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11話
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しおりを挟む「お邪魔します」
大きな箱を手に持った櫻子と亜紀が、柑菜の家を訪ねてくる。
その後ろには、空も立っていた。
美鈴はパーティの始まる少し前の時間に、秋斗と来ることになっている。
クリスマスで、ケーキ屋は忙しく美鈴は今日はお店を手伝っているのだ。
「みんな、手伝ってくれるなんてありがとう」
「当たり前だよ、友達なんだから!」
「そうよ、柑菜ちゃん」
亜紀と櫻子は、顔を見合わせて「ね?」と相槌を打っている。
その後ろで、いつものように笑顔を絶やさずにしている空。
空は春樹の顔を見ると、思いついたように話し始めた。
「あ、初めましてのみなさんもいるので自己紹介します。音楽学部で櫻子の幼馴染の渡辺空です。よろしく」
春樹は、櫻子の幼馴染というワードに反応したが、その動揺を見せずに続けて自分からも自己紹介をする。
「土橋春樹です。柑菜の双子の弟です。よろしく」
「春樹くんか、今度男同士で話でも」
「そうですね」
なにやら裏のありそうな2人を置いておき、女子チームは早速クリスマスパーティーの準備をし始めた。
「プレゼントはツリーの下でいいかしら?」
「うん!」
土橋家に飾られてある白いクリスマスツリー。
それは、一本一本の先端が7色の光を放つ。
紫、赤、黄色、緑と交互に変化していく光。
今はまだ外が明るいためにイルミネーションには時間が早いが、夜になる頃にはこのツリーもより綺麗に見える。
そのツリーの下に、みんなはそれぞれ自分が買ってきたプレゼントを置いた。
大きなものや小さい箱のもの。
プレゼントは毎年くじ引きで決めており、誰に誰のものが当たるのかはその時まで分からない。
それは、毎年の3人の楽しみでもあった。
柑菜と亜紀は料理を、櫻子は料理が苦手なため春樹と空と3人で飾りを担当することになった。
「柑菜、あの3人で大丈夫かな?」
「……亜紀もなんとなく気付いてた?」
「ここに来るまでの渡辺くんの態度とか、今までの春樹くんと櫻子とか、あとは櫻子の初恋の相手の特徴とか……」
亜紀も柑菜と同じように、櫻子のことをよく見ていた。
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