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三章 個人探求者
第24話 炎と女都羅
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単純に技が使えるだけじゃない。
威力や速さが桁違いだ。
「ほっほっほ。さすがだ、女都羅」
三メートルくらい上の見下ろす位置に移動した画面から、鉄摩さんは喜んで言った。
「基本能力の高さに加え、五人と、五つの光髪によって増強し拡張した力だからね。当然といえば当然だが、見ていていて楽しいよ」
「ありがとうございます、父様」
そう答える女都羅さんだけど、画面を見ることなく聖名夜ちゃんに向き直った。
そこへ女都羅さんは歩み寄る。
「聖名夜。父様の指示に従い、頂戴する」
そう言うと女都羅さんはしゃがみ込んで聖名夜ちゃんを仰向けにすると、その身体に左手をかざした。
すると聖名夜ちゃんの身体が一瞬、青く光って、胸元から球体が現れた。
「これだな」
聖名夜ちゃんが持っていた球体二個を、かざしていた左手で掴むと、女都羅さんは立ち上がった。
球体は聖名夜ちゃんが霊体に収納していたはずだけど、あの青い光、瑠羅ちゃんの力かな。
それで取り出したんだ。
女都羅さんもそれにならってか、球体を手の平から霊体へ収納したようで、手ぶらになった。
「では、女都羅。そっちにいる火狩の子からも残りの三個をもらいなさい」
「分かりました」
鉄摩さんの言葉を受けて、女都羅さんはほむらちゃんに向かって歩き出す。
ほむらちゃんはうつ伏せに倒れたまま少しも動いていない。
「ほむら、頂くぞ」
女都羅さんはしゃがみ込み、ほむらちゃんの背中に左手をかざそうとした瞬間──。
ボッ! と音をたて、その左手から炎が噴き上がった。
「!?」
素早く後ろへ跳んで距離をとる女都羅さん。
魔力を込め、消火しようとするけど全く効果がない。
左手は焼失し、さらに炎は腕を伝わりながら身体へ向かっていこうとした。
「むん!」
すると女都羅さん。
右手で左腕を切り落とした!
離れた肘から上の部分は空中で燃え尽き、その炎も燃えるものがなくなって消えた。
「どうだ……、その炎は消せねえだろう……」
ゆっくりと立ち上がる、ほむらちゃん
そう。
さっきの炎は、龍の炎。
神様も焼き払う強力すぎるやつ。
女都羅さんが強いから、容赦なく放ったみたい。
威力はあるけど、うまく使わないとほむらちゃん自身も焼き尽くしてしまう。
それにほむらちゃんも、さっき受けたダメージが大きく、ちょっとよろよろしている。
気力で立っているかんじ。
ほむらちゃん……。
「確かに、凄まじい炎だな」
感心しながら、左の切断面を止血すると、そこから女都羅さんは、透明な腕を現した。
そして、その透明な義手に掌、甲、指、爪、腱、骨とか腕に関する漢字が切断面から流し込まれ、満たされた。
「……」
握ったり聞いたりして、感触を確かめる女都羅さん。
違和感はないみたいね。
腕だけど、これは伶羅ちゃんがやってたやつだ。
「父様、後ほどお願いします」
「うむ」
視線を移さず話す女都羅さんに、鉄摩さんは頷いた。
どうやら戦いが終わったら左腕を治療……、修理? してもらうつもりみたい。
造られたものだから、そういうことも簡単に言えちゃうんだね
「さて、ほむら。その炎も触れなければ脅威とはならんぞ」
そう言うと女都羅さん、左右に分身を出した。
本体と同じ体系と服装の分身。
鉄摩さん、光髪って言ってたかな。
光の髪もそれぞれ五本ずつ伸びている。
違うとすれば、まず分身の左腕。
そこは漢字のものじゃない。
そして胸元に水晶がない。
容姿を似せるよりは、能力の方に重点をおいたものみたい。
この分身の術はたぶん、雷羅ちゃんのものだ。
すると、向かって右側の分身・女都羅さんが右手を大きく振った。
「!」
飛んできた何かをギリギリ躱すほむらちゃん。
壁に当たって弾けたものを見ると、それは三十センチくらいの魔力でできた十字手裏剣。
おそらく霊体を攻撃して、ほむらちゃんを気絶させようとしているんだ。
「次は、連続でいくぞ」
本体・女都羅さんの声に反応するように、さっきの分身・女都羅さんが右手と左手を振り始めた。
「ちい……」
ほむらちゃんは不動明王の炎を出しながら、次々と飛んでくる手裏剣を最小限の動作で躱したり捌いたりして対処した。
横へ跳んだりすると、さっきみたいに空中で狙われるから、その場で迎撃するようにしたみたい。
どちらにしても襲ってくるだろうけど、足をつけて動ける方がまだまし。
予想どおり、左側にいる分身・女都羅さんがほむらちゃんへ跳びこんできた。
縦に一回転して振り下ろされる右の踵。
「おらっ!」
手裏剣を弾きながら頭に向かってくる右足を掴み、その勢いを利用して、左側の分身・女都羅さんを投げた。
思いっきり背中を叩きつけられた分身・女都羅さんは、間髪入れずに床から突き上がった三本の炎剣に胸やお腹を貫かれた。
声は出さないけど、うっ、て顔をさせてその分身・女都羅さんは影が飛び散るようなかんじで消えていった。
「先ほどとは違う炎のようだな、ほむら」
両腕を組んで、本体・女都羅さんが言った。
右側の分身・女都羅さんは口を閉ざしたまま右手を構えて待機している。
「分かるのか?」
「ああ。私を焼いた炎は威力が強く荒々しかったが、その炎は、立ち向かう勇気というか、正義を感じさせる」
さすがね。
具体的なものは分からなくても、龍の炎と不動明王の炎との違いが分かっている。
「それじゃあ、ご褒美に、おもしれえもん見せてやるぜ!」
そう言うとほむらちゃんは両手から真紅の炎を出した。
威力や速さが桁違いだ。
「ほっほっほ。さすがだ、女都羅」
三メートルくらい上の見下ろす位置に移動した画面から、鉄摩さんは喜んで言った。
「基本能力の高さに加え、五人と、五つの光髪によって増強し拡張した力だからね。当然といえば当然だが、見ていていて楽しいよ」
「ありがとうございます、父様」
そう答える女都羅さんだけど、画面を見ることなく聖名夜ちゃんに向き直った。
そこへ女都羅さんは歩み寄る。
「聖名夜。父様の指示に従い、頂戴する」
そう言うと女都羅さんはしゃがみ込んで聖名夜ちゃんを仰向けにすると、その身体に左手をかざした。
すると聖名夜ちゃんの身体が一瞬、青く光って、胸元から球体が現れた。
「これだな」
聖名夜ちゃんが持っていた球体二個を、かざしていた左手で掴むと、女都羅さんは立ち上がった。
球体は聖名夜ちゃんが霊体に収納していたはずだけど、あの青い光、瑠羅ちゃんの力かな。
それで取り出したんだ。
女都羅さんもそれにならってか、球体を手の平から霊体へ収納したようで、手ぶらになった。
「では、女都羅。そっちにいる火狩の子からも残りの三個をもらいなさい」
「分かりました」
鉄摩さんの言葉を受けて、女都羅さんはほむらちゃんに向かって歩き出す。
ほむらちゃんはうつ伏せに倒れたまま少しも動いていない。
「ほむら、頂くぞ」
女都羅さんはしゃがみ込み、ほむらちゃんの背中に左手をかざそうとした瞬間──。
ボッ! と音をたて、その左手から炎が噴き上がった。
「!?」
素早く後ろへ跳んで距離をとる女都羅さん。
魔力を込め、消火しようとするけど全く効果がない。
左手は焼失し、さらに炎は腕を伝わりながら身体へ向かっていこうとした。
「むん!」
すると女都羅さん。
右手で左腕を切り落とした!
離れた肘から上の部分は空中で燃え尽き、その炎も燃えるものがなくなって消えた。
「どうだ……、その炎は消せねえだろう……」
ゆっくりと立ち上がる、ほむらちゃん
そう。
さっきの炎は、龍の炎。
神様も焼き払う強力すぎるやつ。
女都羅さんが強いから、容赦なく放ったみたい。
威力はあるけど、うまく使わないとほむらちゃん自身も焼き尽くしてしまう。
それにほむらちゃんも、さっき受けたダメージが大きく、ちょっとよろよろしている。
気力で立っているかんじ。
ほむらちゃん……。
「確かに、凄まじい炎だな」
感心しながら、左の切断面を止血すると、そこから女都羅さんは、透明な腕を現した。
そして、その透明な義手に掌、甲、指、爪、腱、骨とか腕に関する漢字が切断面から流し込まれ、満たされた。
「……」
握ったり聞いたりして、感触を確かめる女都羅さん。
違和感はないみたいね。
腕だけど、これは伶羅ちゃんがやってたやつだ。
「父様、後ほどお願いします」
「うむ」
視線を移さず話す女都羅さんに、鉄摩さんは頷いた。
どうやら戦いが終わったら左腕を治療……、修理? してもらうつもりみたい。
造られたものだから、そういうことも簡単に言えちゃうんだね
「さて、ほむら。その炎も触れなければ脅威とはならんぞ」
そう言うと女都羅さん、左右に分身を出した。
本体と同じ体系と服装の分身。
鉄摩さん、光髪って言ってたかな。
光の髪もそれぞれ五本ずつ伸びている。
違うとすれば、まず分身の左腕。
そこは漢字のものじゃない。
そして胸元に水晶がない。
容姿を似せるよりは、能力の方に重点をおいたものみたい。
この分身の術はたぶん、雷羅ちゃんのものだ。
すると、向かって右側の分身・女都羅さんが右手を大きく振った。
「!」
飛んできた何かをギリギリ躱すほむらちゃん。
壁に当たって弾けたものを見ると、それは三十センチくらいの魔力でできた十字手裏剣。
おそらく霊体を攻撃して、ほむらちゃんを気絶させようとしているんだ。
「次は、連続でいくぞ」
本体・女都羅さんの声に反応するように、さっきの分身・女都羅さんが右手と左手を振り始めた。
「ちい……」
ほむらちゃんは不動明王の炎を出しながら、次々と飛んでくる手裏剣を最小限の動作で躱したり捌いたりして対処した。
横へ跳んだりすると、さっきみたいに空中で狙われるから、その場で迎撃するようにしたみたい。
どちらにしても襲ってくるだろうけど、足をつけて動ける方がまだまし。
予想どおり、左側にいる分身・女都羅さんがほむらちゃんへ跳びこんできた。
縦に一回転して振り下ろされる右の踵。
「おらっ!」
手裏剣を弾きながら頭に向かってくる右足を掴み、その勢いを利用して、左側の分身・女都羅さんを投げた。
思いっきり背中を叩きつけられた分身・女都羅さんは、間髪入れずに床から突き上がった三本の炎剣に胸やお腹を貫かれた。
声は出さないけど、うっ、て顔をさせてその分身・女都羅さんは影が飛び散るようなかんじで消えていった。
「先ほどとは違う炎のようだな、ほむら」
両腕を組んで、本体・女都羅さんが言った。
右側の分身・女都羅さんは口を閉ざしたまま右手を構えて待機している。
「分かるのか?」
「ああ。私を焼いた炎は威力が強く荒々しかったが、その炎は、立ち向かう勇気というか、正義を感じさせる」
さすがね。
具体的なものは分からなくても、龍の炎と不動明王の炎との違いが分かっている。
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