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第279話 潜水艇アルカナ号本番&時空結界消滅

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数日休暇を挟み主に自分とフィーネの体調を整える期間とした。

上旬の騒動の真っ最中に生まれていたミランダの赤ん坊を見に行き癒され。母子健康の元気な男の子。
名前はのんびり夫婦で考え中だとか。まあ今月内で。

新作長剣2本と特殊塊を受け取り早速スフィンスラーで試してみたが…。案の定な事が渡した2人に起きた。
刀身の形状変更と言う化け物が出現。
「うっほすっげ何だこれ」
「私たちでも自在に操れる…とは」
ならばと他の全員で試したが何も操作が出来なかった。

カタリデとピーカー君の突っ込み。
「剣の方が判定してるのよ」
「スターレン様たちには過剰だと。欲張り過ぎですよ」
従者2人以外は膝を折って崩れ落ちた。

プレマーレが起き上がり。
「ま、まさか二人にも…勝てない…」
「んな事はねえよマーレ嬢。飛べるっても怖くて浮くだけ。剣の操作は限度が有る。継続出来る魔力量が少ねえし」
「範囲外からの高火力には適いませんよプレマーレ様」
「よ、良かったぁ…」
レイルがプレマーレの頭をポカリ。
「二人に教えて貰ってる時点で負けておるわ!」
「済みません!」
そのまま土下座で謝罪。

久々に隊のメンバーでハーベストへ行ったり。トゥールーで土産に買った茸類でグラタン、焼き物、肉団子や炊き込みご飯やお鍋を作りプチ宴会を催して。
レイルからリクエストの有った改良ハヤシライスを邸内で育てた新米で食べたりと。

ラフドッグのエリュランテの予約と城や各方面のスケジュール調整をしつつ。

スタフィー号を走らせ。ソラリマ装備のクワンの潜水テストをしたりと充実な毎日を送った。

そんな中。自宅にハイネのトロイヤとティマーンが揃って訪ねて来た。

神妙な面持ちの2人にフィーネが。
「気持ちは解るけど許可は出来ないわ」
2人が顔を見合わせる。
「…まだ何も」
「コーレルの件なら手を出す訳無いじゃないですか。明らかな外交干渉案件に」
「え…?違うの?あらやだ私」
照れて可愛く頭をポリポリ。

横から俺が。
「何か相談事?俺に」
トロイヤが元気に。
「はい。自分の特技を使って」
「二人で新事務棟専属の配達屋を任せては貰えないかと」
「遠距離は自分。近距離はティマーンで。
鳩様も有名に成り勇者隊のメンバーで忙しい。事務棟から小物を届ける案件数も来年稼働すれば増える一方」
「そこで俺らが」

「おぉ成程ね」
「ちゃんと聞けば良かった。反省」

「確かに悪くない。本来鳩は喋らないから人間同士で小包の遣り取りをとか」
「適度な収納袋はハイネで販売。多少の荷物も運べます」
「どうですかね配達屋」
「うん採用。来年支配人を任せる人に伝えとく。決定権は俺だから」
「おぉ良かった」
「やっぱり言ってみるもんだな」

「但しまだ中の机の配置とか出入口周りとかの管理が未定で詳細までは決められない」
「記録して置きます。支配人に伝えるのも私が」

「宜しくお願いします」
「来年稼働まで期間が有るんですがラッハマオリオン間の仕事を手伝えばいいのか。ハイネラフドッグ間だけでいいのか。他に仕事が有るならお伺いを」
「うーん。取り敢えず…。あ、トロイヤはウィンザートは行った事有る?」
「あーまだ無いですね」

「じゃあ今から5人で行くかね」
「おぉ良いですね」
「自分も真面に入ってないんで。俺らは適当に見物して帰ります」

「おけ。繋ぎの仕事はハイネラフドッグ間でいいよ。
ラッハマは大荷物で必要なのは護衛と警備だから」
「「了解です」」


急遽5人とペッツでウィンザート訪問。
北入口でトロイヤたちとは分かれ。両手に華の堂々手繋ぎデートを満喫。

昼食を食べたりお茶したり。建設途中の水族館を遠目から眺めたり。

最終的に南部公園のテラス席に座った。
ボーッと家族連れが楽しそうに遊ぶ風景を眺めていると。
「スタンさんは何人位子供が欲しいの?」
「あーそれは私も聞きたいです。あなたの口から」
「えー。その積もりで眺めてた訳じゃないけど…。1人2人ずつでも結構な人数だし。何人でも母子共に健康ならそれでいい。無理せず焦らず」
「賑やかに成りそう。5年後10年後」
「成りますね。間違い無く」

対面席には誰も居ない。肩を寄せ合う涼しげな午後。

「いよいよ明日本番。俺も若干緊張気味。フィーネさんの体調は」
「万全です。アレのお陰で生理も無いので…」
言ってる自分も俺たちも赤く染まった。

「それ言い出すとそっちに持ってかれるから。適当に港見て帰ろうか」
「ご、ごめん。余計な事言っちゃった。頭冷やしてから帰りましょう」
「名案です」

一応隊のメンバー内で本番終わりまでは禁欲をしてみると決めた…けど無理かな。
まあ程々であれば。
我慢も良く無いか。
そう言う事です。

ラフドッグとは違う港の景色で暫く涼んで帰宅した。




--------------

先にホテルにチェックインしてから城へお出迎え。
本日分の招待者を引き連れ船工房内へ直入。

スタフィー号に乗り込むフィーネたちとはそこでお別れ。
ダリアが居るので人前でのキスは無し。

ライザーは不仲を演じ明日分予定。代わりにメイザー。

「陛下!オムツのご準備は」
「漏らすか馬鹿者!トイレは在る」
女性のスカート着用は無し。ミラン様のパンツルックは凜々しいお姿でプチ感動。そして貴重。

「では乗り込みます。着席後に直ぐ出ます。普通に喋って頂いて構いませんが私とロディに話し掛けるのはご遠慮を願います。途中途中で自分たちの休憩を挟むのでお話有ればその時に」
「うむ」
一同が頷き乗り込み開始。

操縦席に座りアローマに20km拡声器を渡した。
「予備演習通りに。もしもの時はフィーネたちを呼捨てに指示を出す事。
前方視界は良好。船尾後方はソナーが頼り。いいね」
「畏まりました」

船内配管を開き。
「これよりアルカナ号を出港させる。
船首操舵室への出入は順序を持って固まらないように。
操縦者の前に立つ愚か者は。例え陛下であっても帰港後に海に放り込むのでご注意を。
では出港!」

ロイドと目を合わせ。
行こうロディ。
行きましょうセティ。

………

深度千mで水分補給。二千mで小休憩。
そして海上のフィーネとクワンに通話。
「2千に到着。そろそろお披露目会。お嬢様方の心の準備は如何」
「良好よ。覚悟は決めた」
「クワッ」
「では2人のダンスのご披露を」
「はい!」
「クワッ!」

通話を終え。後ろを振り返り。
「驚くなと言う方が無理ですが可能な限りの平静を望みます。フィーネとクワンの登場です」

上から降りる目映い光。照らし出される深海の全貌。
何度見ても息を呑む。初見の人なら殊更に。

後ろが全員腰を上げ口々に感嘆を漏らし見蕩れた。

光の中心に居る2人もこちらに手と翼を振り返す。

配管を開き。
「マンド。制御室に問題は無いか」
「…万事良好!」
「良し。船内総員に告ぐ。
この先がアルカンレディア古代遺跡。
現在ソナーに大型魚影無し。
遺跡上層は事前に掃除。しかしこの先区間は未確認。
前方障害物は無し。海洋魔獣が出てもフィーネが排除。
船体への接触時は転移で緊急帰港する。
何事も無くば遺跡の真上を観光しよう。
それまで待て。では高速巡航を開始する」

深度が進み流れる景色も加速する。案内2人は遙か先。
余裕を持って徐々に徐々に。

輝く粒子の波に乗り。運ぶ船も喜び遊ぶ。

段々と見える遺跡の姿。何事も無く無事に着。

配管で。
「目的地に到着。総員遺跡の景色をご堪能有れ!」

艦内から歓喜の声が上がった。停泊モードに切り替え自分たちも窓辺に立ち眺めた。

「どうですか陛下。ご感想は」
「素晴らしい…。それ以外の言葉が見付からん」

ダリアも横へ並び前方に漂うフィーネとクワンに手を振った。
「あれがフィーネ様とクワンティ」
「そそ。もう俺たちの武装は別次元。ダリアを危険に晒す事は無い。俺たちが帰る場所をしっかり守ってくれ」
「はい。慎んでお守り致します。皆で必ず」

彼女の耳元でそっと囁いた。
「この船を作ったのはベルエイガさんだ」
目を見開き口を抑えた。
「エルラダさんを治してまたここに来ような」
「…はい」
目尻に涙を浮べる彼女を優しく抱き締め頭を撫でた。

20分後に浮上。海上から転移で帰港すると伝え。フィーネたちにはカンペで伝達後。

ミラン様とメイザーに声を掛けた。
「余りメルシャン王女に自慢しないように願います。何が有っても私は責任を取れません」
2人は顔を見合わせ。
「困りましたね」
「言いたくてウズウズしてしまう。どう伝えれば良いか」


2日目のライザーには君に勝てない訳だと呆れられ。

ノイちゃんに申し入れ。
「ノイちゃんをパパと呼ぶ日が来ようとは」
「それはまだ気が早い。そして気持ちが悪いから止めて欲しい。不自然だがそのままにしてくれ」
暫く腹を抱えて笑い合った。


3日目には懸念が消えたシュルツも乗せて喧嘩をしていたお爺ちゃんとも仲直り。

「御爺様…。お兄様との添い寝は」
「シュルツ。お前の念書はそれ程に軽い物なのか?」
「はい…。済みません」
「それに付いては甘やかさん。大人としてのケジメと線引き。わしも辛いのだ。頑張れシュルツ」
「はい!頑張って堪え抜きます!」
抱き合って泣いていた。


4日目はバインカレ婆ちゃんとお供3人をゲストに招き。

遺跡の光景ではなく。遠くに現われた水竜様を見て昇天し掛けた。

アローマが必死に肩を揺すって。
「まだ逝かないで下さい!お願いします!」
「あぁ…。危ない。川を渡り切る所だったよ…」

レイルたちの傍に行き。
「どうですか家の正妻は。これだけはレイルにも出来ない芸当だろ」
「じゃの。これは素直に認めよう」
「全部彼女を未熟なまま生まれ里を追い出したクソ女神の所為だ。絶対に許せん。何もかもが」
「同感じゃな。反撃を目潰しよりもエグいのにすれば良かったのぉ」
「それ会う前に終わっちゃうから止めよ」
「うむ」

俺が水竜様に大きく手を振ると。直ぐに何処かへ居なくなった。恥ずかしそうに…?

「やっぱり俺って…そんな…まさか」
膝を落とす俺にロイドが諦めの溜息。
「残念ながら…」
カタリデも。
「時に妄想も的を射る。貴方の場合は特に。妄想だと思ってもそれが記憶の断片かも知れないわ」
「マジかぁ…。これだけは外れて欲しかった」


最終日の夜は財団宿舎で大宴会。

序盤でピレリの新彼女がメドーニャさんから発表された。
「ピレリは元からラフドッグの人気者。隣の席が空いたと知れればそれはもう飛んで来たよ」
それは誰かと思いきや。

婆ちゃんの付き人女性兵の1人。クレハジルだった。
「バインカレ様にお料理や家事を叩き込んで貰って置いて良かったです!ピレリさんは私が美味しく頂きました!」
「ちょ、そんな話を人前で…」
真面目なピレリの壁は一瞬で砕かれたらしい。

そのお祝いを兼ねての大盛り上がりで深海遺跡本番トライは幕引き。




--------------

エリュランテの滞在をそのまま延長し。続け様に俺たちの最大ミッションが発令された。

拳を振り上げるフィーネ。
「クソ女神に引導を渡す時が遂にやって参りました。深海戦なんて私とクワンティでぶっ潰す!

深海遺跡チャレンジは無事に終了。シュルツが操られなかったのは輪廻の輪の影響かも知れませんが。
私はレイルさんの目潰しを喰らって見えていないのではと推測し。
この今の良い流れのまま。星を包む時空結界をぶっ壊してしまおうと提案します!

皆様のご意見は」

「俺は良いと思う。勢いは勢いの有る内に乗って置いた方がいい。個人的にもうウンザリ。気持ち悪い。
反吐を吐いたら内臓全部出そう!」

「スタンさんに激しく同意します。他に慎重に行けと言うご意見有れば」
反対者は零。

「決が取れました!
では早速明日南極大陸へ出発致します。
私の構想として。スタンさんにはカルと私が魔力注入。
レイルさんにはプレマーレとダメスが上乗せ。
双極属性の配分調整はオーラ。

と言うのを考えましたが如何でしょう」

「何回か試すんじゃなくて一発で仕留めようって事か。フィーネらしくていいな。俺は賛成」
「有り難うスタンさん。レイルも何度も試すより一発で決めに行く派でしょ?この件に関しては」
「じゃの。何度も失敗していればクソ女神も気付く。遠方からヌンタークが飛んで来るじゃろ。最短最速の一発。
邪魔されん内にな」

「主軸の2人が同意しましたので一発破壊を目指します。
アローマ。供給方法などで気になる点が有れば」

皆が注目する中で考え込むアローマが目を開いた。
「スターレン様側の聖属性が過剰に成ります。即時魔力復帰を持つお二人と半分復帰を持つロイド様。
レイル様側は誰も復帰はせず。半無限のダメスドーテの最大出力が不明。クワンティの加護を上乗せでは全員上がってしまいます。
果たしてオーラの調整だけで間に合うのかどうか。結界壁が保てるのかどうか。
双方供給前にある程度は出力確認をした方が良いと思われます。箱に入れる前の事前確認を」
一同が拍手。

「何時も勢いばかりで御免為さい。その通りです。
出力事前確認を経て供給後に打ち上げと言う流れに致します。

もう一つの問題はアローマとソプランを連れて行くか否か。

間近で見たいのは山々でしょうが。ルーナ両国の浜辺から南の空を眺めるとかの方が安全だと思われます。
2人の意見は」

「俺はルーナの浜辺でいいな」
「私もです。懸念材料は外すべき。ロルーゼに居るヌンタークが飛んで来るならルーナ上空を掠める筈。
私と夫で地上から妨害する面でもそちらの方が有効だと考えます」
「成程妨害の面まで想定すると。もう私は一生アローマに逆らわないと誓います。
レイルのナーディも付けちゃおうか」
「ええのぉ。ナーディの力は解放為ずとも騎乗者の能力が上がるからの。一緒に置いてやろう」

「助かります。2人とナーディをセット置き。浜辺の更衣所を借りベース装備を整え南極大陸へと向かいます。

スタンさんのクソ女神の加護付き装備なんだけど途中で抜かれたりしないかな。私とカルには付いてない」
「あー有り得るな。霊廟無しで大狼様のジャケットと勇者装備で行くよ。そっちの方が暖かいし」

「ではその方向で。他にご意見無ければ。今夜は興奮して眠れそうに有りませんが頑張って寝てみましょう!」

やっぱり誰も眠れません。

零時を過ぎても人型全員目がバッチリ。打ち上げで飲み過ぎた所為でもある。

寝間着姿のフィーネがムクッと起きて。
「女子の4人。リビングでお話しましょ」
素直に5人が揃って寝室を出た。

数分後。
5人共に真っ赤なお顔で代表のフィーネ。
「2人共。…例のお薬を。お手柔らかに、お願いします」
「よーし待ってました。丁度俺たちもその話をしていた。
しかし毎度毎度叫んでいては芸も無ければ愛も足りない」
「今宵は耳元で囁きながら精一杯の愛を注いでやるぜ」
驚愕で腰を抜かした5人の前で例の薬を一気飲み。


朝食時を過ぎても5人は天国から帰らず。昼前になって漸くのご帰還。

お風呂に続いて昼食終わりまで5人は終始無言。
それは怒りではなく照れ隠し。

食器が下がりティータイム。
「私…お手柔らかに、て伝えませんでしたっけ」
「そうじゃぞ」
「確かに。言ってましたね」
「副隊長のお言葉をこの耳で」
「ハッキリと…。しっかりと」

「あれ以上優しくは出来ないよ。ん~」
「次はどうしてやろうかな…」
「ち、違います!止めて!絶望的に期待してる自分が居るからその考察はお止め下さい!」
「「「「止めて!」」」」
懇願する5人に対し。
「解ったよ。今度は普通に」
「普通が一番か」

「出来るならそうしてよ。もうお昼じゃない。
えー。女子の心は未だフワフワしてますが南極大陸の冷気に触れればシャキッとするでしょう。
では参ります。頭のイカれたストーカー神が作りし超広範囲時空結界の完全破壊へと!」




--------------

ソプランとアローマとナーディをルーナリオンの南浜へ。
更衣所で防寒のインナー類を着込み。南極点前の荒野で最上武装を装着。

聖闇各班に分かれ。オーラが立てた1枚壁を標的にそれぞれ出力を確認。

現時点で妨害なんて有る訳が無いのでゆっくりと時間を掛け調整。

壁が同時に崩れる手前出力で本番用の圧縮結界内へ空刃と呪詛を注ぎ入れ。最後にオーラが限界点まで等比で注入して完封。

極点まで移送。白と黒が渦巻く黄金結界。
それが今真上上空へと飛翔。

大気圏前。火に包まれる手前。
圧縮結界を追い掛ける1人の飛翔体。

「やーーーめーーーろーーー」
とでも言いたげな顔で泣く男。
彼は北の空から現われ。全身に無数の剣魚矢。超硬弾で貫かれたであろう穴を身に纏う。

「早かったのぉ。手遅れじゃが」
「ヌンターク本人ですね…。どうやって止める積もりなのかは解りませんが」

「へぇあれが」
「あれに踊らされてたなんて」
「世も末ですね」
「馬鹿な中域者ね。選んだ主人が悪過ぎた」

黄金結界は大気圏を抜け。時空結界に食い込んで静止。
後を追うヌンタークが届く前に極限圧縮が始まった。

白夜の中でも輝く一番星。
その輝きは灰色。凝縮された灰色の光が今。
半球世界を丸ごと染め上げ音も無く一瞬で消えた。

「グーニャ。大狼様にそっち側の空も砕けたか聞いてくれ」
「ハイニャ。…北極点まで漏れなく包んで消えたニャ!」

5人とペッツで抱き合い回し合い喜び合った。

その輪の中にボロボロに身体が崩れた裸のヌンタークが落ちた。

「お、お前たち…。こんな…。こんな事が、許されるとでも思ってい」
レイルが手刀をヌンタークの胸に突き入れ心臓を鷲掴み。
「ガハァッ!!」
「妾の邪魔をしたなぁ!しおったな!時の女神ぃ!!」
「ち、違う…。これは…私の、独断で…」
「主を持つ中域者が独断じゃと?誰が信じるかぁ!!」
絞られる心臓に嗚咽で呻くヌンターク。
「し、信じてくれぇぇ」
「次の罠は何じゃ。何じゃ!!」
「…こ、黒竜に…献上する。酒瓶と、酒樽を巻き戻した…」
これには俺が叫んだ。
「クソがぁ!!」

腑が煮え返りヌンタークの顔面を踏み付け。
「何してくれてんだ!お前何やったか解ってんのか!
全部なのか。貯蔵されてる物全部なのか!!」
「い、一部だけだ!関わる一部だけだぁ」
ギリセーフ。
「危ねぇ…。帰ったら確認しないと」
「そうね。それは大至急」

レイルの尋問は続く。
「他には無いのかえ」
「そ、それで…最後、です…。過去にも、未来にも…」
答えたヌンタークをそのまま持ち上げ。
「スターレン。少し離れよ」
「ほい」

外野が距離を取ると同時にヌンタークの全身が黒炎に包まれた。
「ぎゃぁぁぁ」
「他には!!」
「な、無い!たす、助けて」
「中域者の分際で嘘を吐くな!!」
「ほ、本当です!信じて、あぁああぁぁ」
「耳障りじゃ。お前は妾の邪魔をした。滅せよ!!」
倍化した黒炎に飲み込まれ。絶叫と共にヌンタークが爛れ崩れ、最後に霧散した。灰も残さず。

「汚いのぉ。ルーナ浜で洗わねば」
「クソ女神の方には何かした?」
「当然じゃろ。眷属を作成する権限を破壊してやった。これで自分で下りて来るしかない。謹慎中にの」
「おー有り難い。カタリデ。謹慎中に神域出るとどうなるの?」
「ちょっと上の介入が有るかもだけど。信者数を無視して最低でも降格処分は確定。要するに神の力を一部失って序列最下位に落っこちる。
水竜が現状の頂点に成るわね。この世界の」

「ふむふむ良好良好。ではフィーネさん。指示を」
「はい。指示とは言っても今日は遅いし。畑作りは明日へスライド。肥料が撒けたらパージェントへスタンさんとピーカー君が戻って醸造庫の確認を大至急。畑は私たちに任せて」
「おけ。ソプランたち拾ってホテルで結果報告会」
「です!」




--------------

報告会と夕食後の晩酌中。

「頑張ってくれたレイルの為に。また何か異世界日本に関わるような料理やスイーツを考案したいと思います。
今浮かんでるのは春に塩漬けにして置いた桜の葉と花片を使った桜餅をそろそろ良い感じなので自宅で作ります。
それ以外で何か無いかな。フィーネさんとカタリデ」
「大半作っちゃったしねぇ。ルーナ両国にも有る物も」
「難しいわね。個人的に好きだったのは…豚まんかな」
「「お!」」

「良いですねぇ。前に似たような物トライしたけど」
「あんまし上手く行かなかったからもう一度やってみよう。豚まん餡まんカレーまんとかとか」
「どんな物じゃそれは」
「それは出来てのお楽しみ。今知りたい?絵でも描くよ」
「や、止めて置こうかの。楽しみが減ってしまう」

「他何も無ければ今日は普通に寝よう。ペッツ以外は皆普通に力使ったし」
「そうね。何だか疲れちゃった。供給しただけでも」

クワンが翼を上げた。
「カタリデ様は眷属とか作ったのですか?勧誘とか今一理解出来なくて悩んでるんです」
「あーそうね。中域者の勧誘は神域の私室内で選定するの。だからここでは無理。
私の場合。その眷属分と勧誘分をこの姿に使って融合したからこれが眷属と言えば眷属。1箇所で待ってるのも暇だし自分で偶には動きたいからこうした」

「成程。眷属に縛りは無いのですか?」
「ん~難しい質問ね。何でも作れるって訳でも無し。
例えば眷属にやらせてみたい事が有ればそれに見合ったイメージで作り出して具現化。それが不可能だったら作成不能で何も出来ないし生まれない。1回限定付きだから完成するまで何度でも挑戦は可能よ」

「ほぉ。益々困りました…。料理以外自分でやれてしまうので。戦わせる仲間?も鳥類従属が有るので微妙」
「クワンティは特殊だからねぇ。空陸海全部行けるし。蔦鞭で何でも掴めちゃうし」
「そうなんです。う~ん…。スターレン様。あたしの絵を描いて頂けませんか?」
「え?上手く行くかな。本人が浮かんでないのに」
「お試しで」
皆の注目を浴びる俺。
「まあ試しならやってみるか」

クワンを小テーブルに鎮座させ。道具を出してサラサラ。
「……ん?」
「んん?」
俺の後ろに居る一同も首を捻った。

「何が出たんです?」
「いや…」
クワンの隣に描かれたのは純白の…。

絵をクワンに向けた。
「白い、スライム?」
「俺にもそう見える。何も浮かんでないから真っ白なのかは不明。レイルは見た事有る?」
「無いのぉ。何じゃこれは。カタリデとロイドは?」
「さっぱりね。全くの未知。他の世界でも見た事無いわ。
純白スライムなんて」
「私もです。色で言う属性は聖寄りのようですが」

「今度スフィンスラーに行った時に挑戦してみます。何も浮べず作成するとどうなるかを」
「勿体無くない?」
「失敗と言うかマスコット的な物だったら。中域者の選定の方で頑張ります」
「そか。フニフニして柔らかそうではあるな」
「ふむ。抱き心地は最高そうね」
「その絵を頂けますか?」
「どぞ」
絵をクワンに進呈。

俺たちの心もフンワリしながら皆でお風呂に入って普通に就寝。




--------------

本日の泊までがホテル滞在期間。

異変は朝から起きた。自分の愚息ではなく。
そっちは毎朝絶好調。はどうでもいい。

「あ…」
俺の声に昨晩の添い寝相手のレイルが起床。
「?おはよ。どうかしたの?」
「おはよ。いや…。白ロープから女神の加護が消えた」
「あら、良かったわね。他も消えてるわよ。分散した力を必死放いて回収してる。自分で動くしか無くなったから」
「成程」
ロープを天井に伸ばして拡散操作してみた。
「まあ使い勝手がそのままならいっか。重要品だけ大狼様に付け直して貰お。何かスッキリした」
「清々したでしょ」
「うん。ありがと」
お礼とお早うのキス返し。

アローマと添い寝していたフィーネも身体を起こして背伸び。
「う~。大狼様用の鮪獲らなきゃ。グーニャ。何匹欲しいですかと聞いて」
「ニャ…。五匹ですニャ」
「畑作り終わったら一緒に行こうね」
「ハイニャ」


お出掛け服に着替えて朝食後の打ち合わせ。
「今朝スタンさんの気付きに因りクソ女神の加護が装備品から消えたと判明。ザマー。
加護を維持するとの盟約破りもこれで2回目。更に謹慎期間が延長。この様子だとペリーニャと杖を見に行く時に降臨が濃厚。相性の悪いレイルさんの不在を狙って。
ボッコボコにしてやるぞ!チャンスが有ればレイルさんの前まで運びます。
重要品目はスタンさんの霊廟と煉獄剣。クワンティのソラリマ位でしょうか。後付け可能かどうかは別に。
明日以降で選定し直し。鮪と一緒に大狼様の元へご相談に持って行こうと思います。
勿論レイルとプレマーレは同行不可にて。

では本日の予定を。
綺麗に成りました南極大陸で畑作りを肥料3種3箇所。
前に相談したようにトマトとコーンの種を植えてみます。
水は魔石で生成。
ピーカー君のハウスの方は如何でしょう」
「バッチリです。砦タイプのような積み上げ中抜け構造にしてみました。凄い事に成るなら上に伸びるのかなと」

「鋭いです。そして有り難う。私もそう思います。何処まで凄いのか大変楽しみです。
ハウスの設置と畑の着手が始まった段階でスタンさんがピーカー君を連れカメノス邸の醸造庫へ確認に戻ります。
アホに時間操作された樽と瓶は私たちが行っても真面に判別出来ないので残りのメンバーは畑作りに集中。
スタンさんは念の為シュルツに同行して貰って下さい。彼女の眼鏡以上の鑑定具は有りません。
序でにここまでの経緯とロープから加護が消えた説明もお願いします」
「ほい」

「他に気になる事。畑ではなく別の用事など有れば」
特に無し。
「皆畑に興味津々。では防寒着に着替え。ここの浜辺からカッ飛びましょう!」


クワンとオーラ戦で抉れ柔らかく解されたポイントに定めコテージを設置。

ピーカー君が排出したパーツを組み上げ。場所を離して設置完了。
加護が消えてもロープは普通に使えた。
ベースの魔力さえ上がっていれば大抵の事は出来る。

名残惜しさを振り切り皆に手を振って自宅前へ転移。

直ぐにシュルツを呼んで貰い自宅リビングでペカトーレから続く結果報告を兼ね経緯を説明。

俺の転生表を見て。
「お兄様が異世界ではなく…。元々こちら側の…」
「そうなんよ。今の自分が有るから一概には文句は言えないけど。それにしてもしつこい。神の力を使ってまで個人の魂引っ張り回すなんて」
「有り得ませんね。でもお兄様。ペリーニャ様をお迎えする時に何とご説明を」

それが大問題なんだと頭を抱えた。
「まあ正直に話すよ。嘘は見抜かれるし。信じては貰えないだろうし。最悪嫌われるかも」
「ん~何とも言えませんね。信じていた物が全て覆る。それを恋愛感情で乗り越えられるのかが」
「その通り」

「私から余計な事を言わないように気を付けます。
加護消失も殆ど使っていませんし。カーネギさんが居て拡散盾も有るので心配は要りません」
「ありがと。これだけは自分の口で言わんとな。
で今からお隣の醸造庫確認しに行くんだけど時間有る?
別件有るなら待つ。明日位までに確認出来ればいいから」
「いえ大丈夫です。潜水艇の結果確認と止めている自走車案件のお話にラフドッグへ明日行く用事が有るだけなのでそちらが最優先です」
「助かります」

本日の担当ファーナも引き連れお隣へ。

ファーナを廊下で待たせ。単独で来てくれたカメノス氏に報告と相談。
「た、樽と瓶の熟成が巻き戻された!?」
「そうなんす。で今超特急で専用樽と瓶を見に来た次第で」

「この後直ぐに行こう。本来未成年者は入れていないが仕方が無い。
しかし…成程あれか」
「何か心当りが」
「何方も商品化も為ず身内だけにしか配布していなかったのに。何処から聞き付けたのかロルーゼの行商が頻りに買わせてくれとここへ何度も来ていた」
「売っては…」
「売る訳が無い。全く別物を渡したら喜んで帰って行った愚かな行商だったよ」
「流石です。助かりました」
テーブル越しに一礼。
「止めてくれ。君との商売を人に口外などするものか。
では行こう。念の為侍女は隣に帰してくれ」
「了解です」

3人で専用庫内を見て回り。シュルツは瓶の製造日の食い違いから割り出し。俺は樽を触診して中身の液体を時間を掛けて鑑定した。

その逆行品の数は何と全体の3分の1…。
「何が一部だ馬鹿野郎」
「三割超えが一部とは…」
「何れも君に持たせようとしていた枠だ。しかしこんなピンポイントで弄れる物なのか」
「それ程の強敵です。この場所に入らなくとも見抜き操作可能な。ですがその術は完全に消え去りました。
と言うか昨日潰した所です。今後も通常警備で問題有りません」
「うむ。兎に角良かった。まだ時間が有るなら隣の庫内も見てくれないか。同じ熟成期の物でこちらと入替えたい」
「喜んで」
「一瓶足りとも見逃しません!」

結果隣は無事。統一され時間の乱れは無かった。
「ふぅーこっちは無事か」
「良かったです」
「控えは取った。後は私に任せてくれ」
「宜しく!」
「お願いします!」
2人で一礼して退出。

上に戻って薬の話とエルラダさんの経過を見て帰宅した。


リビングで引き続きファーナが淹れてくれたお茶をシュルツと嗜んでいると。
「お兄様。肥料を今植えられてるのですよね」
「何故バレたし…」
「先程お兄様がこちらに来られる前にスマホで位置確認をしてました」
「悪い子だ。でも連れてはいけない。ファーナも気になってるだろうけど。ついこないだ騒動が起きたばかりで国外は無理だよ。またお爺ちゃんに怒られるぞ」
「ですよね…」
「我慢致します」

「ちゃんと結果は持ち帰る。どの道検証してここの畑を借りるんだからそれまで我慢」
「「はい」」

柱時計を振り返ると正午前。
「本棟で昼食頂こうかな。午後は最近1人の時間作れてないから防音室に籠ります。
自分の過去を振り返る重要な時間なので邪魔しないように。特にファーナ君」
「…はい。珈琲をお運びする以外は裏庭へ」
「信じます」




--------------

ファーナが立ててくれた珈琲を飲む昼下がりの防音室。
「中々旨いな…」
意外な特技なのかも。

今日は金属弦のギターを弾きボーッとしてみた。

しかし今日はその気分ではなかった。
直ぐに弾くのを止めて窓辺に座り直して珈琲を啜った。
「カタリデさん。これ以上のデカい見落とし有るのかな」
「さあどうでしょう。有るかもだしもう無いかもだし」
「うん…」

趣向を変えて室内を腕組みしながらゆっくり歩いてみた。

「見落とし…見落とし…落とし物…落とした物…。
売った物…。実家で父上から持たされた模造剣は闇市に流しこの王都の闇市で再発見。それを直してメイザー殿下の婚礼式で献上した。
闇市繋がりで単なるお飾り…お飾り?」
「どしたの?」
「いや考え過ぎかな。ラザーリアで売った模造剣を何故ここで掴ませたのかなって」
「気になるなら見に行けば?まだ早い時間だし。
深読みするなら城への進入路とか殿下を操るだとかさ」
「おーあの剣を座標にされたか。前に一度メイザー殿下の成り済ましが突然後宮内に現われてさ…てこれ」
「やばいじゃん」
「なんてこった!?」
「今日はそれよ」
「大至急返却して貰います!」
「さあ行こう」
「あいよ!」

カップと空のポットをキッチンの流しに置いて猛然とお城へダッシュ。

殿下の所在を聞くと後宮。
後宮内のメイザーの前に土下座。
「やっぱりあの献上品の剣を返して下さい!」
「何がどうした急に。説明してくれ」
近くに居たメルシャンも。
「剣がどうされたの?」

2人に事情をご説明。
「ここへの座標に」
「使われた…」
「その可能性が高い」
「確かに襲われた時。誰も居なかった所を後ろから…
あぁ!?あの時剣を飾っていたな」
「あらまぁ」
「返却お願いします!」

何とか無事に返して貰い。
詳しく鑑定すると剣身と鞘に座標と成り得る呪詛が練り込まれていた。

2人に謝罪し帰宅。そしてリビングIN。
テーブルに突っ伏しながら。
「まだまだ有ったわ」
「有るわねぇ。そして続けなさい」
「はい。リラックスの為にも。そして剣はメレディス火山へ投函して貰います…」
「塵箱じゃないんだけどしゃーなしか。お馬鹿が引っ掛かってくれるのを期待して」
「でしたら僕の意見を述べても宜しいでしょうか」
「どうしたんだいピーカー君」
「期待するよりも。いっそ罠にしてしまえば良いと」
「「おぉ!」」
「火口と言っても色々在りました。溶岩流の谷間。
溶岩溜りの真上の隙間。噴口間際の岩場等々。その何れかに仕掛けてしまえば良いのかと」
「成程やるなら徹底的にか。早速クワンを呼び出そう」
「ピーカー君も振り切るように染まっちゃったわね」
「従属せずとも僕の主人はスターレン様ですので」
「有り難う。今夜は嬉しい方で泣きそうです」
「全部が全部褒めてはいない気も…」

急遽南極大陸からクワンを招待。
相談の上。罠の設置場所は溶岩溜りの真上と成りました。




--------------

視力は…。時空結界が破られた後に戻った。
まだ血涙が出続けている。心の中の感情と一緒。

もう遣り直せない。未来にも行けない。

何度遣り直しても。彼は…。
私の手の中には戻らなかった。

異世界に自然転生した彼の魂を姉の手から奪い取っても二度と触れる事は適わなかった。

これが最後。最後の世代が来た。それが今。

でも諦め切れない。何時も後少しの距離だった。
これで最後ならば。全てを投げ打ってでも死力を尽くす。

嘗ての彼の抜け殻を使ってでも。
もう一度だけ人間として彼に触れられたい。

ヌンタークは消え去り。眷属も作れない。
彫像でエリュトマイズを操ろうとしたが弾かれ。その彫像は子供の這い這いで倒され壊れた。

同時に彫像を操る力を失ったのは姉の仕業だろう。
何かの対策品が彼に渡された。悔しいが仕方無い。
これ以上逆らえば全能神にまで伝わってしまう。

残る手段はとても少なくなった。

これが最後の世代。吸血姫が傍に居るのは初めて。
彼女が離れるあの場所ならば…きっと好機は訪れる。




--------------

翌日。11月初日。南極大陸内荒野。

何時もの7人とペッツで3箇所のハウスを見に行くと。
「……」
全員呆然。

3箇所共にハウス内部がジャングル化。
何故こう成るのか。何故こう成ってしまったのか。
神の恩恵とは何か。これなのか…。

植物肥料のハウスに関して言えば足の踏み場も無し。
真上を向いた向日葵。蔦のように足場を埋める枝豆や空豆や緑豆の鞘。奥には剥き出しの馬鈴薯。

ベースのトマトは真っ赤な大きな実。コーンは極太の房が垂れていた。

「フィーネさん…。種を植えたのは1月前でしたっけ…」
「いいえスタンさん…。つい昨日の出来事です…」

「ロイドさん…。これは肥料を広範囲に撒き散らかしたのでしょうか…」
「いいえスターレン…。確かに盛り土だけに混ぜました…」

「レイルさん…。この様な現象をご覧に成った事は…」
「全く…。記憶に有りません…。竜血以上の物が存在するだなんて…」

「カタリデさん…。元農耕の神としてのご意見は…」
「肥料が…。多過ぎた、としか言い様が無いかと…」

「これが…豊穣」

フィーネの肩に乗り呆然とするクワンを地に下ろし。
皆で感謝の祈りを捧げた。あのレイルまでもが。

皆で手分けして大収穫祭を開催。

コテージ内で手を洗い野菜を洗い。そのまま食べられるトマトとコーンを試食した。

皆が絶叫する程の旨味と糖度と瑞々しさ。
トマト大好きなレイルは感動の涙を流した。

落ち着いた所で打ち合わせ。
今日は自分から。
「感動冷め因らぬ只今ですがまずは落ち着きましょう。
肥料は全種適用可。但し植物肥料には不向き。
水を1回与えただけでこの様子。恐らく明日も大収穫が見込まれます。
後2日はこのまま何も加えず収穫を続け。収穫物と結果を謹慎明けのプリタらに伝えてこの場は終了とします。
11月上旬を空けて置いて良かったです。

中旬にはペリーニャと杖を見に行く重要なイベントが控えています。
クソ女神の真実を打ち明けるのは何時か。それは杖を見に行く前と決めました。
傷付けると解ってはいても。万が一クソが当日に降りて来てしまえば傷付く処の騒ぎじゃないからです。

真実を告げるのは俺の役目。誰の手も借りません。
嫁2人は同席しても口出しはご遠慮下さい。

嫌われても構わない。彼女がお別れを選ぶなら甘んじて受け入れます。

しかし何が有ろうと杖は交換して完成させ。彼女に真の意味での自由を与えたい。

とても緊張しています。

その…僅かな間でも。現実逃避をしたいです」
6人は何かに気付いた様子。

「収穫報告完了後。2日間限定。秘密の船上パーティーを開催させて下さい。反対者は挙手を」
誰も挙げない。挙げる素振りも無い。
「では決定で。後はフィーネさんに任せます」

軽い咳払いの後。
「今の決定で浮ついた気持ちに支配されそうですが、そこは堪えまして。
エリュランテはチェックアウト済。なのでこの後暫くハウス内の動向を観察してから自宅へと帰還します。
収穫一時報告は在宅侍女に。
シュルツが居れば彼女にも。2日後の纏めでプリタとその他を呼び完了報告会を開きます。

秘密のパーティーの期間中。前回同様ペッツ4者はクワンティさん主催でスフィンスラーへGO。虹玉風呂は継続設置して居りますので食料は今回の収穫物でも。何か要望が有れば事前に作ります。
クワンティさんは白スライム作成に挑戦などを。
ナーディと模擬をするならここから離れた場所にて。

そして忘れては成らない大狼様との加護のご相談。
本日帰宅後シュルツの工房を借りて選定に入り。明日ご訪問と致します。

明日は収穫のみなので特に問題は無いかと。

他に何か有りますでしょうか皆様」
特に無し。

極寒の地で有りながら。心は既に夏模様。
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