君は少女をみたか!

一陽吉

文字の大きさ
上 下
14 / 51
三章 個人探求者

第3話 炎と刀、そして

しおりを挟む
 ほむらちゃんは左手の人差し指と中指の二指にしを立て、構え直した。

「いくぜ!」

 すると、利羅リラちゃんを中心に円を描いて、路面から立ち上がるような三つの炎が現れた。

 高さは四メートルくらいで、円は半径三、二、一メートルほどの大きさで展開。

 等間隔のまま円は赤く揺らめきながら半径を縮めて、利羅ちゃんに迫る。

 様子は見えないけど、熱い炎に囲まれて汗が噴き出していると思う。

 このままだと利羅ちゃんは焼き尽くされてしまう形だけど、それはない。

 ほむらちゃんは、疲れさせるとか意識を奪うとか、そういったもので無力化しようとしている。

 命を狙うものなら、もっと攻撃力のある技を使うはずだから。

「むう、機幻刀きげんとう!」

 利羅ちゃんが言うと、魔力が大きく揺らいだ。

 セリフから考えて、あの刀に何かしたみたい。

大斬撃だいざんげき!」

 そう言うと、利羅ちゃんは斜めに回転しながら剣を振って飛び込み、三つある炎の壁を突破した。

 刀身を芯にした、幅が五十センチ、長さが二メートルはある魔力で作られた刃で、大きな風穴を開けて脱出したんだ。

 空中で威力と回転を調整し、ダンッと力強く着地する利羅ちゃん。

 同時に魔力で拡張された部分は消えて、元の刀身になった。

 突破できて、ほっとひと安心しているのかもしれないけど、そこに親友が待ち構えている。

「!?」

 ほむらちゃんは突き出した左手で利羅ちゃんの口をふさぐと、そのまま体内へ勢いよく炎を放った。

「!」

 あふれ出るみたいに利羅ちゃんの身体から炎が噴き上がる。

 そばにいるほむらちゃんは炎を浴びる格好だけど、平然としてる。

 仕掛けている本人には影響がないとかではなく、いまやっているのは熱を目的とした炎じゃないから。

 前に見たことがある。

 これは魔力とか精気とか、身体の内部を流れるエネルギーの経路を断ち、無力化しているんだ。

 名前は確か、餓鬼がき払い。

 体内に巣食う悪いものを焼き払うのから始まって、この形に応用したみたい。

 そして、頃合いをみて手を離すほむらちゃん。

「お……、お見事……」

 ほむらちゃんを称えて、利羅ちゃんは右の方へ倒れた。

 喉を焼いたわけじゃないから声は出る。

 ポニーテールの先から伸びていた白い光も消えて、そのまま瞳も閉じてるから眠っている感じになった。

 気を失ったみたいね。

「次は、お前が相手か?」

 瑠羅ルラちゃんを見やって、ほむらちゃんは一旦いったん、全ての炎を消した。

「私は戦わないわ。専門外だし」

 そう答えると、瑠羅ちゃんはずっとやっていた合掌のポーズを解いた。

 同時に、張られていた結界が消え、元の夜が現れた。

 む。

 ツインテールから伸びる白い光も消えたわね。

 やっぱり、能力発動や戦闘状態と関係あるみたい。

 まあ、だとしてどんな効果があるのか分からないけど。

「それに、父様から連絡があったわ。聞きたいことがあるから、ほむらを研究所に迎え入れなさいって」

「研究所?」

「そうよ。私たちを造ったり、機械を開発している所。別の空間にあるんだけど」

 すると瑠羅ちゃん、倒れている利羅ちゃんの側へやってきた。

「まさか、あんたがやられるなんてね」

 しゃがみ込むと右手で身体に触れた。

 その瞬間、利羅ちゃんの身体は刀と一緒に消えた。

 えっと、それは……。

「治療室へ送っただけよ」

 始末したんじゃないから、みたいな顔で言う瑠羅ちゃん。

 だろうなとは思っていたけど、消えたから、説明がないとドキッとする。

「で、来るんでしょう? ほむら」

 立ち上がり、瑠羅ちゃんは来る前提で聞いてくる。

 別空間にあるということは恐らく、残り一個の球体もそこにあると思う。

 調べているって言ってたし、調べるなら、研究所よね。

 罠の可能性もあるけど、ヘタに動いて球体を移動されるのも困る。

 そうなると答えは一つになる。

「ああ、いいぜ。俺も聞きたいことがあるからな」

 ひとまず了承するしかない。

「じゃあ、さっそく行くわよ」

 確認すると、瑠羅ちゃんは人差し指をあわせて両手を握り、印を結ぶようなポーズをした。

 密教?

 さっきも合掌のポーズしていたし、そういう事なのかな。

 でも、神様の力を使っているわけじゃなく、魔力で結界を張っていたから、あくまで儀式的動作を踏まえて魔法を使っているんだと思う。

 ──て、え?

 え? え? え?

 ちょっと待って、重大な事に気づいた。

 それは瑠羅ちゃんに対してではなくて……。

「……」

 ほむらちゃんも表情には出さないけど、気づいている。

 間違いない。

 別空間にある球体の反応はさっきまで一個だけだったんだけど、

 球体は全部で五個。

 そのうち二個はほむらちゃんで、もう二個を聖名夜みなよちゃんが持っていて、残りの一個がここにあった。

 それが三個ということは、あのあと聖名夜ちゃんに何かあったんだ。

「転移」

 瑠羅ちゃんはそれに気づいた様子もなく呟くと、ほむらちゃんも光に包まれ、二人揃って、その場から瞬間移動。

 話を聞くというていだし、いますぐバトルにはならないと思う。

 仮にそうなったとしても、ほむらちゃんなら大丈夫。

 その間、私は聖名夜ちゃんのところへ行って確かめる。

 聖名夜ちゃん、無事でいて。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

処理中です...