48 / 69
8話
5
しおりを挟む
「桜さまは、本当は誰と踊りたかったのですか?」
「誰とって……」
今すぐに答えられるならどんなに楽なことか。
「正直になった方が、きっと楽ですよ」
「…………おかしいのよ。最近、涼のことばかり考えてしまう」
今だって、頭の中を占めるのは半分以上が涼のこと……。
「……おかしくないですよ。誰だって、気になる人のことはずっと考えてしまいます」
「でも……これが好きなのかどうかは分からないわ。奏多さんといる時だって楽しいし。すごくドキドキするの。ずっと一緒にいたいって思っちゃうの」
「でも、涼さまのことも考えてしまう」
「……そうね」
「では、奏多さまと涼さまのどちらかに恋人が出来るとして、どっちの方がより気になってしまいますか? きっとそれが答えです」
「……今すぐには分からないわ」
「ええ、いいんです。ゆっくりでも。だけど、あまりにも時間を掛けると本当に失ってしまうかもしれないので、そこはタイミングを逃さないようにしないとですね」
「……そうね」
メイドの言うことは分かっている。頭では理解しているけれど、気持ちの方はまだ理解が追いついていないみたいで混乱してる。
それに、本当に分からない。
私は、涼のことが好きなの……?
奏多さんが好きなのに、同時に2人の人を好きになってしまったということ?
そんなの、涼にも奏多さんにも悪い。
「桜さま、そろそろ戻りましょう」
「ええ、そうね」
流石に、これ以上主役がいないというのはお父さまやお母さまにも迷惑がかかるかもしれない。
華やかなパーティー会場へ戻らなくちゃ。
「はあ、疲れたわ」
パーティーが終わって、ようやく一息つくことのできる時間が訪れる。
「さあ、着替えましょう。その格好じゃ苦しいと思いますよ」
「そうね」
メイドにドレスを脱がせてもらうと、すっと肩の力が抜けた。
ドレスも結構重くて、来ている間は確かにお姫様気分になれるけれど、やっぱり普段のややラフな格好の方がいい。
それより…………。
『私はね、涼のことを愛しているの。中途半端な気持ちならもう金輪際近付かないで』
パーティーの終わる数分前、彼女に言われた言葉。
彼女の顔は今まで見てきた中で最も真剣な表情で、その言葉の重さが伝わってきた。
私はそれに対して、何も言うことができなかった。
そんな私を見て彼女は溜息を1つつくだけだった。
仕方ない。彼女に呆れられるのも、分かる。
いつものように「分かったわよ」と言えなかった自分。
「はあ…………本当、どうしたらいいの……」
もう、誰か私に答えをちょうだい。
「誰とって……」
今すぐに答えられるならどんなに楽なことか。
「正直になった方が、きっと楽ですよ」
「…………おかしいのよ。最近、涼のことばかり考えてしまう」
今だって、頭の中を占めるのは半分以上が涼のこと……。
「……おかしくないですよ。誰だって、気になる人のことはずっと考えてしまいます」
「でも……これが好きなのかどうかは分からないわ。奏多さんといる時だって楽しいし。すごくドキドキするの。ずっと一緒にいたいって思っちゃうの」
「でも、涼さまのことも考えてしまう」
「……そうね」
「では、奏多さまと涼さまのどちらかに恋人が出来るとして、どっちの方がより気になってしまいますか? きっとそれが答えです」
「……今すぐには分からないわ」
「ええ、いいんです。ゆっくりでも。だけど、あまりにも時間を掛けると本当に失ってしまうかもしれないので、そこはタイミングを逃さないようにしないとですね」
「……そうね」
メイドの言うことは分かっている。頭では理解しているけれど、気持ちの方はまだ理解が追いついていないみたいで混乱してる。
それに、本当に分からない。
私は、涼のことが好きなの……?
奏多さんが好きなのに、同時に2人の人を好きになってしまったということ?
そんなの、涼にも奏多さんにも悪い。
「桜さま、そろそろ戻りましょう」
「ええ、そうね」
流石に、これ以上主役がいないというのはお父さまやお母さまにも迷惑がかかるかもしれない。
華やかなパーティー会場へ戻らなくちゃ。
「はあ、疲れたわ」
パーティーが終わって、ようやく一息つくことのできる時間が訪れる。
「さあ、着替えましょう。その格好じゃ苦しいと思いますよ」
「そうね」
メイドにドレスを脱がせてもらうと、すっと肩の力が抜けた。
ドレスも結構重くて、来ている間は確かにお姫様気分になれるけれど、やっぱり普段のややラフな格好の方がいい。
それより…………。
『私はね、涼のことを愛しているの。中途半端な気持ちならもう金輪際近付かないで』
パーティーの終わる数分前、彼女に言われた言葉。
彼女の顔は今まで見てきた中で最も真剣な表情で、その言葉の重さが伝わってきた。
私はそれに対して、何も言うことができなかった。
そんな私を見て彼女は溜息を1つつくだけだった。
仕方ない。彼女に呆れられるのも、分かる。
いつものように「分かったわよ」と言えなかった自分。
「はあ…………本当、どうしたらいいの……」
もう、誰か私に答えをちょうだい。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
【完結】婚約前に巻き戻ったので婚約回避を目指します~もう一度やり直すなんて、私にはもう無理です~
佐倉えび
恋愛
リリアンナは夫のジルベールの浮気や子どもとの不仲、うまくいかない結婚生活に限界を感じ疲れ果てていた。そんなある日、ジルベールに首を絞められ、気が付けば婚約直前の日まで時が巻き戻っていた……!! 結婚しても誰も幸せになれないのだから、今度は婚約を回避しよう! 幼馴染のふたりが巻き戻りをきっかけにやり直すお話です。
小説家になろう様でも掲載しています。
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
【完結】あなただけが特別ではない
仲村 嘉高
恋愛
お飾りの王妃が自室の窓から飛び降りた。
目覚めたら、死を選んだ原因の王子と初めて会ったお茶会の日だった。
王子との婚約を回避しようと頑張るが、なぜか周りの様子が前回と違い……?
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる