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三章 個人探求者
第17話 魔法と文字たちの行進
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漢字が詰まった伶羅ちゃんたちの特性は分かった。
凍結魔法で消滅したのはたぶん『炎』とか熱に関係する文字だと思う。
じゃあ、とりあえず効くのだけやっちゃえ、とはならない。
だって、千二百人近い人数に魔法を放ったって消耗するだけだし、倒しきれるわけでもないからね。
それに、これを全部倒すのが目的じゃない。
打ち破ればいいんだ。
とはいえ、それまで迫りくる行進に対応しなければならない。
「……」
聖名夜ちゃんは右手からカードを出して、四方からくる集団の幅に合わせて、それぞれの方向に二枚ずつ投げつけた。
「gate」
その言葉を受けて空中のカードは青白いオーラのような柱になり、さらに上部もつながって、長方形をつくった。
高さ二メートルくらいの魔法でできた門。
そこを通過する伶羅ちゃんたちは、何かしら水属性の影響を受ける。
早い話がフィルターね。
壁にしなかったのは避けて通ることができるし、さっき凍結した伶羅ちゃんがそのまま通っていったのよね。
幽霊の壁抜けみたいなかんじで。
だから、門を通らせて仕掛ける形にしたんだと思う。
その効果はてき面で、一列のうち三、四人は凍結か消滅していった。
「……」
人数は減らせても、やってくることに変わりない。
それに、このままだと前後左右からの行進がぶつかることになる。
伶羅ちゃん、どうするんだろう。
ひとまず聖名夜ちゃんは十字に交差するところから離れようとした。
ドン。
だけど、何か見えないものの反発を受けて戻された。
結界かな。
なにがなんでも行進の中に入れたいみたいね。
仕方なく一番交差する位置を避け、前後の通りだけとなるところに立つ聖名夜ちゃん。
そして、大迫力の演奏とともに先頭の一列が接近するする。
「……」
聖名夜ちゃんは門を通ってできた一列の空白を狙って、躱していった。
接触すれば、その伶羅ちゃんが内包する漢字の意味が発現するようになるからね。
楽器が透明とかではないエア演奏のはずだけど、本当にその場で奏でている感じで、音量はあるし空気も震えている。
最小限の動作で回避しながら、慎重に、二列目、三列目と通り抜けていく。
そうだ。
後ろはどうなっているんだろう。
むむ。
変わらぬ動作、スピードですり抜けてる。
すごい。
これって集団行動ってやつ?
門の影響で欠員こそあるけど、四方向、接触することなく綺麗に進んでいった。
ピ─────────────────、ピ!
あ、あれ、ホイッスル。
曲が終わったんだ。
ぴたっと立ち止まる伶羅ちゃんたち。
そして、小気味いいドラムの音がしたかと思うと、それに合わせて伶羅ちゃんたちは一斉に踊り出した。
この曲は知ってる。
シングシングシングだ。
大きく身体を使って動く伶羅ちゃんたちに、聖名夜ちゃんは可能な限り離れるようにして対応。
すると笛の音と同時に、手元は楽器を演奏するようにしながら、揃ってリズムよく足を振り始めた。
「……」
真っすぐに歩いてきたときと違い、激しい動作が加わっているから、避けるのが格段に難しくなっている。
その場の動作でも大変なのに、伶羅ちゃんたちは行進を再開。
聖名夜ちゃんは動きを見極めながら、列の空白に向かっていく。
大音量の中、触れないで避け続けるのはものすごいストレスよね。
「……!」
それに今度は後ろからもやってくる。
そうなると、空白を追うどころじゃない。
挟まれちゃう。
「float !」
真上に跳んで魔法を使う聖名夜ちゃん。
空中に浮いてやり過ごそうってことね。
……。
こうしてみると、楽器を振るようにしたり足を上げているのに、よくあたらないわね。
ちょっとみとれちゃう。
て、聖名夜ちゃん。
なんか身体を折り曲げるようにして、窮屈な体勢になってる。
天井があって邪魔なかんじって……、そうか天井があるんだ。
なんか、白くて境い目がないから天井もないように思っちゃうけど。
さすが聖名夜ちゃん、確認済みね。
最後の列まで十メートルくらい。
それが過ぎれば、ひとまず大丈夫だと──。
うそ……。
伶羅ちゃんたち、エア演奏したまま伸身の宙返りをしてる。
それは後ろからの集団も同じ。
一列ごとに順番ができているけど、これは絶対に当たるやつだ。
ヤバい、聖名夜ちゃん!
「break !」
空中で勢いよく吹っ飛び、粉々になる一人の伶羅ちゃん。
その身体には『石』の字があった。
そうだよね。
聖名夜ちゃんは氷結の魔法が得意というだけで、他の魔法も使える。
漢字で意味が分かっているんだから、接触してくるものだけを対処すればいいんだ。
列の端っこにいて、聖名夜ちゃんは迎えうてるように構える。
「beat !」 「baind !」 「blow !」
頭文字がbばっかりだけど、飛んでくる伶羅ちゃんを次々とはねのけていく。
「brea──」
言いかけて止まる聖名夜ちゃん。
この伶羅ちゃん、さっきの『石』と同じ茶色の文字だけど『右』だ!
両足を振り下ろされるかたちで聖名夜ちゃんは接触。
強制的な力で右方向へ引っ張られ、体勢が傾いていた聖名夜ちゃんは床へ叩きつけられた。
「ぐ……」
痛みにうずくまるけど、目の前には音楽に合わせてステップを踏む『吸』の漢字をもった足が迫る。
「ふうぅ……」
触れた瞬間、魔力や精気を吸われ、声が出る聖名夜ちゃん。
とても気持ち悪そう。
だけど、ここにいては挟まれて一歩的にやられてしまう。
「はっ!」
列の端側に飛び込んで、聖名夜ちゃんは防御結界を張った。
いちおう、あらゆる攻撃に対して防げるけど、魔力を出し続けなければならないから消耗が激しい。
その間も一人ずつではあるけど、右から左から伶羅ちゃんたちはやってくるから動きようがない。
どうしよう、聖名夜ちゃん。
凍結魔法で消滅したのはたぶん『炎』とか熱に関係する文字だと思う。
じゃあ、とりあえず効くのだけやっちゃえ、とはならない。
だって、千二百人近い人数に魔法を放ったって消耗するだけだし、倒しきれるわけでもないからね。
それに、これを全部倒すのが目的じゃない。
打ち破ればいいんだ。
とはいえ、それまで迫りくる行進に対応しなければならない。
「……」
聖名夜ちゃんは右手からカードを出して、四方からくる集団の幅に合わせて、それぞれの方向に二枚ずつ投げつけた。
「gate」
その言葉を受けて空中のカードは青白いオーラのような柱になり、さらに上部もつながって、長方形をつくった。
高さ二メートルくらいの魔法でできた門。
そこを通過する伶羅ちゃんたちは、何かしら水属性の影響を受ける。
早い話がフィルターね。
壁にしなかったのは避けて通ることができるし、さっき凍結した伶羅ちゃんがそのまま通っていったのよね。
幽霊の壁抜けみたいなかんじで。
だから、門を通らせて仕掛ける形にしたんだと思う。
その効果はてき面で、一列のうち三、四人は凍結か消滅していった。
「……」
人数は減らせても、やってくることに変わりない。
それに、このままだと前後左右からの行進がぶつかることになる。
伶羅ちゃん、どうするんだろう。
ひとまず聖名夜ちゃんは十字に交差するところから離れようとした。
ドン。
だけど、何か見えないものの反発を受けて戻された。
結界かな。
なにがなんでも行進の中に入れたいみたいね。
仕方なく一番交差する位置を避け、前後の通りだけとなるところに立つ聖名夜ちゃん。
そして、大迫力の演奏とともに先頭の一列が接近するする。
「……」
聖名夜ちゃんは門を通ってできた一列の空白を狙って、躱していった。
接触すれば、その伶羅ちゃんが内包する漢字の意味が発現するようになるからね。
楽器が透明とかではないエア演奏のはずだけど、本当にその場で奏でている感じで、音量はあるし空気も震えている。
最小限の動作で回避しながら、慎重に、二列目、三列目と通り抜けていく。
そうだ。
後ろはどうなっているんだろう。
むむ。
変わらぬ動作、スピードですり抜けてる。
すごい。
これって集団行動ってやつ?
門の影響で欠員こそあるけど、四方向、接触することなく綺麗に進んでいった。
ピ─────────────────、ピ!
あ、あれ、ホイッスル。
曲が終わったんだ。
ぴたっと立ち止まる伶羅ちゃんたち。
そして、小気味いいドラムの音がしたかと思うと、それに合わせて伶羅ちゃんたちは一斉に踊り出した。
この曲は知ってる。
シングシングシングだ。
大きく身体を使って動く伶羅ちゃんたちに、聖名夜ちゃんは可能な限り離れるようにして対応。
すると笛の音と同時に、手元は楽器を演奏するようにしながら、揃ってリズムよく足を振り始めた。
「……」
真っすぐに歩いてきたときと違い、激しい動作が加わっているから、避けるのが格段に難しくなっている。
その場の動作でも大変なのに、伶羅ちゃんたちは行進を再開。
聖名夜ちゃんは動きを見極めながら、列の空白に向かっていく。
大音量の中、触れないで避け続けるのはものすごいストレスよね。
「……!」
それに今度は後ろからもやってくる。
そうなると、空白を追うどころじゃない。
挟まれちゃう。
「float !」
真上に跳んで魔法を使う聖名夜ちゃん。
空中に浮いてやり過ごそうってことね。
……。
こうしてみると、楽器を振るようにしたり足を上げているのに、よくあたらないわね。
ちょっとみとれちゃう。
て、聖名夜ちゃん。
なんか身体を折り曲げるようにして、窮屈な体勢になってる。
天井があって邪魔なかんじって……、そうか天井があるんだ。
なんか、白くて境い目がないから天井もないように思っちゃうけど。
さすが聖名夜ちゃん、確認済みね。
最後の列まで十メートルくらい。
それが過ぎれば、ひとまず大丈夫だと──。
うそ……。
伶羅ちゃんたち、エア演奏したまま伸身の宙返りをしてる。
それは後ろからの集団も同じ。
一列ごとに順番ができているけど、これは絶対に当たるやつだ。
ヤバい、聖名夜ちゃん!
「break !」
空中で勢いよく吹っ飛び、粉々になる一人の伶羅ちゃん。
その身体には『石』の字があった。
そうだよね。
聖名夜ちゃんは氷結の魔法が得意というだけで、他の魔法も使える。
漢字で意味が分かっているんだから、接触してくるものだけを対処すればいいんだ。
列の端っこにいて、聖名夜ちゃんは迎えうてるように構える。
「beat !」 「baind !」 「blow !」
頭文字がbばっかりだけど、飛んでくる伶羅ちゃんを次々とはねのけていく。
「brea──」
言いかけて止まる聖名夜ちゃん。
この伶羅ちゃん、さっきの『石』と同じ茶色の文字だけど『右』だ!
両足を振り下ろされるかたちで聖名夜ちゃんは接触。
強制的な力で右方向へ引っ張られ、体勢が傾いていた聖名夜ちゃんは床へ叩きつけられた。
「ぐ……」
痛みにうずくまるけど、目の前には音楽に合わせてステップを踏む『吸』の漢字をもった足が迫る。
「ふうぅ……」
触れた瞬間、魔力や精気を吸われ、声が出る聖名夜ちゃん。
とても気持ち悪そう。
だけど、ここにいては挟まれて一歩的にやられてしまう。
「はっ!」
列の端側に飛び込んで、聖名夜ちゃんは防御結界を張った。
いちおう、あらゆる攻撃に対して防げるけど、魔力を出し続けなければならないから消耗が激しい。
その間も一人ずつではあるけど、右から左から伶羅ちゃんたちはやってくるから動きようがない。
どうしよう、聖名夜ちゃん。
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