君は少女をみたか!

一陽吉

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三章 個人探求者

第7話 次へ

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「俺の勝ちだ」

  目を閉じ、倒れて動かない狼羅ロウラちゃんを前に、ほむらちゃんは瑠羅ルラちゃんを見やって言った。

「そのようね」

 合掌のポーズを解く瑠羅ちゃん。

 結界が消えると、狼羅ちゃんのところへ歩み寄った。

「あんたもやられるなんてね」

 言いながら右手で身体を触るのと同時に、狼羅ちゃんの姿は消えた。

「主なダメージは気力の方だろうけど、回復には時間がかかるわね」

 利羅リラちゃんのときもそうだけど、転移させたんだろうと分かっていても心配になる。

 うん?

 利羅、瑠羅、狼羅……。

 ラ行ね。

 ということは、ラとかレとかの子もいるのかな。

「──さあ、約束どおり、球体を持っているやつのところへ行かせてもらおうか」

「分かったわ」

 そう言うと瑠羅ちゃん、左手で指をパチンと鳴らすと、コンクリートの壁から扉が現れた。

 縦二メートル、横一・五メートルくらいの大きさをした鉄製の扉で、新品みたいにすごくきれい。

 だから、いま取ってつけたんだなって思う。

「そこから、通路を抜ければニニにたどり着くはずよ。ただ、ニニがいつまでも同じところにいるとは限らないからね」

「ああ、だろうな」

 知ってる、みたいに答えるほむらちゃん。

 それもそのはず、ニニちゃんの持つ球体の反応はいま、聖名夜みなよちゃんのところにある。

 聖名夜ちゃんが目を覚ましたからかもしれないけど、違う目的でいるのかもしれない。

「じゃあ、行くぜ」

 言いながら、ほむらちゃんは扉へ向かって歩き出した。

「ええ、どうぞ。わたしは跳ぶから」

 そう答えると、瑠羅ちゃんは瞬間移動。

 さっさと姿を消した。

 なんか素っ気ないわね。

「さて、いま行くからな。無事でいろよ。聖名夜」

 ほむらちゃんは呟きながら、ドアノブに手をかけた。

 聖名夜ちゃんは無事だったよ、ほむらちゃん。

 ただ、さっきとは状況が変わったみたい。

 様子をみてくるね。





 ──私は意識を聖名夜ちゃんの球体へと移動させた。





 場所は変わっていないわね。

 あ、聖名夜ちゃん、気がついて立ち上がってる。

 そして、その前には鉄摩さんとニニちゃん、瑠羅ちゃんが居た。

 瑠羅ちゃん、瞬間移動してここへ来たのね。

 あの緑色をした半透明の壁を境に対面している。

 ということは、ほむらちゃんのときみたいに、球体について聞き出そうとしているのかな。

 でも、話をするだけなら、鉄摩さんとニニちゃんだけでよさそうだけど。

 ──話は続いている。

 聞いてみよう。

「あっちの持ち主は友達を助けるためと言っていたが、君もそうなのかな?」

 紳士的に訊く鉄摩さん。

「だとしたらどうなのかしら」

 少し冷たい感じで答える聖名夜ちゃん。

 警戒しているのが分かる。

「お友達には申し訳ないが、はっきり言って球体これは欲しい。いまニニが持っている一個だけでもね」

「それはできないわ」

「助けると言ってもいろいろある。例えば、球体を身体に入れて核にするとか、力を与えるとか。反応がある五個すべてを集めないといけないものなのかな?」

「すべて必要ね」

 鉄摩さん、何とか一個だけでも手に入れておきたいみたいね。

 だけど、あれは私と魔女が一つになって分かれたもの。

 全部ないと元に戻らない。

 でも仮に、四個で戻ろうとしたらどうなるんだろう。

 ちょっと興味が……、いや、ダメダメ。

「ふむ。では、あっちの持ち主と君はお友達なのかな?」

 試すようにして見るこの表情、見覚えがある。

 ほむらちゃんのことを言っているけど、返答次第では対応が変わってくるかもしれない……。

「この状況では分からないわ」

 すると聖名夜ちゃん、あくまでクールに答えた。

「ほ、ほーほほ。確かにそうだ!」

 愉快痛快といった様子で、鉄摩さんは笑って言った。

「いま持っている子が、君の考えている子と同じとは限らない。何者かが奪うことだってあり得るし、たまたま目的が一緒だったという可能性も否定できないからね」

 実際、私は意識を移動しているから、ほむらちゃん聖名夜ちゃん、二人の親友がここにいるのは分かっているけど、ほむらちゃんも聖名夜ちゃんもお互いに存在を確認できていない。

 信じて疑っていないけど、それを顔に出さず、冷静に客観的に、聖名夜ちゃんは答えたんだ。

「だが、いずれにしろニニの持つ球体を渡すつもりはない。そこで提案する。私のと戦ってみないかね?」

「戦う?」

「君のもつ魔力はかなりのレベルにあるもの。戦闘力が高いことが分かる」

「……」

「戦って、君が勝てばニニへの道を繋ごう。ただし、私の娘が勝ったら君の球体はいただく。どうかな?」

「道を繋ぐって、渡してはくれないのね」

「ふふ、鋭い。今は防壁をはさんで話しているが、それなしで会えるようにしてやろうと言うことさ。戦わないなら君にもう一度眠ってもらって、霊体ごと球体を奪うが、それでいいかい?」

 この言い回しはほむらちゃんのときと一緒だ。

 ほむらちゃんも気づいてはいただろうけど、球体を渡す気がないから、あえて追及しなかったんだと思う。

 そもそも変に遠回しな言い方よね。

 嘘でも勝ったら渡すと答えておけばいいようなものだけど。

 何か思惑おもわくがあるんだろう。

「分かったわ」

「よろしい。では瑠羅」

「はい、父様」

「この子が戦いの場へ案内する」

「わたしは瑠羅。あなたは?」

「聖名夜」

「じゃあ、聖名夜。早速、行くわよ」

 そう言うと瑠羅ちゃん、瞬間移動して聖名夜ちゃんの横に並ぶと、その手をつかんで再び瞬間移動した。
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