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第256話 ミリータリア内部調査
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勇者隊を城へ招く日の朝。
特別会議室でミリータリア王のクコアマンタは一枚の大きな白銀鱗を傍らに。ワンガスからの報告書を読み上げ。大きな溜息を吐き出した。
「この…上級盾が五百枚無償で提供された。加工すれば鎧も作れる。大きさはこれと均一。
早馬で送られたのは十枚。他はミロアルデの倉庫内。
女神教の軍船にも同量の五百。ミロアルデの冒険者ギルドには百五十枚相当配布。恐らく王都のギルドにも卸すのだと思われる…。
二十mを越える海洋魔獣を二十体。白きロープで組んだ網で一網打尽に釣り上げ日干しで窒息させた。
歴史上の勇者の誰よりも勇猛で豪胆。周囲に出す指示は繊細で的確。誰もが見惚れる御仁で有りながら。戦闘以外の面では温厚で気さくで柔らかく純朴な青年そのもの。
鱗を自分の装備には使わない素振りからすると。既にそれ以上の物を揃えている。
敵対は激しく推奨しない。国は救われるが王家と上層貴族は粛正されると断言する。
後ろ暗い交渉は不能。彼らの怒りを買う事無かれ…。商談は真っ当な物だけをと願う」
報告書を畳み。クコアマンタは頭を抱え。
宰相のサトロアイに問う。
「どう…交渉する。サトロアイ」
「交渉は止めるべきです。正直に。財政難である事を打ち明けお知恵をお借りする形でならば。
鱗は内陸の隣国にも売れます。既に報酬は先払い。迷宮で集めた道具類を差し出しご相談すれば良いと」
「国をここまで荒廃させた恥を晒せか。とてもじゃないが私には出来ぬ。頭の悪い馬鹿息子のモーレントにも後は継がせられん」
言われた本人は抗議。
「ち、父上。それはあんまりです」
「三十を超えた今でも妃を迎えず。未だ女遊びを止められないお前が!美女しか居ない勇者隊の前に出られるとでも思うのか!!」
「ぐっ…。一目見たかったのに…」
「話にも成らん。サトロアイに任せる。何が起きようと責任は問わぬ。良い知恵をお借りしろ。
滞在期は少ないだろう。女性の地位向上と奴隷解放を謳うソミヤルとレイヤルを引き会わせても構わん。この機を逃すな」
「御意に。王妃王女を出すと言う事は女王政権と成っても良いとの認識で」
「良い。私代で終わりにする訳には行かん。急激な変化を招けば最早国は立ち直れまい」
「その任。賜りました」
議場を見渡してサトロアイは続けた。
「エミルズ卿は若手を蔑視する愚かな短気。財務大臣のロメルロイでは役不足。必然的に私でしょうな」
両者が睨み返した。
「宰相の私が適任だと王陛下がご任命したのだぞ。好き放題散財したのは何処の誰だ!何か言い訳と策を持つならこの場で申して見せよ!」
「「…」」
拳で机を叩くと二人は押し黙った。
「エミルズは海の財宝を買い漁り。献上するかと思えば嘗ての闇商へ横流し。ロメルロイも国軍で獲得した迷宮産物を横流ししようとした挙句。枯渇気味だと解っていながら国庫の三割を情婦に貢いだなどと笑い話にも成らぬわ!
今でもその椅子に座って居られるだけでも有り難いと思い陛下の温情に感謝せよ」
「「くっ…」」
「文句が有るなら聞くぞ。恩赦は今回限り。勇者隊が訪れるこの時期の交代人事を避けただけの話だ。隊が次の国へ向かった後でお前たちは解任する。
勇者隊と話をするのも禁ずる。今の内から隠居の準備をして置け。亡命するのは止めんが。過去に勇者隊への敵対行動をしたと世界中にバラ撒いくからその覚悟でな」
「「御意に…」」
--------------
王城王宮で開かれた昼食会に招かれた。
だが昨日は城内に居たエミルズとロメルロイの姿が消え。国王クコアマンタの息子モーレント王子の席も空白。
フィーネが挨拶の後に質問。
「お招きに預かり光栄です。キリータルニア国王クコアマンタ様。
タイラント王国から参りましたフィーネと申します。
隣のスターレンと共に外交役を務め。私は次官補佐であり妻でも有ります。
着席でのご挨拶を用意して下さったのは感謝致しますが王子席と役職席に空白が目立つのは何故でしょうか」
「遙々足を運んで貰った我らも感謝を。
空席に他意は無い。場に合わぬ言動が目立ち不適切だと余が判断し外させた。
我が息子ながら少々頭が悪くてな」
「そうですか…。こちらに非が無いのでしたら結構。共に連れた商人は護衛を付けて城下を回らせて居ります。
何か不都合は御座いますでしょうか」
「特に。城に居ても退屈であろうし。見所は少ないが楽しんで貰えれば良い。
勇者スターレン殿とカタリデ様の御前で述べるのも心苦しいがこの後宰相のサトロアイから政治的な話をさせたい。
時間が無いのは承知の上ではあるが。滞在期間に余力は無いだろうか」
宰相席のサトロアイがお辞儀。
「海で寄贈された白銀鱗に付いてと幾つかご相談を」
「構いません。王都滞在は3日間の予定です。その後に東町のルーランカを見て回ろうかと。
お話は当方とスターレンで聞き。従者と付き人は城下に下げても良いならば」
「それは僥倖。では今の内に勇者殿とカタリデ様へご挨拶を」
キリータルニア側が全員立ち上がったのでこちらも起立。
俺に向いて一同がお辞儀した。
勇者を迎えるって何時もこんなんなの?
「堅苦しいのは結構よ。政治的な話となるなら私は不要。バッグに仕舞って頂戴な」
「はいよ。皆様も頭を上げて下さい。ここからは外交官として対応致します。少々疲れ気味なので引き続き妻が主担当となるのはご了承を」
「大変に助かる。カタリデ様のお声を拝聴出来ただけでも有り難し。
用意させたのは王宮料理ではなく城下の一般料理。主に米粉を使った薄焼きパンと牛肉と野菜炒め。コーンと大豆のスープとライ麦のシフォン。
ライ麦も大豆もルーナ両国には生産量が劣る為にそこだけ少し贅沢をした」
「成程。贅沢は好みでは無いので良いですね。王陛下もこう言った機会でもないと口に為さらないのでは?」
軽快にクコアマンタは笑った。
「痛い所を突かれたな。
余も正直に久々の城下町料理となる。これを楽しめてこその王なのかも知れぬな」
王妃王女がフィーネに熱視線を送る中。
和やかな昼食会は過ぎた。
フィーネが口を拭き拭き。
「私の顔に何か?」
「いえいえ何でも」
「外海の女性方。特に役人の方とは接点が無かったものでつい見惚れていただけですの」
「然様で。後でか明日にでもお話する時間も取れましょう。私的なお話はその時に」
「ええ是非」
「是非とも!」
女性同士は仲良く成るのも早い。
ソプランたちは帰宿。俺たちは居残り別室の応接室へ。
濃い紅茶を頂きながら。
「こちらのお茶は濃い目なのですね」
対面のサトロアイが答える。
「ここで採れる茶葉は熟成させても硬く。湯温を少しでも下げると薄くなってしまうので」
「成程。美味しいです。濃くてスッキリ」
「食後に丁度いいな」
「早速お話に入っても良いでしょうか」
「お聞きします。こちらも答えられる範囲で」
「結構。まずは白銀鱗五百枚の代価に付いて」
後ろの付き人に。
「あれらを全てここへ」
「ハッ!」
暫くの後に台車で運ばれた白い布で包まれた大小4点。
1つ1つテーブルに並べ布を解いて見せた。
「全て勇者隊が来城される頃合いを見て国内の迷宮を当らせ出された品々です。
左から輪樹の輪。密集した木々の間を擦り抜け標的を捉える投擲武器。暗器の円月輪と似ています。
次は降砂の腕輪。足場の着地点を瞬時に砂地に変え着地時の衝撃を抑える物。応用すれば水捌けの良い地層を作り出す事が出来ます。
次は純連の冠。散開した自軍を起動者の元へ集められる宝具で。制限は十名迄。有効半径一km内となります。
一番右手が連鎖の宝珠。設備内の配置を思い通りに変えられる模様替えに最適な道具で。特殊な応用として部品回路を変更する等の使い方も」
めっちゃ探してた奴やん!
思わずフィーネと顔を見合わせ。
「「凄いですね!」」
「よ、喜んで頂けて幸いに。国有迷宮でもこれまで出た事が無い品々が次々に出まして我々も驚きました」
「これを頂けるのですか?鱗と交換で」
サトロアイは軽く咳払い。
「本来で有れば。来城時にこれらを買い取って頂きたかったのです。
ご相談とは他でも無く。当国は今。建国以来最も負債を抱えて火の車。既に国債も発行出来ない状態でして。
そこでお二人に何かお知恵を授けては貰えないかと。王の任命を私が受けました」
「負債とはお幾ら程」
「共通金貨換算で一千万枚程に…」
「その負債分お支払いしましょう!」
「即金で!今直ぐ商業ギルドへ」
「い、一千万を即金ですと!?」
後ろの付き人が腰を抜かした。
「いやぁ世界トップ1位と2位の傘下に居て。寝て起きるだけで馬鹿みたいに振り込まれるんですよ」
「使い切れなくて困ってるんです。はいスタンさん」
フィーネからバトンを受け取り。
「ですが。負債を消しても恒久的な解決には成りません。
こう言う状況に至った原因は大陸閉鎖ですか?」
「輸出が出来なく成ったのは一つの要因です。内陸他国では何処でも作られる米類が全く売れないのが二つ目。
商売や他国との折衝に長けた者が居ないのが三つ目。
敢えなく減反して生産量を減らしました」
「閉鎖は解除されたので今後は輸出可能な稲を育てましょう。もう6月ですが今なら秋の収穫に間に合います。取り敢えず減反で閉鎖した田んぼを再稼働させる。
良いですか?メモは追い付いてますか?」
「は、はい。大丈夫です」
「次の手は安全な西街道の沿道の空き地。管理する人も必要なので宿場から近い場所で育て易い大豆を。地質に適した品種をルーナ両国から。立場が上のデオンからが良いかと思います。
育て方を教えてくれる農家の人を苗と一緒に派遣して貰いましょう」
「な、成程」
メモメモ。
「利潤は半分ですが長い目で見て下さい」
「はい」
「次に。ここの商業ギルド支部に依頼し。レンブラント公国のギルド本部から商業の監督官の派遣を要請して下さい」
「…それは以前。断られたのですが」
「理由は尋ねましたか?」
「教えられないと」
「簡単です。私が口出すべき事ではないですが。
奴隷商の存在と娼館ではない売春宿が原因で。今もまだこの国が闇判定を受けているからです」
「な…何とそれで。しかし、人身売買は既に停止させたのですが」
「それを王が宣言されたと?」
「い、いえ…。国内情報だけで」
「不充分ですね。王の解体宣言が足りません。要は大陸内外への宣伝が足りてないんです。
王と国の信用が落ちている今。広告塔として相応しいのは王妃と王女の2人。女性の頂点が人身売買の廃止と不当な売春宿の完全撲滅を唱えれば下落した信用は一気に取り戻せます」
「はぁ…得心が行きました」
「闇商から脱却出来たギルド本部が何を嫌うか。それは偏に逆戻り。この大陸外では中央大陸のメレディスを除き何の国も開放に向かっています。
元々そんな制度が無いモーランゼア、アッテンハイムなどが良い例です。東大陸にも存在しません。
制度から脱却し。正常化の方向性を謳えば自然とギルド本部から案内が届くでしょう。
今回の遠征で立ち寄るので口添えしても構いません」
「ほ…本当に」
「但し。手順を間違えてはいけません。
1つ。現状の奴隷層を誰一人殺さない事。
1つ。奴隷の扱いを改善し最低賃金を保障する事。
1つ。不当に売春行為をさせていた方々に徴収金を全額返還する事。
以上の項目が達成されない限り。ギルドの評価は上がりませんし。私が口添えする事は出来ません。
ここから先は王族と貴方の仕事です」
「はい」
「昨夕。鳩を南北に飛ばした所。北側にボロを着た集団と鎖に繋がれた女性たちが大勢居る町を見たと念話道具で聞きました」
「…」
「心当りがお有りなら。私共が飛ぶ前に。軍を配備して元締めの粛正を何が何でも食い止めて下さい。
これはこの国の自浄能力が試されているんです。私たちが出てしまうと一時的な対処だと取られ兼ねない。
他の話は明日でも構わないので。それを今直ぐ王に進言して達成して下さい。
他にも隔離されているのならその場所も。良いですね」
「直ちに!それらはスターレン様がお預かりを。忙しくなる最中で紛失してしまっては目も当てられません故」
「上との話が折り合うまでお預かりします。鱗の代金も負債相殺額に含めて下さい。この道具にはそれだけの価値が有ります。
そのお話は明日か明後日。王と王妃王女同席の場で」
「はい!」
道具を回収して退出退城。
「ごめんねスタン。そこまで頭回らなくて」
「慣れだよ慣れ。続けて行けばフィーネなら必ず出来る。俺より頭良いんだからさ」
「政治って難しいねホント…」
--------------
宿に戻ってソプランたちに説明。
「俺の出番また無しかよ。昼食会にも居たラーネッツ、て奴の配下のギトーに。夜の娼館に誘われたんだが」
「ラーネッツが元締めか…。任務は続行で。好みが居ないからラーネッツと話がしたいって逆誘いを」
「おー時間稼ぎか」
「その通り。100km圏内なら日付越えるまでには軍を配備出来る。話引き延ばしてその時間を稼げば」
「出遅れるな」
ロイドとアローマも。
「王都内は私たちが居る限り安全」
「居るだけで粛正が防げるとは」
「勇者の肩書き効果絶大ね」
「物は使い用さ」
ミリータリアの略図上でトロイヤたちを探索。
「後続は予定通りミロアルデの宿に入ったな。明日の朝町の外に出たら拾いに行くか。クワンと誰かで」
「街道以外飛べないもんねぇ。私たち」
「クワッ」
「レイルはまだ買い物中?」
『もう少ししたらここに戻るそうだ』
「早めの夕食で。ソプランの重大任務への出発を見届けますかー」
「ますかー」
「ヤッベ久々の演技緊張して来たぜ」
「頑張りましょう」
「少しお酒で和らげてみては?」
「名案ですロイド様。米酒飲んでから行こう」
双眼鏡2つでソプランの名演技を見守りつつ。
自室に集まり4つの道具を皆で眺めた。
「輪樹の輪はフィーネ。連鎖の宝珠はアッテンハイムの古代樹の杖の間で使おうと探してた物。
その時まではピーカー君の模様替え道具だな。時々俺とシュルツで使うから宜しくね」
「はい!配置変更が楽に成ります」
「純連の冠は誰が持つかが微妙」
「乱戦時に折角分散させたのに強制集合は嫌だね」
「使い処が難しいし消費魔力が高いから俺かフィーネに成るけど今は温存かな。
残る降砂の腕輪を俺かアローマかがまた悩ましい」
「常に鬼人装備ではないので欲しい気はしますが。高所からの着地と言えば圧倒的にスターレン様。
ソプランの大地の叫びとの併用で着地ポイントに大型クッションを設ける事も出来そうですね」
「おー冴えてますねぇアローマさん。発動条件が装備者限定で消費は多くない。反面ゴツゴツ大きくて手放しの小袋には入らないし耐久性も低い。
所有者を考える前にシュルツに専用箱作って貰うか。俺の飛翔の腕輪も小袋から出したいし」
「2つ分位なら古代樹の木片少し使うだけで済むね」
「レイルは何か気になる?」
「いんや。妾は黒虎が気になるのぉ」
「「…まさか」」
カタリデも。
「狩る積もりじゃないでしょうね」
「狩らんて。何処でも呼び出し可能な従魔に出来るやも知れぬし。単独でゴッズを呼び出せるなら毛皮を妾とプレマーレの防具に使えると思っただけじゃ」
「良いお考えです」とプレマーレ。
「ここから見た感じじゃと…。あれは元々キングじゃ。樹海に根付き時を経てエンペラー級に自然進化しておる」
「疑問が一杯だけどまずは話をするだけなんだよな」
「そうじゃ。魔素溜りの型次第で色々出来る。グーニャのように魔素核を内包する事もな」
「ハイニャ」
「まあ任せるよ。どの道皆で行くんだし」
「魔物や魔獣の生態系知らないもんねぇ。私たち」
「ふむ。と言ってる間に」
「気になるソプランは…。おぉラーネッツとギトーを説教し出しましたねー」
「フィーネ様。私にも」
「はいどうぞ」
「北外門から軍部の部隊が走り出したな。いいぞぉ」
「スターレンのを妾に寄越せ」
「ほい」
プレマーレは悩ましく。
「私も見たいのですが…。ロイド様は良いのですか?」
「私はスターレンの目と共有出来るので」
「便利ですねぇ共有視」
「もう少ししたらクワンにソプランへ終了のお知らせ飛んで貰おうかね」
「クワッ!」
米酒を飲みお摘まみを食べながらソプランの勇姿を観戦。
部隊がアークレッドとの中間点を過ぎた頃にクワンを飛ばして撤収。
「あ~口と喉が疲れたぜ。俺も一杯」
「お疲れ。どうぞどうぞ」
「大半見てたと思うが教団組織とは繋がってねえな。
闇商人がフィオグラから来てた頃は一部横流し。奴隷の使い道を尋ねた時。知らない方が身の為だと言われ。怖くなって関係を断ったそうだ」
「ふーん。手掛かり無しか」
「私たちがフィオグラの地下掃除する前の話よね」
「だね」
闇商本部を襲撃した時の様子を皆に説明。
ソプランとアローマは当然驚き。
「序でにやるレベルかよそれ」
「それ以上の地下は無かったのですか?」
「無かった。そこはきっちり。看破カフス手に入れてからは見てない。行ったら確認する」
「研究員ぽい人たちは何人か逃した。医療技術の発展に期待して。
以降ローレライ司教も何も触れなくなったし。行く度に見てたけど4方向の出入り口が埋められてたから再稼働はしてないと思う。人の気配も地下は皆無だった」
「そか。施設がフィオグラだけじゃないとしたら別の場所に集結してるかもな。例えばキリータルニアとか」
「充分有り得るね。ナノモイ氏もその点指摘してたし。ローレライに聞けば詳しく解ると思う」
「この国は関係無さそうですね」
「そりゃあね。大陸の玄関で待ち構えてたら俺シトルリン原本に拍手送るよ。善くぞ逃げなかったな馬鹿共よて」
「大陸東側かのぉ」
「ぽいね。招待案内遅れてるし。未だに届かないのは不自然過ぎる。北部のボルトイエガルは単に興味が無いにしても東部全域は可笑しい」
「何か準備してますねぇ。これ絶対」
その夜はこれにて解散。
翌朝。ミロアルデ南東の森に入った後続2人をクワンと変装アローマでお迎え。王都南西森にご案内。
「ミロアルデの収穫は無かったそうです。数日経ってもまだお祭り騒ぎだそうで」
「おけ。俺たちが騒げば2人も動き易くなるって事で」
北部の様子を2つの双眼鏡で確認。
「あっちも終わったな」
「早かったですねぇ。300対30の戦い」
そらもう一方的な展開。
「当然やね。私兵だけしか動かせず。国は白銀盾の前衛が10騎。早速試したみたいだな」
「ソプランの手柄ね。出遅れが利いてる」
「悪くねえな。俺にも見せろよ」
ソプランとアローマに引き継ぎ。
「ほー。ラーネッツとギトー自ら出陣してたか」
「解り易くて助かります」
レイルとプレマーレも双眼鏡を受け取り唸った。
他の方面に動きは無いので奴隷はアークレッドに固められていた様子。
--------------
ロイド以外で再び昼食会に招かれ。
クコアマンタの報告。
「奴隷層の管理はラーネッツに任せていたので解り易く解決も早い。蜥蜴の尻尾切りのように見られるが…。
そう成らぬよう妃と娘に全権を預ける」
母娘共に礼。メインはフィーネさん。
「進言を聞いて頂けたようで何よりです」
「うむ。あれが在る所為で商業ギルドの評価が下がったままだったとは夢にも。…違うな。薄々とは感じていたのに手を打たなかったのは余の落ち度。この反省は後日の正式発表に変える。
ラーネッツらの簡易聴取でも既に余罪が山の如く。税金を誤魔化す処か。徴収金を全部懐に入れていたとは。いったい何処を見ていたのやら。
それはそうとラーネッツはソプラン殿にも昨夜迷惑を掛けたそうだな」
「いえ大した事では。ギトーも同じく。自分や主を妻が居る傍で女性で釣ろうなど。どれ程危険な行為をしているのかと丁寧に説明したのですが全く響いて居らず。
完全に女性を性処理の道具としか見ていない。救い様も無いまま敢えなく説得を断念致しました。
二度とあの様な俗物を役職席に座らせぬよう。充分にお気を付けをば」
「胸も耳も痛き言葉だ。腹に刻んで対処する」
対岸2人の女性も手を組んで感涙。
今日はソプランたちも後ろに控え。応接室で昨日の続き。
「昨日の話の続きをする前に1つ。
国債が発行出来ない。商業ギルドからの融資が止められた時点で何故原因を探ろうとは為さらなかったのか。理由をお聞かせ願えませんでしょうか」
クコアマンタの謝罪。
「余の確認不足が全て。昨日から空白にしている財務大臣のロメルロイに国庫を任せてしまったからだ。多少は有るのだろうと裏帳簿を見ずに居たらこの有様だった」
「陛下は御人が宜しい様で。もう少しだけ妃であるソミヤル様の言葉も耳に入れると良いかと思います」
「う、うむ…。そこも反省点だな」
フィーネが道具4点を机上に並べ。
「今後のお話もサトロアイ殿で」
「はい。引き続き私めが」
「了解しました。王と王家方の同席を願ったのは他でも有りません。
国有迷宮の部分解除。又は解放を要請致します」
「「な…」」
言葉を失ったのは王とサトロアイ。
「理由は幾つか。
1つ。この4点に対し。商業ギルドを通じて金1千万を私共が支払ってしまう為。
冒険者ギルドから猛抗議が来ます。
1つ。冒険者の要求を撥ね除け。また出るだろうと国有化を続ければ冒険者ギルド員は王都から撤収を始め。城下や近隣町の治安が著しく低下。街道には野盗が増加。
国の兵だけでこれに対処しなくては成らない。
1つ。私共以外でこれらに高額を払う者は居ません。偶々探していた物と合致したと言うだけ。同じ物が出ても二度と同じ額は支払いません。
1つ。国と冒険者の混乱を避ける上で。
これらを担保とした今回限りの特別融資との旨を商業ギルドに申請します。
1つ。昨日スターレンから進言した農地再開拓案は時間が掛かる故。新たな財源として国有迷宮に入る定額の入場料を冒険者ギルドと締結。それを商業にも登録。
継続的な収入源と治安向上の両取りです。
兵士を無駄死にさせるより。迷宮の管理者を置き。地上の治安維持活動に向けられた方が断然良い。
兵の生活や士気向上にも繋がります。現状これ以上の初期恒久対策案は無いと考えますが如何でしょうか。
王陛下。宰相殿」
「む、むぅ…。一利ではなく百利有るな」
「疑問に思った自分が恥ずかしいです…」
「更に輸出品目に付いて。玄米の状態では中央大陸までは届きません故。
南西のギリングスやサンタギーナへ田園開発の売り込みを掛けましょう」
「売り込み…」
「暗所で長期保存の利く米黒酢、米酒と一緒に海越えする行商に依頼し。その美味しさや素晴らしさを広めて貰うのです。
行き成り全出ししては平民の暮らしが激変してしまうので少しずつ商業ギルドの知恵を借りながら着実に」
「成程」
「これで初期から中長期の財源が見込めます。この上に新たな作物や加工品を加えて行けば長期に発展。長い目で見ればペカトーレまで波及します」
「…」
4人がメモを取り既に言葉も無い。
「まだ有ります。異国での農地開発に携わる人材の派遣料や教育料。それらを運ぶ商船や客船などの共同開発事業の展開。
護衛船以外武器などもう不要。南西と経済的に深く結び付けば永続的な和平と正常な国交が結べます。
加えて大陸南西端に港を持つルーナデオンと商船や漁船の技術提携を結べば…どう成りますかね?」
「陸路だけでなく海路も広がり両国が活性化します!」
「良い事ばかりでは有りません。ルーナリオン、ペイルロンド、レンブラント。北部のボルトイエガルとの調整を怠ると経済摩擦が起き。
新たな領土戦争の火種とも成り得ます。
その点は重々念頭に置き。南東大陸中央から西半分の調定国家ミリータリアの重責をお忘れ無きよう願います」
対面4人が拍手。フィーネとも握手。
「私からは以上です。スタンは何か?」
「完璧です」
やっぱり出来る子です家の自慢の嫁は。
「では。商業ギルド、冒険者ギルドの支部役員を城へ招き調整と調印式を執り行いましょう。タイラントの外交官2人が見届け人と成ります。出来れば本日中に」
「直ぐに手配を致します!」
場を会議室に変え。現行の役職者も立ち会いの元。無事に各部との調印式を締結。
女子4人はそのまま別室でお茶会。
俺とソプランは冒険者ギルド役員と一緒にギルド支部へ行き白銀鱗を200枚進呈。
「これが白銀鱗…。初めて見ました」
「勘違いして海に潜るなよ」
「しませんし出来ませんよ。巨大海洋魔獣なんて海上で戦えませんし。そんな芸当はスターレン様だけです」
「打撃耐久性はそれなり。過信しないようベテランと若手に配分良く渡して。ルーランカの支部にも卸すけど。必要最小限の数出させるように連絡しといて」
「承知しました」
「ミリータリアの枚数はこの王都支部で管理する事。隣国で冒険者が持ってるのを見掛けたら」
「お前と両方張っ倒すぞ」
「一枚残らず徹底管理します!」
ギルド職員とギルド内に居た冒険者隊員たちと少しお茶をして帰宿。
女性隊員も数名居たがむさ苦しいのは避けられなかった。
--------------
案の定王都タリルダリアもお祭り騒ぎ。
一晩で元締め役員を炙り出し。説教した上に奴隷層と不法売春宿を解体させたとか…。
「有り得んな…」
「有り得ねー。もう今までの概念は捨てよう。間違い無く世界を平和に導く勇者様だ」
トロイヤも両手を挙げた。
その遣り取りが聞こえたのか。二軒目の酒場で上機嫌な酔っ払いが席に寄って来た。
「お前ら勇者様見た事あんのか。ヒック…」
「夕方に人集り連れて冒険者ギルド入るとこを見ただけさ」
「俺らも一ファンだ。一度で良いからお話してみてえもんだぜ」
「だよなー。俺は城へも出入りする専属行商なのによぉ。
ずっと上に居るから姿も見えやしねえんだ。責めて後ろ姿だけでも拝みてえよ」
俺たちはその御仁の密偵なんだが…。
「気が合うな。連れが居るなら一緒に飲もう」
「商品捌いて小金持ちだから奢るぜ」
「おー気前が良いねぇ兄ちゃんら。折角だから健全な方の女の子が居る店で飲み直そうぜ。仕事仲間紹介してやるよ」
「いいねぇ」
「乗った乗った。ちょっと良い酒飲みたかったんだ」
高級飲み屋に連れられて。
大陸内やミリータリア内の行商苦労話を聞いたり。自分たちは南西から来た食糧調査員だと名乗った。
「いいよなぁ南西。この国も変わるかなぁ」
「変わるだろ。勇者隊が通り過ぎた国は全部生まれ変わって平和に成ってるし」
「だよな。救国の英雄。タイラントの役人。偉大な冒険者で果ては勇者様だ。もう出来ない事は何も無い」
「だといいが…」
「何だよ急に暗い顔して。奴隷以外に問題でもあんのか」
別の男も暗い顔。
「実はな。ここだけの話。今回の件で上層役員が三人首切りになって。一人は未定。
一人はエミルズって言う傲慢貴族の後任でヌートルヤムて真面な優等生貴族議員が座るんだが。
奴隷の元締めやってたラーネッツの後釜がよ」
「弟のガーネッツて宝石に目が無い盆暗でよぉ」
行き成りのヒット。思わずトロイヤと目を合わせた。
「功績はまあまあなんだがな。そいつも兄貴に似て金に汚い奴なんよ」
「なんであんな奴を王様は選ぶんだろうなって。皆不思議に思ってる」
「へぇまだそんな奴居るんだな」
「何処の国でも一人は居るよなぁ。ここは二人だったみたいだが」
接客の女性も。
「私や友人もそいつに押し倒された口で…。思い出すだけでも寒気がする。この国が良い方向に修正されても元に戻らないか心配で心配で」
「まあ俺たちには無縁の話だし。幾らでも愚痴聞いてやるよ」
「店出たら忘れる。取り敢えず今日の善き日に乾杯だ」
「そうだな。そうしよう!」
「折角の酒が不味くなる。忘れよう。勇者隊ならきっと後任人事も見てくれる!」
「頼り過ぎですが。淡い期待を胸に」
五人の出会いに細やかな祝杯を高級米酒で捧げた。
酒臭いのを多少は抜いて宿の部屋からロロシュ邸に飛んだ。
--------------
夜中にシュルツから通話。
まだ全員が自室に居た頃に丁度。
「どした?緊急?」
「お兄様のご予定次第では緊急です。詳しくは後続の二人から」
あ、トロイヤたちがそっちに行ったんだ。
トロイヤから。
「偶々城へ出入りする専属行商と飲む機会に恵まれて」
「今回首切りに合った上層三人の後任人事の話が聞けました。その中に奴隷の元締めラーネッツの後任に。
弟のガーネッツが入ると」
「ガーネッツ!?」
「標的とは違うようですが。宝石に目が無く金に汚く。女の手癖も悪い人物だと」
「飲み屋の女性も被害を受けたらしく。どうしてそんな人間が後任なのかと皆が不安がっていました。スターレン様の余力が有るなら後任人事にも目を向けて貰えないでしょうか」
「解った。知らせてくれて有り難う。丁度明日まで滞在だったから接触してみるよ」
「良かった」
「では俺たちはこれで」
通話を終了。
「後任人事かぁ」
「面倒を見るなら最後まで、ね」
「三下の俺の言葉は流したのか。あの王様」
「人を見る目無さそうだから。単に気付いてな…。いやでも弟は流石に無いな」
アローマとロイドも。
「何か別な理由が有るのかも知れませんね」
「弱みを握られているとか」
レイルがバッグから数個の宝石を取出し。
「宝石好きなのじゃろ。なら…」
大粒の深紅ガーネットを握り絞め。
「これを混ぜて買い取らせよ。金欲や性欲を削ぎ落とす呪いを掛けた。手にした瞬間にやる気を無くして自分から放り出すじゃろ。何もかも」
「怖い事考えるねぇレイルさんは」
「他に一日で手を打てるなら良いが。何度もここへ足を運ぶのは嫌じゃぞ」
「有り難く頂戴します」
小さな麻袋に小分けしてフィーネが受け取った。
「こう言う使い方も有るのね。でも困ったな」
「何が?」
「私色仕掛けなんて使った事無いんですが」
「普通に俺から話すよ。趣味聞いて売れなくて困ってる石が有るってさ」
「じゃあそっちは任せて。私は後任人事の話聞く」
「おけ」
袋は俺の手元に。
「折角明日はゆっくり買い物出来ると思ったのにぃ」
「買い物は他に任せて。帰りに城に寄贈された高級酒土産に貰おう。プレマーレもお待ち兼ねだし」
「助かります!城下ではあのウィスキーが売ってなくて。バナナは適度に仕入れたのですが」
「しゃーないか。外交仕事の一環だし。2本貰って1本明日の夜に開けちゃおー」
--------------
勢い良く4人で昼食会に乗り込んだ。のだが…。
既にラーネッツの空席にはガーネッツが座っていた。
兄弟良く似てる。容姿も多分中身も。
エミルズ席には新顔のヌートルヤム。
財務大臣の席には何とレイヤル王女が。
話を聞く前に空白は埋められていた。
食後に配席表を見た嫁がキレ気味に。
「失礼ながら王陛下」
「な、何だ」
「次の町へ行く前に。後任人事を示されたのは大変に結構な事です」
「うむ。適任者を据えた積もりなのだが」
この王様天然!?
「…適任者?ラーネッツの弟殿が?」
睨まれたガーネッツが挙動不審。
「私が…何か?」
「血縁だからと切り捨ては為ぬ。ラーネッツとは別家を設け独立した身。政治手腕もまずまず。問題か?」
「も…問題?人材不足なら致し方有りませんが。当国や今まで訪れた国々では。臨時の人事で後任に近しい者を置く事は有り得ません。
例えば。私共を迎えた客船支配人のワンガス殿では駄目だったのでしょうか。
礼節は正しく。話術も繊細。博学でミリータリアの内状と南西ギリングスにも詳しく。両国を繋ぐ顔役として最適者だと思われますが」
「おぉ!?盲点だった。確かに彼なら。そして二人が認める者ならば誰も異論は唱えまい。
ガーネッツ。今直ぐ荷を纏めて帰れ」
この人天然だ!
「え!?そ、そんな…。折角役職に成れたのに」
それはそう。
フィーネに目線を送り選手交代。
「クコアマンタ王陛下。不躾ですがそれは些か早急。
ガーネッツ殿にも生活が有ります。貴族家を維持するにも金が掛かりましょう。
しかし初日にして退職では退職金も発生しないでしょうし。ここは1つ。昨日の相殺金にこちらを付け加えまして」
手袋をして5色の宝石をテーブルに並べた。
その豪華さに場が響めいた。
「各地の迷宮で手に入れたは良いのですが。価値が有り過ぎて中々買い手が付かなかった宝石類。
左からイエローダイヤ。ブルーサファイア。ガーネット。
白ダイヤ。珍しい配色のキャッツアイ。
ガーネッツ殿の趣味と合うなら退職金代わりにこれらを進呈致しましょう」
「助かる。余も欲しい位だ。これで良いかガーネッツ」
「頂きます!昔から自分の名前の由来でもあるガーネットに特に目が無く。その様な大粒はこれまで見た事も。
有り難く頂戴し即座に退城致します!」
ちょっと可哀想になったが。こいつは罪無き女性を襲った悪い奴。同情はしまい。
ガーネッツは5個の袋を胸に抱えてダッシュで逃げた。
「彼も又金に目が眩む欲深で浅ましい男。王陛下は人を見る目が全く無いと進言致します」
「む…」
「人選は裏を念入りに調べた上で。王妃王女様や宰相殿の意見も取り入れ、性別問わずに!お決めに為られては如何かと」
「そ、そうしよう。そうすべきだった。反省が多いな」
食後の紅茶を頂き。茶葉と高級ウィスキーを3本貰ってそそくさと退城した。1本は王の謝罪でオマケ追加。
クコアマンタ王の天然振りに若干不安を覚えたが。息子を出さなかった冷静さと配下を断罪出来る柔軟性。近場の人は堅実な人が揃っていたので、これ以上は手を加えず王都タリルダリアを立ち去った。
特別会議室でミリータリア王のクコアマンタは一枚の大きな白銀鱗を傍らに。ワンガスからの報告書を読み上げ。大きな溜息を吐き出した。
「この…上級盾が五百枚無償で提供された。加工すれば鎧も作れる。大きさはこれと均一。
早馬で送られたのは十枚。他はミロアルデの倉庫内。
女神教の軍船にも同量の五百。ミロアルデの冒険者ギルドには百五十枚相当配布。恐らく王都のギルドにも卸すのだと思われる…。
二十mを越える海洋魔獣を二十体。白きロープで組んだ網で一網打尽に釣り上げ日干しで窒息させた。
歴史上の勇者の誰よりも勇猛で豪胆。周囲に出す指示は繊細で的確。誰もが見惚れる御仁で有りながら。戦闘以外の面では温厚で気さくで柔らかく純朴な青年そのもの。
鱗を自分の装備には使わない素振りからすると。既にそれ以上の物を揃えている。
敵対は激しく推奨しない。国は救われるが王家と上層貴族は粛正されると断言する。
後ろ暗い交渉は不能。彼らの怒りを買う事無かれ…。商談は真っ当な物だけをと願う」
報告書を畳み。クコアマンタは頭を抱え。
宰相のサトロアイに問う。
「どう…交渉する。サトロアイ」
「交渉は止めるべきです。正直に。財政難である事を打ち明けお知恵をお借りする形でならば。
鱗は内陸の隣国にも売れます。既に報酬は先払い。迷宮で集めた道具類を差し出しご相談すれば良いと」
「国をここまで荒廃させた恥を晒せか。とてもじゃないが私には出来ぬ。頭の悪い馬鹿息子のモーレントにも後は継がせられん」
言われた本人は抗議。
「ち、父上。それはあんまりです」
「三十を超えた今でも妃を迎えず。未だ女遊びを止められないお前が!美女しか居ない勇者隊の前に出られるとでも思うのか!!」
「ぐっ…。一目見たかったのに…」
「話にも成らん。サトロアイに任せる。何が起きようと責任は問わぬ。良い知恵をお借りしろ。
滞在期は少ないだろう。女性の地位向上と奴隷解放を謳うソミヤルとレイヤルを引き会わせても構わん。この機を逃すな」
「御意に。王妃王女を出すと言う事は女王政権と成っても良いとの認識で」
「良い。私代で終わりにする訳には行かん。急激な変化を招けば最早国は立ち直れまい」
「その任。賜りました」
議場を見渡してサトロアイは続けた。
「エミルズ卿は若手を蔑視する愚かな短気。財務大臣のロメルロイでは役不足。必然的に私でしょうな」
両者が睨み返した。
「宰相の私が適任だと王陛下がご任命したのだぞ。好き放題散財したのは何処の誰だ!何か言い訳と策を持つならこの場で申して見せよ!」
「「…」」
拳で机を叩くと二人は押し黙った。
「エミルズは海の財宝を買い漁り。献上するかと思えば嘗ての闇商へ横流し。ロメルロイも国軍で獲得した迷宮産物を横流ししようとした挙句。枯渇気味だと解っていながら国庫の三割を情婦に貢いだなどと笑い話にも成らぬわ!
今でもその椅子に座って居られるだけでも有り難いと思い陛下の温情に感謝せよ」
「「くっ…」」
「文句が有るなら聞くぞ。恩赦は今回限り。勇者隊が訪れるこの時期の交代人事を避けただけの話だ。隊が次の国へ向かった後でお前たちは解任する。
勇者隊と話をするのも禁ずる。今の内から隠居の準備をして置け。亡命するのは止めんが。過去に勇者隊への敵対行動をしたと世界中にバラ撒いくからその覚悟でな」
「「御意に…」」
--------------
王城王宮で開かれた昼食会に招かれた。
だが昨日は城内に居たエミルズとロメルロイの姿が消え。国王クコアマンタの息子モーレント王子の席も空白。
フィーネが挨拶の後に質問。
「お招きに預かり光栄です。キリータルニア国王クコアマンタ様。
タイラント王国から参りましたフィーネと申します。
隣のスターレンと共に外交役を務め。私は次官補佐であり妻でも有ります。
着席でのご挨拶を用意して下さったのは感謝致しますが王子席と役職席に空白が目立つのは何故でしょうか」
「遙々足を運んで貰った我らも感謝を。
空席に他意は無い。場に合わぬ言動が目立ち不適切だと余が判断し外させた。
我が息子ながら少々頭が悪くてな」
「そうですか…。こちらに非が無いのでしたら結構。共に連れた商人は護衛を付けて城下を回らせて居ります。
何か不都合は御座いますでしょうか」
「特に。城に居ても退屈であろうし。見所は少ないが楽しんで貰えれば良い。
勇者スターレン殿とカタリデ様の御前で述べるのも心苦しいがこの後宰相のサトロアイから政治的な話をさせたい。
時間が無いのは承知の上ではあるが。滞在期間に余力は無いだろうか」
宰相席のサトロアイがお辞儀。
「海で寄贈された白銀鱗に付いてと幾つかご相談を」
「構いません。王都滞在は3日間の予定です。その後に東町のルーランカを見て回ろうかと。
お話は当方とスターレンで聞き。従者と付き人は城下に下げても良いならば」
「それは僥倖。では今の内に勇者殿とカタリデ様へご挨拶を」
キリータルニア側が全員立ち上がったのでこちらも起立。
俺に向いて一同がお辞儀した。
勇者を迎えるって何時もこんなんなの?
「堅苦しいのは結構よ。政治的な話となるなら私は不要。バッグに仕舞って頂戴な」
「はいよ。皆様も頭を上げて下さい。ここからは外交官として対応致します。少々疲れ気味なので引き続き妻が主担当となるのはご了承を」
「大変に助かる。カタリデ様のお声を拝聴出来ただけでも有り難し。
用意させたのは王宮料理ではなく城下の一般料理。主に米粉を使った薄焼きパンと牛肉と野菜炒め。コーンと大豆のスープとライ麦のシフォン。
ライ麦も大豆もルーナ両国には生産量が劣る為にそこだけ少し贅沢をした」
「成程。贅沢は好みでは無いので良いですね。王陛下もこう言った機会でもないと口に為さらないのでは?」
軽快にクコアマンタは笑った。
「痛い所を突かれたな。
余も正直に久々の城下町料理となる。これを楽しめてこその王なのかも知れぬな」
王妃王女がフィーネに熱視線を送る中。
和やかな昼食会は過ぎた。
フィーネが口を拭き拭き。
「私の顔に何か?」
「いえいえ何でも」
「外海の女性方。特に役人の方とは接点が無かったものでつい見惚れていただけですの」
「然様で。後でか明日にでもお話する時間も取れましょう。私的なお話はその時に」
「ええ是非」
「是非とも!」
女性同士は仲良く成るのも早い。
ソプランたちは帰宿。俺たちは居残り別室の応接室へ。
濃い紅茶を頂きながら。
「こちらのお茶は濃い目なのですね」
対面のサトロアイが答える。
「ここで採れる茶葉は熟成させても硬く。湯温を少しでも下げると薄くなってしまうので」
「成程。美味しいです。濃くてスッキリ」
「食後に丁度いいな」
「早速お話に入っても良いでしょうか」
「お聞きします。こちらも答えられる範囲で」
「結構。まずは白銀鱗五百枚の代価に付いて」
後ろの付き人に。
「あれらを全てここへ」
「ハッ!」
暫くの後に台車で運ばれた白い布で包まれた大小4点。
1つ1つテーブルに並べ布を解いて見せた。
「全て勇者隊が来城される頃合いを見て国内の迷宮を当らせ出された品々です。
左から輪樹の輪。密集した木々の間を擦り抜け標的を捉える投擲武器。暗器の円月輪と似ています。
次は降砂の腕輪。足場の着地点を瞬時に砂地に変え着地時の衝撃を抑える物。応用すれば水捌けの良い地層を作り出す事が出来ます。
次は純連の冠。散開した自軍を起動者の元へ集められる宝具で。制限は十名迄。有効半径一km内となります。
一番右手が連鎖の宝珠。設備内の配置を思い通りに変えられる模様替えに最適な道具で。特殊な応用として部品回路を変更する等の使い方も」
めっちゃ探してた奴やん!
思わずフィーネと顔を見合わせ。
「「凄いですね!」」
「よ、喜んで頂けて幸いに。国有迷宮でもこれまで出た事が無い品々が次々に出まして我々も驚きました」
「これを頂けるのですか?鱗と交換で」
サトロアイは軽く咳払い。
「本来で有れば。来城時にこれらを買い取って頂きたかったのです。
ご相談とは他でも無く。当国は今。建国以来最も負債を抱えて火の車。既に国債も発行出来ない状態でして。
そこでお二人に何かお知恵を授けては貰えないかと。王の任命を私が受けました」
「負債とはお幾ら程」
「共通金貨換算で一千万枚程に…」
「その負債分お支払いしましょう!」
「即金で!今直ぐ商業ギルドへ」
「い、一千万を即金ですと!?」
後ろの付き人が腰を抜かした。
「いやぁ世界トップ1位と2位の傘下に居て。寝て起きるだけで馬鹿みたいに振り込まれるんですよ」
「使い切れなくて困ってるんです。はいスタンさん」
フィーネからバトンを受け取り。
「ですが。負債を消しても恒久的な解決には成りません。
こう言う状況に至った原因は大陸閉鎖ですか?」
「輸出が出来なく成ったのは一つの要因です。内陸他国では何処でも作られる米類が全く売れないのが二つ目。
商売や他国との折衝に長けた者が居ないのが三つ目。
敢えなく減反して生産量を減らしました」
「閉鎖は解除されたので今後は輸出可能な稲を育てましょう。もう6月ですが今なら秋の収穫に間に合います。取り敢えず減反で閉鎖した田んぼを再稼働させる。
良いですか?メモは追い付いてますか?」
「は、はい。大丈夫です」
「次の手は安全な西街道の沿道の空き地。管理する人も必要なので宿場から近い場所で育て易い大豆を。地質に適した品種をルーナ両国から。立場が上のデオンからが良いかと思います。
育て方を教えてくれる農家の人を苗と一緒に派遣して貰いましょう」
「な、成程」
メモメモ。
「利潤は半分ですが長い目で見て下さい」
「はい」
「次に。ここの商業ギルド支部に依頼し。レンブラント公国のギルド本部から商業の監督官の派遣を要請して下さい」
「…それは以前。断られたのですが」
「理由は尋ねましたか?」
「教えられないと」
「簡単です。私が口出すべき事ではないですが。
奴隷商の存在と娼館ではない売春宿が原因で。今もまだこの国が闇判定を受けているからです」
「な…何とそれで。しかし、人身売買は既に停止させたのですが」
「それを王が宣言されたと?」
「い、いえ…。国内情報だけで」
「不充分ですね。王の解体宣言が足りません。要は大陸内外への宣伝が足りてないんです。
王と国の信用が落ちている今。広告塔として相応しいのは王妃と王女の2人。女性の頂点が人身売買の廃止と不当な売春宿の完全撲滅を唱えれば下落した信用は一気に取り戻せます」
「はぁ…得心が行きました」
「闇商から脱却出来たギルド本部が何を嫌うか。それは偏に逆戻り。この大陸外では中央大陸のメレディスを除き何の国も開放に向かっています。
元々そんな制度が無いモーランゼア、アッテンハイムなどが良い例です。東大陸にも存在しません。
制度から脱却し。正常化の方向性を謳えば自然とギルド本部から案内が届くでしょう。
今回の遠征で立ち寄るので口添えしても構いません」
「ほ…本当に」
「但し。手順を間違えてはいけません。
1つ。現状の奴隷層を誰一人殺さない事。
1つ。奴隷の扱いを改善し最低賃金を保障する事。
1つ。不当に売春行為をさせていた方々に徴収金を全額返還する事。
以上の項目が達成されない限り。ギルドの評価は上がりませんし。私が口添えする事は出来ません。
ここから先は王族と貴方の仕事です」
「はい」
「昨夕。鳩を南北に飛ばした所。北側にボロを着た集団と鎖に繋がれた女性たちが大勢居る町を見たと念話道具で聞きました」
「…」
「心当りがお有りなら。私共が飛ぶ前に。軍を配備して元締めの粛正を何が何でも食い止めて下さい。
これはこの国の自浄能力が試されているんです。私たちが出てしまうと一時的な対処だと取られ兼ねない。
他の話は明日でも構わないので。それを今直ぐ王に進言して達成して下さい。
他にも隔離されているのならその場所も。良いですね」
「直ちに!それらはスターレン様がお預かりを。忙しくなる最中で紛失してしまっては目も当てられません故」
「上との話が折り合うまでお預かりします。鱗の代金も負債相殺額に含めて下さい。この道具にはそれだけの価値が有ります。
そのお話は明日か明後日。王と王妃王女同席の場で」
「はい!」
道具を回収して退出退城。
「ごめんねスタン。そこまで頭回らなくて」
「慣れだよ慣れ。続けて行けばフィーネなら必ず出来る。俺より頭良いんだからさ」
「政治って難しいねホント…」
--------------
宿に戻ってソプランたちに説明。
「俺の出番また無しかよ。昼食会にも居たラーネッツ、て奴の配下のギトーに。夜の娼館に誘われたんだが」
「ラーネッツが元締めか…。任務は続行で。好みが居ないからラーネッツと話がしたいって逆誘いを」
「おー時間稼ぎか」
「その通り。100km圏内なら日付越えるまでには軍を配備出来る。話引き延ばしてその時間を稼げば」
「出遅れるな」
ロイドとアローマも。
「王都内は私たちが居る限り安全」
「居るだけで粛正が防げるとは」
「勇者の肩書き効果絶大ね」
「物は使い用さ」
ミリータリアの略図上でトロイヤたちを探索。
「後続は予定通りミロアルデの宿に入ったな。明日の朝町の外に出たら拾いに行くか。クワンと誰かで」
「街道以外飛べないもんねぇ。私たち」
「クワッ」
「レイルはまだ買い物中?」
『もう少ししたらここに戻るそうだ』
「早めの夕食で。ソプランの重大任務への出発を見届けますかー」
「ますかー」
「ヤッベ久々の演技緊張して来たぜ」
「頑張りましょう」
「少しお酒で和らげてみては?」
「名案ですロイド様。米酒飲んでから行こう」
双眼鏡2つでソプランの名演技を見守りつつ。
自室に集まり4つの道具を皆で眺めた。
「輪樹の輪はフィーネ。連鎖の宝珠はアッテンハイムの古代樹の杖の間で使おうと探してた物。
その時まではピーカー君の模様替え道具だな。時々俺とシュルツで使うから宜しくね」
「はい!配置変更が楽に成ります」
「純連の冠は誰が持つかが微妙」
「乱戦時に折角分散させたのに強制集合は嫌だね」
「使い処が難しいし消費魔力が高いから俺かフィーネに成るけど今は温存かな。
残る降砂の腕輪を俺かアローマかがまた悩ましい」
「常に鬼人装備ではないので欲しい気はしますが。高所からの着地と言えば圧倒的にスターレン様。
ソプランの大地の叫びとの併用で着地ポイントに大型クッションを設ける事も出来そうですね」
「おー冴えてますねぇアローマさん。発動条件が装備者限定で消費は多くない。反面ゴツゴツ大きくて手放しの小袋には入らないし耐久性も低い。
所有者を考える前にシュルツに専用箱作って貰うか。俺の飛翔の腕輪も小袋から出したいし」
「2つ分位なら古代樹の木片少し使うだけで済むね」
「レイルは何か気になる?」
「いんや。妾は黒虎が気になるのぉ」
「「…まさか」」
カタリデも。
「狩る積もりじゃないでしょうね」
「狩らんて。何処でも呼び出し可能な従魔に出来るやも知れぬし。単独でゴッズを呼び出せるなら毛皮を妾とプレマーレの防具に使えると思っただけじゃ」
「良いお考えです」とプレマーレ。
「ここから見た感じじゃと…。あれは元々キングじゃ。樹海に根付き時を経てエンペラー級に自然進化しておる」
「疑問が一杯だけどまずは話をするだけなんだよな」
「そうじゃ。魔素溜りの型次第で色々出来る。グーニャのように魔素核を内包する事もな」
「ハイニャ」
「まあ任せるよ。どの道皆で行くんだし」
「魔物や魔獣の生態系知らないもんねぇ。私たち」
「ふむ。と言ってる間に」
「気になるソプランは…。おぉラーネッツとギトーを説教し出しましたねー」
「フィーネ様。私にも」
「はいどうぞ」
「北外門から軍部の部隊が走り出したな。いいぞぉ」
「スターレンのを妾に寄越せ」
「ほい」
プレマーレは悩ましく。
「私も見たいのですが…。ロイド様は良いのですか?」
「私はスターレンの目と共有出来るので」
「便利ですねぇ共有視」
「もう少ししたらクワンにソプランへ終了のお知らせ飛んで貰おうかね」
「クワッ!」
米酒を飲みお摘まみを食べながらソプランの勇姿を観戦。
部隊がアークレッドとの中間点を過ぎた頃にクワンを飛ばして撤収。
「あ~口と喉が疲れたぜ。俺も一杯」
「お疲れ。どうぞどうぞ」
「大半見てたと思うが教団組織とは繋がってねえな。
闇商人がフィオグラから来てた頃は一部横流し。奴隷の使い道を尋ねた時。知らない方が身の為だと言われ。怖くなって関係を断ったそうだ」
「ふーん。手掛かり無しか」
「私たちがフィオグラの地下掃除する前の話よね」
「だね」
闇商本部を襲撃した時の様子を皆に説明。
ソプランとアローマは当然驚き。
「序でにやるレベルかよそれ」
「それ以上の地下は無かったのですか?」
「無かった。そこはきっちり。看破カフス手に入れてからは見てない。行ったら確認する」
「研究員ぽい人たちは何人か逃した。医療技術の発展に期待して。
以降ローレライ司教も何も触れなくなったし。行く度に見てたけど4方向の出入り口が埋められてたから再稼働はしてないと思う。人の気配も地下は皆無だった」
「そか。施設がフィオグラだけじゃないとしたら別の場所に集結してるかもな。例えばキリータルニアとか」
「充分有り得るね。ナノモイ氏もその点指摘してたし。ローレライに聞けば詳しく解ると思う」
「この国は関係無さそうですね」
「そりゃあね。大陸の玄関で待ち構えてたら俺シトルリン原本に拍手送るよ。善くぞ逃げなかったな馬鹿共よて」
「大陸東側かのぉ」
「ぽいね。招待案内遅れてるし。未だに届かないのは不自然過ぎる。北部のボルトイエガルは単に興味が無いにしても東部全域は可笑しい」
「何か準備してますねぇ。これ絶対」
その夜はこれにて解散。
翌朝。ミロアルデ南東の森に入った後続2人をクワンと変装アローマでお迎え。王都南西森にご案内。
「ミロアルデの収穫は無かったそうです。数日経ってもまだお祭り騒ぎだそうで」
「おけ。俺たちが騒げば2人も動き易くなるって事で」
北部の様子を2つの双眼鏡で確認。
「あっちも終わったな」
「早かったですねぇ。300対30の戦い」
そらもう一方的な展開。
「当然やね。私兵だけしか動かせず。国は白銀盾の前衛が10騎。早速試したみたいだな」
「ソプランの手柄ね。出遅れが利いてる」
「悪くねえな。俺にも見せろよ」
ソプランとアローマに引き継ぎ。
「ほー。ラーネッツとギトー自ら出陣してたか」
「解り易くて助かります」
レイルとプレマーレも双眼鏡を受け取り唸った。
他の方面に動きは無いので奴隷はアークレッドに固められていた様子。
--------------
ロイド以外で再び昼食会に招かれ。
クコアマンタの報告。
「奴隷層の管理はラーネッツに任せていたので解り易く解決も早い。蜥蜴の尻尾切りのように見られるが…。
そう成らぬよう妃と娘に全権を預ける」
母娘共に礼。メインはフィーネさん。
「進言を聞いて頂けたようで何よりです」
「うむ。あれが在る所為で商業ギルドの評価が下がったままだったとは夢にも。…違うな。薄々とは感じていたのに手を打たなかったのは余の落ち度。この反省は後日の正式発表に変える。
ラーネッツらの簡易聴取でも既に余罪が山の如く。税金を誤魔化す処か。徴収金を全部懐に入れていたとは。いったい何処を見ていたのやら。
それはそうとラーネッツはソプラン殿にも昨夜迷惑を掛けたそうだな」
「いえ大した事では。ギトーも同じく。自分や主を妻が居る傍で女性で釣ろうなど。どれ程危険な行為をしているのかと丁寧に説明したのですが全く響いて居らず。
完全に女性を性処理の道具としか見ていない。救い様も無いまま敢えなく説得を断念致しました。
二度とあの様な俗物を役職席に座らせぬよう。充分にお気を付けをば」
「胸も耳も痛き言葉だ。腹に刻んで対処する」
対岸2人の女性も手を組んで感涙。
今日はソプランたちも後ろに控え。応接室で昨日の続き。
「昨日の話の続きをする前に1つ。
国債が発行出来ない。商業ギルドからの融資が止められた時点で何故原因を探ろうとは為さらなかったのか。理由をお聞かせ願えませんでしょうか」
クコアマンタの謝罪。
「余の確認不足が全て。昨日から空白にしている財務大臣のロメルロイに国庫を任せてしまったからだ。多少は有るのだろうと裏帳簿を見ずに居たらこの有様だった」
「陛下は御人が宜しい様で。もう少しだけ妃であるソミヤル様の言葉も耳に入れると良いかと思います」
「う、うむ…。そこも反省点だな」
フィーネが道具4点を机上に並べ。
「今後のお話もサトロアイ殿で」
「はい。引き続き私めが」
「了解しました。王と王家方の同席を願ったのは他でも有りません。
国有迷宮の部分解除。又は解放を要請致します」
「「な…」」
言葉を失ったのは王とサトロアイ。
「理由は幾つか。
1つ。この4点に対し。商業ギルドを通じて金1千万を私共が支払ってしまう為。
冒険者ギルドから猛抗議が来ます。
1つ。冒険者の要求を撥ね除け。また出るだろうと国有化を続ければ冒険者ギルド員は王都から撤収を始め。城下や近隣町の治安が著しく低下。街道には野盗が増加。
国の兵だけでこれに対処しなくては成らない。
1つ。私共以外でこれらに高額を払う者は居ません。偶々探していた物と合致したと言うだけ。同じ物が出ても二度と同じ額は支払いません。
1つ。国と冒険者の混乱を避ける上で。
これらを担保とした今回限りの特別融資との旨を商業ギルドに申請します。
1つ。昨日スターレンから進言した農地再開拓案は時間が掛かる故。新たな財源として国有迷宮に入る定額の入場料を冒険者ギルドと締結。それを商業にも登録。
継続的な収入源と治安向上の両取りです。
兵士を無駄死にさせるより。迷宮の管理者を置き。地上の治安維持活動に向けられた方が断然良い。
兵の生活や士気向上にも繋がります。現状これ以上の初期恒久対策案は無いと考えますが如何でしょうか。
王陛下。宰相殿」
「む、むぅ…。一利ではなく百利有るな」
「疑問に思った自分が恥ずかしいです…」
「更に輸出品目に付いて。玄米の状態では中央大陸までは届きません故。
南西のギリングスやサンタギーナへ田園開発の売り込みを掛けましょう」
「売り込み…」
「暗所で長期保存の利く米黒酢、米酒と一緒に海越えする行商に依頼し。その美味しさや素晴らしさを広めて貰うのです。
行き成り全出ししては平民の暮らしが激変してしまうので少しずつ商業ギルドの知恵を借りながら着実に」
「成程」
「これで初期から中長期の財源が見込めます。この上に新たな作物や加工品を加えて行けば長期に発展。長い目で見ればペカトーレまで波及します」
「…」
4人がメモを取り既に言葉も無い。
「まだ有ります。異国での農地開発に携わる人材の派遣料や教育料。それらを運ぶ商船や客船などの共同開発事業の展開。
護衛船以外武器などもう不要。南西と経済的に深く結び付けば永続的な和平と正常な国交が結べます。
加えて大陸南西端に港を持つルーナデオンと商船や漁船の技術提携を結べば…どう成りますかね?」
「陸路だけでなく海路も広がり両国が活性化します!」
「良い事ばかりでは有りません。ルーナリオン、ペイルロンド、レンブラント。北部のボルトイエガルとの調整を怠ると経済摩擦が起き。
新たな領土戦争の火種とも成り得ます。
その点は重々念頭に置き。南東大陸中央から西半分の調定国家ミリータリアの重責をお忘れ無きよう願います」
対面4人が拍手。フィーネとも握手。
「私からは以上です。スタンは何か?」
「完璧です」
やっぱり出来る子です家の自慢の嫁は。
「では。商業ギルド、冒険者ギルドの支部役員を城へ招き調整と調印式を執り行いましょう。タイラントの外交官2人が見届け人と成ります。出来れば本日中に」
「直ぐに手配を致します!」
場を会議室に変え。現行の役職者も立ち会いの元。無事に各部との調印式を締結。
女子4人はそのまま別室でお茶会。
俺とソプランは冒険者ギルド役員と一緒にギルド支部へ行き白銀鱗を200枚進呈。
「これが白銀鱗…。初めて見ました」
「勘違いして海に潜るなよ」
「しませんし出来ませんよ。巨大海洋魔獣なんて海上で戦えませんし。そんな芸当はスターレン様だけです」
「打撃耐久性はそれなり。過信しないようベテランと若手に配分良く渡して。ルーランカの支部にも卸すけど。必要最小限の数出させるように連絡しといて」
「承知しました」
「ミリータリアの枚数はこの王都支部で管理する事。隣国で冒険者が持ってるのを見掛けたら」
「お前と両方張っ倒すぞ」
「一枚残らず徹底管理します!」
ギルド職員とギルド内に居た冒険者隊員たちと少しお茶をして帰宿。
女性隊員も数名居たがむさ苦しいのは避けられなかった。
--------------
案の定王都タリルダリアもお祭り騒ぎ。
一晩で元締め役員を炙り出し。説教した上に奴隷層と不法売春宿を解体させたとか…。
「有り得んな…」
「有り得ねー。もう今までの概念は捨てよう。間違い無く世界を平和に導く勇者様だ」
トロイヤも両手を挙げた。
その遣り取りが聞こえたのか。二軒目の酒場で上機嫌な酔っ払いが席に寄って来た。
「お前ら勇者様見た事あんのか。ヒック…」
「夕方に人集り連れて冒険者ギルド入るとこを見ただけさ」
「俺らも一ファンだ。一度で良いからお話してみてえもんだぜ」
「だよなー。俺は城へも出入りする専属行商なのによぉ。
ずっと上に居るから姿も見えやしねえんだ。責めて後ろ姿だけでも拝みてえよ」
俺たちはその御仁の密偵なんだが…。
「気が合うな。連れが居るなら一緒に飲もう」
「商品捌いて小金持ちだから奢るぜ」
「おー気前が良いねぇ兄ちゃんら。折角だから健全な方の女の子が居る店で飲み直そうぜ。仕事仲間紹介してやるよ」
「いいねぇ」
「乗った乗った。ちょっと良い酒飲みたかったんだ」
高級飲み屋に連れられて。
大陸内やミリータリア内の行商苦労話を聞いたり。自分たちは南西から来た食糧調査員だと名乗った。
「いいよなぁ南西。この国も変わるかなぁ」
「変わるだろ。勇者隊が通り過ぎた国は全部生まれ変わって平和に成ってるし」
「だよな。救国の英雄。タイラントの役人。偉大な冒険者で果ては勇者様だ。もう出来ない事は何も無い」
「だといいが…」
「何だよ急に暗い顔して。奴隷以外に問題でもあんのか」
別の男も暗い顔。
「実はな。ここだけの話。今回の件で上層役員が三人首切りになって。一人は未定。
一人はエミルズって言う傲慢貴族の後任でヌートルヤムて真面な優等生貴族議員が座るんだが。
奴隷の元締めやってたラーネッツの後釜がよ」
「弟のガーネッツて宝石に目が無い盆暗でよぉ」
行き成りのヒット。思わずトロイヤと目を合わせた。
「功績はまあまあなんだがな。そいつも兄貴に似て金に汚い奴なんよ」
「なんであんな奴を王様は選ぶんだろうなって。皆不思議に思ってる」
「へぇまだそんな奴居るんだな」
「何処の国でも一人は居るよなぁ。ここは二人だったみたいだが」
接客の女性も。
「私や友人もそいつに押し倒された口で…。思い出すだけでも寒気がする。この国が良い方向に修正されても元に戻らないか心配で心配で」
「まあ俺たちには無縁の話だし。幾らでも愚痴聞いてやるよ」
「店出たら忘れる。取り敢えず今日の善き日に乾杯だ」
「そうだな。そうしよう!」
「折角の酒が不味くなる。忘れよう。勇者隊ならきっと後任人事も見てくれる!」
「頼り過ぎですが。淡い期待を胸に」
五人の出会いに細やかな祝杯を高級米酒で捧げた。
酒臭いのを多少は抜いて宿の部屋からロロシュ邸に飛んだ。
--------------
夜中にシュルツから通話。
まだ全員が自室に居た頃に丁度。
「どした?緊急?」
「お兄様のご予定次第では緊急です。詳しくは後続の二人から」
あ、トロイヤたちがそっちに行ったんだ。
トロイヤから。
「偶々城へ出入りする専属行商と飲む機会に恵まれて」
「今回首切りに合った上層三人の後任人事の話が聞けました。その中に奴隷の元締めラーネッツの後任に。
弟のガーネッツが入ると」
「ガーネッツ!?」
「標的とは違うようですが。宝石に目が無く金に汚く。女の手癖も悪い人物だと」
「飲み屋の女性も被害を受けたらしく。どうしてそんな人間が後任なのかと皆が不安がっていました。スターレン様の余力が有るなら後任人事にも目を向けて貰えないでしょうか」
「解った。知らせてくれて有り難う。丁度明日まで滞在だったから接触してみるよ」
「良かった」
「では俺たちはこれで」
通話を終了。
「後任人事かぁ」
「面倒を見るなら最後まで、ね」
「三下の俺の言葉は流したのか。あの王様」
「人を見る目無さそうだから。単に気付いてな…。いやでも弟は流石に無いな」
アローマとロイドも。
「何か別な理由が有るのかも知れませんね」
「弱みを握られているとか」
レイルがバッグから数個の宝石を取出し。
「宝石好きなのじゃろ。なら…」
大粒の深紅ガーネットを握り絞め。
「これを混ぜて買い取らせよ。金欲や性欲を削ぎ落とす呪いを掛けた。手にした瞬間にやる気を無くして自分から放り出すじゃろ。何もかも」
「怖い事考えるねぇレイルさんは」
「他に一日で手を打てるなら良いが。何度もここへ足を運ぶのは嫌じゃぞ」
「有り難く頂戴します」
小さな麻袋に小分けしてフィーネが受け取った。
「こう言う使い方も有るのね。でも困ったな」
「何が?」
「私色仕掛けなんて使った事無いんですが」
「普通に俺から話すよ。趣味聞いて売れなくて困ってる石が有るってさ」
「じゃあそっちは任せて。私は後任人事の話聞く」
「おけ」
袋は俺の手元に。
「折角明日はゆっくり買い物出来ると思ったのにぃ」
「買い物は他に任せて。帰りに城に寄贈された高級酒土産に貰おう。プレマーレもお待ち兼ねだし」
「助かります!城下ではあのウィスキーが売ってなくて。バナナは適度に仕入れたのですが」
「しゃーないか。外交仕事の一環だし。2本貰って1本明日の夜に開けちゃおー」
--------------
勢い良く4人で昼食会に乗り込んだ。のだが…。
既にラーネッツの空席にはガーネッツが座っていた。
兄弟良く似てる。容姿も多分中身も。
エミルズ席には新顔のヌートルヤム。
財務大臣の席には何とレイヤル王女が。
話を聞く前に空白は埋められていた。
食後に配席表を見た嫁がキレ気味に。
「失礼ながら王陛下」
「な、何だ」
「次の町へ行く前に。後任人事を示されたのは大変に結構な事です」
「うむ。適任者を据えた積もりなのだが」
この王様天然!?
「…適任者?ラーネッツの弟殿が?」
睨まれたガーネッツが挙動不審。
「私が…何か?」
「血縁だからと切り捨ては為ぬ。ラーネッツとは別家を設け独立した身。政治手腕もまずまず。問題か?」
「も…問題?人材不足なら致し方有りませんが。当国や今まで訪れた国々では。臨時の人事で後任に近しい者を置く事は有り得ません。
例えば。私共を迎えた客船支配人のワンガス殿では駄目だったのでしょうか。
礼節は正しく。話術も繊細。博学でミリータリアの内状と南西ギリングスにも詳しく。両国を繋ぐ顔役として最適者だと思われますが」
「おぉ!?盲点だった。確かに彼なら。そして二人が認める者ならば誰も異論は唱えまい。
ガーネッツ。今直ぐ荷を纏めて帰れ」
この人天然だ!
「え!?そ、そんな…。折角役職に成れたのに」
それはそう。
フィーネに目線を送り選手交代。
「クコアマンタ王陛下。不躾ですがそれは些か早急。
ガーネッツ殿にも生活が有ります。貴族家を維持するにも金が掛かりましょう。
しかし初日にして退職では退職金も発生しないでしょうし。ここは1つ。昨日の相殺金にこちらを付け加えまして」
手袋をして5色の宝石をテーブルに並べた。
その豪華さに場が響めいた。
「各地の迷宮で手に入れたは良いのですが。価値が有り過ぎて中々買い手が付かなかった宝石類。
左からイエローダイヤ。ブルーサファイア。ガーネット。
白ダイヤ。珍しい配色のキャッツアイ。
ガーネッツ殿の趣味と合うなら退職金代わりにこれらを進呈致しましょう」
「助かる。余も欲しい位だ。これで良いかガーネッツ」
「頂きます!昔から自分の名前の由来でもあるガーネットに特に目が無く。その様な大粒はこれまで見た事も。
有り難く頂戴し即座に退城致します!」
ちょっと可哀想になったが。こいつは罪無き女性を襲った悪い奴。同情はしまい。
ガーネッツは5個の袋を胸に抱えてダッシュで逃げた。
「彼も又金に目が眩む欲深で浅ましい男。王陛下は人を見る目が全く無いと進言致します」
「む…」
「人選は裏を念入りに調べた上で。王妃王女様や宰相殿の意見も取り入れ、性別問わずに!お決めに為られては如何かと」
「そ、そうしよう。そうすべきだった。反省が多いな」
食後の紅茶を頂き。茶葉と高級ウィスキーを3本貰ってそそくさと退城した。1本は王の謝罪でオマケ追加。
クコアマンタ王の天然振りに若干不安を覚えたが。息子を出さなかった冷静さと配下を断罪出来る柔軟性。近場の人は堅実な人が揃っていたので、これ以上は手を加えず王都タリルダリアを立ち去った。
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