催眠学校〜今日から君はAV監督〜

本田 壱好

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第三章

兎は穢れなき花の匂いを嗅ぐ①

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「えぇ!二年一組は喫茶店にするの?いいなぁ」

放課後の生徒会室。

黙々と作業をしている生徒会長と副会長を他所に羨ましいと声を発したのは美兎だった。

「うんー。そうみたいなんだよねぇ」

話し相手は同級生の夢野数理。
彼女が口を開いている所を初めて見た。しかし机に寝そべっており、今にも目を閉じそうだ。

「いいなぁ、いいなぁ」

美兎が羨ましそうな声でピョンピョンその場で跳ねる。

「いいのかなぁ。よくわからない、け、ど」

彼女は最後まで言い切るまえに目を閉じた。
凄い。ここまできたら特技だな。

「夢野さん。寝ている場合じゃありませんよ。昨年度の会計処理がまだ」

ひらり、と紙を一枚河合に渡す。
それに河合は目を通し、「それじゃあ、今期の予算計画書を‥」と言いかけるが

「‥ん」

またもや紙を一枚渡した。
息を軽く吸い、その紙をじっくり読む。そして「いいでしょう」と一言だけいって一ノ瀬の横に移動した。

「出来上がっていたのか?」

「‥‥」

無視。随分嫌われたもんだ。

「いり、じゃなくて先生!先生のクラスは何をするの?」

気を遣ってくれたのか美兎が質問してくる。

「お化け屋敷だよ」

「お化け屋敷‥いいなぁ」

天井を見上げ、何か想像している。俺の方へ視線を移すと「カップルは大喜びですね!」と少し顔を赤くしていってきた。

「どうだろうな。そういうコンセプトで作ったんじゃないと思うが」

「会長が指示を出したら怖そう‥」

「一ノ瀬が中心でやってくれてる」

「私、無理かも」

目を伏せ体を身震いさせた。

「確かに、優秀な一ノ瀬なら日本一怖いお化け屋敷が作れそうだな」

その言葉を受け、絶対零度の視線を俺に向けたが忙しいのかすぐに資料に取り掛かった。

ランクが高い生徒は扱いに困るな。

俺は腕時計を見る。

15.59分。もうすぐだ。

「さっきからずっと時計を見てるけど、何かあるの?」

「うん?いや、何も」

俺のことをよく見ている美兎がキョトンとした顔になる。
そうだ、今日は素晴らしい事が起きるぞ。
お前に新たな扉を開けさせてやろう。

前もって準備はしてきた。
後、10秒前。

‥3.2.1。

ゼロ。
さぁ、ショータイムの始まりだ。

『やめてよ!』

窓の外から大きな声が聞こえてきた。
始まったな。

一ノ瀬がすかさず窓を開けて外を確認すると、一瞬大きな目が見開かれた。
そしてそのまま生徒会室を飛び出していく。

「会長⁈」

慌てて河合と美兎が追いかける。

ほぅ。これは意外だ。
まさか一ノ瀬が真っ先に出るとは。美兎が理想なのだが、まぁいい。俺も後へ続いた。

大声が聞こえてきた場所は、備蓄倉庫。そこにいたのは、多部と山之内、そして怯えた表情の百合智永だった。

「‥何をしているの」

一ノ瀬が冷たい口調で話す。

その言葉で二人の虚ろな瞳に光が戻る。

「あ、れ?俺ら、何を」

混乱している二人を無視し、河合が震えている百合に近づき「どうしたの?」と聞いた。








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