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四章 JKゲーム
第9話 そして、ただいま
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私と魔女がせめぎ合って構築した円筒形の空間だったけど、壁から中央へ白い靄がゆっくりと広がっている。
外で聖名夜ちゃんの魔法が完成を迎えているみたい。
あとはこのまま白い靄に包まれれば、私も魔女も元の身体に戻る。
「いろいろ頑張ったけど、決着は外になりそうね」
腕を組みながら、魔女はそう言ってため息をついた。
こうなればさすがに諦めるしかないだろう。
「でも、面白いことが知れたわ。まさか球体を核に無念の気が集まって女の子ができるなんて思わなかったし」
ユキちゃんのことだ。
吸精鬼によって未来を奪われた女の子たちの心が『ユキちゃん』として形成された。
でもその吸精鬼をほむらちゃんが倒して、無念は払われた。
「力を与えるなんてこともあったわね。あの赤いナース。私とカラーが被るし、困ったもんだけど」
香澄さん。
人間だけど、吸血鬼と同じ能力が使える女性看護師。
歌が好きで歌で多くの患者さんを励まそうとしていた。
いまでは球体がなくても、より多くの人、患者さんのために歌を歌えるようになった。
「すると今度は球体のなかに玄を見つけられるし、魔導工学のおっさんも出てきたわね」
鉄摩さん。
自分の理想とする女性を造ろうとしていた。
あらためて考えてみると、玄を求めて研究しようとしていたのって、新しいエネルギー源の確保だったのかもしれない。
女都羅さん一人を動かすために、有力な五人の力を集めないとダメだったから。
「あの子たちのなかでは剣士の子と、音楽の子がいいと思うわ。今度、一緒に遊びたいわね」
利羅ちゃんと伶羅ちゃんのことだ。
二人ともグラマーでとてもスタイルはよかったけど。
うん?
いま「一緒に遊びたいわね」って言った?
なんか私も含まれているかんじに聞こえたけど気のせいよね。
気のせい。
……。
「大量生産されていたけど、さすがに、その中の一人をみつくろって帰ろうとは思わないわね」
……。
「ニニだっけ、おっさんの助手みたいな子。見た目が十歳くらいでかわいかった」
……。
「いくら記憶が受け継がれてるからといったって、よく見殺しにできるわよね」
……。
「今でも思い出すわ、あのときの声」
……。
「そう、──父様」
!
「……」
……。
「ふふ。強くなったわね、優子」
……。
残念そうにも、嬉しそうにも言う魔女。
私はいま、玄の力で魔女が飛ばした髪の毛を消滅させた。
魔女は最後の最後まで諦めてなかったんだ。
球体になってからのことを話しはじめて油断させ、少しずつ気持ちを揺さぶる場面を想起させて、仕上げの言葉を放つ。
それはあのとき魔女が放った言葉でもある。
──お父さん。
生きているであろう、まだ見ぬ存在。
玄だけがその接点を感じることができるもの。
憧れの気持ちがある私は、その言葉によって隙をつくり、結果、球体になった。
だけど、あれだけ慕っていても見殺しにされたニニちゃんや、捨てられた瑠羅ちゃんたち。
私のために辛い思いをして動いてくれた、ほむらちゃん、聖名夜ちゃん。
多くの思いを、見て、聞いて、知った。
どんな状況下でも負けない気持ち。
それがいま私にはある。
もうその言葉で心が揺らぐことはない。
「とってもいい目。素敵だわ。じゃあ、私はさっさと消えるからまた後で遊びましょ、優子」
そう言って投げキッスをすると、あの白い靄が魔女を覆った。
そしてそれは私も同じ。
靄が身体を包んでいき、視界が白一色になる。
……。
……。
……。
……。
痛くはない。
意識だけがあるかんじ。
ほむらちゃんや聖名夜ちゃんの球体を移動してたときみたい。
球体になるときは夢中だったし、気がつけば意識だけになっていたけど、戻るときはけっこうゆっくりね。
慎重にやってくれているんだ。
?
ああ。
光を感じる。
それに温かい。
懐かしい……。
……。
……。
……。
……。
「優子……」
「優子ちゃん……」
耳に聞こえてくる声。
そしてぼんやりとした視界がはっきりしてくると、そこには親友二人の顔があった。
「ほむらちゃん……、聖名夜ちゃん……」
呟くように言うと、二人は微笑んでくれた。
「大丈夫か?」
言いながら、ほむらちゃんは仰向けになっている私を起こしてくれた。
「ありがとう」
座った状態で周りを見ると、見慣れた夜の運動公園。
一週間くらいの出来事なんだけど、何年かぶりに来たような気がする。
「私、元に戻ったんだね……」
「そうよ優子ちゃん。おかえりなさい」
「おかえり、優子」
……。
そうか。
そうだよね。
私、帰ってきたんだ。
「ただいま……」
「優子ちゃん……」
「優子……」
抱き合う私たち。
お互いに感触を確かめる。
いま目の前に間違いなく親友がいる。
嬉しい。
「──優子」
?
声?
「どうした優子」
「いや、誰かの声が聞こえたような」
「そうか? とくに聞こえなかったけどな」
「私も聞こえなかったし、魔女は光になって街へ飛んでいったわ。結界にも異常はなかったから戻ってきたわけでもないわね」
二人には聞こえてなかったみたい。
それに、聖名夜ちゃんの結界は探知できるから、誰かいれば気づくはずだもんね。
「気のせいかな」
「ああ、気にすんな。もし魔女だったら俺と聖名夜が相手してやるからよ」
「そうそう」
右拳を振るほむらちゃんに、笑顔の聖名夜ちゃん。
「うん。そうする」
私が答えると、二人は笑った。
みんなと笑うのって、とても楽しいね。
ずっと忘れてた気がする。
……。
「……」
「……」
ふと見上げた夜空は星がきらめいていて、月も嬉しそうに私たちを見ていた。
外で聖名夜ちゃんの魔法が完成を迎えているみたい。
あとはこのまま白い靄に包まれれば、私も魔女も元の身体に戻る。
「いろいろ頑張ったけど、決着は外になりそうね」
腕を組みながら、魔女はそう言ってため息をついた。
こうなればさすがに諦めるしかないだろう。
「でも、面白いことが知れたわ。まさか球体を核に無念の気が集まって女の子ができるなんて思わなかったし」
ユキちゃんのことだ。
吸精鬼によって未来を奪われた女の子たちの心が『ユキちゃん』として形成された。
でもその吸精鬼をほむらちゃんが倒して、無念は払われた。
「力を与えるなんてこともあったわね。あの赤いナース。私とカラーが被るし、困ったもんだけど」
香澄さん。
人間だけど、吸血鬼と同じ能力が使える女性看護師。
歌が好きで歌で多くの患者さんを励まそうとしていた。
いまでは球体がなくても、より多くの人、患者さんのために歌を歌えるようになった。
「すると今度は球体のなかに玄を見つけられるし、魔導工学のおっさんも出てきたわね」
鉄摩さん。
自分の理想とする女性を造ろうとしていた。
あらためて考えてみると、玄を求めて研究しようとしていたのって、新しいエネルギー源の確保だったのかもしれない。
女都羅さん一人を動かすために、有力な五人の力を集めないとダメだったから。
「あの子たちのなかでは剣士の子と、音楽の子がいいと思うわ。今度、一緒に遊びたいわね」
利羅ちゃんと伶羅ちゃんのことだ。
二人ともグラマーでとてもスタイルはよかったけど。
うん?
いま「一緒に遊びたいわね」って言った?
なんか私も含まれているかんじに聞こえたけど気のせいよね。
気のせい。
……。
「大量生産されていたけど、さすがに、その中の一人をみつくろって帰ろうとは思わないわね」
……。
「ニニだっけ、おっさんの助手みたいな子。見た目が十歳くらいでかわいかった」
……。
「いくら記憶が受け継がれてるからといったって、よく見殺しにできるわよね」
……。
「今でも思い出すわ、あのときの声」
……。
「そう、──父様」
!
「……」
……。
「ふふ。強くなったわね、優子」
……。
残念そうにも、嬉しそうにも言う魔女。
私はいま、玄の力で魔女が飛ばした髪の毛を消滅させた。
魔女は最後の最後まで諦めてなかったんだ。
球体になってからのことを話しはじめて油断させ、少しずつ気持ちを揺さぶる場面を想起させて、仕上げの言葉を放つ。
それはあのとき魔女が放った言葉でもある。
──お父さん。
生きているであろう、まだ見ぬ存在。
玄だけがその接点を感じることができるもの。
憧れの気持ちがある私は、その言葉によって隙をつくり、結果、球体になった。
だけど、あれだけ慕っていても見殺しにされたニニちゃんや、捨てられた瑠羅ちゃんたち。
私のために辛い思いをして動いてくれた、ほむらちゃん、聖名夜ちゃん。
多くの思いを、見て、聞いて、知った。
どんな状況下でも負けない気持ち。
それがいま私にはある。
もうその言葉で心が揺らぐことはない。
「とってもいい目。素敵だわ。じゃあ、私はさっさと消えるからまた後で遊びましょ、優子」
そう言って投げキッスをすると、あの白い靄が魔女を覆った。
そしてそれは私も同じ。
靄が身体を包んでいき、視界が白一色になる。
……。
……。
……。
……。
痛くはない。
意識だけがあるかんじ。
ほむらちゃんや聖名夜ちゃんの球体を移動してたときみたい。
球体になるときは夢中だったし、気がつけば意識だけになっていたけど、戻るときはけっこうゆっくりね。
慎重にやってくれているんだ。
?
ああ。
光を感じる。
それに温かい。
懐かしい……。
……。
……。
……。
……。
「優子……」
「優子ちゃん……」
耳に聞こえてくる声。
そしてぼんやりとした視界がはっきりしてくると、そこには親友二人の顔があった。
「ほむらちゃん……、聖名夜ちゃん……」
呟くように言うと、二人は微笑んでくれた。
「大丈夫か?」
言いながら、ほむらちゃんは仰向けになっている私を起こしてくれた。
「ありがとう」
座った状態で周りを見ると、見慣れた夜の運動公園。
一週間くらいの出来事なんだけど、何年かぶりに来たような気がする。
「私、元に戻ったんだね……」
「そうよ優子ちゃん。おかえりなさい」
「おかえり、優子」
……。
そうか。
そうだよね。
私、帰ってきたんだ。
「ただいま……」
「優子ちゃん……」
「優子……」
抱き合う私たち。
お互いに感触を確かめる。
いま目の前に間違いなく親友がいる。
嬉しい。
「──優子」
?
声?
「どうした優子」
「いや、誰かの声が聞こえたような」
「そうか? とくに聞こえなかったけどな」
「私も聞こえなかったし、魔女は光になって街へ飛んでいったわ。結界にも異常はなかったから戻ってきたわけでもないわね」
二人には聞こえてなかったみたい。
それに、聖名夜ちゃんの結界は探知できるから、誰かいれば気づくはずだもんね。
「気のせいかな」
「ああ、気にすんな。もし魔女だったら俺と聖名夜が相手してやるからよ」
「そうそう」
右拳を振るほむらちゃんに、笑顔の聖名夜ちゃん。
「うん。そうする」
私が答えると、二人は笑った。
みんなと笑うのって、とても楽しいね。
ずっと忘れてた気がする。
……。
「……」
「……」
ふと見上げた夜空は星がきらめいていて、月も嬉しそうに私たちを見ていた。
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