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4話
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しおりを挟む「秋斗さん」
柑菜は櫻子から貰った勇気を絞り出して、ケーキを食べている秋斗に話しかける。
話しかけられた秋斗は、柑菜の顔を見た。
「あ、あの……」
何を言えばいいのか分からずに、柑菜は言葉を詰まらせる。
「今日はいい天気ですね」
その様子を見た秋斗は、当たり障りのない会話をし始めた。
「はい」
「こんな日は、散歩でもしたいです」
「そうですね」
そこで会話は終わってしまう。
柑菜は再び勇気を出して、秋斗に「あの……連絡先を交換したいです」と声を振り絞った。
秋斗は一瞬驚いた顔をする。
「はい、いいですよ」
この瞬間、秋斗と柑菜の関係が一歩だけ前進した。
「柑菜ちゃん、みんなで写真撮りましょう」
タイミングよく、櫻子が2人に呼びかける。
真波さんがカメラを持って、みんなの前に立ち、立ち位置の調整をしている。
「春樹さまもう少し櫻子さま側に寄ってください」
「あ、はい」
「亜紀さまは少し美鈴さまから離れてください」
正確に立ち位置を決めようとする真波に「真波さん、そんなにきっちりしなくても適当でよろしいのよ」と櫻子が笑う。
「はい、お嬢様、申し訳ございません」
真波は再度カメラに目を通すと、今度は特に何も指示をしない。
「では、みなさん、撮りますね。……ハイチーズ」
その瞬間、ピースをする人もいれば笑顔を作る人、わざとなのか無表情、そして照れ臭そうにはにかむ人と、統一感はないけれど賑やかな場面を想像できる写真を撮ることができた。
その後も、みんなは美味しいケーキに料理を楽しみ、このパーティを心の底から楽しんだ。
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