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第4話 戦夜・中ノ時
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「なるほど。守護者のように見せかけて、実は力そのもの」
「倒せば得ようとする力は失われる。奪われることはないというわけね」
空中でイブとヤエを見ながら話す二体の女像。
見上げる二人の少女はそれぞれ右手の片手持ちでクラシック銃をを構えている。
蒼と紅の瞳は女像を捉え、全身から発する気配は仇討ちのようだった。
「あら怖い」
「でも安心して」
「貴女たちは殺さないわ!」
揃って言い放つと、女像は両手両足を広げ、翼を大きく展開させると、そこから無数の羽が飛び出した。
「!」
横へ跳んで回避する二人。
魔力でできた羽は二人がいた床に撃ちこまれ、そのまま光の粒となって消えていった。
「さすがね」
「でもこれで終わりじゃないわよ」
「当たるまで何度でもやるわ」
「覚悟なさい」
再び魔力の羽群を飛ばす女像。
それは直線的に飛ぶが、標的のどこかに当たればよい広範囲攻撃。
羽は麻痺の効果をもち、被弾しても命に別状はないが、被弾していいわけではない。
イブとヤエは走り続け、的を絞らせないように動いた。
少女を追いかけ、次々と繰り出される羽。
飛び散る魔力は路面をはねる雨粒のようだった。
二人は床や壁を蹴り、接触寸前で躱していく。
「仕掛けるわよ、イブ」
「そうね、ヤエ」
呟き、一瞬、目を交わす二人。
ヤエの持つクラシック銃が短身の物に変わり、躱して身体を反転させるのと同時に、女像へ向けて引き金を引いた。
重く響く銃声とともに放たれた格子状の電撃魔法が淡灰色の女像を捉え、動きを封じた。
「く、こんなもので────」
ヤエの電撃が封じたのはわずかだったが、イブが撃つには十分だった。
イブが放った金聖魔法は淡灰色の女像の右上腕に発動し、金色の炎が噴き上がった。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げる女像。
その細い腕は焼き切られ、落下する翼は聖なる炎によって焼き尽くされた。
胴体への延焼はなく、また、翼で飛んでいるわけではないため、飛行に問題はない。
しかし、できるはずの再生はできなかった。
金聖魔法が再生能力を奪ったからだ。
「くうぅ……」
痛みを抑えるように、残った左の翼で右腕の燃焼面を覆う淡灰色の女像。
「おのれっ……、小娘がっ!」
そう叫んだのは象牙色の女像だった。
パートナーを傷つけられ、怒り心頭といった感じで、両翼を広げると、イブとヤエに突っ込んできた。
瞬時にイブとヤエの懐に入り、二人の腹部に打撃を与える────、はずだった。
「!」
二つの白い閃光が女像の肩から脇を通り抜け、腕部が胴体から離れた。
それに気を取られた女像はコントロールを忘れ、そのまま壁に激突した。
猛烈な勢いだったが、館の壁はびくともせず、女像も身体が砕けることはなかった。
「い、いったい何が……」
体勢を整えながらイブとヤエを見る女像。
二人の右手に銃はなく、鞘に納まった日本刀が左手にあった。
「倒せば得ようとする力は失われる。奪われることはないというわけね」
空中でイブとヤエを見ながら話す二体の女像。
見上げる二人の少女はそれぞれ右手の片手持ちでクラシック銃をを構えている。
蒼と紅の瞳は女像を捉え、全身から発する気配は仇討ちのようだった。
「あら怖い」
「でも安心して」
「貴女たちは殺さないわ!」
揃って言い放つと、女像は両手両足を広げ、翼を大きく展開させると、そこから無数の羽が飛び出した。
「!」
横へ跳んで回避する二人。
魔力でできた羽は二人がいた床に撃ちこまれ、そのまま光の粒となって消えていった。
「さすがね」
「でもこれで終わりじゃないわよ」
「当たるまで何度でもやるわ」
「覚悟なさい」
再び魔力の羽群を飛ばす女像。
それは直線的に飛ぶが、標的のどこかに当たればよい広範囲攻撃。
羽は麻痺の効果をもち、被弾しても命に別状はないが、被弾していいわけではない。
イブとヤエは走り続け、的を絞らせないように動いた。
少女を追いかけ、次々と繰り出される羽。
飛び散る魔力は路面をはねる雨粒のようだった。
二人は床や壁を蹴り、接触寸前で躱していく。
「仕掛けるわよ、イブ」
「そうね、ヤエ」
呟き、一瞬、目を交わす二人。
ヤエの持つクラシック銃が短身の物に変わり、躱して身体を反転させるのと同時に、女像へ向けて引き金を引いた。
重く響く銃声とともに放たれた格子状の電撃魔法が淡灰色の女像を捉え、動きを封じた。
「く、こんなもので────」
ヤエの電撃が封じたのはわずかだったが、イブが撃つには十分だった。
イブが放った金聖魔法は淡灰色の女像の右上腕に発動し、金色の炎が噴き上がった。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げる女像。
その細い腕は焼き切られ、落下する翼は聖なる炎によって焼き尽くされた。
胴体への延焼はなく、また、翼で飛んでいるわけではないため、飛行に問題はない。
しかし、できるはずの再生はできなかった。
金聖魔法が再生能力を奪ったからだ。
「くうぅ……」
痛みを抑えるように、残った左の翼で右腕の燃焼面を覆う淡灰色の女像。
「おのれっ……、小娘がっ!」
そう叫んだのは象牙色の女像だった。
パートナーを傷つけられ、怒り心頭といった感じで、両翼を広げると、イブとヤエに突っ込んできた。
瞬時にイブとヤエの懐に入り、二人の腹部に打撃を与える────、はずだった。
「!」
二つの白い閃光が女像の肩から脇を通り抜け、腕部が胴体から離れた。
それに気を取られた女像はコントロールを忘れ、そのまま壁に激突した。
猛烈な勢いだったが、館の壁はびくともせず、女像も身体が砕けることはなかった。
「い、いったい何が……」
体勢を整えながらイブとヤエを見る女像。
二人の右手に銃はなく、鞘に納まった日本刀が左手にあった。
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