62 / 82
9話
5
しおりを挟む
困ったり喜んだり、様々な表情にくるくると変化する空に、柑菜は笑ってしまう。
「初めて笑った顔見た」
そう言われた柑菜は、なんだか恥ずかしくなり再び表情を硬くした。
「ねえ、友達になってくれる?」
少々強引だけどどこか憎めない空に、柑菜はその問いに「いや」ということができなかった。
「はい、いいですよ」
「ねえ、タメ語やめない? 友達なんだからさ」
「あ、うん」
空は、見た目だけじゃなくてその性格もどこか日本人離れをしていて、柑菜は空に対して底抜けの明るさを感じている。
まだ会って間もないのに、その距離を感じさせない空。
「柑菜ちゃん!」
離れたところから柑菜を呼ぶ櫻子の声が聞こえた。
「友達?」
空は遠くに見える櫻子を見て、そう尋ねる。
「うん、そうだよ」
櫻子は、柑菜のもとに寄ってきた。
「そろそろ戻るね」
空は、櫻子と完全に鉢会う前にその場を後にする。
「え、待っ」
最後まで聞かずに、空は走って音楽棟のある方まで走っていく。
櫻子が柑菜の元に来ると「変な人ね」と空の背中を見ながらそう言った。
「うん、たしかに……」
同じように、空の背中を見ながらそう頷く柑菜は、本当に自分を好きなんだろうかと思う。
そう思う反面、柑菜は自分が秋斗に一目惚れをした時のことを思い出していた。
「そういえば秋斗さんは、お店があるから来れなくて残念ね」
櫻子の言う通り、今日は秋斗のお店が開いているため、学祭に来ることはできない。
秋斗に来て欲しいと思う柑菜だけれど、大学での自分の姿を見られるのも恥ずかしい。
大学での柑菜は、いい意味で素を出していて、秋斗の前では見せたことのない姿がある。
べつに、それがいけないことだとかそう言う意味ではないが、プライベートすぎる自分を見せるにはまだまだ気恥ずかしい。
秋斗の前では、もっと女の子らしくいたい、そう思う柑菜。
それに、学祭を楽しむ人々を見ると、あまりカップルの姿はなく、中学高校の生徒の団体や同性同士で歩く姿が多く見受けられる。
中にはもちろんそれらしき人もいるけれど、圧倒的にその数は少ない。
「櫻子がいるし、楽しいよ」
「あら、そう言ってくれると嬉しいわ」
2人は、今いる場所から移動してなにか飲食物を買うことにした。
今日はまだ大学に来てから何も食べていない。
「初めて笑った顔見た」
そう言われた柑菜は、なんだか恥ずかしくなり再び表情を硬くした。
「ねえ、友達になってくれる?」
少々強引だけどどこか憎めない空に、柑菜はその問いに「いや」ということができなかった。
「はい、いいですよ」
「ねえ、タメ語やめない? 友達なんだからさ」
「あ、うん」
空は、見た目だけじゃなくてその性格もどこか日本人離れをしていて、柑菜は空に対して底抜けの明るさを感じている。
まだ会って間もないのに、その距離を感じさせない空。
「柑菜ちゃん!」
離れたところから柑菜を呼ぶ櫻子の声が聞こえた。
「友達?」
空は遠くに見える櫻子を見て、そう尋ねる。
「うん、そうだよ」
櫻子は、柑菜のもとに寄ってきた。
「そろそろ戻るね」
空は、櫻子と完全に鉢会う前にその場を後にする。
「え、待っ」
最後まで聞かずに、空は走って音楽棟のある方まで走っていく。
櫻子が柑菜の元に来ると「変な人ね」と空の背中を見ながらそう言った。
「うん、たしかに……」
同じように、空の背中を見ながらそう頷く柑菜は、本当に自分を好きなんだろうかと思う。
そう思う反面、柑菜は自分が秋斗に一目惚れをした時のことを思い出していた。
「そういえば秋斗さんは、お店があるから来れなくて残念ね」
櫻子の言う通り、今日は秋斗のお店が開いているため、学祭に来ることはできない。
秋斗に来て欲しいと思う柑菜だけれど、大学での自分の姿を見られるのも恥ずかしい。
大学での柑菜は、いい意味で素を出していて、秋斗の前では見せたことのない姿がある。
べつに、それがいけないことだとかそう言う意味ではないが、プライベートすぎる自分を見せるにはまだまだ気恥ずかしい。
秋斗の前では、もっと女の子らしくいたい、そう思う柑菜。
それに、学祭を楽しむ人々を見ると、あまりカップルの姿はなく、中学高校の生徒の団体や同性同士で歩く姿が多く見受けられる。
中にはもちろんそれらしき人もいるけれど、圧倒的にその数は少ない。
「櫻子がいるし、楽しいよ」
「あら、そう言ってくれると嬉しいわ」
2人は、今いる場所から移動してなにか飲食物を買うことにした。
今日はまだ大学に来てから何も食べていない。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる