君は少女をみたか!

一陽吉

文字の大きさ
上 下
22 / 51
三章 個人探求者

第11話 戦いに出る子

しおりを挟む
「……」

 無言で階段を下りていく、ほむらちゃん。

 その先の広場になっているところに、白衣姿の鉄摩テツマさんとニニちゃんがいる。

 さっき、ほむらちゃんと話したときは立体映像だったけど、これは本物。

 あらためて見るとこのツーショット、親子ね。

 瑠羅ルラちゃんとかも、って言ってたし。

 でも、最初に瑠羅ちゃんは、造ったって言ってたのよね。

 だから人造人間のようなものかなって思ってたけど、機械的なところが見られないから、その実感がない。

 能力者であれぐらいやる人はいるし、戦ったこともある。

「さすがだな。セキュリティを簡単に突破するとは」

 なんかちょっと嬉しそうに言う鉄摩さん。

 いや、セキュリティを突破されたらダメだと思うけど。

「随分といい趣味してるじゃねえか。瑠羅や利羅リラ狼羅ロウラの方がまだましだったぜ」

 ほむらちゃんは、ムカッとしているのを隠さないで言った。

「ほっほっほ。セキュリティの物は全て商品開発のために試作したものだからね。私の趣味で造ったものではない」

「商品?」

「考えてもみたまえ。これだけの設備や資材、どうやって調達するか。当然、巨額の資金が必要になる。そこで私は物好きな方に販売したり、支援してもらっているというわけさ」

「それで女か」

「男を造ってもつまらん。どうせ造るなら美しい女がいい。客やスポンサーも、そういった面々だけにしている。最低限、女であれば私も納得して造れるからね」

「けっ……」

 あらためてムカつくほむらちゃん。

 え、じゃあ何?

 さっき通路に転がっていたマネキンみたいなのって、元々はそういう目的の物だったの?

 腕四本とかあったけど。

 うわー、分からない。

 ほむらちゃんがムカついていたのは、それに気がついたからなのね。

 なるほど。

 私もムカついてきたわ。

 女をなんだと思っているのかしら。

「さて、君はここまで来たわけだが、私は球体あれを渡すつもりはない。分かっていると思うが、ほかに球体を持っている子が所内にいてね。うちの娘が戦ったんだが負傷してしまった。そのおかげで現在、まともに戦える者がいない状態になっているんだが──」

「はい、私がやります。父様」

 そう言いながらニニちゃんが一歩、前に出た。

 ニニちゃん?

 待って、レのつく子がいるんじゃないの?

 それにニニちゃん、見た目は十歳の女の子。

 戦うっていっても……。

 いや、見た目で判断してはいけないわね。

「私はそこで見ている。存分に戦いなさい、ニニ」

「はい、父様」

 ニニちゃんは微笑むと、鉄摩さんは広場を見下ろせる通路に瞬間移動した。

 その位置にいると、娘を見守る保護者というよりは、戦いを分析する人に見える。

 そういえば瑠羅ちゃんがずっと結界を張っていたけど、今回はいないわね。

 結界がいらないってこと?

 でも、ほむらちゃんの右側には大きな機械とかがあって、壊れたらやばそうなんだけど。

「──よろしいですか?」

 確認するニニちゃん。

「ああ……」

 静かに答えて構えるほむらちゃん。

「では、いきます」

 それを受けて、ニニちゃんはグッと身体に力を込めた。

「ううぅ……」

 ちょっと苦しそうにしながらも、身体から赤黒く薄いオーラが立ち昇った。

 これは……。

 間違いない。

 私のチカラ、げんだ。

 ニニちゃん、球体から玄を引き出しているんだ!

「むん!」

 玄のオーラをまとった右手を振るニニちゃん。

 そこからオーラは巨人の右手のように大きくなって、ほむらちゃんにつかみかかった。

「!」

 しゃがんでギリギリかわす、ほむらちゃん。

 まずい。

 これが玄である以上、触れることができない。

 いや、正確には受け止めるような防御で触らない方がいい。

 だって玄はあらゆるものに変化できるから。

 たとえば、玄で触れてから焼くことや凍らせること。

 電撃、麻痺とかの他に、崩壊させることもできる。

 その気になれば、炎を凍結させることも。

 あんまり濃いと制御が難しくなるけど、あれぐらいなら多少、不慣れでも扱えそう。

「まだまだいきます」

 そう言うとニニちゃんは左右の手を振って、次々とオーラの巨手を出した。

「ちぃ……」

 するとほむらちゃんは両手両足から不動明王の炎を出した。

 そしてその炎を緩衝材かんしょうざいにして、巨手に触れないように受け流しつつ、体術で回避していく。

 神様の炎だから玄にも対抗できる。

 だけど、玄は変化させられるし、接触の時間が長いと飲み込まれたり散らされたりで、いろいろ不利になる。

 それにここは広場になっているけど、狼羅ちゃんのときと比べて狭いから、連続で範囲のある攻撃をされると躱していくのは厳しい。

 動作として、ニニちゃんは手を振っているだけだから、そんなに疲れることはない。

 でも、ほむらちゃんは炎を使い、身体を動かし続けているから、やがては疲れてくる。

 いつもは玄を使っている側の私だけど、使われると、とんでもなくやっかいね。

「どうしました」

 クールな顔のまま、余裕のセリフを言うニニちゃん。

「ふむ……」

 上で見ている鉄摩さんも、一歩的だな、見たいにして見てる。

「仕方ねえ……」

 決意を呟くほむらちゃん。

 ということは、もう一つの炎を使うつもりなんだ。

「いくぜ!」

 気合いを入れて、切り替えようとした瞬間──。

「!?」

 ドクンと大きな鼓動がニニちゃんの全身を震わせた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

処理中です...