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7話
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「おはよう、桜さん」
「おはようございますっ」
奏多さんは今日も爽やかな笑顔を咲かせている。
朝からこうして好きな人の姿を見られるなんて、こんなに心満たされる時間は他にない。
それより、今日はなんだか奏多さんから柑橘系のいい匂いがしてくる。
爽やかな香りは、奏多さんのイメージをよりアップさせる。
「それじゃあ、行こうか」
「はいっ」
夏ももう終わりかけの今日は気温も高すぎず湿気もなくカラッとしていて過ごしやすい。
車の中から見える人々の顔もいつもよりも穏やかに見えるのは、今日という日が快適だからかな。
「いい天気だね。良かったよ、せっかくの桜さんとのお出掛けがあまり良くない天気だったらどうしようかと」
「そうですね。でもきっと、雨でも雪でも嵐でも、奏多さんとなら充実した時間を過ごせます」
我ながら恥ずかしいことを言っているなあと思う。
だけど不思議とこの世界にいると、そんな言葉が自然と出てくる。
ううん、違う。
きっとそれは私を取り囲む人たちが素直でみんなが1人1人自分の気持ちをまっすぐに伝えてくれるから。
だから私も、変に曲がらずにストレートに表現できるんだと思うの。
「そんな風に言ってもらえると嬉しいよ。ちょっとだけ、恥ずかしいけどね」
顔をほんのりと染める奏多さん。
それにつられて私も顔が熱くなってくる。
「そ、そうですね」
お互いに目を合わせてふふふと笑い合うこの時間。
なんて理想的なのかしら。
「そろそろ着くかな」
街を抜けて自然豊かな場所に来る。その中に一軒の洋館がありそこはレストランのようだった。
まさに私が夢見た奏多さんとのデートにそっくりで、こんなことがあるのだろうかと頬をつねってみるもやっぱりここは現実で、そんな姿を奏多さんに見られてしまう。
「桜さん、なにやってるの?」
「あ、いや、その、嬉しすぎて」
「そっか、よかった。喜んでもらえて」
外に出ると、私たちを歓迎するかのように鳥が鳴いていてちょうどいいBGMになる。
汚れのない美味しい空気。吸うと、森の味がする。
「せっかく天気も良いし、テラス席にしようか」
「そうですね、外の空気を感じながらの食事、絶対美味しいです」
「うん、そうだね」
品の良いウエイトレスがメニューを持ってきてくれた。
「とりあえず紅茶でも飲もうか。ランチにはまだ少し早いし」
「そうですね」
「まさか、桜さんとこうして休みの日に2人で会えるなんて、夢みたいだよ」
紅茶が運ばれてきて、その香りがさらに雰囲気を良くする。
「私も、奏多さんとお出かけできるなんて、本当に嬉しいです」
奏多さんが紅茶を一口飲むタイミングで、私も同じく口に含ませた。
好きな人とは、同じ動作をしたくなる。
優雅すぎる時間は、私には勿体ないくらい。
「おはようございますっ」
奏多さんは今日も爽やかな笑顔を咲かせている。
朝からこうして好きな人の姿を見られるなんて、こんなに心満たされる時間は他にない。
それより、今日はなんだか奏多さんから柑橘系のいい匂いがしてくる。
爽やかな香りは、奏多さんのイメージをよりアップさせる。
「それじゃあ、行こうか」
「はいっ」
夏ももう終わりかけの今日は気温も高すぎず湿気もなくカラッとしていて過ごしやすい。
車の中から見える人々の顔もいつもよりも穏やかに見えるのは、今日という日が快適だからかな。
「いい天気だね。良かったよ、せっかくの桜さんとのお出掛けがあまり良くない天気だったらどうしようかと」
「そうですね。でもきっと、雨でも雪でも嵐でも、奏多さんとなら充実した時間を過ごせます」
我ながら恥ずかしいことを言っているなあと思う。
だけど不思議とこの世界にいると、そんな言葉が自然と出てくる。
ううん、違う。
きっとそれは私を取り囲む人たちが素直でみんなが1人1人自分の気持ちをまっすぐに伝えてくれるから。
だから私も、変に曲がらずにストレートに表現できるんだと思うの。
「そんな風に言ってもらえると嬉しいよ。ちょっとだけ、恥ずかしいけどね」
顔をほんのりと染める奏多さん。
それにつられて私も顔が熱くなってくる。
「そ、そうですね」
お互いに目を合わせてふふふと笑い合うこの時間。
なんて理想的なのかしら。
「そろそろ着くかな」
街を抜けて自然豊かな場所に来る。その中に一軒の洋館がありそこはレストランのようだった。
まさに私が夢見た奏多さんとのデートにそっくりで、こんなことがあるのだろうかと頬をつねってみるもやっぱりここは現実で、そんな姿を奏多さんに見られてしまう。
「桜さん、なにやってるの?」
「あ、いや、その、嬉しすぎて」
「そっか、よかった。喜んでもらえて」
外に出ると、私たちを歓迎するかのように鳥が鳴いていてちょうどいいBGMになる。
汚れのない美味しい空気。吸うと、森の味がする。
「せっかく天気も良いし、テラス席にしようか」
「そうですね、外の空気を感じながらの食事、絶対美味しいです」
「うん、そうだね」
品の良いウエイトレスがメニューを持ってきてくれた。
「とりあえず紅茶でも飲もうか。ランチにはまだ少し早いし」
「そうですね」
「まさか、桜さんとこうして休みの日に2人で会えるなんて、夢みたいだよ」
紅茶が運ばれてきて、その香りがさらに雰囲気を良くする。
「私も、奏多さんとお出かけできるなんて、本当に嬉しいです」
奏多さんが紅茶を一口飲むタイミングで、私も同じく口に含ませた。
好きな人とは、同じ動作をしたくなる。
優雅すぎる時間は、私には勿体ないくらい。
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