8 / 74
始まりの夏
7
しおりを挟む
買い物を終えて、昨日は案内してもらわなかった小高いところにある公園らしきところに来た。ちょうど頂上付近にベンチがあって、そこに腰かける。
「わあ、奇麗ですね」
そこからは、街の風景を見渡すことが出来て、ちょうど夕日も上ってきた時間帯でその美しさに見惚れてしまう。
「いいでしょ? ここ。さあ、夕日を見ながら私のお気に入りのお菓子、食べましょう」
「はいっ」
スミレさんは小さな紙袋から可愛らしいピンク色花の形をしたお菓子を取り出す。
「これね、米の粉でできたサブレなの。桜の味がして美味しいのよ」
「可愛らしいですね」
「そうでしょ? 女の人に人気なの」
受け取って早速サクっと一口分を口の中に入れる。
ふんわりと、スミレさんの言っていた桜の風味が広がって優しい味に心がほっこりとする。春の香りは、心地よい。
「美味しいです」
「よかった」
夕日を見ながら食べるお菓子は、いつも食べるお菓子よりも心に染みる気がした。
「ただいま」
「おかえり」
カフェに戻ってくると、今日もお魚の香りが漂ってきてお腹を刺激する。
「夜ごはん、用意してるから食べろ」
「ありがとうございます」
「私の分ももちろんあるわよね?」
「ああ」
今日はカウンター席でスミレさんと一緒に夕食を味わう。
「あいつらには気付かれなかったか?」
「ええ、大丈夫よ」
「ならいいんだ」
2人は、なにやら話をしているようだけれど、私の入られるような雰囲気ではなく、私は料理の味に集中することにした。
今日の魚は鯛で、多分味付けは西京漬けで味噌の香りが魚とマッチしていて美味しい。
昔から、西京漬けの味が好きでよく食べていた。一度、京都でこれを食べてから、なんて美味しいお魚の味付けなんだろう、と感動してから、この料理にすっかりとはまってしまったんだっけ。
「すごく美味しそうに食べるのね」
カイさんとの話が終わったスミレさんは、私の顔を見て話し掛けてくる。
「はいっ、お味噌の味がすごく美味しいです」
「そうね」
料理を堪能していると、空はすっかりと暗くなった。
「いらっしゃいませ」
1人の女の人が店内に入ってくる。
「はあ」
隣の隣に座ってきたその人は、座るなり大きなため息をつく。
「どうしたんですか?」
「失恋、しちゃったのよ。こんな時に飲むハーブティはある?」
「ええ、アモールというハーブティが良いと思いますよ」
「じゃあ、それちょうだい」
「かしこまりました」
カイさんは棚から茶葉を選び、それを淹れていく。少し酸味のある香りが漂ってくる。透明のティポットから見えるその色は奇麗なピンク色で、視覚からでも十分に楽しむことが出来る。
「ここね、その日の気分によってハーブティを淹れてくれるのよ。食欲がない、とか、気分が落ち込んでる、とかね」
「へえ、そうなんですね。すごいです」
カイさんの頭の中にはどれだけのハーブの種類がインプットされているのだろう。きっと、膨大な量に違いない。
カイさんのお店を手伝うと決めたのだから、私も1つずつハーブを覚えていかないと。
「わあ、奇麗ですね」
そこからは、街の風景を見渡すことが出来て、ちょうど夕日も上ってきた時間帯でその美しさに見惚れてしまう。
「いいでしょ? ここ。さあ、夕日を見ながら私のお気に入りのお菓子、食べましょう」
「はいっ」
スミレさんは小さな紙袋から可愛らしいピンク色花の形をしたお菓子を取り出す。
「これね、米の粉でできたサブレなの。桜の味がして美味しいのよ」
「可愛らしいですね」
「そうでしょ? 女の人に人気なの」
受け取って早速サクっと一口分を口の中に入れる。
ふんわりと、スミレさんの言っていた桜の風味が広がって優しい味に心がほっこりとする。春の香りは、心地よい。
「美味しいです」
「よかった」
夕日を見ながら食べるお菓子は、いつも食べるお菓子よりも心に染みる気がした。
「ただいま」
「おかえり」
カフェに戻ってくると、今日もお魚の香りが漂ってきてお腹を刺激する。
「夜ごはん、用意してるから食べろ」
「ありがとうございます」
「私の分ももちろんあるわよね?」
「ああ」
今日はカウンター席でスミレさんと一緒に夕食を味わう。
「あいつらには気付かれなかったか?」
「ええ、大丈夫よ」
「ならいいんだ」
2人は、なにやら話をしているようだけれど、私の入られるような雰囲気ではなく、私は料理の味に集中することにした。
今日の魚は鯛で、多分味付けは西京漬けで味噌の香りが魚とマッチしていて美味しい。
昔から、西京漬けの味が好きでよく食べていた。一度、京都でこれを食べてから、なんて美味しいお魚の味付けなんだろう、と感動してから、この料理にすっかりとはまってしまったんだっけ。
「すごく美味しそうに食べるのね」
カイさんとの話が終わったスミレさんは、私の顔を見て話し掛けてくる。
「はいっ、お味噌の味がすごく美味しいです」
「そうね」
料理を堪能していると、空はすっかりと暗くなった。
「いらっしゃいませ」
1人の女の人が店内に入ってくる。
「はあ」
隣の隣に座ってきたその人は、座るなり大きなため息をつく。
「どうしたんですか?」
「失恋、しちゃったのよ。こんな時に飲むハーブティはある?」
「ええ、アモールというハーブティが良いと思いますよ」
「じゃあ、それちょうだい」
「かしこまりました」
カイさんは棚から茶葉を選び、それを淹れていく。少し酸味のある香りが漂ってくる。透明のティポットから見えるその色は奇麗なピンク色で、視覚からでも十分に楽しむことが出来る。
「ここね、その日の気分によってハーブティを淹れてくれるのよ。食欲がない、とか、気分が落ち込んでる、とかね」
「へえ、そうなんですね。すごいです」
カイさんの頭の中にはどれだけのハーブの種類がインプットされているのだろう。きっと、膨大な量に違いない。
カイさんのお店を手伝うと決めたのだから、私も1つずつハーブを覚えていかないと。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
御神楽《怪奇》探偵事務所
姫宮未調
キャラ文芸
女探偵?・御神楽菖蒲と助手にされた男子高校生・咲良優多のハチャメチャ怪奇コメディ
※変態イケメン執事がもれなくついてきます※
怪奇×ホラー×コメディ×16禁×ラブコメ
主人公は優多(* ̄∇ ̄)ノ
あの世とこの世の狭間にて!
みーやん
キャラ文芸
「狭間店」というカフェがあるのをご存知でしょうか。
そのカフェではあの世とこの世どちらの悩み相談を受け付けているという…
時には彷徨う霊、ある時にはこの世の人、
またある時には動物…
そのカフェには悩みを持つものにしか辿り着けないという。
このお話はそんなカフェの物語である…
孤独な銀弾は、冷たい陽だまりに焦がれて
霖しのぐ
キャラ文芸
ある目的を果たすためにだけ生きていた主人公〈空木櫂人/うつぎ・かいと〉は、毎日通うスーパーで顔を合わせる女性〈伊吹澪/いぶき・みお〉のことをなんとなく気にしていた。
ある日の夜、暗がりで男性と揉めていた澪を助けた櫂人は、その礼にと彼女の家に招かれ、彼女のとんでもない秘密を知ってしまう。しかし、櫂人もまた澪には話すことのできない秘密を持っていた。
人を喰らう吸血鬼と、それを討つ処刑人。決して交わってはならない二人が、お互いに正体を隠したまま絆を深め、しだいに惹かれあっていく。
しかし、とうとうその関係も限界を迎える時が来た。追い詰められてしまった中で、気持ちが通じ合った二人が迎える結末とは?
ガダンの寛ぎお食事処
蒼緋 玲
キャラ文芸
**********************************************
とある屋敷の料理人ガダンは、
元魔術師団の魔術師で現在は
使用人として働いている。
日々の生活の中で欠かせない
三大欲求の一つ『食欲』
時には住人の心に寄り添った食事
時には酒と共に彩りある肴を提供
時には美味しさを求めて自ら買い付けへ
時には住人同士のメニュー論争まで
国有数の料理人として名を馳せても過言では
ないくらい(住人談)、元魔術師の料理人が
織り成す美味なる心の籠もったお届けもの。
その先にある安らぎと癒やしのひとときを
ご提供致します。
今日も今日とて
食堂と厨房の間にあるカウンターで
肘をつき住人の食事風景を楽しみながら眺める
ガダンとその住人のちょっとした日常のお話。
**********************************************
【一日5秒を私にください】
からの、ガダンのご飯物語です。
単独で読めますが原作を読んでいただけると、
登場キャラの人となりもわかって
味に深みが出るかもしれません(宣伝)
外部サイトにも投稿しています。
秋物語り
武者走走九郎or大橋むつお
キャラ文芸
去年、一学期の終業式、亜紀は担任の江角に進路相談に行く。
明日から始まる夏休み、少しでも自分の目標を持ちたかったから。
なんとなく夏休みを過ごせるほどには子供ではなくなったし、狩にも担任、相談すれば親身になってくれると思った。
でも、江角は午後から年休を取って海外旅行に行くために気もそぞろな返事しかしてくれない。
「国外逃亡でもするんですか?」
冗談半分に出た皮肉をまっとうに受け「亜紀に言われる筋合いはないわよ。個人旅行だけど休暇の届けも出してるんだから!」と切り返す江角。
かろうじて残っていた学校への信頼感が音を立てて崩れた。
それからの一年間の亜紀と友人たちの軌跡を追う。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
宮廷の九訳士と後宮の生華
狭間夕
キャラ文芸
宮廷の通訳士である英明(インミン)は、文字を扱う仕事をしていることから「暗号の解読」を頼まれることもある。ある日、後宮入りした若い妃に充てられてた手紙が謎の文字で書かれていたことから、これは恋文ではないかと噂になった。真相は単純で、兄が妹に充てただけの悪意のない内容だったが、これをきっかけに静月(ジンユェ)という若い妃のことを知る。通訳士と、後宮の妃。立場は違えど、後宮に生きる華として、二人は陰謀の渦に巻き込まれることになって――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる