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二章 城跡戦

第7話 城跡・戦夜~参

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「やっぱりッスね」

 残り三体の夜獣やじゅうさんで、最初に拘束魔法を解いたのは弁慶みたいに僧兵の格好をしたクマさんだったッス。

 ふんぬっ、とか声が聞こえてきそうな感じで無理矢理に解いたッス。

 見た目どおりのちから自慢ッスね。

 おや?

 クマの夜獣さん、そのまま手に持った八角の鉄棒を投げてきたッス!

「っく!……」

 直前でギリギリかわす私。

 遠くで────、ビルに突き刺さった音がしたッス。

 橋は八メートルほどの長さがあって、お互いそのはしにいるッスが、それでも距離の余裕がない。

 やばいッス。
 
 あれを喰らったら即死は確実ッス!

 そうしているうちに、ライオンとトラの夜獣さんも拘束を解いて、クマさん同様、自分の武器である片鎌槍かたかまやりと大斧を投げつけてきたッス。

 さすがにクマさんほどの威力はないッスが、当たれば刺さるし、即死じゃなくても大ダメージは間違いないッス。

 左へ跳んでけつつ、右手のパイソンから改めて拘束魔法を発動。

 走って橋を渡ろうとする夜獣さんのうち、ライオンさんを再拘束したッス。

 前のめりに倒れるライオンさんを避けて駆け寄るトラの夜獣さん。

 倒れているライオンさんを持ち上げ、投げつけるクマの夜獣さん!

「とはっ────」

 私は左へのサイドステップで飛んでくるライオンさんを躱す。

 そこへ自身の存在力から新たに作った大斧で襲いかかるトラの夜獣さん。

「ガウッ!」

 横に振る大斧をしゃがんで避けるのと同時に、ハローを三射に切り替え、引き金を引くッス。

「グワッ……」

 小威力とはいえ一度に七つの金聖魔法を受けたんでトラの夜獣さん、思いっきりのけ反ったッスね。

 かまわず私は二射、三射、四射と引き金を引く。

 この距離なら強射より散射、ショットガンタイプの方が効果的ッス。

 加えて、この距離で拘束魔法を発動させると私も巻き込まれるッス。

「グワーーーーーーーッ!」

 威力に押され、二歩三歩と後ろへ歩きながら、最後には断末摩をあげて背中から倒れて消滅したッス。

 ほっとするのも束の間。

 私の頭上に重量感たっぷりの線が落ちてくる!

 どん、と大きな音をたてて地面を叩き、八角鉄棒を振り下ろしたクマの夜獣さん。

 私は左横へ転がって回避したッス。

 そして立ち上がる勢いを利用したバックステップで距離を取りつつ、パイソンの引き金を引き拘束魔法を発動。

 クマの夜獣さんの右脛みぎすねから魔力による蒼い帯状のものが巻きつき、さらに左足の甲、地面にも展開し縫い留める形になったッス。

「ガ、ガガ……」

 いかに力があろうとも、そうなると力が入れづらいでしょう。

 まあ、時間の問題ッスが、待ってるつもりはないッスよ。

 ハローを強射に、パイソンを空圧魔法に切り替え、同時発動。

 着点した魔法が両手で握るクマの夜獣さんの力をゆるませ、弾丸にした空圧が八角鉄棒を弾き飛ばしたッス。

「ガ、ガガ────!」

 あら、怒ったッスか?

 私はもう三歩、後ろへ下がってクマの夜獣さんが手を伸ばしても、絶対、届かない位置につき、構える。

 八角鉄棒は再生できるッスから、ここで一気に決めるッス!

 パイソンのシリンダーを自動回転させ、金聖魔法にセットしての二丁撃ち。

 左右の引き金を連続で引いて金聖魔法を切れ目なく発動ッス。

 力強さと標準的なもの、二人の女神が競って詩を詠んでいるように銃声が鳴り響く。

 金色の炎に包まれ、慌てるクマの夜獣さん。

「ガ、ガ────、ガ────!」

「……」

 私はひたすら胴体を狙って撃つ。

 撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ!

 ゴオォ────────────────!

 城跡に巨大な黄金の炎が立ち昇り、世界夜セカイヤの夜を照らす。

 大きく揺らめく炎だけとなり、私は引き金から指を離す。

「────彩」

「ジュマ!」

 声をかけてくる文姫ふみひめさんとジュマ。

 左手のハローはマガジン部に充填していた魔力がゼロ。

 右手のパイソン自体はまだいけるッスが、私の方が魔力消費で疲れてきてるッス。

「様子をみるッス」

 そのまま安全な場所にいてほしいと目配せしてから、視線を戻す私。

 万が一に備えて、ハローのマガジンを魔力フル充填したものと交換しておくッス。

 オォ────、────、───、──、─。

 聖なる黄金の炎は害するものを焼きながら小さくなっていき、結果を表す。

「さすがッスね」

 こちらをにらみ、仁王立ちするクマの夜獣さん。

 ギロッ、とかマンガみたいな書き文字を感じるッス。

 そして、何か言いたげッスね。

 足にかけた拘束魔法は消えている。

 こちらとしては、とにかく仕留めさせてもらうッス!

 ────と、引き金を引こうとした瞬間。

 クマの夜獣さん、私を見たまま、すうーっと身体がけていって、静かに消えたッス。

 実はしっかり金聖魔法が効いてたッスね。

 はーーーっ。

 こういうのを弁慶のなんとかって言うんッスかね。

「彩、やったわね」

「ええ、何とか倒せたッス」

 クマの夜獣さんを仕留めて喜ぶ文姫さん。

「ジュマ!」

 ジュマの声。

 そして左髪に留めたウサギのアクセサリーがまだ終わじゃないぜ、と反応しているッス。

 振り向くと、投げつけられたライオンの夜獣さん、拘束魔法を解いて頭を振りながら、ゆっくりと起き上がろうとしていたッス。

「忘れるところだったッス」

 言いながら両腕を構え、引き金を引く私。

 額と左胸に金聖魔法を受け、その炎とともに消えていくライオンの夜獣さん。

「オオォォーーーン!」

 最後の叫び声と同時に完全消滅ッス。

「これで本当に、終了ッスね」

「ジュマ!」

 ウサギのアクセサリーも、やれやれだぜ、といったかんじで大きな耳を揺らしていたッス。
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