7 / 133
第一章
門出⑤
しおりを挟む
「どうぞ」
風花は立ち上がり、挑むように話し始める。
「先程の全校集会での先生のお話ですが、少し無責任だと思います」
「と、いうと?」
「先生はこの学校のOBで、生徒会長を任せられる程の優秀な生徒だったんですよね?その見本となる存在が、あのような不適切な発言は宜しくないかと」
あのやんちゃ発言か。
最前列の保科が「由紀ちゃんっ」と慌てて声をかけている。
「この学校を選んだ生徒達は皆大なり小なり目標を持ってここに来ました。毎日必死で勉学やスポーツに励む。その一心です。先生の言葉を真に受けて、問題行動を取る生徒が出て来た場合、どうするおつもりですか?」
要は学校の風紀を乱す輩が出てこないか心配なのだろう。
自分が生徒会長だった頃の風紀委員長はここまで厳格ではなかった。
やはり、見切り発車での発言は失敗だったな。
僕は出来る限り丁寧に説明する。
「少し誤解があるね。僕は別に、問題行動を促したわけではないよ。あの場で言ったように、君たちはとても優秀だ。だけど、周りからのプレッシャーも凄いだろう。失敗をしてはいけない、期待に応えなければいけない。でも失敗する時もあるだろう。何も失敗は終わりではない」
「それがどうしてやんちゃな行動の話に繋がるんですか」
「思春期年齢の高校生だ。少しの粗相をしてしまう子もいるだろう。それが、何かをサボってしまうとか、反抗的な態度を取ってしまうとか。そんな子に、内省すればやり直しは効くと伝えたかった」
「先生の仰りたい事がよく分かりません。私が聞きたいのは、もしやんちゃを犯罪行為と捉えた生徒が—--」
「もういいでしょ」
ヒートアップしていく風花を止めたのは、一ノ瀬だった。
凛としたその声で場が静まり返る。
「風紀委員長。これ以上は不毛よ」
「でも」
「私からすれば、あなたも何が言いたいのか分からないわ」
淡々とした物言いに、風花が顔を真っ赤にさせる。
「私はただ、教師の見本となる先生が」
「あなたが勝手にイメージしていた先生像が、現実と異なっていたから八つ当たりしてるだけでしょ?ホームルームの時間を自身のストレス発散の場に使ってほしくないわ」
おいおい。流石にこの場でそんな。
風花は悔しそうに口をキュッと結んだ。何か言いかけようとしたが、そのまま座る。
大人だ。
「それに、他人から聞いた言葉を自己判断も出来ずそのまま受け入れ、素行に走る生徒なんてこの学校にはいないわ。風花さん。あなたもそうでしょう」
その言葉に風花はハッとした顔になり表情を緩めた。
上手いな。これで僕のあの場での発言は完全に意味をなさなくなった。
今の生徒会長の一言で、もっと努力せねば、寄り道をしている場合ではない。そんな張り詰めた空気が流れる。
「先生、続けてください」
皆が姿勢を正した。
あのテンション高く質問した相川ですら緊張感を持った顔で前を向いている。
ここまで影響力がある高校生は珍しい。
「あぁ。僕も余計な一言だったね。風花さん、すまなかった」
風花は「‥いえ」と小さく答える。
「他に質問が無ければ、朝のホームルームを始めたいと思います」
生徒会長一ノ瀬詩。
面白そうな生徒だな。
風花は立ち上がり、挑むように話し始める。
「先程の全校集会での先生のお話ですが、少し無責任だと思います」
「と、いうと?」
「先生はこの学校のOBで、生徒会長を任せられる程の優秀な生徒だったんですよね?その見本となる存在が、あのような不適切な発言は宜しくないかと」
あのやんちゃ発言か。
最前列の保科が「由紀ちゃんっ」と慌てて声をかけている。
「この学校を選んだ生徒達は皆大なり小なり目標を持ってここに来ました。毎日必死で勉学やスポーツに励む。その一心です。先生の言葉を真に受けて、問題行動を取る生徒が出て来た場合、どうするおつもりですか?」
要は学校の風紀を乱す輩が出てこないか心配なのだろう。
自分が生徒会長だった頃の風紀委員長はここまで厳格ではなかった。
やはり、見切り発車での発言は失敗だったな。
僕は出来る限り丁寧に説明する。
「少し誤解があるね。僕は別に、問題行動を促したわけではないよ。あの場で言ったように、君たちはとても優秀だ。だけど、周りからのプレッシャーも凄いだろう。失敗をしてはいけない、期待に応えなければいけない。でも失敗する時もあるだろう。何も失敗は終わりではない」
「それがどうしてやんちゃな行動の話に繋がるんですか」
「思春期年齢の高校生だ。少しの粗相をしてしまう子もいるだろう。それが、何かをサボってしまうとか、反抗的な態度を取ってしまうとか。そんな子に、内省すればやり直しは効くと伝えたかった」
「先生の仰りたい事がよく分かりません。私が聞きたいのは、もしやんちゃを犯罪行為と捉えた生徒が—--」
「もういいでしょ」
ヒートアップしていく風花を止めたのは、一ノ瀬だった。
凛としたその声で場が静まり返る。
「風紀委員長。これ以上は不毛よ」
「でも」
「私からすれば、あなたも何が言いたいのか分からないわ」
淡々とした物言いに、風花が顔を真っ赤にさせる。
「私はただ、教師の見本となる先生が」
「あなたが勝手にイメージしていた先生像が、現実と異なっていたから八つ当たりしてるだけでしょ?ホームルームの時間を自身のストレス発散の場に使ってほしくないわ」
おいおい。流石にこの場でそんな。
風花は悔しそうに口をキュッと結んだ。何か言いかけようとしたが、そのまま座る。
大人だ。
「それに、他人から聞いた言葉を自己判断も出来ずそのまま受け入れ、素行に走る生徒なんてこの学校にはいないわ。風花さん。あなたもそうでしょう」
その言葉に風花はハッとした顔になり表情を緩めた。
上手いな。これで僕のあの場での発言は完全に意味をなさなくなった。
今の生徒会長の一言で、もっと努力せねば、寄り道をしている場合ではない。そんな張り詰めた空気が流れる。
「先生、続けてください」
皆が姿勢を正した。
あのテンション高く質問した相川ですら緊張感を持った顔で前を向いている。
ここまで影響力がある高校生は珍しい。
「あぁ。僕も余計な一言だったね。風花さん、すまなかった」
風花は「‥いえ」と小さく答える。
「他に質問が無ければ、朝のホームルームを始めたいと思います」
生徒会長一ノ瀬詩。
面白そうな生徒だな。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる