夢霧無(むむむっ)

木芙蓉

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目覚め

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 翌朝、ちゅんちゅんと言う小鳥の鳴き声で俺は眼を覚ました。陽がすっかり登り部屋の奥まで光が差し込んでいる。随分と爽やかな朝だ。また意識を失って知らない世界に飛んでしまうのではないかという心配は杞憂に終わった。昨夜と今は確実に繋がっていた。外を眺めながら心を整理していると、おはようございますと挨拶をして足立さんが部屋に入ってきた。部屋に入るなり、今日の検査の説明を一通りしてくれた。
「ところで、お兄さんお名前は?」
 足立さんの言葉にハッとした。そういえば身分証の一切は置いてきた。もちろん保険証もだ。持って来てもらえるような頼れる人はいない。自分の身分と状況を正直に明かした。足立さんはわかりました、と言うと
「後は私に任せなさい。大丈夫だから。」
 それだけ言うと足立さんは病室を出て行った。検査に向かう為立ち上がろうとすると、あれ?力が入らない、倒れそうになりベッドに座り込んだ。その様子を見た部屋の前までやって来ていた足立さん慌ててやって来た。足立さん曰く俺の衰弱が激しく筋力が落ちているからか暫く歩く事は難しいとの事だった。検査には車椅子で向かった。診察室にいた医師は斎藤先生ではなかった。向き合うなり簡単に見せてくださいと言われ聴診器を当てられ、喉の奥を見られた。異常はないですね。此処までは昨夜の繰り返しだ。
「では検査を受けて来てください。」
 その後は病院をたらい回しだ。違う検査をする度に移動させられた。数時間後診察室に通され、朝の医師と再び向き合った。
「検査の結果、特別な異常はありません。」
と言われた。ただ、衰弱が激しいので点滴を暫く受ける必要があるらしい。これも今朝聞いた気がする言葉だ。俺にはこの1日が酷く無駄なように感じた。
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