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マナー講座の前に少し何かを食べようかと洋食のレストランに行くと、まさかの光景が目に入ってくる。
そこには、杏里と杏里の好きな人が2人で仲睦ましそうにモーニングを食べている姿があった。
私の存在に気づいた杏里が話しかけてくる。
「桜。おはよう。一緒にどう?」
「いいの?」
「ええ、もちろん」
サラダとスープと小さめのパンと共に、杏里の隣に座った。
「初めまして、重三郎と申します」
「初めまして、桜です」
いつもよりも優しい顔をして杏里は私の顔を見た。すごく幸せそうで笑顔が柔らかくて、私まで同じ気持ちになる。
穏やかな雰囲気が2人を包み込んでいて、それが心底羨ましくなった。
自分の気持ちに素直な杏里は、とても可愛らしく見える。
私もこんな風に可愛らしい女の子になりたかった、なんて、気持ちの持ちようでなんとでもなることをただただ願望しているのは、きっと自分が怠け者なだけ。
「桜さんって、確か涼さんの婚約者でしたよね?」
「あ、はい」
「涼さんは桜さんのこといつも大事にされていて、男として見本にしています。僕もああなりたいと、日々精進しているんですよ」
涼が私のことをいつも大事にしている……?
「素敵な方が婚約者で、よかったですね」
「あ、はい、……ありがとうございます」
そんなことを言われたら、罪悪感で心が埋め尽くされてしまうじゃない。
まるで、私が涼のことを裏切っているようで。
私は、これっぽっちも涼のことを大事になんかしていない。
私と涼はきっと正反対で、これで本当にいいいの? と心の中のもう1人の自分が問い掛けてくる。
良いも悪いも、そんなの仕方ないじゃない、だって私は涼のことなんて好きじゃなくて、むしろ嫌いだったんだもの。
どうしろっていうの…………?
「ねえ、桜、今日は何の授業受けるの?」
「あ、えっと、マナー講座を。基本をもう一度振り返ろうと思って」
「ええ、それはいいわね」
「そうですね。マナーは大切ですからね」
杏里がそっと私の手を握ってきて、そこから色々な感情が伝わってくる。
杏里は本当はどう思っているの?
涼という婚約者がいながら、奏多さんのことを好きだと言う私を軽蔑したりしないの?
苦しい。心が、息を吸えていないような感じで、苦しい。
そこには、杏里と杏里の好きな人が2人で仲睦ましそうにモーニングを食べている姿があった。
私の存在に気づいた杏里が話しかけてくる。
「桜。おはよう。一緒にどう?」
「いいの?」
「ええ、もちろん」
サラダとスープと小さめのパンと共に、杏里の隣に座った。
「初めまして、重三郎と申します」
「初めまして、桜です」
いつもよりも優しい顔をして杏里は私の顔を見た。すごく幸せそうで笑顔が柔らかくて、私まで同じ気持ちになる。
穏やかな雰囲気が2人を包み込んでいて、それが心底羨ましくなった。
自分の気持ちに素直な杏里は、とても可愛らしく見える。
私もこんな風に可愛らしい女の子になりたかった、なんて、気持ちの持ちようでなんとでもなることをただただ願望しているのは、きっと自分が怠け者なだけ。
「桜さんって、確か涼さんの婚約者でしたよね?」
「あ、はい」
「涼さんは桜さんのこといつも大事にされていて、男として見本にしています。僕もああなりたいと、日々精進しているんですよ」
涼が私のことをいつも大事にしている……?
「素敵な方が婚約者で、よかったですね」
「あ、はい、……ありがとうございます」
そんなことを言われたら、罪悪感で心が埋め尽くされてしまうじゃない。
まるで、私が涼のことを裏切っているようで。
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私と涼はきっと正反対で、これで本当にいいいの? と心の中のもう1人の自分が問い掛けてくる。
良いも悪いも、そんなの仕方ないじゃない、だって私は涼のことなんて好きじゃなくて、むしろ嫌いだったんだもの。
どうしろっていうの…………?
「ねえ、桜、今日は何の授業受けるの?」
「あ、えっと、マナー講座を。基本をもう一度振り返ろうと思って」
「ええ、それはいいわね」
「そうですね。マナーは大切ですからね」
杏里がそっと私の手を握ってきて、そこから色々な感情が伝わってくる。
杏里は本当はどう思っているの?
涼という婚約者がいながら、奏多さんのことを好きだと言う私を軽蔑したりしないの?
苦しい。心が、息を吸えていないような感じで、苦しい。
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