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15章 祈り(前)
16話 "光の剣" ※残酷描写・不快表現あり
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カイルが倒れて小一時間ほどあと。
部屋のドアが開いてカイルと聖女が並んで出てきた。
「……わだかまりは、解けたのかな」
「……はい。猊下……お話の機会を頂き、ありがとうございます」
教皇の問いかけに聖女が笑顔でそう返し、教皇に深く礼をする。それを見て教皇は「よかったね、リタ」と柔らかく微笑んだ。
聖女はその手に先ほどまで頭に被っていた布を持っている。
待っている時、部屋からカイルの「誰だ」「俺に触るな」という半狂乱の叫び声が聞こえてきていた。それで外したのだろう。
あれが聞こえた時は正直どうなることかと思ったが、どうやら上手く事が運んだようだ。
カイルの顔色はまだ少し優れない。
立っているのが辛いらしく、椅子を用意してもらって腰掛けている。
「カイル……大丈夫なのか」
「まあ、なんとか。……悪かったな、あんな」
「気にするな。俺の方がすごいこと言ってる。……ノルデンのこととか」
そう返すと、カイルは力なく笑った。
赤眼になっていたとき、俺は「あの国には滅びてもらわなければ困る」と口走った。
闇堕ち・赤眼は暴言を吐き散らかすが、決して嘘はつかない。冷静に考えなくとも、あの発言の方がよほどに道理から外れている。
カイルのあれを咎めて責め立てる権利は、俺にはない。
今カイルの"憎しみの火"は鳴りを潜めている。
聖女の力――というより、お互いに何かしらの想いを抱いている「お嬢様」と人間同士の話し合いをしたことが大きいのかもしれない。
「カイル・レッドフォード君。体調が優れないようなら、また日を改めて話を……」
「……大丈夫です。無様な姿をお見せしてしまい、申し訳ありません」
「何も構わないよ。どうだろう……憎悪の感情は少しは晴れただろうか」
「いいえ。……あれほどぶちまけたのに、全部霧散したとは言い切れない――」
カイルは目を伏せ、また自分の服を掴む。
「……そうか。ならばひとつ、昔話をしよう」
「……え?」
「……君達の話ばかりを聞いてしまったから、私もひとつ告白をしよう。"憎悪"によって徹底的に道を過った愚か者の話を」
言いながら教皇はテラスに続く掃き出しの窓の方まで歩み寄り、外を遠い目で見つめる。
話の内容にそぐわない明るい日差しが教皇を照らし出す。
――憎悪で道を過った愚か者の話。それは、先日聞いた教皇自身の「血塗られた過去」の話に他ならない……。
◇
別室に移動して話を聞くことになった。
ここも簡素な作りの部屋だが、置いてある調度品は皆豪華だ。
他に置いてあるのは天秤や水晶玉や魔石の結晶など、魔術の道具が多い。
部屋の中心には大きな円卓が置いてある。変わった造りのテーブルだ――あの「月天の間」の構造体に使われていた魔石と材質や色が似ている。
さらに、ミランダ教の水鏡や「月天の間」と同じに、中心にかけて傾斜のかかったくぼみがある。何か儀式を行う際はここに水を溜めるのかもしれない。
――水が入っていないと、カジノのルーレットみたいだな……と言ったら怒られるだろうか。
全員が円卓を囲んで座ったところで教皇が「さて」と口を開いた。
「……知っている者も多いと思うが、私はかつて人を殺めたことがある」
教皇が語り始める。
彼が教皇ワシリイ2世になるよりもっとずっと昔、「剣士ミハイール・モロゾフ」だった頃の話を……。
「……55年前の話だ。私は、1人の男を殺めた。相手は、私が暮らす地を治める領主の息子。私の婚約者がその男に犯され、彼女は自死した。結婚を1週間前に控えたある日のことだ……彼女はその男に女性としての尊厳を徹底的に踏みにじられた。私と彼女は同じ家に暮らしていたが、その日私は傭兵として魔物討伐に出かけていた。帰宅した私を待ち受けていたのは、首を掻き切って冷たくなった恋人だった」
ミハイールはすぐさま事実を調べ、領主の息子を問い詰めに行った。
意外にも領主の息子はミハイールの恋人と関係を持ったことをあっさりと認めた。
だが「合意の上だった」「向こうから誘ってきた」などと虚偽の弁明を重ね、しまいには「淫乱の阿婆擦れ」などと言って嘲笑ったという。
ミハイールはその後屋敷の守衛によってたたき出され、恋人と暮らしていたはずの家に帰る――。
「歩き慣れたはずの道だったのに、どこをどう歩いているか分からなかったよ。それで……もうすぐで家に着くというところで景色がぐにゃりと歪んで、頭に何者かの声が響いたんだ。辺りを見回すと、地面に黒い剣が転がっていた。声はそこから聞こえていた」
「それは……」
「そう、"闇の紋章の剣"だ……剣から湧き出る濃い青色の瘴気が私を包んで、『憎いならば殺せ』と頭の中に何度も囁きかけた。だが、私はそれを撥ね付けた。私は心の中に"光の剣"を持っていたんだ」
「光の剣、とは……?」
セルジュが教皇――ミハイールに問うと、彼は手を組み合わせしばし沈黙した。
やがて意を決したように前を見据え……。
「憎悪だよ」
決して大きくはないが、全員に聞かせるようなはっきりとした声でそう告げた。
(…………)
――恐ろしい。
今の一言は別に魔法の呪文ではない。それなのに、俺達を彼の過去と心の中に引きずり込む魔力がある。
「私の中には、彼女を蹂躙したあの男を切り裂き断じてやろうという確固たる意志があった。それは憎悪の感情に他ならない……しかし私はそれを、必ず果たすべき使命――"正義の心"であると信じて疑わなかった。だから私は、頭に語りかける闇の剣にこう言ってやったよ。『お前の力など借りなくとも俺は自分の意志と力で殺せる。道具風情がこの俺に語りかけるな、引っ込んでいろ』――とね」
――ミハイールはその後数ヶ月かけて相手の男の行動や生活スタイル、1人になるタイミングなどを徹底的に調べ上げ、憎悪と確固たる意志を持って相手の命を奪った。
その事件は当時の新聞にも「男爵家長男惨殺事件」という見出しで載ったという。
「最初に頭を鈍器で殴った。護衛は魔法と薬で眠らせてある――助けは来ないと知った奴は泣いて許しを乞うたが、もちろん私は許さなかった。剣で斬りかかったあと、首にナイフを突き立て――そこですでに絶命していただろうが、そのあとも何度も刺した。奴の返り血を浴びれば浴びるほど彼女の無念が晴らされ、この空虚な心も満たされ浄化されると思った。……あの時の私にとって、憎悪とは光だった。人生という舞台を照らす光だ。演者である私に、ずっと照明が当たっていた。全開の光だ――眩しくて周りは見えない。舞台にいる他の演者も、観客も見えていない。……奴の命が潰えた時その光は消え……そこには殺した人間と殺された人間がいるだけの、血まみれの現実が広がっていた。私は彼女を奪った男と、彼女が愛したミハイールという男の両方を殺したのだ」
――重苦しい静寂がその場を支配する。
全員影と身体を縫い止められたかのごとく動けず、口を開くこともできない。
皆、ミハイールという人物が過去に人を殺したことは知っていても、その子細までは知らないのだろう。
『憎しみを捨て去ることが救いになる』
『憎しみという感情は無価値だ』
『生きる動力にはなるが抱き続けていては、いずれ前に進む力が失われる』
あれは全く綺麗事などではなかった。
教皇――ミハイールという男が経験してきた残酷な真実を述べていた。
「――恐ろしいものだ。あれから55年経つが、私は私自身を失ったことは悔いても、男を殺したことは何一つ悔いていない。……"罰"というのは、罪を自覚したときに初めて下るもの。私の罰は、未だ始まってはいないのだ。……若者達よ、恨みと憎しみにとらわれてはいけない。それは闇ではなく光だ。視界から全てを奪う光だ。恨みを晴らせば、ほんの一瞬だけ胸がすくだろう。だが光が失せた時、本来見るべきだったものを永遠に見失う。それまで見えていた道は全て閉ざされる……」
そこまで言ったところで教皇は立ち上がり、左側に座る聖女へ目配せをする。
聖女は静かに首肯を返し立ち上がった。そして目を閉じて手を組み合わせ、先日と同じようにその手に"光輝の杖"を出現させる。
聖女が杖を両手に持ち魔力を込めると、空中にまた何かが現れた。淡い光を帯びた水の球だ。中に何か、太い棒状の影が見える……。
(…………?)
周りを見てみると、皆訝しげな表情をしていた。
どうやらあの水の球が何であるかは教皇と聖女しか知らないらしい。
「リタ。……これへ」
「はい」
聖女の魔力で水の球が動き出し、今俺達が囲んでいる円卓の上をふわふわと飛んでいく。
中心部に来たところで聖女が杖を少し動かして、水の球は円卓の中心部に向かってゆっくり下降した。
「今の話を踏まえ……私は君達にひとつ道を示そうと思う」
教皇の言葉と同時にそれは円卓のくぼみに着地した。
円卓のくぼみが水で満たされ、教会でよく見る水鏡と同じ物が出来上がった。
水はしばらく光を放っていたが、それは徐々に煙のように立ち上って消えていき、先ほど水の球の中に入っていた"何か"がぷかりと浮かびあがる……。
「……!?」
「きゃ……っ!?」
全員、息を呑んで硬直してしまう。
(手……!)
浮かび上がってきたのは、人の手。
あの日「月天の間」の水面に落ちた、イリアス・トロンヘイムの手首だった。
部屋のドアが開いてカイルと聖女が並んで出てきた。
「……わだかまりは、解けたのかな」
「……はい。猊下……お話の機会を頂き、ありがとうございます」
教皇の問いかけに聖女が笑顔でそう返し、教皇に深く礼をする。それを見て教皇は「よかったね、リタ」と柔らかく微笑んだ。
聖女はその手に先ほどまで頭に被っていた布を持っている。
待っている時、部屋からカイルの「誰だ」「俺に触るな」という半狂乱の叫び声が聞こえてきていた。それで外したのだろう。
あれが聞こえた時は正直どうなることかと思ったが、どうやら上手く事が運んだようだ。
カイルの顔色はまだ少し優れない。
立っているのが辛いらしく、椅子を用意してもらって腰掛けている。
「カイル……大丈夫なのか」
「まあ、なんとか。……悪かったな、あんな」
「気にするな。俺の方がすごいこと言ってる。……ノルデンのこととか」
そう返すと、カイルは力なく笑った。
赤眼になっていたとき、俺は「あの国には滅びてもらわなければ困る」と口走った。
闇堕ち・赤眼は暴言を吐き散らかすが、決して嘘はつかない。冷静に考えなくとも、あの発言の方がよほどに道理から外れている。
カイルのあれを咎めて責め立てる権利は、俺にはない。
今カイルの"憎しみの火"は鳴りを潜めている。
聖女の力――というより、お互いに何かしらの想いを抱いている「お嬢様」と人間同士の話し合いをしたことが大きいのかもしれない。
「カイル・レッドフォード君。体調が優れないようなら、また日を改めて話を……」
「……大丈夫です。無様な姿をお見せしてしまい、申し訳ありません」
「何も構わないよ。どうだろう……憎悪の感情は少しは晴れただろうか」
「いいえ。……あれほどぶちまけたのに、全部霧散したとは言い切れない――」
カイルは目を伏せ、また自分の服を掴む。
「……そうか。ならばひとつ、昔話をしよう」
「……え?」
「……君達の話ばかりを聞いてしまったから、私もひとつ告白をしよう。"憎悪"によって徹底的に道を過った愚か者の話を」
言いながら教皇はテラスに続く掃き出しの窓の方まで歩み寄り、外を遠い目で見つめる。
話の内容にそぐわない明るい日差しが教皇を照らし出す。
――憎悪で道を過った愚か者の話。それは、先日聞いた教皇自身の「血塗られた過去」の話に他ならない……。
◇
別室に移動して話を聞くことになった。
ここも簡素な作りの部屋だが、置いてある調度品は皆豪華だ。
他に置いてあるのは天秤や水晶玉や魔石の結晶など、魔術の道具が多い。
部屋の中心には大きな円卓が置いてある。変わった造りのテーブルだ――あの「月天の間」の構造体に使われていた魔石と材質や色が似ている。
さらに、ミランダ教の水鏡や「月天の間」と同じに、中心にかけて傾斜のかかったくぼみがある。何か儀式を行う際はここに水を溜めるのかもしれない。
――水が入っていないと、カジノのルーレットみたいだな……と言ったら怒られるだろうか。
全員が円卓を囲んで座ったところで教皇が「さて」と口を開いた。
「……知っている者も多いと思うが、私はかつて人を殺めたことがある」
教皇が語り始める。
彼が教皇ワシリイ2世になるよりもっとずっと昔、「剣士ミハイール・モロゾフ」だった頃の話を……。
「……55年前の話だ。私は、1人の男を殺めた。相手は、私が暮らす地を治める領主の息子。私の婚約者がその男に犯され、彼女は自死した。結婚を1週間前に控えたある日のことだ……彼女はその男に女性としての尊厳を徹底的に踏みにじられた。私と彼女は同じ家に暮らしていたが、その日私は傭兵として魔物討伐に出かけていた。帰宅した私を待ち受けていたのは、首を掻き切って冷たくなった恋人だった」
ミハイールはすぐさま事実を調べ、領主の息子を問い詰めに行った。
意外にも領主の息子はミハイールの恋人と関係を持ったことをあっさりと認めた。
だが「合意の上だった」「向こうから誘ってきた」などと虚偽の弁明を重ね、しまいには「淫乱の阿婆擦れ」などと言って嘲笑ったという。
ミハイールはその後屋敷の守衛によってたたき出され、恋人と暮らしていたはずの家に帰る――。
「歩き慣れたはずの道だったのに、どこをどう歩いているか分からなかったよ。それで……もうすぐで家に着くというところで景色がぐにゃりと歪んで、頭に何者かの声が響いたんだ。辺りを見回すと、地面に黒い剣が転がっていた。声はそこから聞こえていた」
「それは……」
「そう、"闇の紋章の剣"だ……剣から湧き出る濃い青色の瘴気が私を包んで、『憎いならば殺せ』と頭の中に何度も囁きかけた。だが、私はそれを撥ね付けた。私は心の中に"光の剣"を持っていたんだ」
「光の剣、とは……?」
セルジュが教皇――ミハイールに問うと、彼は手を組み合わせしばし沈黙した。
やがて意を決したように前を見据え……。
「憎悪だよ」
決して大きくはないが、全員に聞かせるようなはっきりとした声でそう告げた。
(…………)
――恐ろしい。
今の一言は別に魔法の呪文ではない。それなのに、俺達を彼の過去と心の中に引きずり込む魔力がある。
「私の中には、彼女を蹂躙したあの男を切り裂き断じてやろうという確固たる意志があった。それは憎悪の感情に他ならない……しかし私はそれを、必ず果たすべき使命――"正義の心"であると信じて疑わなかった。だから私は、頭に語りかける闇の剣にこう言ってやったよ。『お前の力など借りなくとも俺は自分の意志と力で殺せる。道具風情がこの俺に語りかけるな、引っ込んでいろ』――とね」
――ミハイールはその後数ヶ月かけて相手の男の行動や生活スタイル、1人になるタイミングなどを徹底的に調べ上げ、憎悪と確固たる意志を持って相手の命を奪った。
その事件は当時の新聞にも「男爵家長男惨殺事件」という見出しで載ったという。
「最初に頭を鈍器で殴った。護衛は魔法と薬で眠らせてある――助けは来ないと知った奴は泣いて許しを乞うたが、もちろん私は許さなかった。剣で斬りかかったあと、首にナイフを突き立て――そこですでに絶命していただろうが、そのあとも何度も刺した。奴の返り血を浴びれば浴びるほど彼女の無念が晴らされ、この空虚な心も満たされ浄化されると思った。……あの時の私にとって、憎悪とは光だった。人生という舞台を照らす光だ。演者である私に、ずっと照明が当たっていた。全開の光だ――眩しくて周りは見えない。舞台にいる他の演者も、観客も見えていない。……奴の命が潰えた時その光は消え……そこには殺した人間と殺された人間がいるだけの、血まみれの現実が広がっていた。私は彼女を奪った男と、彼女が愛したミハイールという男の両方を殺したのだ」
――重苦しい静寂がその場を支配する。
全員影と身体を縫い止められたかのごとく動けず、口を開くこともできない。
皆、ミハイールという人物が過去に人を殺したことは知っていても、その子細までは知らないのだろう。
『憎しみを捨て去ることが救いになる』
『憎しみという感情は無価値だ』
『生きる動力にはなるが抱き続けていては、いずれ前に進む力が失われる』
あれは全く綺麗事などではなかった。
教皇――ミハイールという男が経験してきた残酷な真実を述べていた。
「――恐ろしいものだ。あれから55年経つが、私は私自身を失ったことは悔いても、男を殺したことは何一つ悔いていない。……"罰"というのは、罪を自覚したときに初めて下るもの。私の罰は、未だ始まってはいないのだ。……若者達よ、恨みと憎しみにとらわれてはいけない。それは闇ではなく光だ。視界から全てを奪う光だ。恨みを晴らせば、ほんの一瞬だけ胸がすくだろう。だが光が失せた時、本来見るべきだったものを永遠に見失う。それまで見えていた道は全て閉ざされる……」
そこまで言ったところで教皇は立ち上がり、左側に座る聖女へ目配せをする。
聖女は静かに首肯を返し立ち上がった。そして目を閉じて手を組み合わせ、先日と同じようにその手に"光輝の杖"を出現させる。
聖女が杖を両手に持ち魔力を込めると、空中にまた何かが現れた。淡い光を帯びた水の球だ。中に何か、太い棒状の影が見える……。
(…………?)
周りを見てみると、皆訝しげな表情をしていた。
どうやらあの水の球が何であるかは教皇と聖女しか知らないらしい。
「リタ。……これへ」
「はい」
聖女の魔力で水の球が動き出し、今俺達が囲んでいる円卓の上をふわふわと飛んでいく。
中心部に来たところで聖女が杖を少し動かして、水の球は円卓の中心部に向かってゆっくり下降した。
「今の話を踏まえ……私は君達にひとつ道を示そうと思う」
教皇の言葉と同時にそれは円卓のくぼみに着地した。
円卓のくぼみが水で満たされ、教会でよく見る水鏡と同じ物が出来上がった。
水はしばらく光を放っていたが、それは徐々に煙のように立ち上って消えていき、先ほど水の球の中に入っていた"何か"がぷかりと浮かびあがる……。
「……!?」
「きゃ……っ!?」
全員、息を呑んで硬直してしまう。
(手……!)
浮かび上がってきたのは、人の手。
あの日「月天の間」の水面に落ちた、イリアス・トロンヘイムの手首だった。
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