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第三章
肝試しは吊り橋効果をもたらす④
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~保科 郁美~
りんりーん。
とゴール間近を知らせる鐘が室内に響いた。
「やっと来たわね」
由紀ちゃんが待ちくたびれたわとため息と共にそう吐き出し、ペットボトルを二人分用意する。
「記念すべき1組目のカップルは、あの野球部のエースとマネージャーらしいわ」
「き、北見くんと紅葉さん?お似合いだよね」
「お似合いかどうか知らないけど、まぁ、馬鹿ップルね」
酷い言い方‥。
「さっさと付き合ったらいいのに。どうせ男の方が何か付き合えない理由があるんでしょ」
「り、理由?」
「他に好きな女がいるとか」
「‥はぁ。由紀ちゃんは本当に夢がない」
私はさっきの由紀ちゃんのようにため息をついてみる。
「男なんてみんな獣よ。あんたも気をつけなさい」
「わ、わたしはそんな‥」
「あなたが好きな男が出来たら私に教えなさいよ。どんな男か見極めてやるから」
「本当に、お母さんみたいなこと言わないでよぉ」
お母さんも全く同じことを言っていた。私が男と付き合う時は教えなさいって。
そんな機会、無いと思うんだけど。
「まぁあんたに限って男はないか。ほら、このペットボトルはあんたが渡して。マネージャーの方をね」
「わ、わかったよ」
私はペットボトルを手に取る。少し震えていた。
だめだな、こんな事で緊張していたら。
「それにしても遅いわね。イチャついているんじゃないの?」
「い、いちゃ⁈」
顔が真っ赤になる。
しかしその時、ガチャっと扉が開いた。
「お、開いた。ほら、ゴールだ」
入ってきたのは、予定通り北見くんと紅葉さん。
ぎゅっと北見くんの腕を掴んでいる紅葉さんは、とても可愛かった。
「はい、お疲れ様」
由紀ちゃんが北見くんにペットボトルを渡す。
「お、風花じゃん。サンキュー」
「怖かった?」
「全然余裕だよ」
仲良さげに話す二人。確か、去年一昨年と同じクラスだったはずだ。
その姿を頬を膨らませながら目を細くして紅葉さんが見ている。
つい可愛いなと思ってしまった。
「も、紅葉さんこれ」
私もペットボトルを渡す。
「あ、ありがとう保科ちゃん」
「な、なんで私の名前?」
「えぇー、だって保科ちゃんは可愛いって有名だよ」
「あぁ。俺のクラスでも保科の事可愛いっていうやついるぜ?」
そう発言する北見くんをまたじーっと紅葉ちゃんが見つめる。北見くん、気づいているのかなぁ。
「さぁ、次も控えているから、さっさと退散して—‐」
ちりりーん。ちりりーん。
「そと、へ‥あ、れ」
予定のないベルの音。その音で、由紀ちゃんの動きが止まった。
そして、少ししてから「ふふふっ」と、笑い、北見くんのワイシャツを引っ張って、そのまま、口に‥!
「ゆ、ゆきちゃ」
由紀ちゃん!と叫ぼうとしたけど、何故か声が出ない。
何が、どうなっているの。
由紀ちゃんは舌を出し、「ほらぁ、あんたも舌出しなさいよ」と北見くんに言っている。
北見くんは、「あ、あ」と何か言おうとしているが、言われた通り舌を出した。
二人の、舌と舌が‥。
ぴちょ、れろ、と音がする。
止めたいのに、止められない‥!
も、紅葉ちゃんは?
私は辛うじて動く首を紅葉ちゃんに向けると、そこでは信じられない光景があった。
りんりーん。
とゴール間近を知らせる鐘が室内に響いた。
「やっと来たわね」
由紀ちゃんが待ちくたびれたわとため息と共にそう吐き出し、ペットボトルを二人分用意する。
「記念すべき1組目のカップルは、あの野球部のエースとマネージャーらしいわ」
「き、北見くんと紅葉さん?お似合いだよね」
「お似合いかどうか知らないけど、まぁ、馬鹿ップルね」
酷い言い方‥。
「さっさと付き合ったらいいのに。どうせ男の方が何か付き合えない理由があるんでしょ」
「り、理由?」
「他に好きな女がいるとか」
「‥はぁ。由紀ちゃんは本当に夢がない」
私はさっきの由紀ちゃんのようにため息をついてみる。
「男なんてみんな獣よ。あんたも気をつけなさい」
「わ、わたしはそんな‥」
「あなたが好きな男が出来たら私に教えなさいよ。どんな男か見極めてやるから」
「本当に、お母さんみたいなこと言わないでよぉ」
お母さんも全く同じことを言っていた。私が男と付き合う時は教えなさいって。
そんな機会、無いと思うんだけど。
「まぁあんたに限って男はないか。ほら、このペットボトルはあんたが渡して。マネージャーの方をね」
「わ、わかったよ」
私はペットボトルを手に取る。少し震えていた。
だめだな、こんな事で緊張していたら。
「それにしても遅いわね。イチャついているんじゃないの?」
「い、いちゃ⁈」
顔が真っ赤になる。
しかしその時、ガチャっと扉が開いた。
「お、開いた。ほら、ゴールだ」
入ってきたのは、予定通り北見くんと紅葉さん。
ぎゅっと北見くんの腕を掴んでいる紅葉さんは、とても可愛かった。
「はい、お疲れ様」
由紀ちゃんが北見くんにペットボトルを渡す。
「お、風花じゃん。サンキュー」
「怖かった?」
「全然余裕だよ」
仲良さげに話す二人。確か、去年一昨年と同じクラスだったはずだ。
その姿を頬を膨らませながら目を細くして紅葉さんが見ている。
つい可愛いなと思ってしまった。
「も、紅葉さんこれ」
私もペットボトルを渡す。
「あ、ありがとう保科ちゃん」
「な、なんで私の名前?」
「えぇー、だって保科ちゃんは可愛いって有名だよ」
「あぁ。俺のクラスでも保科の事可愛いっていうやついるぜ?」
そう発言する北見くんをまたじーっと紅葉ちゃんが見つめる。北見くん、気づいているのかなぁ。
「さぁ、次も控えているから、さっさと退散して—‐」
ちりりーん。ちりりーん。
「そと、へ‥あ、れ」
予定のないベルの音。その音で、由紀ちゃんの動きが止まった。
そして、少ししてから「ふふふっ」と、笑い、北見くんのワイシャツを引っ張って、そのまま、口に‥!
「ゆ、ゆきちゃ」
由紀ちゃん!と叫ぼうとしたけど、何故か声が出ない。
何が、どうなっているの。
由紀ちゃんは舌を出し、「ほらぁ、あんたも舌出しなさいよ」と北見くんに言っている。
北見くんは、「あ、あ」と何か言おうとしているが、言われた通り舌を出した。
二人の、舌と舌が‥。
ぴちょ、れろ、と音がする。
止めたいのに、止められない‥!
も、紅葉ちゃんは?
私は辛うじて動く首を紅葉ちゃんに向けると、そこでは信じられない光景があった。
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