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4話
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しおりを挟む「亜紀ちゃん、明日の午後3時に私の家にいらっしゃって。場所、覚えてるかしら?」
「うん、覚えてるよ」
「じゃあ、また明日ね」
「うん」
そう約束をし、櫻子と柑菜は亜紀と別れる。
櫻子と柑菜は、亜紀が見えなくなるまでその場で見送りをした。
亜紀の姿が見えなくなると、2人は顔を見合わせて亜紀の進んだ方向とは反対方向を向く。
「それじゃあ行きましょうか」
2人は、駅に向かって歩き出す。
もちろん、目的は明日の亜紀の誕生日のプレゼント購入のためだ。
事前に2人は、お互いにそれとなく亜紀から欲しいものを書き出していた。
そして話し合った結果、亜紀が一番欲しているものは腕時計ということになった。
確かに、亜紀はわりと時間を気にしていつもスマホを見ているし、腕時計があった方がすぐに時間を確認できて便利だ。
どうせなら機能とデザインのどちらもいいものを、と2人は考えている。
「柑菜ちゃん、明日のケーキ、私が取りに行ってもいいかしら?」
「え?」
櫻子は、柑菜が秋斗のことを好きなのだということは知っているし、2人が顔を合わせる唯一の場所があのケーキ屋だということも知っている。
それなのに、それを奪うなんていつもの櫻子らしくない。
「いいけど……どうして?」
春樹と同じことを言う櫻子に、少し疑心暗鬼になる。
2人は、もしかしたら私の恋に反対なのかもしれないと、不安になってくる柑菜。
春樹だけならまだしも、櫻子が、と考えると不安は倍増する。
「柑菜ちゃんにはケーキじゃない料理を作っていただきたいの。私料理って得意じゃなくて、もちろん2人で作るけれど、途中で私が抜けて取りに行くわ」
櫻子は、淡々とそう答える。
「そうだね」
少し納得のいかない顔の柑菜だが、特に裏のあり そうもない櫻子の笑顔を見て、首を縦に振った。
その後、2人は駅前のお店を色々と見て回る。
主に、若い女の子が来ているような可愛らしい雑貨が置いてあるショップの腕時計を探して歩いた。
そして、亜紀にぴったりの柄や色のものをついに2人は見つけた。
数字がお洒落なカラフルな文字で書かれて、その大きさも数字によって違い、都会的な亜紀の雰囲気に合う時計。
色も白と黒がベースで大人っぽい。
プレゼント用に包装してもらって、2人は店を出た。
「明日が楽しみだわ。ケーキも美味しいものを用意できたし、プレゼントも素敵なものが買えたし」
「うん、そうだね。じゃあ、1時に櫻子の家でいいのよね」
「ええ」
亜紀とはずれた時間の約束をし、2人はそれぞれの家に帰った。
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