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四章 JKゲーム
第2話 金色とオレンジ
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私を狙う魔女。
三十歳前後で身長は百七十五センチくらい。
目元を隠す黒いマスクに、胸元が見えるスーツ姿をした、グラマーな大人。
のはずなんだけど、目の前の魔女はちょっと違った。
マスクやスーツ姿なのは同じなんだけど、スーツの色が紅いものから紫になっている。
背も少し低くなっていて、視線を引き寄せる胸も二回りほど慎ましくなっている。
そうね。
若返った、ていうかんじ。
感じる魔力からみれば本人なんだけど、どうしたんだろう。
それにいまは聖名夜ちゃんを主軸にほむらちゃんと二人で、私や魔女を元に戻す魔法の真っ最中なはずなんだけど、部屋の中にいるし……。
「警戒しなくていいわよ、優子。いまの私じゃ、大したことできないから」
そう言うと魔女は冷蔵庫から三百五十mlの缶を二本、取り出した。
「私はビール。優子はジュースでいいでしょ」
「……」
「立っているのもなんだし座りなさい」
言いながらソファーに座り、ジュースの缶をテーブルに置く魔女。
うん?
座る?
……。
あ!
私、身体がある。
さっきまで意識だけだったけど、いまは夏の制服を着て、身体がある。
「あら、いま気づいたの、優子」
魔女は微笑むようにして言うと、その手の缶を開けた。
プシュッという音とともに、ビール特有のにおいをさせながら、魔女はごくごくと飲んだ。
……。
まあ、自分が飲むわけじゃないし、このまま立っているのも変よね。
「いただくわ」
「どうぞ」
テーブルの上にあるオレンジの絵が描かれた缶を手にとってフタを開け、口に運んだ。
「あ、ごめん。それビールだわ」
ブ──────────────────!
「あっはっはっは、うそうそ。それはジュースよ」
思わず吹き出す私に、ケラケラと笑う魔女。
勘弁して……。
あらためて口にする私。
よく知っているオレンジジュースの味。
それに、これが無害なのは持った瞬間に分かった。
「──それで、ここはどこなの? いまは運動公園で聖名夜ちゃんやほむらちゃんが私やあなたを元に戻すために魔法を使っているはずなんだけど」
私は半分くらい飲んだ缶をテーブルに置きながら魔女に訊いた。
「ふふ。ここは球体の内側にある世界。作ったのは私。そして、優子たちが動き回っている間、私が居た場所」
悪戯っぽい雰囲気で答える魔女。
といことは、私が意識をあっちこっち移動している間、魔女の意識はずっとここにあったてこと?
魔女を眠らせておくようなイメージで意識を封じ込めたつもりだったけど、部屋の中にいるというかたちで意識は保っていたんだ。
そこはさすがに経験値の差、強かさの差がでたみたい。
ただ、突破までには至らなかったようね。
それを示すように、この部屋にドアがない。
「なるほどね。だけど、私がここに来た理由が分からない。元の身体に戻るのに必要ないと思うけど」
「そのとおり。そして、放っておいても、あの二人ならできるでしょうね」
ビール缶を置いて、魔女が視線を移すとテレビがついた。
五十インチはあるテレビ画面には、聖名夜ちゃんとほむらちゃんが懸命に魔法を行使している様子が映し出されてた。
映像だけで音声がないけど、これは現状のもので間違いないと思う。
「順調にいってるみたいだだから、あと五分ほどで完了ね」
それを見て言う魔女。
ほ。
五分で元に戻れるんだ。
「でもね、優子。ここでは時間をコントロールできるのよ。例えば五分を一時間に、とかね」
「え?」
「ここへ優子を引き入れたのは私。元に戻ったのと同時にお別れしたりバトルになるんじゃ、ちょっと寂しいと思わない?」
「いや、そうは思わないけど」
「ふふ、優子の玄が力を抑制しているおかげで、同じ十代の身体になったわ。いまだからできること、したいでしょう?」
「いや、全く」
やばい。
ビールを飲んだせいかな。
魔女が怪しくなってる。
「赤いナースの子がいたでしょう? 私のパーソナルカラーは赤だったのに、あの子のおかげで被っちゃったじゃない。しかもナースにスーツじゃ、どうしたってナースの方がインパクトあるわよね、優子?」
顔を寄せてくる魔女。
「でも安心して、優子。赤はナースに譲るけど、スーツは変えないから。ほら触ってみて」
触る?
触る??
色のことを話してたのに?
「ほうら」
すると魔女は右手をつかんで胸元に誘導しようとした──。
「ムギュ……」
「飲み過ぎよ」
私は飲みかけのジュース缶を魔女の口に押し当て、接触を阻止した。
「……」
魔女は缶を口に着けたまま両手で受け取って、そのままごくごくと飲み干した。
「ふふ、おいしい……」
関節キスしちゃった、の意味を含めて微笑む魔女。
まずい……。
このままいくと魔女のペースになりそうね。
私は立ち上がって、ソファーから離れた。
「もういいでしょ。あとは外で決着をつけましょう」
「あらあら。ダメよ、優子。それじゃあ私が十代でいられない。いまを楽しまなきゃ」
魔女も立ち上がると、その姿が消えた。
!
「捕まえ──」
ブン!
背後に回った魔女に、私は背負い投げをした。
だけど魔女は床に叩きつけられることなく消え、再び目の前に現れた。
「もう、優子ったら乱暴なんだから」
ウインクしながら言う魔女。
何か楽しそうね。
私は違うけど。
「あの二人が私たちを元に戻すまでの間に、ラブラブになるのよ、優子」
う。
変に気合いが入ってる。
でも何とかしないと、本当にラブラブにされそう。
考えるのよ、私!
三十歳前後で身長は百七十五センチくらい。
目元を隠す黒いマスクに、胸元が見えるスーツ姿をした、グラマーな大人。
のはずなんだけど、目の前の魔女はちょっと違った。
マスクやスーツ姿なのは同じなんだけど、スーツの色が紅いものから紫になっている。
背も少し低くなっていて、視線を引き寄せる胸も二回りほど慎ましくなっている。
そうね。
若返った、ていうかんじ。
感じる魔力からみれば本人なんだけど、どうしたんだろう。
それにいまは聖名夜ちゃんを主軸にほむらちゃんと二人で、私や魔女を元に戻す魔法の真っ最中なはずなんだけど、部屋の中にいるし……。
「警戒しなくていいわよ、優子。いまの私じゃ、大したことできないから」
そう言うと魔女は冷蔵庫から三百五十mlの缶を二本、取り出した。
「私はビール。優子はジュースでいいでしょ」
「……」
「立っているのもなんだし座りなさい」
言いながらソファーに座り、ジュースの缶をテーブルに置く魔女。
うん?
座る?
……。
あ!
私、身体がある。
さっきまで意識だけだったけど、いまは夏の制服を着て、身体がある。
「あら、いま気づいたの、優子」
魔女は微笑むようにして言うと、その手の缶を開けた。
プシュッという音とともに、ビール特有のにおいをさせながら、魔女はごくごくと飲んだ。
……。
まあ、自分が飲むわけじゃないし、このまま立っているのも変よね。
「いただくわ」
「どうぞ」
テーブルの上にあるオレンジの絵が描かれた缶を手にとってフタを開け、口に運んだ。
「あ、ごめん。それビールだわ」
ブ──────────────────!
「あっはっはっは、うそうそ。それはジュースよ」
思わず吹き出す私に、ケラケラと笑う魔女。
勘弁して……。
あらためて口にする私。
よく知っているオレンジジュースの味。
それに、これが無害なのは持った瞬間に分かった。
「──それで、ここはどこなの? いまは運動公園で聖名夜ちゃんやほむらちゃんが私やあなたを元に戻すために魔法を使っているはずなんだけど」
私は半分くらい飲んだ缶をテーブルに置きながら魔女に訊いた。
「ふふ。ここは球体の内側にある世界。作ったのは私。そして、優子たちが動き回っている間、私が居た場所」
悪戯っぽい雰囲気で答える魔女。
といことは、私が意識をあっちこっち移動している間、魔女の意識はずっとここにあったてこと?
魔女を眠らせておくようなイメージで意識を封じ込めたつもりだったけど、部屋の中にいるというかたちで意識は保っていたんだ。
そこはさすがに経験値の差、強かさの差がでたみたい。
ただ、突破までには至らなかったようね。
それを示すように、この部屋にドアがない。
「なるほどね。だけど、私がここに来た理由が分からない。元の身体に戻るのに必要ないと思うけど」
「そのとおり。そして、放っておいても、あの二人ならできるでしょうね」
ビール缶を置いて、魔女が視線を移すとテレビがついた。
五十インチはあるテレビ画面には、聖名夜ちゃんとほむらちゃんが懸命に魔法を行使している様子が映し出されてた。
映像だけで音声がないけど、これは現状のもので間違いないと思う。
「順調にいってるみたいだだから、あと五分ほどで完了ね」
それを見て言う魔女。
ほ。
五分で元に戻れるんだ。
「でもね、優子。ここでは時間をコントロールできるのよ。例えば五分を一時間に、とかね」
「え?」
「ここへ優子を引き入れたのは私。元に戻ったのと同時にお別れしたりバトルになるんじゃ、ちょっと寂しいと思わない?」
「いや、そうは思わないけど」
「ふふ、優子の玄が力を抑制しているおかげで、同じ十代の身体になったわ。いまだからできること、したいでしょう?」
「いや、全く」
やばい。
ビールを飲んだせいかな。
魔女が怪しくなってる。
「赤いナースの子がいたでしょう? 私のパーソナルカラーは赤だったのに、あの子のおかげで被っちゃったじゃない。しかもナースにスーツじゃ、どうしたってナースの方がインパクトあるわよね、優子?」
顔を寄せてくる魔女。
「でも安心して、優子。赤はナースに譲るけど、スーツは変えないから。ほら触ってみて」
触る?
触る??
色のことを話してたのに?
「ほうら」
すると魔女は右手をつかんで胸元に誘導しようとした──。
「ムギュ……」
「飲み過ぎよ」
私は飲みかけのジュース缶を魔女の口に押し当て、接触を阻止した。
「……」
魔女は缶を口に着けたまま両手で受け取って、そのままごくごくと飲み干した。
「ふふ、おいしい……」
関節キスしちゃった、の意味を含めて微笑む魔女。
まずい……。
このままいくと魔女のペースになりそうね。
私は立ち上がって、ソファーから離れた。
「もういいでしょ。あとは外で決着をつけましょう」
「あらあら。ダメよ、優子。それじゃあ私が十代でいられない。いまを楽しまなきゃ」
魔女も立ち上がると、その姿が消えた。
!
「捕まえ──」
ブン!
背後に回った魔女に、私は背負い投げをした。
だけど魔女は床に叩きつけられることなく消え、再び目の前に現れた。
「もう、優子ったら乱暴なんだから」
ウインクしながら言う魔女。
何か楽しそうね。
私は違うけど。
「あの二人が私たちを元に戻すまでの間に、ラブラブになるのよ、優子」
う。
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考えるのよ、私!
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