげ、それを木本に渡す。

「いい子だ。ほら、ご褒美だ」

「はぁ、ん」

真野先生が木本を見上げる形で首を上に上げ、そして、木本も口を開け、そこから‥。

私はその光景から目を逸らす。

これは、夢だ。
悪い、夢。

「監督、これを」

不協和音が耳に届く。
その音は、不快な筈なのに、私はその音を発している先を目で追った。

スマホから出る怪しげで魅力的な光。
それを見ている大門入人の瞳が虚ろになり、画面から光が消えると同時に立ち上がった。

「‥彼は?」

指さす方向にいるのは、木本と一緒に来た一人の生徒。

「新入生の真中信雄まなかのぶおです。監督が探してくるように言っていた新キャストです」

「‥ほう。よくやった——」

その言葉に、木本の顔が輝く。

「——とでも言うと思ったか」

空気が、凍りつく。

「お前は本当に余計なことをしてくれる。そいつに暗示をかけているのか?」

「い、いえ」

「暗示もかけていないそいつがもし逃げて、この事が知れ渡ったらどうなると思う」

「そ、それは」

「足りない頭で考えろ。それが出来ないから、目ぼしい人間がいたらまずは教えろと言っただろ。誰が、この場に連れてこいと?」

木本の言葉を遮りながら、ゆっくりと、罵るように紡ぐ言葉は、離れて聞いている私の背筋が寒くなる程、何か恐ろしいモノだった。
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