お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第247話 モーランゼア時計案件締結

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モメットは半年後目処で。サンタギーナのサドハド島定期便が軌道に乗ったら帰国する意思を固めた。

シャインジーネでの別れ際。
「ずっと演技だったの?」
「うーん。難しい質問ですねぇ。演技半分、本気半分。
今まで女の子でときめいたのはアルシェだけだしぃ。
オカマを演じてれば女の子に誤解されないしぃ。
こんな身体が大きいと男の子も逃げるしで。色々都合良くて演じてたら定着しちゃった感じです」
「へぇ~。演技の才能有るんじゃない?帰国して暇になったら劇団でも入れば?
力も強いから舞台設営の大道具さんとか」
「あー。裏方がいいかもぉ。アルシェ以外の子と演技でもキスしたくないんで」
キッパリ!

ソプランが。
「す、凄えな。もう何が正解で常識なのか頭混乱して来た」
「私も」
「私もです」
フィーネとアローマも困惑気味。

「まあ病気に気を付けて。多分下旬辺りに来るけど。何か困ったら自宅に手紙送って。
シュルツが全部検閲するから」
「はーい♡…スターレン様にならぁ。捧げてもい」
「要らんわ!!」
「冗談ですよぉ」

「私たち買い物して帰るからお元気で」
「殺したって死なねえだろうがな」
「同意します」

御達者で~と元気に手を振り定宿方面に歩いて行った。


ティンダー隊は2区の借家をそれぞれ借り腰を落ち着け。
又しても。又しても!お相手は1発で決まってラブラブデートを重ねていると言う。

何故だ!!何故破局カップルが生まれないんだ。

は、さて置き。

ティンダー隊の扱いでロロシュ氏とカメノス氏が仕事をどう割り振るかで掴み合いの喧嘩になった。

しかしそこで雷を落としたのは。何とシュルツ。

「お兄様の下で働きたいと希望して来られた隊を分けるとは何事ですか!
人材も増え。両邸内の宿舎も来客用を除き逼迫。
御爺様とカメノス様の御力なら何でも出来ます!そろそろお兄様専属の共有部門をお作りしなくては!
国内問わず!世界各地から!続々と!お兄様とお姉様の元へと希望者が現われます!
これ以上お二人のお手を煩わせないで下さい!!」
机をバンバン叩いて。
「「す…済みませんでした…」」

共有部門が新設されるに至った瞬間である。

俺とフィーネは拍手を送る事しか出来なかった。




--------------

トロイヤとティマーンを自宅に招いて出張打診。

2人も緊張の面持ち。

「ティマーンの身体の具合は」
「もう大丈夫です。…二人目の子供も授かった程で」
「良かった。それは本当に良かった。あの時力加減が曖昧で心配だったんだ」
「本気を出されていたらとっくにあの世に行ってますよ」

「2人を呼んだのは他でも無い。
俺の妄想では来年の予定だったのが早まり。早くて来月には南東の表玄関が開く」
「「…」」

「直ぐには行かせないと豪語して置いて虫の良い話だとは自覚している。
それでも頼めるのは君たちしか居ない。もう俺たちは有名に成り過ぎて裏に回れないんだ。
かなりの危険が伴う事も有る。少しでも不安を感じるなら断ってくれて構わない」
夫婦揃って頭を下げた。
隣に控えるソプラン、アローマも。

ティマーンは陽気に。
「止めて下さい。やります、例え一人でも。
家族と自分の命まで救って頂けた。残りの人生は恩返しだけに使います」
トロイヤも笑い。
「頭を上げて下さい。元々俺が望んだ事です。
危険が有ったとしてもティマーンの腕でも掴んで転移して逃げますから」

「「有り難う」」

頭を上げて。
「今度の外遊でギリングスへ行く。そこで最東部港町まで歩いて来る。
本来なら南東ミリータリアへの直通便が出ていた港。
南東大陸の視察は招待状が来ようが来まいがミリータリアから始める。
大陸内に入れば調整は幾らでも出来るが。どうしても最初だけは船で追い掛けてくれないと辻褄が合わない。
その心積もりで準備をして欲しい」
「「はい」」

「深追いはしなくていい。
アジトを見付けても入らなくていい。
明らかに怪しい人物への接触も避ける事。
噂レベルの情報で構わない。
訪問する各国で。頭に「ガ」が付く高官の情報を主に集めてくれ」
「ガ、ですね」
「大勢居そうですね」

「大勢居てくれた方が安全に収集出来るさ。彼方での有名人だろうから」
「確かに」
「頭良いですね。スターレン様は」
「狡賢いのよ。スタンは」

「酷くない?
まあその逆で。首都や王都で該当者が一切居ない国も大いに怪しい」
「ふむ」
「偽名か伏せ名。或は完全な裏か。聞き漏らさないように注意します」

「後ウィンキーをもし見掛けても近付くな。奴は記憶を失っている。態々呼び起こしてやる必要は無い」
「「はい」」

「少し気が早いがこれをトロイヤに」
小袋に入れた古竜の泪。昨晩ルーナに土下座して泣いて貰った物。
「これを…またお預かりしても」
「ずっと持っててくれ。それはもうトロイヤ専用だ。
大勢に囲まれたり。転移障壁張られたり。隔離されて閉じ込められたりした時は迷わずこの邸内に逃げ込んでシュルツに伝言を頼んでくれ。
何処で捕まりそうになったかを」
「はい必ず。最近スキル使ってないので今の内から練習して置きます」

「お願いします。所でお金とかは足りてる?」
ティマーンが隣のトロイヤを見て。
「それはもう…。なあ」
「ええ。ロロシュ様から馬鹿みたいに頂いてますよ」
また爺ちゃん勝手に。

「そか」
「昼食にしましょ。御家族の分は手土産に」

遠慮する2人に竜肉サンドを無理矢理食わせ。手土産持たせて暫しのサヨナラ。

ソプランたちに向き。
「何か忘れてないっけ?」
そのソプランが指輪を取り出し。
「複製箱空いてるなら。あの二人に必要だろ。可能だったらアローマの分とで丁度二人分作れる」
「「あ!」」
すっかり忘れてた!
「大至急作ろう」
「自分たち効かないから直ぐ忘れちゃう」
「だと思ったぜ」
「油断大敵ですね」
お返しする言葉が見付かりません。

翌日昼に複製出来た物と合わせ。4個の指輪にマウデリンチップで個人指定オプションを付与。500m圏内なら何処に居ても効果を発動。

寝る時鞄外すからね、普通。

この機能も最終巻に記載されていた。
他にも色々使えそう。

複製品はティマーン用の小袋を付けてソプランが配達。




--------------

配達から帰ったソプランを交え出張打ち合わせ。

「今回はお城に時計職人集めて各工房の試作発表会するだけだからソプランたちはお休みにしようと思ってます。
どうする?本部ホテルの温水プールで泳ぎたーいとか希望が有れば連れてくよ」
「おー悩むなぁ。去年の夏は泳げなかったしよ。どっかのお姫様の所為で。アローマは」
「こちらでのお仕事は…取り敢えず段落が付いたので。偶には純粋に遊びに行きたい、かなと」
アローマ正直。

ロイドも賛成。
「息抜きは大切です。迷宮帰りで休みと言う休みも取っていませんし」
「じゃあ行く」
「はい」

「おっけ」
「皆で泳ぎましょ。偶にはのんびり」

ソラリマさんが。
『行くに決まっておろうが。プレマーレの分も取れ。だそうだが』
「聞く前にお答えが…。3泊3部屋空いてるかなぁ」
「取り敢えずクワンティにエリュライズのフロントに飛んで貰えば?私たち運が良いし」
「そうすっか」
「クワッ」

証文に近々に取れるスィート含め3泊3部屋希望と書いて配達を依頼。

10分後にクワンが帰還。

返信は。スウィート含め4部屋。10日間ぶち抜きで押さえます。お好きな時間にどうぞ。料金は御退出時に。

「おー太っ腹!これならロイドも安眠出来る」
「有り難いですね。お互いの平穏にも」
すんません。

「ねぇスタン…。これって」
「大変手厚い歓迎が待ってます!」
「「「「…」」」」
ペッツも唖然。多分プレマーレも皆溜息。
「大丈夫。流石にホテル内までは押し掛けないし。
エリュトマイズさんなら何か変装用品作ってくれてるよ」
「そ、そうよね。何たってエリュダーの総帥さんだもんね」
「そそ。俺とフィーネは城入れば安全だし」

「まー俺らは名前売れてもまだ顔までは売れてねえし」
「信じましょう」

出発は明日の夕方に決定した。




--------------

タイラント夕方発、ハーメリン朝。

王都南門からかなり南の街道脇に転移。何時も使っている場所。

全員フード被った怪しげな集団。だったのに…。

偶々近くに居た衛兵や通り掛かった行商がピタリと止まりこちらを凝視。

衛兵は南門へ全力で走り出し。南に向かっていた筈の行商隊が慌ててUターンを咬ました。

ソプランが嘆く。
「最初からじゃねえか」
「もっと景色を眺めたいのに…」
アローマもションボリ。

「ま、まあ帰りにゆっくりと」
「見れるかなぁ、これ」
「き、厳しいかも。時間掛ける程人集まるから、さっさとホテル直行しよう」
「そうしましょう」

向かっている途中で門内から国所有の大型馬車が。
俺たちの目の前で停止した。

先導する騎馬兵が馬上から。
「スターレン隊の皆様ですね」
違いますとも言えないので隊長の俺がフードを外して。
「確かに。しかし今回は隊員以外の客も居るので余り騒いで欲しくないんですが」
「あぁそうでしたか。ですがもう手遅れです。先回来られた時に四月にお越しだと予告された情報が出回り。都内は酷い状況です。
お泊まりはエリュライズで宜しいでしょうか」
なんてこったい。誰が口滑らしたの。
「はい。今回もそこへ」

「承知致しました。入国手続きはホテルフロントで行いますのでこの馬車にお乗り下さい。
人を撥ねてでも振り切ります」
何て大胆な。
「お言葉に甘えますが人は撥ねないで下さい」
「善処します!」
頑張って。

全員乗り込みUターン発車。

客室前部の小窓が開いて御者の補助員が。
「カーテンは絶対に開かないで下さい。あらゆる角度から覗く輩が多数居るので」
「解りました」

「これじゃ普通の買い物も出来ないじゃん」
「むぅ。詰まらん」
「まあ姐さん。今回ばかりは変装しようぜ。嫌いでも」
「仕方無いのぉ」

「今はもう排除も出来ませんし」
「多少の我慢は必要かと」
「我慢…私に足りない物…」
プレマーレだけブツブツ言ってる。

暫くして馬車停止。再び小窓から。
「正面向かい右手の扉からどうぞ。ホテル前は係の者しか居りません」

順番に降りてフロントへ駆け込んだ。
ホテル内でも絡まれるかと思っていたが妙に静か。

出迎えはサンメイル。
「ようこそお出で下さいました。
スターレン様とお連れ様方」
「お久し振りですサンメイルさん。何か静かじゃない?」
「えぇまあ。ご説明は後に。先に後ろで構えるお手続きの方を」
振り返ると衛兵隊がお待ち兼ね。
「あぁそうだった」

全員商業カードや冒険者カードとサインで手続き完了。
今回自分は商業カードで。

衛兵たちが一礼して退散。

再びフロントへ行き各自サイン。
「妙に静かじゃない?客が誰も居ないような」
「残念ながら。大迷宮踏破の号外が届いてからと言う物。
ご新規様が来られる度にお部屋をみだりに出たり入ったりするお客様が…まあ全室退出して頂きました」
「何とまあ」
「あらやだ」

「ですので最上部屋から順に四部屋を。通常業務再開は御一行様の御退出の後に」
「申し訳無いと言うか。あ!変装グッズなんて用意されてないですかね」
「エリュトマイズの判断です故お構い無く。グッズはしっかりと御用意して居ります」
「流石です」
「サービス精神の塊」

「有り難いお言葉胸に染みます。
では各お部屋にご案内後。グッズは最上部屋にお持ち致します」
「「お願いします」」

初泊の最上は俺たち。他は空の荷物を各部屋に置いて最上に集合。

アローマが簡易キッチンで湯を沸かし茶淹れ。

皆で外の景色を眺めたり。

ソプランがバスルームに入って。
「おーー。天井全面樹脂板かぁ。まあ露天風呂みたいなもんか」
「開放感有っていいんだよ。自宅じゃ絶対出来ない」
「周囲が高いと無理だわな」
「そそ」

のんびりティータイム。
「ありがとアローマ。でもここに来てまで仕事しなくてもいいよ」
「そうそう。偶には羽を休めて」
「いえいえ。何もしないと逆に身体が可笑しくなる体質なもので」
仕事人間!
「程々にね」
「程々に」
「はい」

暫くして給仕とサンメイルが台車を…。

「制服?」
「良くお解り…バレバレですね。
こちら当ホテルの従業者の外行き衣装と成って居ります。
変装と言えば先ずは服装。こちらではお目に掛かれない上質なお召し物では丸解り。
正面玄関からの脱出は略不能。素早く駆け抜けてしまわれても丸解り。
そこで考案しました基本中の基本。外行きの制服でホテル裏口の従業員通路をご利用頂きたく」
「基本だねぇ」
「基本だな」

「それに加え。減衰型スカーフの改良版を。えー。
プレマーレ様のお肌色もこちらで良く見る肌色に。大袈裟な変更は加えず目鼻立ちの印象を少し変えるだけで全体の印象もガラリと変わり。日常生活には支障を来たさないレベルと存じます。
御用意致しましたベストと上着には特別な目印を付けて居ります故。いつ何時でも出入は自由です。

記念にお持ち帰りに成られても構いません。

カモフラージュに町中へ通常の制服を着せた従業者を多数配置。流石に深夜帯は厳しい物が有りますが今回はこれでどうぞご容赦の程を」
「そこまでしてくれて文句は言えませんよ。単独で出る人は居ないので。買い物は現金を使えば良いですし」

「有り難う御座います。只…唯一注目を浴びてしまう物が」
視線の先は俺の腰。
「あぁバッグか」
「あーそうねぇ」
「上着で隠しても買う時見せるし収納するし」
「厳しいのぉ」
「困りましたね」
「難題です」
「逃げるのは嫌です。じっくり見られません」

「そこで考案しました次の手は。これまた定番中の定番パシリです」
「パシリ!」
「一度ガイドマップと従業員共通の細筆をお手に回り。
印と希望品目と数量を記入頂き、ご用命の品を後から購入に走り。こちらまでお運びしたいと」
「ん~。その場で買えないのは残念だけど」
「しゃーなしね」

「そこでお伺いなのですが。今回柱時計などの高額商品を御購入される御予定は」
「あー誰か居たっけ」
全員を振り返ったが挙手は無し。
「今回は大丈夫そうです。ここだけの話ストアレン商会名義で時計を独自で作り始めたので。
ここの城の許可を得て」
「おぉそうでしたか。タイラントへ行く日が楽しみです。
さて置き。高額な商品を現金で御購入されるお客様はスターレン様とフィーネ様だけ、と言っても過言では無く。
前金を頂いても通常の袋に入れては走れません。精密器です故お運びするのも恐ろしく。
その点心配をして居りました」

「皆収納袋に慣れ過ぎちゃって」
「済みません」

「いえいえ。ご高名な方々なので並大抵な物はお持ちでないとは重々承知。そこで考えまする第三弾」
「第三弾!」

サンメイルが台車の中段から出した物は。
「割と入る縦財布。この城下でご飲食される程度には貨幣が納められる物。収納量は見た目の三倍。
当工房ではそれ以上は無理でした」
「おぉ~」
「充分です。それだけ有れば」
シュルツは天才なので規格外です。

「痛み入ります。それでは制服とグッズをご試着頂き不備は廊下の係の者へ。姿見はこの後お持ちします。
本日のお昼食とお夕食は如何致しましょうか」
「どうする?各部屋バラバラ?ここで纏めて?それとも外出る?」
「着いたばっかだし。試着まだだし。俺この部屋で。景色も良いしよ」
「私もご一緒に」
ソプラン、アローマ以外も皆同じ。

「この部屋で。明日の朝食も。それと城からイイテンかニドレアの呼び出しお願いします。さっきの衛兵に頼むの忘れちゃって」
「畏まりました。では後程」

「じゃあ寝室2部屋有るし試着してみますか」

各員ズボンの交換を何度か経て。リビングに置かれた姿見の前に集合。

説明の通り目鼻周りの肉付きが少し変わり全体の印象が変わった。普通顔の俺は然れど普通。
肌色に加え髪色も明るめに。ロイドの黒髪は茶髪寄り。レイルの金髪は大人しめのブロンドに変化。

「ほおほお。普通は何処まで行っても普通ですと」
周りをグルッと眺め。
「何で俺だけ普通顔なんだよぉ~」
ショックで膝を着いた。
「いいじゃない。私の中ではどんなスタンもイケメンよ」
「有り難う!」
即時復活。

「姐さんは不満か?美しさには変わりは無いと思うが。男からすると」
「む~。まーこんなもんかの。態々自分で変える手間を省くには」

皆それぞれに及第点。

着替え直すのも面倒でそのまま昼食。

グーニャがサラダを食べ終わり。
「今回の荷物持ちは我輩かニャ?先輩かニャ?」
「クワ?」

「あーそうだな。クワンだと自由にお散歩出来んから地上に居るグーニャだな」
「ハイニャ」
「クワッ」

今度はピーカー君。
「僕は何処に行きましょうか。二重移動は自由度が下がるので出来れば外に出たいのですが」
「意外な制限有ったんだな。…ロイドさんが良ければ?」
「構いませんよ。私はお城には入りませんし。守り易いですし」
「お邪魔致します!」
フィーネのバッグから出てロイドの胸の谷間にIN。
「お~これがグーニャ先輩が言われてたフワフワですか。気持ちが良いのでもう寝まzzz」
「感想を言われると恥ずかしいですね」

口には出さないが俺もソプランも小さく成りたいと思った瞬間である。

食後に各自縦財布に貨幣を詰めているとフロントにニドレアが来たとの連絡。

「んじゃフィーネとラウンジ降りるよ」
「夕食まで自由行動でー」

減衰スカーフをバッグに入れてと。


フロントに降りるとモーランゼアの正装に身を包んだガチ緊張のニドレアの姿。

「久し振り~。どしたの?」
「正装だし。そんなに緊張して」
「おおお久し振りです!そそそその様な事はみみみ微塵もごごご御座いませんよ」

「落ち着け頭文字が多いぞ」
「どうしちゃったのホントに」
「はぁ…はぁ…。
大迷宮完全踏破誠に御目出度う御座います。
国の外交官と言うだけでも凄いのに。マッハリア救国の英雄に加えて東大陸一の迷宮攻略。
私のような中間職の身ではもう何が何だか。し、失礼が有っては為らぬと正装に着替えて参った次第」

俺たちは顔を見合わせ。来月どうなってしまうのだろうと不安になった。

ラウンジでお茶を頼んで漸く落ち着いたニドレアとお話。
「先回来た時にケイルガード様にお願いした件。城の方は準備出来てる?」
「それはもうバッチリと。城下の工房から招集する時間を考えますと十時以降でなら何時でも。軍部の馬車でこちらへお迎えに上がります。
ご滞在が短いのでしたら明日にでも可能です」
「半分休暇で来てるから」
「明日サクッと遣りましょう。余裕を見て11時に」

「承知致しました。戻ったら直ぐに連絡を回します」
「ここだけの話。モーランゼア内と三国同盟て今どんな状態なの?」
「そーですね。ケイルガード様に聞かれても同じ事なので私の解る範囲で。

モーランゼア内は東西南北平常。一部港方面にメレディスからの密航船が来る程度です。
三国同盟は事実上メレディスが脱落。クワンジア内はかなり正常化が進み二国間同盟は維持しています。
友好国とまでは行きませんが付かず離れずと言う具合。
メレディスはもう駄目でしょうね。今のロルーゼよりも酷い状況です。
北西海岸の王政府。南部。残り北部と恐らく三つに分かれると思われます。
北部と政府は主に女神教。貧困に喘ぎ続けていた南部の山神教信者が二月にメレディス火山付近で起きた大規模爆発を皮切りに遂に奮起。今頃は北部を吸収し始めている頃合いかと。
山神教信者は何と言いましたか…。あ、そうそう。
ミミズフロンティア、と呼ばれる新たな豊穣神を掲げ貧困層の地位向上を謳い文句に北部侵攻を始めました」
「「……」」
やってもーたーーー。

「ど、どうされました?私何か拙い事でも…」
「いやいやいや全然全く」
「な、何でも無いの。気にしないで」

「そうですか。制御と統制を失った政府が潰れるのも時間の問題。南部の勢力が北部に勝ち切れば、或は国内平定への道も見えて来るのではと」
「大変、良く解りました」
「とても、簡潔で解り易かったです。勉強に成ります」
「いえいえそんなそんな。この国は中立国として南北の国を見守るのが役割ですので。一役人としては当然の事」

ではまた明日とニドレアと別れ最上室へ。

無言のロイドの前に夫婦並んで座る。
「ロイドさん。少しだけ、言い訳を聞いてはくれないか」
「どうぞ」
「まさか…。こんな事が現実に、起きるなどとは。決して面白半分で発表した訳じゃない。自然神を信仰する山神教の皆様に。何か、形の有る物をと考えての事。
決して。戦争や内戦を起こしたいだとか。混乱を招きたいだとかの想いは。微塵も無かった」
「でしょうね。それが救いに成るのか。駄目押しをして谷底に突き落とす事に成るのか。もう芽が出てしまった以上はどうしようも有りません。
責めて。ミミズフロンティア様の勝利を祈りましょう」
「「はい…」」
3人で祈願の黙祷。

「クワッ!」
「ミミズフロンティアの名は。あたしがピーカー君とのお散歩中に広めましたニャ!」
「「「え……」」」

「クワン君。主にどの辺りへ」
「クワ?」
「小国群全域とメレディス南部の山神教ぽい所へニャ?」

「そ…れはいったい、どの様に」
「クワァ」
「我が名はミミズフロンティア。山の聖鳥である、とニャ」
「「「…」」」

「クワンがカーストの頂点に君臨した理由が。たった今解りました」
「「私もです」」

「クワ?」
「駄目だったかニャ?」
「駄目…かどうかは解りません。責めて。今一度、勝利を祈りましょう」
「「はい」」
再び3人で黙祷。




--------------

ハーメリン時間の翌朝。皆での食事中。

「最近半日以上の時差ボケ経験した所為か全然辛くない」
「意外とね。ちょい眠い位かな」
「俺もだな」
「私もです」
他上位種の3人は超余裕。人間とは根本が違うから。

「で今晩この部屋使うのは?各組1晩希望ならもう1泊増やすけど」
ソプランとアローマ。
「俺はいいや。ここで晩酌出来りゃそれで」
「私もです」
ロイド。
「露店風呂は将来のオリオンを楽しみに。1晩中お風呂に入る訳でもないので遠慮します」
レイルとプレマーレ。
「妾たちは使う」
「仰せのままに」

「おけ。レイルたちは明日の晩で。
1晩挟むのも面倒いし。予定通りの3泊4日コース。
今日明日で都内の買い物と外食とプール遊び。
明後日チェックアウト後に東部町で強行買い物して適当に帰国します」
「硝石と青砂はマストで。他は…来年用の巨峰ワインを今買います。うっかり忘れて激怒されるのが怖いので」
「正解。来年は来年で味変わっちゃうかもだし。必ず売ってる保証も無いのでそれもマストで自宅のセラーで温存しましょう」

「あのセラーの梅酒は何時開けるのじゃ」
「7月やね」
「私の誕生月祝いの代わりに」
「そうかえ。開ける時は呼ぶのじゃぞ」
「解ってますがね」

簡単なスケジュールを打ち合わせて解散。

訪問着に着替えて迎えを待ち城へ移動。まあホテルから直ぐ近くだから特に慌てる事は無い。

城壁内で降りた目の前に広がる光景は…。
「桜…並木…」
「綺麗だね…」
懐かしさに思わず胸が詰まる。真に今が満開の時。
桜の柔らかな香りが思い出を優しく包む。

後ろのニドレアが。
「そちらは後にごゆっくりと。明日でも明後日でも。桜は散れども直ぐに落ちる物では有りません。満開のこの時にお二人が来られた。
これも女神様の細やかな贈り物なのではと。異教徒ながら私は愚行します」
女神様。この憎い演出。素直に受け取ります。

「あぁ後で。2人でゆっくり歩こうか」
「ええ。2人切りで」


王城時計工房の隣に新設された特設会場。
本来部外者である俺たち用の配慮だ。

演説台が置かれ。その前に大きな作業台。
作業台の後方にはメモ帳を片手に握る城内と城下時計工房の職人たち。

中にはサメリアンとテレンスの姿も。

奥座席には正王と代理王が肩を並べて座っていた。

演説台に上り風マイクを握り絞める。
「タイラント外交官のスターレンと次官のフィーネです。
このマイクは後にケイルガード様へ進呈致します。
何分忙しい身で各工房を回れないと、この様な形をお願いしました。
城下があの様子なのでサメリー工房を覗けないのが非常に残念です。
ですが。その結果は何時かの楽しみにして。
時計に携わる職人方皆様へ全く新しい時計のご提案を持って参りました」
フィーネが作業台に試作第二弾を置き。表示板を客席に向けた。

その小ささに響めく会場。後方席の人は立ち上がり。奥座席の2人も身を乗り出した。

「心臓部の受信器の構造も刷新。
ペラニウム、マウデリンなどの希少金属は不使用。
内部部品もアルミと銅のみ。
秒間を司るのは初動の歯車。
それを動かすのは風と雷魔石を使った循環回路。
職人の皆様が苦心する魔力供給などは一切要りません」

フィーネが一度部品単位に解体。
再度組立。再始動。

「この試作器の耐久想定は約10年。使用した風と雷の低位魔石を中位、上位と変えて行けば耐久寿命も引き延ばせます。
しかし魔石の品質に頼るのではなく。動力部の循環回路を改良して行けば。半永久機関も夢では有りません。
本来ならば特許登録をする所を今回に限り。この心臓部以外の内部構造全てはこちらの城工房へ寄贈。
この器も標本としてご進呈致します」

フィーネにバトンタッチ。
「寄贈するとは言え。無闇な転用をされた場合。
次に何が起きるかはお解りですね」
会場をグルリと一瞥。青くなる客席の顔。
「半分冗談です。妄りに儲けを出そうとする輩が居るなら私たちが飛んで来る前に!処罰の対象として下さい。
宜しいですね。ケイルガード様」
2人共、大きく何度も頷いた。

「ご存じの様に。私共は世界を駆け回り。この様な繊細な物を作り出す時間は有りません。
私共の身近には当然。等しく天才と呼べる数人の工作師が居ます。その存在を口外せぬよう切に願います。

近々には難しいですが。何時か数年後の未来に。モーランゼア製とタイラント製の時計製品を並べ。品評会をこちらで開きましょう。
それまで互いの技術を高め合い。製作を手掛けた工作師を共に連れて来るとお約束致します」

再び自分。
「今回4月目処で来訪すると言う情報が出回っていたのはとても残念です。
次回。私用で遊びに来た時。又は事前案内を送らせて頂いた後。同じような騒ぎに成っていたら正式訪問は二度と無いと。努々お忘れ無きように。

それではこれでご提案品の紹介を終わります」
大きな拍手が起こる中。1人俯くテレンスの姿。

両ケイルガード様に歩み寄ろうとした時。テレンスが衛兵の制止を振り切り俺の前で土下座した。
「申し訳ありませんスターレン様!口を滑らしてしまったのはこの僕です!」
「あーやっぱり」
「さっきから怪しかったもんねぇ」

「一度タイラントへお誘い頂けた自負も有り。外で酒席を共にした女性に今度はいつ来るのかを問われ…。
陽気になった自分は。周囲の忠告も忘れ。
滑らせました。
そこへ大迷宮踏破の号外が重なり。もう自分ではどうしようも無く…。済みませんでした!」
涙するテレンスの肩に手を置き。
「許すよ。頭上げて涙を拭け。王の御前だぞ」
「初回限定よ。甘く見るのは」
「有り難う御座います!二度と過ちは犯さぬよう最大限の努力と成果を。
何時かのその日にお見せすると誓います」
「良い心懸けだ。楽しみにしてるよ」

フィーネが周囲に向かって。
「皆様もお酒の席では気を付けて下さい。私たちの立場上外交問題に発展。最悪の場合は国同士の折衝が凍結されてしまいます。
肝に銘じて。口はしっかり閉じましょう」
「はい!」
総員が力強く返事した。

客席に戻ったテレンスはサメリアンに思い切り頭を殴られていた。

頑張れよ。


2人の王の前に戻り。
「お元気に成れたようで何よりです。正王様」
「君の助言のお陰だ。女神様の盾を持って散歩を繰り返していたら。見る見る身体も健常に。酷かった動物アレルギーも何時の間にか消えていたよ」
「お役に立てたようで幸いに」

弟ケイル様も。
「色々と不手際が有ったようで済まない。この謝罪は結果に替えてお披露目する」
「いえいえ」
「何となくこうだろうとは予想してましたし」

「今後も長期の出張が続きます。外交官としても冒険者としても。
正式な召還状を頂いても殆ど応じる事は出来ません。その点はご了承を」
「「承知」」

再び代理王。
「私が知り得る三国の情報もニドレアが報告した内容と相違無い。また何か大きな変化が有ればヘルメン王へ文書を送る」
「そうして頂けると助かります」
「助かります」

風マイクを2人に1個ずつ渡し使い方を伝授。

ニドレアを遠くに置き。
桜並木通りを手を握り合って繰り返し歩いた。

「前の思い出に浸る事はもう無いと思ってたのに」
「思い出しちゃうね。学校とか」
「何時か建てるタイラントの学舎に」
「桜を増やして植えてみましょう」

「フィーネさん…」
「私も同じ気持ちよ。スタンさん」

太い木の陰に入って抱き締め合ってキスを交わした。
郷愁を柔らかく包む桜の木の下で何度も何度でも。
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