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第四章

可憐な少女は扉を開ける②

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「今日の授業はここまで。今回出された課題を終わっていない生徒は次回までに提出するように」

起立、礼と委員長による号令がかかる。
丁度チャイムが鳴り、静寂に包まれた教室は一変し、クラスメイト達の話し声が飛び交う。

「副会長」

帰り支度をしている最中に、声を掛けられる。
私はその声に苛立ちを含んだ物言いで「何か」と聞き返した。

「悪いが、今日この後生徒会室に行ってくれないか」

大門入人は悪びれる態度も示さずそう言った。

「今日は生徒会は休みのはずですが」

「あぁ。だから、悪いけど、と言っている」

私は怪訝そうに眉をひそめる。
こいつが私に頼み事。嫌な予感しかしない。

「何故?」

「会長か副会長にしか頼めないお願いなんだ。無理なら会長にお願いしに行くが」

とんでも無い。
会長にこいつが話に行く、その負担は計り知れない。

「分かりました。私が行きます」

「助かるよ。これ」

机の上にそっと置かれたそれは、鍵だった。

「生徒会室の俺の机の引き出しの鍵。これの一番下の書類を持って来てくれ」

意味を測りかねる。

「ご自身でやられたらいいのでは?」

「それはそうなんだが、この後急遽校長に呼ばれていてな」

「今すぐに行けばいいのでは」

「そうか、無理か。そしたら一ノ瀬に」

伸ばしかかった手を途中で払うように、私は鍵を手に取った。

「ありがとう、助かるよ。では、また校長室で」

私の返事を待たずに、大門入人は教室を出て行った。

分かった。会長関係なしに私はこいつが嫌いだ。

放課後のホームルームが終わり、生徒会室の棟へと足を運ぶ。
全くもって気が滅入る。
会長がいない生徒会室なんてほぼ行く意味がない。
それも、嫌いな奴からの頼み事なのだから尚更だ。

そうだ、会長にメッセージを送ってみようか。
もし時間があるなら、色々とお喋りしたい。話題は、今後の生徒会についてなんてどうだろう。

スマホを取り出して会長にメッセージを送ろうとして、やめた。
駄目だ、こんな事で時間をとってしまっては。
私は一つ溜息をついて、生徒会室へ続く長い廊下を歩く。

扉に手をかけた瞬間、中から笑い声が聞こえて来た。
変だな、と思いながらも扉を開ける。
するとそこには、書記の高良さんと会計の夢野さんが座って楽しげに話していた。

私の気配に気づき、「あ、副会長~」と話しかけて来た。

「どうしたんですか?二人とも」

「えぇ~ちょっとガールズトークをしてたんですよ~」

「が、ガールズトーク?」

その聞き慣れないワードに私は顔が赤くなるのを感じた。

「そうです~。副会長もどうですか」

「け、結構です」

残念、とあははっと笑う二人。

いくつかの違和感を覚える。
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