君は少女をみたか!

一陽吉

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三章 個人探求者

第4話 ニニという子

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 ──私の意識はほむらちゃんの持つ球体から、聖名夜みなよちゃんの持つ球体へ移動する。

 移動……、できないとまずい。

 できないということは、聖名夜ちゃんが球体を持っていないということだから。

 お願い。

 聖名夜ちゃんのところへ届いて。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 ここは……。

 部屋?

 広さは十畳くらいかな。

 内装はちょっと近未来的。

 強化プラスチックみたいな白い壁が三方にあり、正面は緑色をした半透明の壁で通路が見える。

 なんか、宇宙船の中にいるよう。

 扉がないわね。

 どうやって出入りするのかな。

 て、聖名夜ちゃん!

 は、眠っている?

 いや気絶しているのかな。

 壁際にあるベッドで横になってる。

 身体は……、魔力や精気が正常に流れている。

 ケガをしたとか、そういうのはないみたいね。

 ほっ。

 とりあえず大丈夫かな。

 球体も聖名夜ちゃんが二個持っている。

 おそらく霊体に収納しているから、取り出すことができず、そのまま連れ去ったのね。

 とはいえ、聖名夜ちゃんもほむらちゃんに負けないくらいの手練れ。

 その聖名夜ちゃんを気絶させたんだから、相手はかなりの実力者だと思う。

 まあ、一瞬の隙をつかれた私が言うことじゃないのかもしれないけど。

 部屋はいちおうトイレがあるものの、他にはとくに何もない。

 あ、聖名夜ちゃんのステッキもないわね。

 当然といえば当然か。

 とりあえず、いますぐ聖名夜ちゃんがどうこうされるような事はなさそう。

 何かしようとするなら、手足が自由な形で閉じ込めておかないと思うから。

 それじゃ聖名夜ちゃん、私はほむらちゃんのところへいくよ。

 球体の反応がはっきりしているから、この空間の中、建物? の中にいるのは間違いない。

 いざとなれば、ほむらちゃんが助けてくれる。

 ほむらちゃんも心配しているだろうけど、いまの私は伝えることができない。

 でもね、大丈夫。

 ほむらちゃんなら分かってくれる。

 少しの間、待っててね。





 ──そして私の意識は、聖名夜ちゃんの球体から、ほむらちゃんの球体へ。





 むむ。

 ほむらちゃんと、瑠羅ルラちゃんがいる。

 けっこう広い場所。

 バスケのコートなら三面はあるんじゃないかな。

 床も壁も天井もコンクリート製みたいだし、吹き抜けで三階分はありそうなほど高い。

 四角い作りだから、倉庫のイメージがある。

 ただ、照明がないのに明るく、扉のようなものもない。

 空間魔法の応用なのかな?

「──いま、父様お話になるわ」

 瑠羅ちゃんがそう言うと、その横に男の人が現れた。

 身長は百六十センチくらいでせ型。

 年は、五十代半ばほどに見える。

 銀縁のメガネをかけて白衣を着ているから、いかにも科学者ってかんじ。

 ただこれ、立体映像よね。

 実体が感じられない。

「私は工堂鉄摩クドウテツマ。個人ながら魔導工学者として日々、研究をしている」

 偉い学者さんのような話し方で挨拶する鉄摩さん。

 科学者じゃなくて魔導工学者。

 魔導工学ってことは魔法を工業的に扱うものだから、この人が瑠羅ちゃんとかを造ったで間違いないんだろう。

 瑠羅ちゃんも利羅リラちゃんも、人間と区別つかないけど。

 そして、個人ということは組織に属していないってこと。

 規則や監視がなく自由であることだ。

 悪いことでもなんでも、自分の好き放題にできる。

「事情は聞いている。友達を助けたいんだとか」

「ああ……」

 素っ気なく答えるほむらちゃん。

「そのために必要なものが、球体これなのかね?」

 すると、鉄摩さんの隣りにもう一人、女の子が現れた。

 同じく立体映像ね。

 十歳くらいに見える、黒髪ロングに白衣を着た助手ってかんじの子。

 そして、その子が右手に持っているのは間違いなく、私と魔女の欠片、球体だ。

 ──はっきり言うと、それ自体は驚かない。

 だって、気配でその球体が今どこにあるか分かるから。

 この子が持っている球体は、ここから直線で百メートルくらいのところにあるし、聖名夜ちゃんのは二百メートルくらいのところにある。

 だから、この子が持っているんだ、くらいのもの。

「──そうだ」

 ほむらちゃんは深く追求されないように、言葉少なく答える。

「ふむ。このはニニ。私の手伝いをしてもらっている。おとといだったかに夜の街を散歩していたら偶然、これを見つけてね。力を感じるというんだ」

「はい。わたしが手にしたとたん、全ての能力が向上し魔力の補填を確認しました。また、少女限定ですが、様々な思いも感じ取ることができます」

 その子、ニニちゃんは容姿の想像を超えた大人の口調で言った。

 ニニ。

 それ、漢字?

 それともカタカナ?

「どうも球体それは少女というものがキーワードになっている節がある。例えば、ニニや他の娘は手に持てるが、私は触れることもできなかった。反発する磁石のように拒絶されてね」

 え、そうなの?

 そういえば、ユキちゃん、香澄ちゃんも、みんな女の子だ。

 男の子が触ることがなかったから気づかなかったけど。

「まあ、自然のものでないのは分かる。私も長年、魔法に絡んだことをしているからね。どこかの魔法使いが力を凝縮させて作ったと考えているが、どうかな?」

 チラッと見やりながら言う鉄摩さん。

「さあな」

 目を鋭くして言うほむらちゃん。

「なるほど、言いたくないか。友達を助ける。それは本当だろう。しかしね、君がこれを欲しいように私も必要性を感じている。私が扱えないんで、ずっとニニに調べさせていたんだが、とんでもないものを発見したからね」

 話しながら、ニニちゃんを促す鉄摩さん。

「はい。この中に、げんがあります」

 !

 ニニちゃんが発見したというもの。

 それは私のチカラを表すものだ。
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