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終章 未来へ
◆セルジュ―役割
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イリアスの葬儀の翌日、上弦の月の夜に「新聖女封印の儀」が執り行われた。
教皇猊下の心身が気がかりだったが、杞憂に終わった。悲しみをおくびにも出さず、毅然とした態度で儀式に臨んで見せた。
新しい聖女様が眠りについた直後は闇の魔力が安定せず、外の魔物も強いままだ。封印が定着して魔物が弱体化するまで、3ヶ月ほどかかるだろう。
イリアスのあの事件から10日弱。聖女様の封印が解かれてからは、1ヶ月。
何をしても、何もしていなくとも、時間は過ぎる。
そろそろ前に進まなくてはならない……。
◇
「お呼びでしょうか、父上」
「ああ」
「聖女封印の儀」の翌日。
朝食後、父の執務室へ。時刻は朝の8時。
聖銀騎士団の団長になってから、父と顔を合わせる機会が減った。
むろん、疎遠になったというわけではない。家族仲は良好だ。
父には侯爵の仕事、私には聖銀騎士団の仕事があり、何より私には新しい家庭がある。仕事が終わればそれぞれの居住スペースへ帰る――それだけのこと。
大事な話や何か異常があった時に限り、こうやって執務室へ呼び出されるのだが……。
「……何かあったのでしょうか」
「お前の今日の予定を教えてくれ」
「私の予定……?」
「ああ。できるだけ細かく」
「……?」
――なぜそんなことを聞くのだろう。シルベストル家に、そのような習慣はないのだが……。
「このあと、フランツを見舞いに行きます」
「フランツ……そうか」
私の言葉を聞き、父は渋い顔をしてうなる。
イリアスの一連の騒動のあと、フランツは倒れた。
数日間高熱に浮かされ、熱が少し治まったあとも下がりきらず、微熱・頭痛・吐き気といった症状が続いた。
言うまでもなく、心因性のものだ。異様極まりない姿態の男が眼前に現れ殺されかかった上、その男が目の前で死んだ。落雷からの火事も恐ろしかったことだろう。
あまつさえ、「お前のせいでセルジュが死ぬ」といったようなことまで言われ……。
あの日目にしたあらゆる事象が、フランツの心に大きな傷を負わせた。
屋敷の者の心からはイリアスの記憶がどんどん消えていっているのに、フランツの心には焦げ付いて残ってしまった。
イリアスは死んだ。だが、何もかもが終わったわけではないということを別の方向から思い知らされる……。
「……フランツを見舞ったあと、午後からシリル殿の元へ参ります」
「シリル殿?」
「はい。シリル殿は、フランツの事情を知っておいでです。週――いえ、月に一度でもいいので、フランツの心のケアをしていただけるようお願いするつもりです」
「なるほど。あそこの孤児院には、"光の塾"の子供もいるからね」
「はい。教会や孤児院の行事があれば参加させたいと思っております。同年代の子との関わりで、少しでも気晴らしができれば……」
「なるほど。しかしそれではフランツは、孤児院にやられるのでは、と無用な不安にかられるのではないか?」
「もちろん、そういうつもりではないということは説明します。フランツ自身が安心を得られなければ、何も始まりませんから」
「なるほど、立派だ」
「…………、はい」
――何か言葉に含み……というか、トゲがあるような気がしたが、気のせいだろうか?
「……そのあとは」
「聖銀騎士団の詰所へ参ります」
「何の用事で?」
「『何の』……? ……あのようなことがあり、聖銀騎士団には顧問司祭がいない状態です。後任の方を探さねばなりませんし、不在にしていた間に溜まった業務もございます。また、我々聖銀騎士は聖女様をお守りする立場にありながら、その責務を果たすことができませんでした。今後このようなことが二度と起こらないよう、対策を考えていかねば……」
そこまで言ったところで、父は分かりやすく大きい溜息をついた。
「何か、お気に障ることがございましたでしょうか」
「いや、うん。……お前、よく働くね」
「ひと月も留守にしていたのだから当然です」
そう返すと、父は肩をすくめて苦笑いをした。
「それで、遅くまであくせくと働いて……帰りは深夜になるのかな」
「……父上。何かご不満がおありなら、おっしゃってください」
"あくせく"という言葉に嫌味がこもっているように感じて、つい語気が荒くなってしまう。
そんな私の様子を見て父は笑うのをやめ、今度は真顔になる。
「セルジュ。お前、一番大事なことを忘れているよ」
「一番、大事なこと」
「そう。お前にしか果たせない役割だ。……夫、そして、親という」
「え……」
「お前、せっかく戻ってきたというのに、妻子に顔を合わせていないらしいじゃないか。なぜだ?」
「それは……」
――父の言う通り、私は"あの日"……イリアス襲撃の日からずっと捜査や儀式に出ずっぱりで、妻と娘に顔を合わせていない。
「……今は、やらねばならないことが山積していて、少し落ち着いたらゆっくりと時間を、と――」
「フランツの見舞いはするのに、か? じゃあ、お前にとってフランツのことは"仕事"に分類されるわけだ」
「そのような……!」
「セルジュ。お前、思考停止しているよ。『落ち着いたらゆっくりと時間を』? それは一体いつになる。今日会った人間に、明日も会えるわけではない。……幸せな時間は突如奪われてしまうかもしれないことを、お前は身をもって思い知ったはず」
「…………」
――そうだ。ひと月前、私は毒を盛られて意識を失い、イリアスの操り人形と化した。
次に意識が戻ったのは、世界が終わるかどうかの瀬戸際のとき。私は腹を刺し貫いて術の拘束を解き、カイルに伝言を……。世界の破滅は食い止められたが、私は危うく命を落とすところだった。聖女様がいなければ、確実に死んでいた。
操られていたとき、停止していた意識の糸が引っ張られる感覚があった。カイルに食事を持っていったときに彼が発した、「お嬢さんは元気か」「親に会えなくなるのはすごく辛いんだ」という言葉を聞いた瞬間だった……。
会いたい。死の間際も、喋りながら頭の中に妻と娘の姿を思い描いていた。砦にいる間も、片時も忘れたことはなかった。
全てが終わった今、顔を合わせるのに何の障害もない。それなのになぜ会わないのか――。
「……顔を合わせると、二度と離れたくなくなる。何もかも投げ出してしまいそうで……」
「馬鹿だね、お前は。仕事は明日からにして、お前自身の責務を果たしなさい。……さあ、出ておいで、2人とも」
「!」
父の言葉から少し間を置いて、応接に続く扉が開いた。扉の向こうには、娘を抱く妻の姿――。
「あ……」
妻が泣きそうな顔で笑い、抱いていた娘を下に降ろす。
娘はしばらくキョロキョロしていたが、私を見つけると「ぱぱ」とにっこり笑って、こちらへ一直線に駆けてきた。
――前に会ったときより、走るのが上手だ……。
「セシル……」
「ぱぁぱ! だっこ! だっこぉ!」
両手を上げて抱っこをねだる娘――脇に手を入れて抱き上げると、娘は「きゃあ!」と甲高い声を上げて笑う。
「セシル、セシル……」
「ぱぱ、お、かーえーり!」
言いながら娘が私の頬をぺちぺちと叩く。柔らかくて、小さい……。
「ぱぱ」
「…………っ」
「ぱぱ? エーン、エーン?」
小さい手が、私の目元をぬぐう。
「イタイイタイ?」
「……大丈夫、痛くないよ。……あ、待っ、それは、痛いよ、セシル……」
整えていた髪をぐしゃぐしゃにして、娘は私の頭をバチバチと叩く。なぜか嬉しそうだ。
ふと気づくと、傍らに妻が立っていた。泣きそうな顔で笑うと懐からハンカチを取り出して私の涙を拭き、乱れた髪を手ぐしで整えてくれる。
娘を抱いていた手を片方離して妻を抱き寄せると、彼女の目からも涙がこぼれた。
「すまない、2人とも。会いたかった……本当に、会いたかった。それなのに僕は……ごめん、許して……」
――ああ、帰ってきた。やっと帰ってきたんだ。
帰るべきところへ。何を置いても守るべき人のところへ。
「……ただいま……」
掠れた声でそう言うと、「おかえり」という声が2つ返ってきた。
教皇猊下の心身が気がかりだったが、杞憂に終わった。悲しみをおくびにも出さず、毅然とした態度で儀式に臨んで見せた。
新しい聖女様が眠りについた直後は闇の魔力が安定せず、外の魔物も強いままだ。封印が定着して魔物が弱体化するまで、3ヶ月ほどかかるだろう。
イリアスのあの事件から10日弱。聖女様の封印が解かれてからは、1ヶ月。
何をしても、何もしていなくとも、時間は過ぎる。
そろそろ前に進まなくてはならない……。
◇
「お呼びでしょうか、父上」
「ああ」
「聖女封印の儀」の翌日。
朝食後、父の執務室へ。時刻は朝の8時。
聖銀騎士団の団長になってから、父と顔を合わせる機会が減った。
むろん、疎遠になったというわけではない。家族仲は良好だ。
父には侯爵の仕事、私には聖銀騎士団の仕事があり、何より私には新しい家庭がある。仕事が終わればそれぞれの居住スペースへ帰る――それだけのこと。
大事な話や何か異常があった時に限り、こうやって執務室へ呼び出されるのだが……。
「……何かあったのでしょうか」
「お前の今日の予定を教えてくれ」
「私の予定……?」
「ああ。できるだけ細かく」
「……?」
――なぜそんなことを聞くのだろう。シルベストル家に、そのような習慣はないのだが……。
「このあと、フランツを見舞いに行きます」
「フランツ……そうか」
私の言葉を聞き、父は渋い顔をしてうなる。
イリアスの一連の騒動のあと、フランツは倒れた。
数日間高熱に浮かされ、熱が少し治まったあとも下がりきらず、微熱・頭痛・吐き気といった症状が続いた。
言うまでもなく、心因性のものだ。異様極まりない姿態の男が眼前に現れ殺されかかった上、その男が目の前で死んだ。落雷からの火事も恐ろしかったことだろう。
あまつさえ、「お前のせいでセルジュが死ぬ」といったようなことまで言われ……。
あの日目にしたあらゆる事象が、フランツの心に大きな傷を負わせた。
屋敷の者の心からはイリアスの記憶がどんどん消えていっているのに、フランツの心には焦げ付いて残ってしまった。
イリアスは死んだ。だが、何もかもが終わったわけではないということを別の方向から思い知らされる……。
「……フランツを見舞ったあと、午後からシリル殿の元へ参ります」
「シリル殿?」
「はい。シリル殿は、フランツの事情を知っておいでです。週――いえ、月に一度でもいいので、フランツの心のケアをしていただけるようお願いするつもりです」
「なるほど。あそこの孤児院には、"光の塾"の子供もいるからね」
「はい。教会や孤児院の行事があれば参加させたいと思っております。同年代の子との関わりで、少しでも気晴らしができれば……」
「なるほど。しかしそれではフランツは、孤児院にやられるのでは、と無用な不安にかられるのではないか?」
「もちろん、そういうつもりではないということは説明します。フランツ自身が安心を得られなければ、何も始まりませんから」
「なるほど、立派だ」
「…………、はい」
――何か言葉に含み……というか、トゲがあるような気がしたが、気のせいだろうか?
「……そのあとは」
「聖銀騎士団の詰所へ参ります」
「何の用事で?」
「『何の』……? ……あのようなことがあり、聖銀騎士団には顧問司祭がいない状態です。後任の方を探さねばなりませんし、不在にしていた間に溜まった業務もございます。また、我々聖銀騎士は聖女様をお守りする立場にありながら、その責務を果たすことができませんでした。今後このようなことが二度と起こらないよう、対策を考えていかねば……」
そこまで言ったところで、父は分かりやすく大きい溜息をついた。
「何か、お気に障ることがございましたでしょうか」
「いや、うん。……お前、よく働くね」
「ひと月も留守にしていたのだから当然です」
そう返すと、父は肩をすくめて苦笑いをした。
「それで、遅くまであくせくと働いて……帰りは深夜になるのかな」
「……父上。何かご不満がおありなら、おっしゃってください」
"あくせく"という言葉に嫌味がこもっているように感じて、つい語気が荒くなってしまう。
そんな私の様子を見て父は笑うのをやめ、今度は真顔になる。
「セルジュ。お前、一番大事なことを忘れているよ」
「一番、大事なこと」
「そう。お前にしか果たせない役割だ。……夫、そして、親という」
「え……」
「お前、せっかく戻ってきたというのに、妻子に顔を合わせていないらしいじゃないか。なぜだ?」
「それは……」
――父の言う通り、私は"あの日"……イリアス襲撃の日からずっと捜査や儀式に出ずっぱりで、妻と娘に顔を合わせていない。
「……今は、やらねばならないことが山積していて、少し落ち着いたらゆっくりと時間を、と――」
「フランツの見舞いはするのに、か? じゃあ、お前にとってフランツのことは"仕事"に分類されるわけだ」
「そのような……!」
「セルジュ。お前、思考停止しているよ。『落ち着いたらゆっくりと時間を』? それは一体いつになる。今日会った人間に、明日も会えるわけではない。……幸せな時間は突如奪われてしまうかもしれないことを、お前は身をもって思い知ったはず」
「…………」
――そうだ。ひと月前、私は毒を盛られて意識を失い、イリアスの操り人形と化した。
次に意識が戻ったのは、世界が終わるかどうかの瀬戸際のとき。私は腹を刺し貫いて術の拘束を解き、カイルに伝言を……。世界の破滅は食い止められたが、私は危うく命を落とすところだった。聖女様がいなければ、確実に死んでいた。
操られていたとき、停止していた意識の糸が引っ張られる感覚があった。カイルに食事を持っていったときに彼が発した、「お嬢さんは元気か」「親に会えなくなるのはすごく辛いんだ」という言葉を聞いた瞬間だった……。
会いたい。死の間際も、喋りながら頭の中に妻と娘の姿を思い描いていた。砦にいる間も、片時も忘れたことはなかった。
全てが終わった今、顔を合わせるのに何の障害もない。それなのになぜ会わないのか――。
「……顔を合わせると、二度と離れたくなくなる。何もかも投げ出してしまいそうで……」
「馬鹿だね、お前は。仕事は明日からにして、お前自身の責務を果たしなさい。……さあ、出ておいで、2人とも」
「!」
父の言葉から少し間を置いて、応接に続く扉が開いた。扉の向こうには、娘を抱く妻の姿――。
「あ……」
妻が泣きそうな顔で笑い、抱いていた娘を下に降ろす。
娘はしばらくキョロキョロしていたが、私を見つけると「ぱぱ」とにっこり笑って、こちらへ一直線に駆けてきた。
――前に会ったときより、走るのが上手だ……。
「セシル……」
「ぱぁぱ! だっこ! だっこぉ!」
両手を上げて抱っこをねだる娘――脇に手を入れて抱き上げると、娘は「きゃあ!」と甲高い声を上げて笑う。
「セシル、セシル……」
「ぱぱ、お、かーえーり!」
言いながら娘が私の頬をぺちぺちと叩く。柔らかくて、小さい……。
「ぱぱ」
「…………っ」
「ぱぱ? エーン、エーン?」
小さい手が、私の目元をぬぐう。
「イタイイタイ?」
「……大丈夫、痛くないよ。……あ、待っ、それは、痛いよ、セシル……」
整えていた髪をぐしゃぐしゃにして、娘は私の頭をバチバチと叩く。なぜか嬉しそうだ。
ふと気づくと、傍らに妻が立っていた。泣きそうな顔で笑うと懐からハンカチを取り出して私の涙を拭き、乱れた髪を手ぐしで整えてくれる。
娘を抱いていた手を片方離して妻を抱き寄せると、彼女の目からも涙がこぼれた。
「すまない、2人とも。会いたかった……本当に、会いたかった。それなのに僕は……ごめん、許して……」
――ああ、帰ってきた。やっと帰ってきたんだ。
帰るべきところへ。何を置いても守るべき人のところへ。
「……ただいま……」
掠れた声でそう言うと、「おかえり」という声が2つ返ってきた。
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