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10話
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12月23日、昨日で授業も終わり、柑菜は1人街を歩いていた。
明日のクリスマスパーティーと、秋斗へのプレゼントを買いに。
「渡辺くん?」
柑菜の目の前を、柑菜の知っている男の人が横切る。
「柑菜さん」
柑菜の声に気付いた空は、その足を止め柑菜の顔を見た。
あれから、柑菜はきちんと空に自分の思いを伝え、空はその思いをきちんと理解した。
だから、今2人の間に気まずいものはない。
むしろ、櫻子と空と柑菜の3人は仲が良い友達同士になった。
もちろん、空も明日のクリスマスパーティーに来ることになっている。
まだ美鈴や春樹達と会ったことはないが、みんなそれぞれ多くの人がいた方が楽しいということで、誰でも参加可能ということになっていた。
「もしかして、プレゼント買いに?」
「うん、そう。柑菜さんも?」
まだ2人とも手には何も持っていなくて、これから買いに行くようである。
「せっかくだし、一緒に行かない?」
柑菜は空にそう提案をした。
それに対して空は縦に首を振る。
2人はとりあえず、近くのカフェに行って少し話をすることにした。
みんな最近は大学の試験が忙しくて、ろくに話もしていない。
街中を少し歩いたところで、小さなクリスマスツリーが飾られてある純喫茶に2人は入る。
クリスマスソングが流れていて、店内はカップル率が高めだ。
その中で、顔を見合わせて2人は苦笑いをする。
温厚な顔のマスターにコーヒーを2つ注文した2人は、コートを脱ぎ椅子に座った。
「音楽学部も課題たくさんあるの?」
「うん、作曲は毎回多くの課題を出されて大変だよ」
そういう空だったが、言葉に反してとくに大変そうでもない表情を浮かべながらそういう空に、柑菜はふふっと笑ってしまう。
「美術も大変そうだね、忙しいのか櫻子とも会ってないよ」
「そうだね、いろいろ製作しないといけなくて」
2人が話していると、暖かいコーヒーが運ばれてくる。
コーヒーのいい香りが2人を包む。
カップはアンティーク調のもので、ヨーロッパの雰囲気を醸し出していた。
柑菜と空は、ゆっくりと一口それを飲む。
「あったまるね」
「うん、そういえば、櫻子は元気?」
「うん、いつも通りだよ…………渡辺くんと櫻子って本当に仲が良いんだね」
櫻子はいつも空に対して憎まれ口を叩いているけれど、それは本当に仲が良くないとできないと柑菜は感じている。
「幼い頃からの知り合いだしね…………それに、実は…………僕の初恋は櫻子なんだ。まあ、僕に見向きもしないから諦めたけど」
そう苦笑いをしながらいう空の顔は、まるで今でも櫻子を思っているように柑菜には見えた。
だからつい、それを言葉にしてしまう。
「……今は、好きじゃないの?」
「まさか…………もしそうだとしたら柑菜さんに失礼だろ?」
「あは、そうだね」
たしかに、空は柑菜に好きだと言った。
だけど、柑菜はどうしても空が今でも櫻子を好きだとそう感じてしまうのだ。
ーー本当の渡辺くんの気持ちって……。
明日のクリスマスパーティーと、秋斗へのプレゼントを買いに。
「渡辺くん?」
柑菜の目の前を、柑菜の知っている男の人が横切る。
「柑菜さん」
柑菜の声に気付いた空は、その足を止め柑菜の顔を見た。
あれから、柑菜はきちんと空に自分の思いを伝え、空はその思いをきちんと理解した。
だから、今2人の間に気まずいものはない。
むしろ、櫻子と空と柑菜の3人は仲が良い友達同士になった。
もちろん、空も明日のクリスマスパーティーに来ることになっている。
まだ美鈴や春樹達と会ったことはないが、みんなそれぞれ多くの人がいた方が楽しいということで、誰でも参加可能ということになっていた。
「もしかして、プレゼント買いに?」
「うん、そう。柑菜さんも?」
まだ2人とも手には何も持っていなくて、これから買いに行くようである。
「せっかくだし、一緒に行かない?」
柑菜は空にそう提案をした。
それに対して空は縦に首を振る。
2人はとりあえず、近くのカフェに行って少し話をすることにした。
みんな最近は大学の試験が忙しくて、ろくに話もしていない。
街中を少し歩いたところで、小さなクリスマスツリーが飾られてある純喫茶に2人は入る。
クリスマスソングが流れていて、店内はカップル率が高めだ。
その中で、顔を見合わせて2人は苦笑いをする。
温厚な顔のマスターにコーヒーを2つ注文した2人は、コートを脱ぎ椅子に座った。
「音楽学部も課題たくさんあるの?」
「うん、作曲は毎回多くの課題を出されて大変だよ」
そういう空だったが、言葉に反してとくに大変そうでもない表情を浮かべながらそういう空に、柑菜はふふっと笑ってしまう。
「美術も大変そうだね、忙しいのか櫻子とも会ってないよ」
「そうだね、いろいろ製作しないといけなくて」
2人が話していると、暖かいコーヒーが運ばれてくる。
コーヒーのいい香りが2人を包む。
カップはアンティーク調のもので、ヨーロッパの雰囲気を醸し出していた。
柑菜と空は、ゆっくりと一口それを飲む。
「あったまるね」
「うん、そういえば、櫻子は元気?」
「うん、いつも通りだよ…………渡辺くんと櫻子って本当に仲が良いんだね」
櫻子はいつも空に対して憎まれ口を叩いているけれど、それは本当に仲が良くないとできないと柑菜は感じている。
「幼い頃からの知り合いだしね…………それに、実は…………僕の初恋は櫻子なんだ。まあ、僕に見向きもしないから諦めたけど」
そう苦笑いをしながらいう空の顔は、まるで今でも櫻子を思っているように柑菜には見えた。
だからつい、それを言葉にしてしまう。
「……今は、好きじゃないの?」
「まさか…………もしそうだとしたら柑菜さんに失礼だろ?」
「あは、そうだね」
たしかに、空は柑菜に好きだと言った。
だけど、柑菜はどうしても空が今でも櫻子を好きだとそう感じてしまうのだ。
ーー本当の渡辺くんの気持ちって……。
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