夢霧無（むむむっ）

闇の中

３

　ボーッとして思考が停止していたのか、夢を見ずに寝ていたのかわからない。ハッと我に帰って考えることを再開する。そんな事が何回も繰り返した。相変わらず目の前は真っ暗闇で眼を開いてるのか閉じているのかもわからない。眠っているのか起きているのか意識の境界は曖昧だった。
　どれぐらいそうしていたのだろう。その時もハッと我に帰った。また相変わらず目の前は真っ暗闇。いや何かが違う。違和感を感じたのは少し経ってからだ。何も見えない事に変わりないのだが闇の隙間からうっすら光が差し込んでいる気がした。例えるなら満員電車で寝たふりをして、眼を瞑っているとき何も見えなくなるが瞼の裏の世界は真っ暗闇ではなく光りが射し込んでくる。光の量は今の方が比べ物にならないぐらい少ないが感覚は似ていた。
　今俺は眼を閉じているだけなのじゃないか。眼を開けば俺が何処にいるか分かるはずだ。また赤い光に襲われたらどうしよう。恐怖が脳裏を過ぎったがこのままでは何もわからない。迷いはなかった。また眼に全神経を集中させようとしたが、その前に自然と俺の意志に反して開いてしまった。其処は相変わらず闇に包まれた真っ暗な世界だった。変化なしか、絶望する気持ちに支配されるあまり俺はしばらく目の前の世界の変化に気付いてなかった。