25 / 82
5話
1
しおりを挟む大学は、1週間前から長い長い夏休みに入っていた。
柑菜は、朝から家のリビングでだらだらと過ごしている。
いつも朝食を作るのは柑菜、そして後片付けは春樹というように決まっているのだが、長期休みや休みになると、2人とも起きる時間もバラバラで、お互いに食べたいものを自分で作るようにしていた。
今日は気温も高く、柑菜の朝食は豆乳のヨーグルトのみ。
暑くて食欲がない様子だ。
「おはよう」
柑菜が起きてから約1時間後、のろのろと目をこすりながらリビングにやってくる春樹。
冷蔵庫からオレンジジュースを取り出して飲もうとする春樹に「歯は磨いた?」と柑菜は確認する。
以前に朝に歯を磨くとインフルエンザになる確率が低くなるとテレビで見てから、柑菜はそれを続けていた。
そのおかげか、ここ最近は風邪などをひかない。
「今日何時だっけ?」
オレンジジュースをいっぱい飲み終えた春樹は、今日のスケジュールを確認する。
「午後の1時だよ」
だらだらしていた柑菜は、一気に姿勢を正した。
今日は柑菜が心待ちにしていた、6人で海に行く日だ。
そこは所謂プライベートビーチで、櫻子の別荘がある。
もちろん今日は、その櫻子の別荘にみんなで泊まる。
すっかりと仲良くなった亜紀と美鈴が海に行きたいと言ったところから始まった今日の計画。
最初は女4人の計画だったが、男手が必要だと誰かが言い出し、結局6人になった。
「駅で待ち合わせだから、それまでに用意しないと」
「だな」
柑菜と春樹は、それぞれ準備をするために自分の部屋へと戻った。
「何持って行こう……」
そう考える柑菜とは正反対に、約5分で準備が完成する春樹。
柑菜は隠せぬ笑顔を浮かべて、まだ見ぬ夏のひと時を心待ちにするのだった。
「お待たせー」
春樹と柑菜が駅に着くと、すでにほかの4人は到着していて、2人は小走りで4人のもとへ向かう。
「じゃあ、行きますか」
美鈴が先頭になり、改札口を通り抜けた。
夏休みということもあって、駅には若者が溢れている。
みんな、この暑さに合わせてかなり薄着をしており、それでもなおアイスを食べたりうちわを仰いだりしていた。
亜紀も、持ってきた水を一口飲んで水分補給をする。
冷たい水がのどを潤し、身体にしみ込んでいくのが分かった。
電車に乗ると、特に席は決まっておらず各々好きなように座ろうと話し合った。
電車も席は空いているものの、6人連続でというものは当たり前のようになく、2人ずつ少し離れた席に座ることにした。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる