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四章 JKゲーム
第5話 魔女と妖刀(仮)
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「え?」
声をかけられるとは考えていなかったみたいね。
魔女が焦っていると、佐知子ちゃんがそばへやってきた。
身長が百八十センチくらいあって、ほっそりしたスレンダーな体型。
腰まで届く黒い髪に、黒縁のメガネをかけて知的な顔だちをしているから、まさに学級委員長といったかんじ。
だけど、その目は鋭く、見るだけでものが切れそう。
「見かけない顔だが、ここへ何の用かな?」
あらためて、おだやかに問いかける佐知子ちゃん。
「えーと、私、一年生なんですけど、このクラスにいる槌木優子さんに会いたくて……」
見下ろされながら、魔女は何とか用件を伝えた。
一年生の設定なんだ。
「見てのとおり、いま、ここに優子はいない。授業がはじまるまでには来ると思うがな」
言いながら佐知子ちゃんは教室内に視線を促した。
クラスメイトの半分ほど。
男子と女子、合わせて二十人ぐらいが、本を読んだり、スマホをいじったり、おしゃべりをしている。
当然、その中に私はいない。
「そう、ですね。他を探してみます」
魔女はがっかりした様子ながら、その場から離れようとした。
「待て。君のクラスと名前を教えてくれ」
「え?」
呼び止められ、振り向くとそこには鋭い目。
「……!」
怯えるように身体が反応する魔女。
佐知子ちゃんの目にかかれば仕方ないわね。
「わ、私は一年A組の、ユウコ・バーガンディです」
私と初めて会ったときに言ってた名前を答えた。
本名ではないだろうけど。
「では生徒手帳も見せてくれ。その名から察すると外国に由来しているようだが」
「て、手帳? あ……、その、教室に置いてきちゃって……」
「ほう……」
挙動不審になった魔女に対し、佐知子ちゃんはメガネを外した。
直接の目はさらに迫力を増すだけじゃなく、一つの能力が解放される。
佐知子ちゃんの瞳が紅くなって、霊体なんかを視ることができるようになるんだ。
「この学校の生徒は全員、霊体に在校生の証を刻んでいるが、君にはないな」
「……」
「そういう場合、侵入者とみなし、拘束するのが規則だ。悪く思わんでくれ」
左手でメガネをかけながら、右手の先にある空間から刀を出す佐知子ちゃん。
空間からといっても、ここはわたしが作った空間だから、あくまで私の記憶から動作を再現しているだけね。
そして取り出したのが、妖刀・鏖。
黒い柄に琥珀色の刀身をしたものだけど、一番の特徴は、常に下方へ流れる赤いオーラ。
それは血を吸うから赤くなっているとも、血であるから赤くなっているとも見て取れる。
「殺すわけではない。眠らせるだけだ」
両手で下段に構えると、佐知子ちゃんは刀を一気に振り上げた。
パン!
「!」
魔女の強烈な閃光に、佐知子ちゃんはムリヤリ防御へ切り替え、後ろへ下がった。
光を前にしてはさすがに佐知子ちゃんも顔を背け、離れるしかない。
その隙に魔女は廊下へ跳び出し、その窓を破って外へ出た。
ただ、今度は囮の分身を降下させ、本人は屋上へ飛んだ。
「あー? どこだ?」
「あ、あそこ!」
「逃げ足の速いヤローね」
同じく窓から外へ飛び出し、地上にいる囮の分身を追いかけていくクラスメイト。
まあ、この後の展開はさっきと同じね。
で、本物の魔女は──。
屋上でへなへなと座り込んでる。
「優子のクラスメイト、とんでもないわね……」
うん。
じつはそうなんだ。
佐知子ちゃんは妖刀使いで、戦国時代から続く魔物討伐を生業とする一族の末裔。
その技量は、すでに達人の領域に入っている。
だから本当は学校へ来なくてもいいんだけど、佐知子ちゃんの希望で通っているみたい。
何か深い理由、想いがあるみたいだけど。
「このままじゃダメだわ」
呟きながら考える魔女。
すると、右手を伸ばして空間を掴むような動作をした。
「やっぱりか」
手ごたえがないことから、右手を戻す魔女。
魔女が空間を操作しないように、私がきちんと抑えている。
よほど動揺することがなければ大丈夫。
「こうなると優子を見つけて直接アプローチするしかないわね。でも、顔を変えたくらいじゃ気づかれてしまう。優子の他に学校の生徒は知らないし……。うん? 待って」
何か気づいたようね。
立ち上がると、魔女は両手を顔にあてた。
「ふふ、この手があるじゃない」
あてた両手を下ろして現れたその顔は……、私?
顔だけじゃない髪だってそう。
完璧に私だ。
「これなら怪しまれることなく探すことができるわ」
たしかに、在校生である私の容姿でいれば、すぐに疑われることはないだろう。
でも、みんなの前で私と鉢合わせたら、どうするつもりなのかしら。
「見つけてしまえば何とでもなる。今度こそ、抱きしめてあげるわよ、優子」
自分で自分を抱きしめるような仕草をする魔女。
ぅ……。
なんか寒気を感じる……。
魔女が私を追っていることと、自分の姿が勝手に動いているのを客観的にみているから、よけいに気持ち悪く思うんだわ。
時間はあと三十分くらいかな。
それが過ぎれば元に戻るけど、早く終わってほしい。
──決意を新たにした魔女。
また校舎に入っていった。
今度は私の教室へ行かずに、最上階の四階から探していくつもりみたい。
教室へも、開いている引き戸や小窓から、自然なかたちで覗き込むようにして見ている。
へたに入って注目されないようにってことね。
「~♪」
なんか楽しそう。
……。
……。
まさか……、私の姿になっているから?
「ふふ」
ぅ……。
また寒気が……。
声をかけられるとは考えていなかったみたいね。
魔女が焦っていると、佐知子ちゃんがそばへやってきた。
身長が百八十センチくらいあって、ほっそりしたスレンダーな体型。
腰まで届く黒い髪に、黒縁のメガネをかけて知的な顔だちをしているから、まさに学級委員長といったかんじ。
だけど、その目は鋭く、見るだけでものが切れそう。
「見かけない顔だが、ここへ何の用かな?」
あらためて、おだやかに問いかける佐知子ちゃん。
「えーと、私、一年生なんですけど、このクラスにいる槌木優子さんに会いたくて……」
見下ろされながら、魔女は何とか用件を伝えた。
一年生の設定なんだ。
「見てのとおり、いま、ここに優子はいない。授業がはじまるまでには来ると思うがな」
言いながら佐知子ちゃんは教室内に視線を促した。
クラスメイトの半分ほど。
男子と女子、合わせて二十人ぐらいが、本を読んだり、スマホをいじったり、おしゃべりをしている。
当然、その中に私はいない。
「そう、ですね。他を探してみます」
魔女はがっかりした様子ながら、その場から離れようとした。
「待て。君のクラスと名前を教えてくれ」
「え?」
呼び止められ、振り向くとそこには鋭い目。
「……!」
怯えるように身体が反応する魔女。
佐知子ちゃんの目にかかれば仕方ないわね。
「わ、私は一年A組の、ユウコ・バーガンディです」
私と初めて会ったときに言ってた名前を答えた。
本名ではないだろうけど。
「では生徒手帳も見せてくれ。その名から察すると外国に由来しているようだが」
「て、手帳? あ……、その、教室に置いてきちゃって……」
「ほう……」
挙動不審になった魔女に対し、佐知子ちゃんはメガネを外した。
直接の目はさらに迫力を増すだけじゃなく、一つの能力が解放される。
佐知子ちゃんの瞳が紅くなって、霊体なんかを視ることができるようになるんだ。
「この学校の生徒は全員、霊体に在校生の証を刻んでいるが、君にはないな」
「……」
「そういう場合、侵入者とみなし、拘束するのが規則だ。悪く思わんでくれ」
左手でメガネをかけながら、右手の先にある空間から刀を出す佐知子ちゃん。
空間からといっても、ここはわたしが作った空間だから、あくまで私の記憶から動作を再現しているだけね。
そして取り出したのが、妖刀・鏖。
黒い柄に琥珀色の刀身をしたものだけど、一番の特徴は、常に下方へ流れる赤いオーラ。
それは血を吸うから赤くなっているとも、血であるから赤くなっているとも見て取れる。
「殺すわけではない。眠らせるだけだ」
両手で下段に構えると、佐知子ちゃんは刀を一気に振り上げた。
パン!
「!」
魔女の強烈な閃光に、佐知子ちゃんはムリヤリ防御へ切り替え、後ろへ下がった。
光を前にしてはさすがに佐知子ちゃんも顔を背け、離れるしかない。
その隙に魔女は廊下へ跳び出し、その窓を破って外へ出た。
ただ、今度は囮の分身を降下させ、本人は屋上へ飛んだ。
「あー? どこだ?」
「あ、あそこ!」
「逃げ足の速いヤローね」
同じく窓から外へ飛び出し、地上にいる囮の分身を追いかけていくクラスメイト。
まあ、この後の展開はさっきと同じね。
で、本物の魔女は──。
屋上でへなへなと座り込んでる。
「優子のクラスメイト、とんでもないわね……」
うん。
じつはそうなんだ。
佐知子ちゃんは妖刀使いで、戦国時代から続く魔物討伐を生業とする一族の末裔。
その技量は、すでに達人の領域に入っている。
だから本当は学校へ来なくてもいいんだけど、佐知子ちゃんの希望で通っているみたい。
何か深い理由、想いがあるみたいだけど。
「このままじゃダメだわ」
呟きながら考える魔女。
すると、右手を伸ばして空間を掴むような動作をした。
「やっぱりか」
手ごたえがないことから、右手を戻す魔女。
魔女が空間を操作しないように、私がきちんと抑えている。
よほど動揺することがなければ大丈夫。
「こうなると優子を見つけて直接アプローチするしかないわね。でも、顔を変えたくらいじゃ気づかれてしまう。優子の他に学校の生徒は知らないし……。うん? 待って」
何か気づいたようね。
立ち上がると、魔女は両手を顔にあてた。
「ふふ、この手があるじゃない」
あてた両手を下ろして現れたその顔は……、私?
顔だけじゃない髪だってそう。
完璧に私だ。
「これなら怪しまれることなく探すことができるわ」
たしかに、在校生である私の容姿でいれば、すぐに疑われることはないだろう。
でも、みんなの前で私と鉢合わせたら、どうするつもりなのかしら。
「見つけてしまえば何とでもなる。今度こそ、抱きしめてあげるわよ、優子」
自分で自分を抱きしめるような仕草をする魔女。
ぅ……。
なんか寒気を感じる……。
魔女が私を追っていることと、自分の姿が勝手に動いているのを客観的にみているから、よけいに気持ち悪く思うんだわ。
時間はあと三十分くらいかな。
それが過ぎれば元に戻るけど、早く終わってほしい。
──決意を新たにした魔女。
また校舎に入っていった。
今度は私の教室へ行かずに、最上階の四階から探していくつもりみたい。
教室へも、開いている引き戸や小窓から、自然なかたちで覗き込むようにして見ている。
へたに入って注目されないようにってことね。
「~♪」
なんか楽しそう。
……。
……。
まさか……、私の姿になっているから?
「ふふ」
ぅ……。
また寒気が……。
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