上 下
302 / 303

第300話 新迷宮2つの8月

しおりを挟む
7月末日からお弁当やクワンたち用のオヤツと食事を沢山拵え。愛のカステラとハンバーグも沢山焼いて挑んだ8月1日。シュルツが参加する初めてのフルメンバーでの秘密の宴は竜血剤や回復薬も投与し最長の5日間に及んだ。

進化ローションは序盤から。4日目に投入した例の秘薬で心まで溶かし切った全力投球の宴。気持ち良かった…。

疲れなど微塵も無い6日朝。全員裸にバスローブ姿。
「えー皆様。シュルツの強い要望に因り全力全投入した5日間。最高に気持ち良い愛の有る快楽で蕩け。本当に身も心も溶けて消えるのではと感じました。
シュルツさんのご感想は」
「はい…。スタン様のお言葉通りに。前前から伺っていたソプランさんも大変にお上手で。抱いていた抵抗感は一瞬で飛び最高の安心感が得られ気持ち良かったです。
序盤から全てを曝け出して恥ずかしくも有りましたが超えた先は真に天国でした。秘薬を使われてからの記憶は自我も飛んで曖昧ですが。この身に受けた温かい愛は心に深く刻まれ残って居ります。
後悔は微塵も無く。次回が楽しみでしか有りません。
スタン様とお姉様に対する愛も。皆様に対する情愛も深まり留まる底が見えません。
お姉様…」
「どうしたの?」
「私を一番にしては頂けませんか」
「それは御免。女子で1番はアローマなの。親友のカルに対する愛情とも違う特別。許してシュルツ」
「フィーネ様…」アローマ感涙。
「そうですか。残念ですが諦めます。振り返ってばかりでは下がずぶ濡れに成ってしまうのでここで止めます。以上ですスタン様」
「兎に角後悔が無くて良かった。今回のようなロングは頻繁には無理だけどこれからも秘密の宴を続けます。
ではフィーネさん。今後の予定を」

バッグからスケジュール帳を取出し。
「はい。クワンティ率いるペッツ隊の南西迷宮進捗は昨晩お掃除中に舞い込み。ざっと3分の1。こちらに合わせスローペースで進行しているのと。シュピナードが通れる道幅を拡張しながら進んでいるとの事。
私たちもこの後身支度とダリアの未来視を経てローリ山脈迷宮へと全員で突入します。
全員分の木札は先月末週で入手済。予備は1枚。ダリアの武器はレイルがボルトスタ突発お説教でゲットした中の絶影剣と3種の竜骨を多重合成した竜骨剣。竜骨剣のもう1本はカルの破邪剣と交換。破邪はファフに返却。絶影斧はシュルツのサブへ。
安全地帯作成の宝玉は後衛のアローマへと譲渡済。
絶影2本の強化は実戦の使用感で考えます。ペリーニャの時雨と同じく手を加えずとも強力なので不要じゃない?と今の所は考えてます。

ローリ山脈迷宮は最大19日まで。
20日は今年分の薬の納品にペカトーレへ。早く終われば中旬早くに宅配。
21日のローレン御父様の身内式へお祝い出席後に続きが有れば続きを。無ければ個人訓練と秘密の宴を。

今年9月は丸々休暇。前半ラフドッグ。後半ルーナ両国と決まっていてホテルと王都宿は予約済です。
前半の別イベントでメメット、エルラダさん再婚式とモメット、アルシェペアの身内式が2日昼に同時開催。カメノス邸からラフドッグのエリュロンズへ旅行者を招いて放置します。大半が浜辺のタープテントに集まるでしょう。
お城の3人娘も来場しますが今回から目隠し無しでどうぞご自由に。
一応私たちと希望者の新作水着は購入済です。際どい方はホテルでご披露しますので乞うご期待。3人娘は私用プールで任意のご披露です。多分着る。
男子用のスタンさんの分はソプランが適当に購入したので9月に受け取ってね。

バインカレお婆ちゃんとエルラダさんと希望者を絞って潜水艇のご案内。今回アルカンレディアまでは潜らず鮪漁ポイント辺りでの周遊に留めますので仮に懐妊中でも問題無しと医院の天才2人が診断し同行しますのでご安心。
今の所気配は無し。直前でフウにも確認して貰います。

10月6日に黒竜様へのご挨拶とオーラとの戯れ。
10月10日に私たちの身内式。特別ゲストは御父様とソフィさんまで。王族3人は辞退して貰いました。
ドレスは略完成。王都内の老舗とマリーシャさんの移民組工房へ発注済です。10月頭に確認しに行き修正有れば微調整をします。

余談としてミーシャの弟ガラード君が遊び人化して近場の女性を食い散らかしていましたので。ミーシャとご両親の判断の元にロルーゼ王都の旧家へボッチで強制帰国させました。
お互いに記憶を消されたルーミルと再会出来るかが見物です。ルーミルの方はトロイヤが確認した所。預けられた寺院繋がりで修女の道を歩んでいるそう。再会しても無理かも知れません。私たちの怒りを買った男がどうなるかの前例として死んで頂きます。性的な意味で」
「怖っ。でも仕方無いな。奴隷落ち寸前で救ってやったのにその恩を忘れたんだから2度は救えない」

「その通り。マルセンド卿に能力はそこそこでも男として屑だとお勧めして置いたので彼も放置決定です。
10月12日からここへ緊急離脱。13日に事務棟へ来るヤーチェ隊はタツリケ隊主体でボコって貰い。花束と手紙を置かせて東のマスカレイドへ帰します。送還はスタンさんとソプランとフウとでお説教後にお願いします。責めて話位は聞いてあげて。
私たちはレイルと同じで会いたくない」
「「了解」」
「しゃーないわね。レイルとプレマーレはヤーチェ隊が自力で魅了を解除してたとしても許さない?」
「嫌よ。私を見て再燃するかも知れないし」
「二度目は無理です。あの舐め回すかのような視線。殺しはしませんが絶対に嫌です」

「駄目だこりゃ。解った。諦めて貰うように説得してみる。最果てに訪問する時は2人は抜きで」
「宜しくカタリデ」
「お願い致します」

再びフィーネ。
「10月下旬以降。年内にエボニアル新迷宮トライ。ペッツ隊も合流するので戦力過剰。外のコテージ待機で漏れ出した魔獣を駆逐する班と突入班で分ける可能性大です。
年明けからは自走車専用道と自走車本体の整備と修正を本格的に進め。アワーグラスと併設旅館の従業者選定に入ります。主に料理人。
それとは別に西のアデルとキリータルニアのウィンキーへの対処は忘れずコンパスで監視。ウィンキーの名前が見えたら記憶復活と判断。破滅の小石を自身や誰かに埋め込んだら南極の荒野に連れて行き処罰。改造程度なら暫く静観の方向性で。
ウィンキーが持っていた収納袋に我楽多を詰め込んで餌にするも良し。
説得に応じ。更正出来そうな見込みが有れば生かします」
袋の中身は処分済。何を詰めようかな。

「西への突入は再来年。モーランゼアでの時計品評会後辺りから。それか魔王軍が最後に山の王と打つかるまで待ち。て感じで行こうと考えてる。
そろそろ天の王が討伐された頃じゃない?レイル」
「そうね…。丁度先月討伐されて今天竜素材で武装強化してる。蠅以外の王で現存するのは地の王。湖の王。昆虫の王。鳥の王。そして山の王。
こっから先は早く進むと思う。どうして山の王が最後だって解ったの?」
「嘗ての婚約者を無理矢理母親にしたこの世で最も殺したい相手。只殺したんじゃ飽き足らない。俺なら絶望と恐怖を叩き込んで地獄に送る。だからこそ最後。そこへの手出しは絶対にしない」
「御方に聞いたの?」
「いやガンターネの証言からの推測。俺たちは蠅の王と同じ場所に封印された取り巻き討伐に専念。山の王が討伐されるのと同時がベスト。少し前でも可。最終戦は魔王城東の広い荒野でやりたいかな」
「正解よ…」
答えたレイルが俺の胸に飛び込んで来た。

抱き留め頭を撫でながら拠点朝会を終えた。




-------------

身支度と装備を整えダリアの未来視。

「総員で突入。前衛レイル様、ロイド様、フィーネ様とプレマーレ様。
中衛スターレン様、シュルツさん、ファフ様、ペリーニャ様。後衛は私と残り三名の布陣。
フィーネ様のライトの腕輪をスターレン様へ移行。
一層目から一角兎、アイスバード、アイスウルフの波状攻撃。レイル様の従属は受け付けません。
全ての敵魔物は最下層の迷宮主に制御され統一化。
兎以外のアイス系は無限湧き。階層主の特殊バードかウルフを討伐しない限り止まらず休憩も困難。
休憩は各層奥の剥き出しの岩場か安全地帯の宝玉。氷が張った広い場所は崩され落とされ分断されます。手っ取り早く外に転移して再突入が無難。
階層主の再出現は…三日置き。上層主のドロップは魔石以外有りません。兎は角と尻尾と魔石。何方も幸運グッズに加工して販売すればボロ儲けです」
「おいおいダリア君。本心が漏れちゃってるよ」
「せ、選択肢の一つですよ。四層主の三角兎のドロップは角三本、尻尾と毛皮。角は永久追尾と貫通力に優れ弓矢に最適。毛皮は属性無しで素早さ上昇効果。レイル様とプレマーレ様のズボンの裏地などに。捕捉として…角の粉は精力剤として使用可能。副作用は鑑定で詳しく」
女性陣が顔を真っ赤に。
「無理するなって。これ以上俺たちを絶倫にしてどうすんのさ」
「マジで壊れるぞ。自分たちを追い込むな」
「ちょっとは使って下さい。ローションとクワンティの加護が有るので余裕で平気です!」
欲望に真っ直ぐ猪突猛進。
「おぉ見えちゃってるよ。解った。ちゃんと用法用量を調べてからな」
「落ち着け。先に進まない。踏破してから考える事だ」
「はい…取り乱しました。戻します。
五層から氷スライムが加わり。十層からは熊。十五からは猿が追加。この猿が中々の難敵。岩の高速投擲で足場の氷を砕き下層へと落とす。天井の氷柱を落とす。尻を叩いて挑発するなど多彩。歯軋りをし出したら超音波の発動合図です。音波即ち氷壁崩しと反響攻撃。接近戦では握撃に噛み付き尻尾叩き。
詰りオメア様のハープとファフ様の美声は全編使用禁止。会話も小声で。前中後別の独自行動を推奨」
「大声と風系の干渉攻撃は封印ですか…」
「折角参戦するのに使えないとは…」

「序盤から穴空きコートで飛翔は可能。ですが高速移動は不適切。床面に対し天井部が狭い地形も有ります」
「飛べても素早く羽ばたけない。面倒な迷宮ね」
「ですね」
ロイドとレイルが手を握り合った。

「物理で各個撃破が最適。ランダムで出現するスライムが氷結攻撃を仕掛けます。弓か投擲。遠距離は雷系電撃攻撃が有効。但し広範囲に放つと振動崩れの元。
聖と闇は迷宮壁が吸収。吸収された闇属性は魔物へと循環され強化。攻撃手段が桁違いに増加」
「結局は物理。届かない相手なら局所電撃と」
「槍の使い処も良く考えないといけません」
槍がメインの前衛2人には相性悪し。

「比較的自由に立ち回れるのはソプランさんとアローマさんのラーハジットとピーカー君の三名。
特にソプランさんが大地操作を併用して足場の氷を分厚くするのが有効。
その逆でフィーネ様の水は自分たちの行動範囲を狭めるだけですのでお控えを」
「はーい封印。ポセラとはとことん相性悪いね。ハンマーなんて以ての外。円月でチマチマ攻めるわ。壁打ちしないように」
「フィーネ様の黒鞭も猿や熊には逆効果。統制を失い暴れ狂います」
「最近ずっと使ってないから出そうとも思いません…。今言われたって事は使ってた?」
「はい十六層で」
「毎度どうもお馴染みです」

「スターレン様は魔石無しの煉獄。カタリデ様は刃が地面や壁面に当ると吸われます。迷宮主の防衛力増加に繋がりますので」
「今回カタリデは出番無しと」
「頑張ってダーリン♡」
「はい!カタリデ様の分まで」

「盾持ちの方は受けの反射のみで進めます。
二十層の主は強化版アイスベア。二十五は雪の大猿。
三十は層内を埋め尽くす強化スライム。最終三十一層がアイスゴーレム。
北の極点城を守護するアイスバーンドゴーレムの原形。父はこれを参考にしたようです」
「へぇベルさんも潜ったんだ。迷宮を管理する氷のゴーレムか。厄介だな」

「ピーカー君なら…一瞬で終わりですので。出来れば前衛での討伐が望ましいかと」
「ピーカー君譲ってよ。最近出番無いのよ私たち」
「そうそう。劣化魔神の時からずっと。レイルは楽器演奏で私はお祈り」
「ロイド様は空刃撃ってましたが私は完全に見物でした」
「そう言われると何も言えず」

「なら僕は三十のスライムを半分殲滅して足場を構築します。今回の出番はそこまでで」
「充分充分。後はお任せ」

「ゴーレムの討伐は戦闘開始から三分経過で分裂増殖を繰り返します。魔核も数分増加するので二体に成ったら中衛からペリーニャ様とファフ様。四体で前中全員。八体で後衛も参戦。十六体と成ったら大人しくピーカー君に譲りましょう」
「一体目で仕留めるわ」
「絶対に」
レイルとフィーネの決意表明の結果や如何に!




-------------

ご主人様たちがローリの氷迷宮へ突入した。

ペッツ隊の4名を集め。
「やっと本隊が拠点を離れローリ迷宮へ突入したわ」
「やっとですかニャ」
「今回は長かったでやんすねぇ」
「ヒヒン…」
「今後は回数も日数も増えますな。まあ主が満足ならそれで良し」

「その分あたしたちの出番が増えるからまあいいわ。次の十一からは道幅が広くなる。と同時に二手に分かれてる。隊を分けてもいいけど連絡手段がレイル様かフィーネ様経由に成っちゃうから分けない。行き止まりだったらここへ戻る事。はぐれて孤立しても同じとします」
「ハイニャ」
他も同意。
「あっちも結構時間掛かるらしいし。こっちもこれまで通りのペースで進めます。往復してれば勝手に時間も掛かるけど九月以降の暇潰しに取って置くのも有りね」
「良い物出たら何度でもいいニャ」
「主たちが喜ぶ物だといいでやすねぇ」
「ヒヒーン」
「ここまでは塵でしたがね。水魔石は山程持ってますし」

そうこの南西迷宮は水陸両生魔物の宝庫。だったのに…魔石と使えない変な色の鱗や皮ばかり出る。

加工して装飾品で売る?とかしか思い浮かばない。

十層までは蛙、蜥蜴、手足が生えた新種の剣魚が多数。剣魚なら角がと思えば残念。角らしき物は持ってない。

これならタイラント国内の水没迷宮の方がマシ。と言うより断然良い。

収穫零では本当に暇潰しで終わってしまう。

十一層の初手は左ルート。行き止まりに居たのは初めて見る山椒魚の魔物。臭い粘液を身に纏っていたがグーニャの火炎でこんがり焼き果てた。
ドロップは粘液が詰まった小瓶。傷薬に使えるかは不明だが一応収集。

引き返して右ルート。アッテンハイム北部に在住するデビルイールが居た。アレと同じく電気鯰。雷魔石は良い。他は良く解らない鰭と髭が出た。

出た者は兎に角収集。

大小様々な鯰が続き適度に分散討伐して遊んだ。

十四層で多色のウォーターフィッシュに入替え。頭部と眉間の穴から水刃を飛ばす面白魚。しかし霧化出来るグーニャとダメスとナーディの前には雑魚。

あたしとシュピナードは傍観者と成った。
大型水刃魚の階層主を倒した後の分岐から行き止まりが無くなり数下層まで続いた。

十七層で道が途切れ引き返し。十四の別ルートへ。
越えた先の十八層からは光魚。自己発光して目潰しを狙いに来る魚。目を閉じても倒せるが光が通じないシュピナードに任せた。目が無いのが強み。

水刃魚は水刃玉。光魚は光玉を出した。何方も玩具だが加工次第で攻撃手段と照明器具にも成る。やっと役立ちそうな物が出現。

十九層からは水蛸に入替え。触手と吸盤攻撃と墨吹き。水没迷宮でお馴染みのインク瓶が出た。それも黒だけじゃなく多色豊富に。
「これは良いわ。単なるインクでも黒一色じゃないなら周回する価値が有る」
「やりましたニャ」
「やっと真面な物が出やしたねぇ」
シュピナードとナーディもウンウン頷いた。

筆も出るのかと探索を続けた二十三層。小型のクラーケンに入替え。その大王烏賊がイカ墨ではなく筆を出した。
食用肉は無し。でも理想通り。正解ルートを選んでしまったようだと十九に引き返し二十二までインク三昧。

二十七層まで筆三昧。又しても正解を選んでしまい二十八層で虹色亀に入替え。別ルートを往復して筆も沢山。

虹色亀は固い甲羅ではなく二個目の虹玉の泉を排出。
一個目はスフィンスラー十四層に常設と成っている為丁度欲しかった。

二十八からは分岐無く一本道。素直に進んだ二十九ではスッポンが登場。道具類ではなく食用肉と生血の小瓶セットが出た。ご主人様たちに丁度良い。もう神格化してしまって魔物肉が食べられなくなったあたし。上位種でも食べられると良いな。

最終三十層。真っ黒い苔の迷宮主。
接近すると触手を無数に伸ばして拒絶。
遠目に離れても勝手に増殖する難敵。

「拙いわ。一旦上に撤退」
増殖される前に上層へ。

「あれは寄生獣。多分四年前にフィーネ様がアルカンレディア遺跡の最深部で倒した難敵と同じ。その時は水中で集約のバトンを使って魔核持ちに集め。寄生してた霊亀毎槍で貫いた敵よ。
水上に見えてる部分には無い。本体は火炎が届かない水面下奥。さてどうするか…」
「今からフィーネ様に借りたら負けを認めた事に成るニャ」
「それは嫌でやんす」
「ブルル…」
「何か炙り出す方法を…。誰かに寄生させる。少々危ういですが五者の最大火力で押し潰す。雷魔石の強制駆動で広範囲感電に追い込む。などでは」
強引でも倒す事は可能。

「うーん。寄生させるのは残留が気持ち悪くて嫌ね。上層は何れだけ削っても崩落しなかった。迷宮内部の強度は充分に有る。太い水脈と溶岩脈は遙か下。
なら最終層を造り替える勢いで最大火力。その前にあたしとシュピナードの強制駆動で強感電状態にして様子を見ましょう」
この五者に雷は通じないので異議は無し。

早速実験討伐を開始。

苔が動かない範囲外に上の鯰が出した雷の最上魔石を二つ置き。あたしとシュピナードが翼と手を石に重ねた。

五者を無視して拡散する電撃。ボルテージなんて知ったこっちゃないわ。

本体と苔の動きを鈍らせ逃亡を阻止。
「ダメスとナーディで水面下に潜り逃亡用の水路を全遮断して。二者が潜ったらグーニャは火球と火炎を交互に連発する。必ず本体が動く。そこをあたしとシュピナで叩き捻じ伏せる。
魔核が増殖を始めたら総員でごり押し!」
了解を示した四者が散開。

「主には内緒よソラリマ」
『主に似て良いではないか。偶にはな』
元々あたしもごり押し派。

底面と苔の分離成功。鈍化の上触手も伸びない。明らかな弱体化を見て後はゴリゴリ。

迷宮主へのリンチは物の五分で決着。
浮き出した魔核をシュピナードが黄金槍で貫き終了。直後に金角をあたしが当て苔が霧散消滅。

残ったのは闇水最上位魔石と。強化黒鞭一本と黒い補修粉が一杯に入った大瓶が一つ。

上々の収穫に皆で喜んだ。

ここまでに七日間掛けた。ご主人様たちはどうだろう。




-------------

4層階層主の三角兎を血祭りに上げ上げ。主が枯渇するまでプレマーレ再現をエンドレス。

20体目の討伐で枯渇。合計60本の角は50を弓矢に転用加工。残りは薬品用に温存。詳しい鑑定は踏破後に。

5層以降はごり押し。ではあったが崩落の危険が有る為慎重に進行。最終的に突入から1週間掛かった。

迷宮主はダリアの未来視に抗った前衛4人に1分内で倒れ崩れ去った。意地とプライドの大勝利。

地上にコテージを出し。外に大判シートを広げて戦利品の数々を鑑定しているとクワンたちも南西から合流。

シュピナード&ナーディはレイルが遠隔回収。

双方の戦利品を並べ喜び合い讃え合う報告会。
特に虹玉の2個目は人型が喜んだ。理由は述べない。拠点の大風呂に使うのは確定。

スッポン肉と生血はなんと種族上下問わず全員が食べられると判明。こちらも大いに喜んだ反面。無機物であるカタリデとシュピナードは流れない血涙を流した。
「僕も食べませんよカタリデ様。塩以外を食べるのはまだ早いので」
「優しいぃダーリン。人間化したら絶対離さないわ」
「僕も離れません」
熱々の2人にちょい感動。

新旧黒鞭と雪大猿の長い尻尾を合成。焦茶色の外観と成り鞭らしい佇まいに進化。

女帝の豪鞭。
魔族の血を引く女性が自分より下位の魔物や魔獣を従属化。他者指揮管理下に在る者は20分間反発無しで従属操作が可能。仲間と認識する者は不能。人型なら人型と同系統に特に有効。

「ほぉこれ有ったらここの迷宮の猿や熊でも正常に操れたのか」
「攻撃性が消えて従属力が強化された感じだね。レイルが使うと大抵行けちゃうから私とプレマーレでいい?」
「仕方無いわねもぅ。二人共楽して怠けたら取り上げて娘に渡すから覚悟為さい」
「「はい!」」

大猿のドロップである尻尾は鞭に消えた。続いて氷熊の秘爪はグーニャとダメスが捕食強化。爪の攻撃力が上昇。

30のスライムが出した氷牢と31のゴーレムの氷迷宮の構築管理の宝玉はセット物。
「北の極点城の原型セットだなこれ。アイアンロックの技術を上乗せして魔改造したぽい」
「間違い無いね。別々でも使えるし。エボニアル迷宮の昆虫系なら寒いの苦手だから重宝しそう。ね、ダリア?」
「使えますが…外班のお仕事が無くなるので。それと鞭は如何な物かと」
「あらま。先手打たれちゃった。面倒な強敵が現われた時限定にするわ。ディザアレイでもこれなら一瞬で閉じ込められて水浸し。クワンティ班が拾った山椒魚の粘液を加えて浸透力UP。浮いた隙間を突いてお終い。
とかとかピーカー君に頼らない手段の一つとして。この3セットならギルド発表も出来なくはない。
だよねスタンさん」

「そやね。敗北したまま放置じゃ格好悪いし。西行く前の素材集めにでも討伐しよう」
反対者は無し。

そして女性陣お待ち兼ねの三角兎の角の再鑑定。

三角兎の角。
追尾性と貫通力に優れ弩弓などの大型弓に最適。如何なる頑丈な装甲でも貫き通せる。風穴を開けて内部への侵入など。
副産適用。削り出した粉を飲用すれば男女問わず精力爆上がり。魔獣スッポンの生血の酒割り。とある香茸と薬茸との相乗効果で更に絶大。
飲用量無関係に全4点セットなら副作用無しで5日間持続する。1つでも欠けて粉を飲用すると男性の寿命が1年縮むので注意。4点セットの連用でも同じく縮む。
動物や従魔は唯々元気に成る。

「おぉ…。なんと言えば良いやら。全部手元に揃ってしまってさあ大変。3日間が5日間に。
見てしまった以上は俺も我慢が出来ない!自宅に帰らず拠点に行こう。
スッポン茸鍋で腹拵え。生血の酒割りを飲み。最後に粉を試します。
準備してる間に兎毛皮の余剰分でシーツと毛布を作れば完璧です!」
「はい!毛皮を浄化して食材集めから始めましょ」

13~18日夜まで秘薬無しのぶっ飛んだ愛の肉欲生活を過ごしましたとさ。




-------------

18日の夜は新たに仕入れられた魔獣スッポン鍋と生血とクワンの卵のおじやで〆。薬茸と角粉は省いて。

19日昼前に全員起床でシルクガウン。
「えー皆様月に2度目の長期宴お疲れ様でした。
月初めの時より更に上の天国が存在するとは驚きを禁じ得ません。
ですが流石に下旬までやってしまうと。ペッツ隊とカタリデとピーカー君に見放されますので。人型皆様は自重し断腸の思いで堪え。9月の慰安旅行まで真面目な訓練で乗り切り備えましょう」
「辛いけど…。10月の合同挙式以降ね。ペリーニャとダリアとシュルツの魔力枯渇も遣りたいし」
「はい。遣るべき事を遣ってこその勇者隊。この今のお肌プルプル魅力値上昇状態では知人友人以外には会えませんし出歩けません。
薬の宅配だけササッとクワンに任せ。今日明日は自宅待機で質素な食事を心懸けます」
「このまま留まっているとアローマを四六時中押し倒してしまいそうな勢いですので。身支度を終えたら人型皆でお外の冷気で頭を冷やしてから帰りましょう」
「お受けしたい気持ちを押し潰して律します」
毅然としたアローマに促され人型皆が動き出した。


20日夜。明日のお土産は何にしよか問題を討議。
無難に滋養酒と蜂蜜でええじゃろと結論。
「手土産は良しと。服装なんだけど。俺とフィーネは水色の正装。ソプランとアローマはグレーの従者服で決まり。他の9人はサマードレスが普通。の所ではありますが。
主役のソフィさんを食い潰してしまうので冒険者衣服に白か灰シャツに留めて欲しい。嫌かなレイルとプレマーレ」
「ん~。ここで初めて灰シャツに袖を通すのか。でも私たちだけ灰色て可笑しくない?」
「九人全員普通のシルク白で統一するのでは駄目なのですか」
「それで良いならそっちが1番良い。お祝いの礼装だからシルクでも。お土産にブラウス加えるのも有りだな」
「じゃあそれで行くわ。正直着飾りたかったけど」
「それは自分たちの式に取って置きましょう。レイルダール様」
「うん…まあいいわ」
シュルツが挙手。
「白シャツだけだと女神教に寄ってしまうので。九人は薄水色のカーディガンを羽織りましょう。外行きの礼儀としても。来月用に女性人数分ご用意した物を」
「流石はシュルツ」
「気が利くわ。正装はビシッとする分暑いのよねぇ」

配布されたのは薄水でしかも薄手。夏用に網目が大きく水着でも羽織える防水加工。その仕上がりに大満足な女子9人。

城の3人娘用にも作成予定だと言う。

「こうなると正装と従者服も真夏用に改良したいよな。明日は無理でも」
「そうよねぇ。脇下カットするとか背中の生地薄くして通気性上げるとか」
「いいな。特に男物は種類少ねえし」
「殿方も室内でしたらベストのみでも良いのではないでしょうか。身内式ですし。十月も」
「それも有りやね。9月中に色々考えよう」

等々話している間に夜も更け解散就寝。


21日。11時開始で10時前には実家入り。

珍しく緊張気味の父上にお土産を渡しつつ。
「父上も緊張するんですね」
「私とて一人の人間。男として妻を迎えるなら誰でも。お前も最初のフィーネ嬢の時はそうだったろ」
「確かに…。親族は誰も来ないのに馬鹿みたいに緊張してましたね」
「そう言う物だ。何度目だろうとな」
フィーネと目を合わせて苦笑い。

父上の隣のソフィさんが父の背を撫でながら。
「特に今日は私の父ソロアールも来るので余計に。スターレンとフィーネとロディさんは何度か城や議塔で顔を合せています」
「あぁ何となく。穏健派上級議員の。穏健と言いながら白髭蓄えた厳ついお顔の」
「あ、思い出した」
「城での会食時にも同席されてましたね」
「それです」

「どうも昔から苦手な御仁でな。城内で唯一緊張する人間だ。種を明かせば私の教育官だよ」
「あぁそれで余計に。昔からソフィ母様との繋がりが有ったんだ」
「まあな」

そんな昔話に華を咲かせているとダリアがふと。
「危険ではないですが邪魔者が来ます」
「…どんな?」
「保守派の下級議員若手二名。お庭での式中に…壁の外から腐った卵を四個程投げ込みます」
「地味な嫌がらせだなぁ。どっから歩いて来る?」
「西の中央街道から。お祝いの野次馬に紛れて」

「そこまで詳しく解る物なのか。ダリア嬢の未来視とは」
「ええ。最近の冒険やら迷宮やらで仲間の行動やミスや修正方法まで詳細に」
「ほぉ…」
「凄いですね」
「良く当る占いみたいな物です。過信は禁物」

「とは言え見えてしまったなら対処します。父上たちは予定通り式を進めて下さい」
「どうするのだ。まだ罪を犯してもないのに」
「それは勿論その腐った生卵を余さず食わせますよ。殻毎食わせて腹痛で立ってられない位に」
「エグいな」
「エグいですね。宜しくお願いします」
戸惑っても容赦無し。

ダリアとロイドを連れその2人の前に立ちロープで拘束。
「おいおい俺見て逃げるなよ。都内でそんな事したら怪しまれるぞ」
「な、何を」
「ぼ、僕らはまだ何も」
「遠慮すんなって。お祝いの品持って来たんだろ?見せてみろよ」
勝手に2人の懐を探り卵入り麻袋を発見。
「お祝いで生卵は無いなぁ。却下だ。勿体無いから自分で食え」
「遠慮はせずに」
「余さず!」
「そ、そんな…」
「こ、これはくっ」
戸惑う2人のお口を強引にこじ開け上に向け。彼らの額で割り硫黄臭がする生卵を投下。鼻と口を塞いでゴックン待ちで2個目も投入。2個目は殻もふんだんに混ぜゴックンさせた。
「自分たちで用意した贈り物だ。さぞ美味いだろう。消化は早い。吐いても無駄だ。卵に中ると1週間はトイレから出られない。ご愁傷様」
「おトイレは遠いです」
「急ぎ為さない」

既にゴロゴロ鳴き出したお腹を抱えて2人はダッシュで帰った。

もう1人路地裏から逃げ出した男が居たので同じ施しを与えて逃した。

「3人揃いも揃って」
「こんな事をして何に成るのか」
「理解不能です」

以降の妨害工作は無く。来客が集まり平穏無事に水竜式の身内式が執り行われ無事に終了。

出席は新築別館での昼食会まで。ご近所の屋敷や沿道を練り歩く2人を遠目から眺め立ち去った。

4年目の8月のイベントはこれにて終了。
式後の練り歩きは要らないなと我が家で話し合いながら幸せな日々が過ぎて行った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

辺境領主になった俺は、極上のスローライフを約束する~無限の現代知識チートで世界を塗り替える~

昼から山猫
ファンタジー
突然、交通事故で命を落とした俺は、気づけば剣と魔法が支配する異世界に転生していた。 前世で培った現代知識(チート)を武器に、しかも見知らぬ領地の弱小貴族として新たな人生をスタートすることに。 ところが、この世界には数々の危機や差別、さらに魔物の脅威が山積みだった。 俺は「もっと楽しく、もっと快適に暮らしたい!」という欲望丸出しのモチベーションで、片っ端から問題を解決していく。 領地改革はもちろん、出会う仲間たちの支援に恋愛にと、あっという間に忙しい毎日。 その中で、気づけば俺はこの世界にとって欠かせない存在になっていく。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...