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第三章
少女は数と共に快楽に溺れる①
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今、私の周りには数字がぐるぐると回っている。
わぁ。
近くにある数字を手に取ると、それが泡となり消えた。
しかし消えた数字がまた別のところで浮かび上がる。
まるで私をからかっているみたいだ。
まってよー、いまそっちにいくから
楽しい気持ちになり、手を伸ばしたところで、遠いところから声が聞こえてきた。
‐の
‐‐めの
‐‐‐ゆめの
「——おい、夢野!」
耳元で怒鳴り声がする。
私は体を大きく反応させた。
周りをキョロキョロと見渡すと、そこは教室で、みんな私の方を見ていた。
あー、またやってしまった。
「今は授業中だ」
冷ややかな目線を浴びながら、私はぺこりと頭を下げる。
「お前が特別な生徒だと言う事は知っている。だが、数学以外の授業だからって、堂々と寝られたら困るんだよ」
顔も名前も分からない教師にもう一度ぺこりと下げる。
手には英語の教科書。
‥英語の先生?見たことは、あったかなー。
「次のページを‥」
教師が教卓へ戻り、授業再開。
あー、駄目だ。
今座ると、また眠ってしまう‥。
でも、立ったままじゃあまた迷惑かけるし。
私は嫌々席に座った。
教師が喋る外国語。
それが子守唄のように私に襲いかかる。
英語なんて、私には必要ないのに。
時計を見ていると、数字が剥がれ浮き始める。
上下に揺れ、こっちだよ、と誘っているよう。
だめー。今寝ちゃうと、怒られるから。
しゅん、と数字が落ち込むように下に落ちて消えた。
でも、やっぱり駄目だなー。
夢の中はいいよー
数字で囲まれるよー
教室内のあらゆる数字が私を誘ってくる。
これは、全部妄想。そんなことわかってるけど、幸せなんだよー。
私はまた、誘われるようにして数字に囲まれる世界へ入っていった。
---
--
-
「本当、困りましたよ。夢野には」
職員室で、英語教諭の横山敬之助が憤慨していた。
彼は今年で教師生活三年目。生徒からも一定の信頼を得られ始め、教師という仕事に慣れ始めた頃だろう。
隣にいるのは数学教諭の足立美空でこちらは確か8年目。先月彼氏と別れ、婚期を逃しましたと冗談っぽく言っていた。
その足立がまぁまぁ、と優しく横山の肩に手を置いている。
「俺もまだ教師になって日は浅いですが、あんな生徒は初めてです。毎回寝られるとたまったもんじゃない」
「あの子はちょっと特殊でね」
「いや、彼女が数学方面に秀でた生徒というのは理解してますよ。でもね‥。そうだ、生徒会ではどうです?」
急に話を振られる。
俺は極力明るい口調を意識し答えた。
「基本、寝てますね。でも、優秀ですよ。数字が絡むと大人顔負けです」
横山がなんとも言えない、困った顔をした。
足立がうん、うんと何度か頷き「私から言っておきますね」と頭を下げる。
お願いします、と同じように頭を下げ横山が自分の席に戻った。
ここ、先帝高校は文武共に優れた人材しか求めない。それも一芸に秀でたタイプより万能タイプを求める。
その校風に則って言えば、夢野が受かる道理はないのだが、彼女の一芸があまりにも突出していた為、足立美空の推薦もあり、合格したわけだ。
わぁ。
近くにある数字を手に取ると、それが泡となり消えた。
しかし消えた数字がまた別のところで浮かび上がる。
まるで私をからかっているみたいだ。
まってよー、いまそっちにいくから
楽しい気持ちになり、手を伸ばしたところで、遠いところから声が聞こえてきた。
‐の
‐‐めの
‐‐‐ゆめの
「——おい、夢野!」
耳元で怒鳴り声がする。
私は体を大きく反応させた。
周りをキョロキョロと見渡すと、そこは教室で、みんな私の方を見ていた。
あー、またやってしまった。
「今は授業中だ」
冷ややかな目線を浴びながら、私はぺこりと頭を下げる。
「お前が特別な生徒だと言う事は知っている。だが、数学以外の授業だからって、堂々と寝られたら困るんだよ」
顔も名前も分からない教師にもう一度ぺこりと下げる。
手には英語の教科書。
‥英語の先生?見たことは、あったかなー。
「次のページを‥」
教師が教卓へ戻り、授業再開。
あー、駄目だ。
今座ると、また眠ってしまう‥。
でも、立ったままじゃあまた迷惑かけるし。
私は嫌々席に座った。
教師が喋る外国語。
それが子守唄のように私に襲いかかる。
英語なんて、私には必要ないのに。
時計を見ていると、数字が剥がれ浮き始める。
上下に揺れ、こっちだよ、と誘っているよう。
だめー。今寝ちゃうと、怒られるから。
しゅん、と数字が落ち込むように下に落ちて消えた。
でも、やっぱり駄目だなー。
夢の中はいいよー
数字で囲まれるよー
教室内のあらゆる数字が私を誘ってくる。
これは、全部妄想。そんなことわかってるけど、幸せなんだよー。
私はまた、誘われるようにして数字に囲まれる世界へ入っていった。
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「本当、困りましたよ。夢野には」
職員室で、英語教諭の横山敬之助が憤慨していた。
彼は今年で教師生活三年目。生徒からも一定の信頼を得られ始め、教師という仕事に慣れ始めた頃だろう。
隣にいるのは数学教諭の足立美空でこちらは確か8年目。先月彼氏と別れ、婚期を逃しましたと冗談っぽく言っていた。
その足立がまぁまぁ、と優しく横山の肩に手を置いている。
「俺もまだ教師になって日は浅いですが、あんな生徒は初めてです。毎回寝られるとたまったもんじゃない」
「あの子はちょっと特殊でね」
「いや、彼女が数学方面に秀でた生徒というのは理解してますよ。でもね‥。そうだ、生徒会ではどうです?」
急に話を振られる。
俺は極力明るい口調を意識し答えた。
「基本、寝てますね。でも、優秀ですよ。数字が絡むと大人顔負けです」
横山がなんとも言えない、困った顔をした。
足立がうん、うんと何度か頷き「私から言っておきますね」と頭を下げる。
お願いします、と同じように頭を下げ横山が自分の席に戻った。
ここ、先帝高校は文武共に優れた人材しか求めない。それも一芸に秀でたタイプより万能タイプを求める。
その校風に則って言えば、夢野が受かる道理はないのだが、彼女の一芸があまりにも突出していた為、足立美空の推薦もあり、合格したわけだ。
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