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16話
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お屋敷に到着した。玄関へと続く石畳の玄関を歩いていると、庭の方から声が聞こえてきた。
「染谷くん、僕と勝負をしろ!」
「はぁ?昨日相手してやったばっかじゃないか」
「僕は勝つまで君と勝負をするのをやめない!」
「めんどくさい奴だな。というかお前、今停学処分中だろ。外に出んなよ」
結城誠くん。クリスくんに決闘を申し込んで、ろくに相手にしてもらえなかった可哀想な子ね。
私がクリスくんと契約をしたあの日、私達は使い魔に意識を乗っ取られつつあった結城くんと戦った。
クリスくんが結城くんを説得して、卑怯な手は使わずに真っ向から勝負することになったの。
結果は目に見えていたけれどね。もちろん私達の勝ちよ。
結城くんは私達に倒されて悔しそうにしていた。そんな結城くんにクリスくんがこう言ったの。
「ごめん」って。それからこうも言った。
「あの時は酷いことを言って済まなかった。あの時の言葉を撤回するよ。お前は強かった」
あのプライドの高いクリスくんが謝ったのよ!しかも結城くんの強さを認めたの。
でも確かに結城くんは強かった。流石はAランクなだけある。きっとクリスくんに断られてからもずっと努力を続けてたのね。
私、努力家な人は好きよ。私を虐めようとしたり卑怯な手を使って襲ってこようとしたのは許せないけれど、ひたむきに努力する姿は同士として認めてあげてもいいかもね。それに元はと言えばクリスくんが酷いことを言ったのが原因なんだから。
「クリスくん、結城くん!ただいま!」
2人が振り返る。
「モモカ!」
「都築さん!」
2人は一斉に私の元へとやってきた。
「都築さん、僕の使い魔と勝負をしてください!」
「モモカ。こいつの話に耳を傾けるな」
「新しい使い魔を探してきたんです。ランクは下がっちゃったけど……でも、これからはちゃんとこいつと信頼関係を築くって決めました」
結城くんは呪文を唱えて、1匹のネズミを召喚した。あらかわいい。
ユキノくんが私を後ろから抱きしめ、2人から引きはなす。
「モモカさんは、ユキノと今カラ訓練をする。遊んでル暇はナイ」
「ユキノ。お前、随分とモモカのことを気にいっているみたいじゃないか。前はそんなにピッタリとくっついていた覚えはないが、一体どういう風の吹きまわしだ」
「クリスさんを守る役目ハ終わっタ。ユキノ、これからはモモカさんを守ルって決めタ」
「だがお前は使い魔だろ」
「使い魔が使い魔ヲ守っちゃいけナイなんてルールはナイ」
……たしかに。
「ユキノ、モモカさんを傷つけた結城サンを許さナイ。だから勝負なんてさせナイ」
……私、こういう可愛い子に弱いのよ。つい甘やかしたくなっちゃう。
「ユキノくん安心して。私だって使い魔よ。自分の限界は理解してるし、結城くんと今は戦うつもりはないから」
私は鞄から1枚の紙を取り出し結城くんに渡す。
「結城くん、これ。約束していたものよ」
「ありがとうございます、都築さん」
「何だこの紙は」
クリスくんが紙を覗き込む。
「使い魔バトルの参加届じゃないか。どうしてお前がこれを?」
「言ったでしょ。私も使い魔バトルに参加することにしてたって。だけど私はもう参加できないから代わりに結城くんに出てもらうことにしたの。ね、結城くん」
これは私なりの償いみたいなものだ。
「結城くん。本当にクリスくんと戦いたいなら、このバトルで優勝してちょうだい。もちろん優勝くらい、あなたなら簡単にできるよね?」
私が結城くんに微笑みかけると、結城くんは「が、頑張ります……」と萎縮した。
さすがに勝てる自信はないみたい。
「何勝手に約束してるんだ。俺はこいつと戦うとは一言も_____」
「クリスくん。私は別にあなたの秘密をバラしてあげてもいいのよ?」
結城くんが頭をかしげる。
「秘密?」
「そう。実はね、クリスくんは女の子が好むような可愛らしい小説を……」
「言うな馬鹿!」
クリスくんが私の口を塞ぐ。私はクリスくんの手をやんわりと払った。
「それから、強くなることを追い求めるのもいいけど、ちゃんと使い魔のことも気にかけてあげるのよ。あまり無茶をさせたら、逃げ出しちゃうかもしれないからね」
結城くんの使い魔のネズミさんを指で撫でながらクリスくんをチラッと見ると、クリスくんは決まりが悪そうな顔をしている。
ふふ。あなたはもう私に頭が上がらないでしょ。
私がいないと生きていけないって顔をしてるから私はあなたの使い魔に戻ってあげたの。だけど私はこれからも、あなたの指示に素直に従うつもりなんてないんだから。
私のことをそばに置いておきたいなら、これからはちゃんと私を甘やかして、褒めて、「あなたがいなくちゃ生きていけない」って私にも思わせてちょうだい。
-----
ここまで読んでいただきありがとうございました!拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
長々と書いた割にはキャラの掘り下げが少し足りない気もするのでしばらくしたら改訂版も上げたいと思います!
お気に入りを入れてくださった方、栞を入れてくださった方、そして何より読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!
「染谷くん、僕と勝負をしろ!」
「はぁ?昨日相手してやったばっかじゃないか」
「僕は勝つまで君と勝負をするのをやめない!」
「めんどくさい奴だな。というかお前、今停学処分中だろ。外に出んなよ」
結城誠くん。クリスくんに決闘を申し込んで、ろくに相手にしてもらえなかった可哀想な子ね。
私がクリスくんと契約をしたあの日、私達は使い魔に意識を乗っ取られつつあった結城くんと戦った。
クリスくんが結城くんを説得して、卑怯な手は使わずに真っ向から勝負することになったの。
結果は目に見えていたけれどね。もちろん私達の勝ちよ。
結城くんは私達に倒されて悔しそうにしていた。そんな結城くんにクリスくんがこう言ったの。
「ごめん」って。それからこうも言った。
「あの時は酷いことを言って済まなかった。あの時の言葉を撤回するよ。お前は強かった」
あのプライドの高いクリスくんが謝ったのよ!しかも結城くんの強さを認めたの。
でも確かに結城くんは強かった。流石はAランクなだけある。きっとクリスくんに断られてからもずっと努力を続けてたのね。
私、努力家な人は好きよ。私を虐めようとしたり卑怯な手を使って襲ってこようとしたのは許せないけれど、ひたむきに努力する姿は同士として認めてあげてもいいかもね。それに元はと言えばクリスくんが酷いことを言ったのが原因なんだから。
「クリスくん、結城くん!ただいま!」
2人が振り返る。
「モモカ!」
「都築さん!」
2人は一斉に私の元へとやってきた。
「都築さん、僕の使い魔と勝負をしてください!」
「モモカ。こいつの話に耳を傾けるな」
「新しい使い魔を探してきたんです。ランクは下がっちゃったけど……でも、これからはちゃんとこいつと信頼関係を築くって決めました」
結城くんは呪文を唱えて、1匹のネズミを召喚した。あらかわいい。
ユキノくんが私を後ろから抱きしめ、2人から引きはなす。
「モモカさんは、ユキノと今カラ訓練をする。遊んでル暇はナイ」
「ユキノ。お前、随分とモモカのことを気にいっているみたいじゃないか。前はそんなにピッタリとくっついていた覚えはないが、一体どういう風の吹きまわしだ」
「クリスさんを守る役目ハ終わっタ。ユキノ、これからはモモカさんを守ルって決めタ」
「だがお前は使い魔だろ」
「使い魔が使い魔ヲ守っちゃいけナイなんてルールはナイ」
……たしかに。
「ユキノ、モモカさんを傷つけた結城サンを許さナイ。だから勝負なんてさせナイ」
……私、こういう可愛い子に弱いのよ。つい甘やかしたくなっちゃう。
「ユキノくん安心して。私だって使い魔よ。自分の限界は理解してるし、結城くんと今は戦うつもりはないから」
私は鞄から1枚の紙を取り出し結城くんに渡す。
「結城くん、これ。約束していたものよ」
「ありがとうございます、都築さん」
「何だこの紙は」
クリスくんが紙を覗き込む。
「使い魔バトルの参加届じゃないか。どうしてお前がこれを?」
「言ったでしょ。私も使い魔バトルに参加することにしてたって。だけど私はもう参加できないから代わりに結城くんに出てもらうことにしたの。ね、結城くん」
これは私なりの償いみたいなものだ。
「結城くん。本当にクリスくんと戦いたいなら、このバトルで優勝してちょうだい。もちろん優勝くらい、あなたなら簡単にできるよね?」
私が結城くんに微笑みかけると、結城くんは「が、頑張ります……」と萎縮した。
さすがに勝てる自信はないみたい。
「何勝手に約束してるんだ。俺はこいつと戦うとは一言も_____」
「クリスくん。私は別にあなたの秘密をバラしてあげてもいいのよ?」
結城くんが頭をかしげる。
「秘密?」
「そう。実はね、クリスくんは女の子が好むような可愛らしい小説を……」
「言うな馬鹿!」
クリスくんが私の口を塞ぐ。私はクリスくんの手をやんわりと払った。
「それから、強くなることを追い求めるのもいいけど、ちゃんと使い魔のことも気にかけてあげるのよ。あまり無茶をさせたら、逃げ出しちゃうかもしれないからね」
結城くんの使い魔のネズミさんを指で撫でながらクリスくんをチラッと見ると、クリスくんは決まりが悪そうな顔をしている。
ふふ。あなたはもう私に頭が上がらないでしょ。
私がいないと生きていけないって顔をしてるから私はあなたの使い魔に戻ってあげたの。だけど私はこれからも、あなたの指示に素直に従うつもりなんてないんだから。
私のことをそばに置いておきたいなら、これからはちゃんと私を甘やかして、褒めて、「あなたがいなくちゃ生きていけない」って私にも思わせてちょうだい。
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ここまで読んでいただきありがとうございました!拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
長々と書いた割にはキャラの掘り下げが少し足りない気もするのでしばらくしたら改訂版も上げたいと思います!
お気に入りを入れてくださった方、栞を入れてくださった方、そして何より読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!
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2021.08.13
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